7月29日(水)より東京・テアトルBONBONを皮切りに、Mrs.fictions presents『15 Minutes Made 東京/福岡』が開幕する。Mrs.fictions が2007年の旗揚げから継続的に開催している代表的なオムニバスイベントである『15 Minutes Made』。3年ぶりの開催となる『15 Minutes Made 東京/福岡』では、東京と福岡の二都市でMrs.fictions、ギンギラ太陽’s、コンプソンズ、ザ・クズレルズ、システム個人、melomysの6団体の珠玉の15分の短編作品が上演される。旗揚げの2007年から継続して開催してきた、“15 mm(ジュウゴミリ)”の愛称で親しまれる『15 Minutes Made』という企画への思い、 “15mm”に光る演劇的美学、そして、20年近くの団体活動を経て抱く展望とは? Mrs.fictions主宰の今村圭佑とメンバーの岡野康弘、中嶋康太に改めて話を聞いた。

「人と人は出会わなくてはならない」理念とルーツが込められた15分
―Mrs.fictions は2007年の旗揚げから20年近く、この『15 Minutes Made』という公演を継続して上演され続けてこられました。過去18公演を経て、まもなく『15 Minutes Made 東京/福岡』の二都市ツアーが開幕しますが、15分という上演時間にはどんな美学があるのでしょうか?
今村 20分ではなく15分というのが、実は肝だったりするんです。旗揚げ当初は7団体でやっていて、1団体20分位あると、短編作品として割としっかり観せられはするのですが、それが7作品並ぶと、ちょっとお客さんにも疲れが出ちゃうな、と思って。だから、15分がちょうどいいのではないかという話になり、やってみたら、短編として見せたいものを見せられるギリギリの時間として成立した感触があって、これだ!と思ったんですよね。
中嶋 作家の立場からお話すると、僕は大学で劇作コースを専攻していたのですが、人一倍書く量が少なかったんです。課題のテーマに沿って書く時も周りは何十ページと書いているところ自分は毎回数ページにしかならなくて、でも一応作品にはなっているし、割と褒めてもらえるし、じゃあ別に短くてもいいかと思っていたんです。そんな中で、『15 Minutes Made』とともにMrs.fictions旗揚げの話があって、短編なら自分が力になれる余地があるかな、と思ったんです。自分が特殊なタイプであると知ったのはその後でした。どちらかというと、削る作業に困っている作家さんが多いという話を聞いて驚いたんですよ。僕はそもそも削る作業をあまりしないので、「テキレジ」っていう言葉も長らく知りませんでした(笑)。

岡野 作品によってやることが全く違うというのはもちろんあると思うんですけど、根本的なところは長編でも短編でも変わらないんじゃないかと思うんですよね。書くうえでの労力もそうだと思うんですけど。
中嶋 そうですね。短編よりも長編を書く方が大変じゃないかとか、いやいや逆じゃないか、とか言われることがあるんですが、自分としては掛かる労力はあまり変わらないなという印象です。
岡野 俳優も実はそんなに変わらなくて、2時間だから大変、15分だから楽ってことは全くないですね。もちろん、セリフを覚える時間とか物理的な違いはあるんですけど、1つの役として舞台に立つうえでは、15分も90分も120分も大変さは変わらない。例えば、1日2ステで、舞台上に立っている時間が合計30分だったとしても、2時間の公演2本やったのと同じぐらい疲れたりするんですよね。

今村 そうなんですよ! 同じぐらい疲れるんです。この企画をひとつの団体が主催するということ自体もすごくハイカロリーなことですし。ただ、15分しかないから「無駄なことをやっている時間がない」というのは、特徴としてありますよね。長編だったら、団体の魅力をその尺に全部注げばいいんですけど、15分ってなると、「自分たちの売りはここである」、「これを見てください」っていうのを凝縮して出さなくちゃならない。だからこそ面白いんじゃないかと思います。
岡野 それが6団体分並ぶというのがすごく贅沢ですよね。
今村 そうそう。これまで18公演くらいやってきた中で自信を持って言えるのは「無駄のない玉のような15分が6個並んでいる」ということ。作品を作ってくださる参加団体のおかげなのですが、そこが『15 Minutes Made東京/福岡』の特徴であり、魅力であると思います。
中嶋 当然15分であるがゆえの難しさもあるんですけど、ある種諦めがつくというか、1つのアイデアや売りみたいなものしか見せる時間がないので、そういう意味では、寄り道をせずに潔く考えて作品づくりができるというメリットもあります。
今村 15分であること以外にテーマは特に設けていないので何をやってもいいんですよ。その分、外側のキービジュアルとか美術とかのコンセプトはなるべく先行してお伝えしたいと思ってはいます。お客さんも参加団体もそこで繋がれるように設けているっていう感じですね。

「ワンマン」ばかりの演劇シーンに「対バン」というカルチャーを
―こうして成り立ちからお話を聞いていると、『15 Minutes Made』という企画がいかに刺激的な場であるかということを痛感します。今でこそ団体を横断した公演は見かけることがありますが、当時は決して多くなかったでしょうし、一つの団体が主催し、それも継続して行うとなれば尚更貴重な企画だと感じます。
中嶋 全然自分たちが元祖だとか主張したいわけではないんですけど、当時団体が主催となってこうしたイベント公演を打つということはたしかに珍しかったですよね。
岡野 そうですね。劇場主催とか演劇祭のようなイベント的なショーケースはあったりしましたけどね。
今村 思いついた時はもっと褒めてもらえるとかと思ったけど、別にそんなことはなかったですね。
岡野・中嶋 あははは!

今村 あと、もっと遡ると、団体同士が全然仲良くないっていう時代がそもそもありましたしね。僕たちはそこからは脱した世代ではあるんですけど、それでも「単独でそれぞれが公演を打つ」というのが演劇シーンの基本的なところではあるわけですよね。でも、単独で公演を打っていくことの限界もあるんじゃないか、みたいなこともちょっと思ったりして…。例えば、バンドだったら対バンしてお客さんが色々混じり合って、その果てにワンマンライブに辿り着いたりするのに、「なぜ僕たちはワンマンばっかりやってるんだろう」と思ったり(笑)。それだと知り合いしか来ないので、なんとかそこを打破できないか、みたいなことを考えていたような気がしますね。

―たしかに、音楽ライブと比べると、演劇はだいぶ団体個々で完結している節があるかもしれません。
今村 あと、僕はナンバーガールっていうバンドが好きなんですけど、大昔にボーカルの向井秀徳さんが自分たちのシーンを作るべく、福岡で「チェルシーQ」っていうオールナイトイベントを定期的にやっていたらしいんです。僕はそれを学生の時にタワレコかなんかで配っていた無料冊子で知って…。2行くらいの情報だったんですけど、その2行に憧れがすごくあって。そこに影響を受けて『15 Minutes Made』を始めたようなところもあったので、伏線回収じゃないですけど、今回ようやく福岡に辿り着いたような気持ちもあるんですよ。
岡野 福岡は『15 Minutes Made』としてはもちろん、Mrs.fictionsとしても初上陸の地なので、すごく嬉しいですね。

中嶋 『15 Minutes Made 東京/福岡』は、福岡公演の主催である一般社団法人 街と劇場の中川實穗さんに「福岡で『15 Minutes Made』をやりませんか?」とお声がけいただいたことから企画が動き出したんですよ。2011年に大阪と東京でやったことがあったんですけど、以降ツアーはできてなかったし、せっかく福岡に行かせてもらえるなら東京でもやりたいよね、ということになり2都市でのツアー公演にさせてもらいました。
今村 ギンギラ太陽’s、コンプソンズ、ザ・クズレルズ、システム個人、melomysと地域、世代、ジャンルを横断した魅力的な団体さんが参加して下さるので、ぜひそれぞれのカラーが凝縮された15分を楽しんでいただきたいですね。
中嶋 もう一つ特徴としては、我々Mrs.fictionsが完全にホストにのみ徹するというわけではなく、やっぱり一緒に作品を提出する対等な立場としてともに公演ができることも結構大きいのかなとは思います。
岡野 それで言うと、当然自分たちが「面白い!」と思う団体さんたちに出ていただくわけですけど、そこで「Mrs.fictionsが面白くない!」なんてことになると、説得力に欠けてしまうわけですよね。だから、そういうある種のプレッシャーの中で、見劣りしないよう、「自分たちの作品を練り上げていこう」という気持ちもあります。
中嶋 基本的には負け戦になりそうなくらい面白い団体をお呼びしているからこそ、負け戦にならないようにがんばります!

年齢を重ねるようになって考える『15 Minutes Made』の在り方
―約20年間、地域や団体を横断したシリーズを継続して上演していくことはもちろん、団体そのものを続けていくことも一筋縄ではいかないと思うのですが、みなさんが活動を続けていくうえで大切にしているのはどんなことなのでしょうか?
岡野 最近つくづく感じているのは、年をとるというだけで、どうしても権威性を帯びてしまうということです。そこを自覚したうえで、いかにそこから離れられるか、ということをすごく考えるんですよね。団体を旗揚げして『15 Minutes Made』を始動させた頃はまだ20代半ばくらいだったので、若手が企画を引っ張っていくことや、同世代の面白い人たちと一緒に盛り上げることに意味があると思って取り組んでいたところがあって…。
今村 そうなんですよね。
岡野 でも、もう僕たちは若手ではなく、認めたくはないけどベテランに近くなってしまったっていうところで、企画の色がどうしても変わってきちゃうところもあると思うんです。そこを無視はできないよね、という話は結構していますよね。
今村 だから、2016年に上演したvol.15以降は実はナンバリングを付けていないんですよ。「Anniversary」とか「in 本多劇場」とかを付けて、特別な回だけやっているような感じで…。なので、今回も中川さんから「福岡でやりませんか」ってお話をいただけたことで企画が結実したところがありますよね。僕たちがどういうスタンスでこの公演を打つのがベストかっていうのを、探っているところもあって。

中嶋 自分たち的には権威とかベテランと思っていなくても、長く続けていくうえで若い世代の方がそう感じてくれていたりすることもあるんですよね。「15mmに出られるように頑張ります」みたいなことを言っていただくことが少しずつ増えて、とても有り難く思う反面、「選ぶ側」という立場になるのは、元々のコンセプトとはちょっと違うのかなと思ったりもして。
今村 フックアップ自体はすごくいいことだし、もちろんやりたい気持ちもあるんですけど、同世代間だったり、何も知らん下っ端が先輩に頼る構図だから成立していた部分も大いにあって…。そうした思いもあり、開催頻度が減ってきたっていうのは事実としてあると思うんですよ。
中嶋 企画書とかも一応全部まとめてあるので、「やりたい団体がやれるように」と思っていた時期もあったんです。拙いなりに10数年、18公演やってきたノウハウみたいなものをフリーで公開するなりして…。
今村 一方で、こんなに労力がかかることを若い世代にやらせられないな、という気持ちもあるんですよ。それこそ、バンバン儲かるんだったら引き継いだらいいと思うんですけど、全然そういうわけでもないから、おいそれと勧められないなっていう気持ちもあります。
岡野 作品を一つ作るだけでもすごく大変だからね。もちろん、やりたい人にはやってほしい、とは思っているんですけど。「もう自分たちがやる企画ではないかも」っていう話は、年齢が上がって来た段階で度々話してきたし、今も折り合いをつけられる方法を模索しているところですね。
今村 同時に、僕たちからは出ないようなアイデアを持っている団体があるかもしれないし、もっと身軽にやり続ける方向もあるのかもしれない。こうした企画を主催することが好きな人や、向いている団体もあるとは思うんです。何より、公演としてすごく面白いし、出会いも含めて素敵な瞬間に溢れた企画なので。色々赤裸々に話をしましたが、いつか若手の方がやってくれたらいいな、と。そんな純粋な思いもあります。
中嶋 まだ未見の方にも一度観てもらえたら嬉しいです。それこそ今回の『15 Minutes Made 東京/福岡』は、地域も横断して、若手からベテランまで、それぞれの強みを持った団体のパフォーマンスが見られるので、楽しんでもらえたらと思います!

取材・文/丘田ミイ子
インタビュー写真/ローチケ演劇部提供
<公演情報>
Mrs.fictions presents『15 Minutes Made 東京/福岡』


<出演団体>
ギンギラ太陽’s、コンプソンズ、ザ・クズレルズ、システム個人、melomys、Mrs.fictions
<上演作品>
・ギンギラ太陽’s『女ビルの一生』
作・演出・かぶりモノ造型:大塚ムネト
出演:宗真樹子、上田裕子、杉山英美、大塚ムネト
・コンプソンズ『ベビーカー』
作・演出:金子鈴幸
出演:大宮二郎、中尾ちひろ(おなかポンポンショー)、横手慎太郎(シンクロ少女) 制作:鈴木啓佑
・ザ・クズレルズ『真夏に崩れる』
東京公演出演:入江雅人、長田悠幸、こがめみく、小島あやめ、鈴木麻美、高木稟、田尻祥子、武田裕子、中島克枝、野澤爽子、巻島みのり、吉田ヤギ
福岡公演出演:入江雅人、長田悠幸、こがめみく、高木稟、中島克枝、野澤爽子、吉田ヤギ
・システム個人『ちょっと良いタオルとか』
作・演出:林泰製(システム個人)
出演:帯金ゆかり、中村亮太(転転飯店)、藤本悠希(劇団肋骨蜜柑同好会)
・melomys『THE DAY 1041』
作・出演:田崎小春 演出:田崎小春・melomys
音楽:na/no 映像:文目卓弥 ドラマトゥルク:内田龍太郎、野村玲央
・Mrs.fictions『ミセスフィクションズの恋しくて』
作・演出:中嶋康太(Mrs.fictions)
出演:今村圭佑(Mrs.fictions)、岡野康弘(Mrs.fictions)、米田ひかり
<会場>
東京公演:テアトルBONBON
福岡公演:福岡市民ホール 小ホール
<日程>
東京公演:2026年7月29日(水)~8月2日(日) ・全9ステージ
7月29日(水) 19:00
7月30日(木) 15:30/19:30
7月31日(金) 15:30/19:30
8月1日(土) 11:30/15:30/19:30
8月2日(日) 13:00
福岡公演:2026年8月8日(土)~8月11日(火・祝) ・全5ステージ
8月8日(土) 18:00
8月9日(日) 13:00/18:00
8月10日(月) 19:00
8月11日(火祝)13:00
※受付開始は開演の45分前、開場は開演の30分前
※開場時には事前精算チケットのお客様からのご入場となります。開場後は事前精算・当日精算チケット共にご来場順のご案内となります。
※高校生以下(枚数限定・要学生証)チケットをご購入・ご予約のお客さまは、当日受付にて学生証をご提示ください。
※当日精算にてご予約のお客さまは、開演5分前までにご来場頂けない場合キャンセル扱いとなる場合がございます。
※未就学児の入場はご遠慮いただいております。
※車いすをご利用のお客さまは、お手数ですがご購入・ご予約前に各公演お問い合わせ先メールアドレスまでお問い合わせください。
※福岡公演のみ、終演後に「おわりの会」を行います。
おわりの会とは…終演後、時間を気にせずアンケートに答えて欲しい、また劇場空間をゆったり味わってほしい、という思いから発案した企画です。15分程度のトークセッションを行う予定です。
<チケット>
東京公演:前売5,000円/当日5,500円
※高校生以下1,500円(枚数限定・要学生証)
※東京公演の高校生以下チケットはCorich!チケットのみの扱いとなります。
福岡公演:前売4,300円/当日4,800円
※高校生以下1,500円(枚数限定・要学生証)
※日時指定・全席自由
ローチケ:https://l-tike.com/play/mevent/?mid=784960
Corichチケット!(当日精算)
東京公演:https://ticket.corich.jp/apply/467713/
福岡公演:https://ticket.corich.jp/apply/467714/
<スタッフ>
舞台美術:三井優子
照明:黒太剛亮(黒猿)、佐藤優衣、菅本千尋(演劇空間ロッカクナット)
音響:斎藤裕喜(Québec)、宇田川大介
映像:高柳蓉季
舞台監督:水澤桃花(箱馬研究所)
総合演出:Mrs.fictions
宣伝美術:西日
宣伝写真:山岸和人
フライヤーモデル:大宮二郎(コンプソンズ)、田崎小春(melomys)
当日運営:髙橋知美(キューズリンク)、宮野風紗音(かるがも団地)
東京公演主催・制作:Mrs.fictions
福岡公演主催:一般社団法人 街と劇場
公式HP:https://www.mrsfictions.com/next_2026_15mm_tokyo-fukuoka.html
<お問い合わせ>
東京公演 Mrs.fictions
E-MAIL info@mrsfictions.com
HP https://www.mrsfictions.com
福岡公演 一般社団法人 街と劇場
E-MAIL info@machitogekijou.com
HP https://lit.link/machitogekijou