
高校時代、劇団「第三舞台」の戯曲に触れて演劇の洗礼を受けた小手伸也。彼の探求心は高まり、やがて早稲田大学アングラ演劇の聖地へと足を踏み入れていく。CoRich舞台芸術!チャンネルでの対談動画『劇トクッ!』を元にした全4回連載の第2回では、劇団「カムカムミニキーナ」との運命的な出会い、2浪の末の早稲田大学合格、そして学生演劇時代に経験した伝説の「地獄の舞台」について語り尽くす。
「山頂からの雲海より、舞台から見た客席」――表現者・小手伸也の覚醒
高校時代、演劇部の助っ人として舞台に立ち、客席からの万雷の拍手を浴びた小手伸也。それまでの人生で「運動でも勉強でも、それなりにこなせば褒められた」彼にとって、スポットライトを浴びて全身で受け止める称賛は、何物にも代えがたい「心の充実」をもたらした。「山岳部で登った槍ヶ岳の山頂から見た雲海よりも、舞台から見下ろした客席の光景の方がはるかに強烈だった」と振り返るほど、その体験は一人の青年を劇的に変えたのだった。
高校3年の文化祭では、自ら初執筆となる20分の探偵モノ戯曲を書き下ろし、クラス全員を舞台に立たせるという離れ技を達成。さらには演劇部用にも短編集を執筆するなど、クリエイターとしての才能を一気に開花させていく。
早稲田大学演劇倶楽部(エンクラ)と、カムカムミニキーナへの傾倒
高校時代から大学演劇のダイレクトメール(DM)を収集し、アングラ劇場の熱気に浸っていた小手。なかでも今は無き大塚ジェルスホールで目撃した「早稲田大学演劇倶楽部(通称:エンクラ)」のメンバーが旗揚げした劇団「カムカムミニキーナ」第2回公演『ヤマトよ永遠に 〜波動砲乱射篇〜』(1990年/松村武・八嶋智人ら出演)の熱量には、言葉を失うほどの衝撃を受けた。
「この熱狂の中に飛び込みたい」。その情熱一心で2年浪人の末に早稲田大学へ合格した小手は、すぐさまエンクラの門を叩く。熱心に書き込み続けたアンケートを覚えていた八嶋智人から「お前が小手か!」と迎え入れられ、劇団への正式加入を打診されるものの、小手は意外な選択をする。「客観的なファンとしてこの熱量を愛していたい」という美学から加入を辞退し、自らは「あらゆる劇団を渡り歩く客演のプロ」として、在学中に実に40本以上もの舞台に立つ道を選んだのである。
開演15分前の台本完成――伝説の「地獄公演」とメンタル破壊の狂騒
客演としてさまざまな劇団の場数を踏む中で、今なお小手の俳優人生において「最強のメンタル」を形成した伝説の公演が存在する。当時活動していたあるナンセンス劇団(「オハヨウのムスメ」)での出来事だ。作・演出家が開演直前まで失踪し、本番初日の開演15分前、ガムテープで補強された眼鏡をかけた主宰が、出来上がったばかりの後半50%の台本を手にして楽屋に現れた。
声も出せない客入れの真っ只中、15分間で後半の長文セリフを完全丸暗記し、ぶっつけ本番で舞台へと飛び出すキャストたち。客演としてさまざまな劇団の場数を踏む中で、今なお小手の俳優人生において「最強のメンタル」を形成した伝説の公演が存在する。当時活動していたあるナンセンス劇団(「オハヨウのムスメ」)での出来事だ。作・演出家が開演直前まで失踪し、本番初日の開演15分前、ガムテープで補強された眼鏡をかけた主宰が、出来上がったばかりの後半50%の台本を手にして楽屋に現れた。
声も出せない客入れの真っ只中、15分間で後半の長文セリフを完全丸暗記し、ぶっつけ本番で舞台へと飛び出すキャストたち。結果的にアンケートには罵詈雑言と「星1」が並んだが、この悪夢のような修羅場を乗り越えたことで、小手は「これ以上の恐怖は舞台上に存在しない。もう何が起きても怖くない」という無敵の舞台度胸を獲得するに至ったのである。
次回は「インナーチャイルド結成、そして演出用語『コテる』が導いた10年の迷路と『真田丸』への奇跡」
学生演劇の修羅場を経て、自らの劇団innerchildを旗揚げした小手伸也。劇団☆新感線やNODA・MAPへの客演で生まれた演出用語「コテる」の呪縛と、大河ドラマ『真田丸』への奇跡的な抜擢秘話に迫る。
【動画出典】CoRich舞台芸術!チャンネル『【劇トクッ!】小手伸也、登場!②』
URL: http://www.youtube.com/watch?v=Nj8h0SGHRjc