■審査基準
最終審査対象となった10作品について下記の6項目を[5段階]で評価し、審査員5名の採点を合計して平均値を算出しました。
1 | 脚本 (歌詞・テキスト) |
2 | 演出 |
3 | 出演者 |
4 | スタッフワーク(美術・照明・音響・衣装など) |
5 | 制作・運営 |
6 | 家族・恋人・友人同伴のお薦め度 |
■審査の流れ
今年度はやむを得ない理由により、審査員5名中の1名が上演に伺えなかった公演が2つありました。それぞれ代理人が鑑賞し、鑑賞できなかった審査員は代理人から情報提供を受けた上で会議に臨みました。
※代理人が鑑賞することは事前に対象団体にお伝えしました。全審査員が10作品を鑑賞できない場合があることは、応募時にご了承いただいております。
https://stage.corich.jp/festival2024/#02
まず各審査員がグランプリに推薦したい3作品を挙げ、推薦理由を述べました。この時点で「なかでもグランプリに推したい作品」として2作品に票が集まりました。さらに各審査員の推薦理由を受け、得票数が多かった作品が全員の同意をもってグランプリを決定しました。
準グランプリ選定にあたっては、10団体を通して「作品の上演のみでなく企画や上演形態として特徴のある作品が複数あったこと」、また「各作品のテーマや演技体などについてもほかの審査員の意見を聞きたいという声があがったこと」を受け、各作品を深掘りし、丁寧に判断していこうという方向性となりました。そのため、準グランプリ・制作賞の両方を視野にいれながら、各審査員の考えを幅広い角度から出し合うことに多くの時間を要しました。
準グランプリの決定後は、あらためて各対象団体における制作の役割を共有したのち、制作賞を確定しました。
この時点で約3時間半が経過しました。
次に演技賞について、各審査員からの推薦により19名の名前があがりました。CoRich舞台芸術まつり!では演技賞は個人を称える賞として設けられていますが、「相手役と相互に良い影響を与えていた場合」や「演技力のみに依らない俳優の役割」など、作品における出演者の関係性や存在について考える声が複数ありました。また、最大5名という枠に対して複数の候補者が拮抗しました。そのため、単に得票数が多かった順に決めていくのではなく、まずは各出演者・役柄の作品における影響など様々な視点から、個々の候補者について審査員の見解を交わしました。本催事の演技賞においてなにを重要視するかにおいても、各審査員の考えをあらためて共有しました。
最終的に、どの5名に選出するかの投票を行い、演技賞を決定しました。
※最多クチコミ賞の選出はCoRich運営事務局が担当しました。
審査時間はトータル4時間半でした。
今年度は、新型コロナウイルス感染症の舞台芸術業界への影響をうけ、各賞の賞金金額や応募条件など体制を変更して実施しました。そのため審査内では、舞台芸術業界への本催事の存在について審査員個々の思いに言及する場面もありました。各審査員のコメントは、ページ最下部の「審査を終えて」をご参照ください。
趣向には、賞金50万円・次回公演のバナー掲出権(最長3週間)・次回公演の「CoRichチケット!無料利用権」および「チラシ広告+メルマガ掲載20日間」が贈呈されます。
バナー掲出期間:2024年末までに初日を迎える次回公演の、初日1週間前から千秋楽まで(最長3週間)。
「CoRichチケット!無料利用権」および「チラシ広告+メルマガ掲載20日間」も同公演にてご利用ください。
※審査員がグランプリに推薦したい3作品を投票し、複数票を獲得した4作品はこちらです。
(上演順)
・ながめくらしつ『この世界は、だれのもの』
・コトリ会議『雨降りのヌエ』
・ブルーエゴナク『波間』
・趣向『べつのほしにいくまえに』
審査対象公演と、制作・企画・運営をふくめた上演作品の総合力が高く評価されました。
ながめくらしつ(東京都)
作品タイトル「この世界は、だれのもの」
南極ゴジラ(東京都)
作品タイトル「(あたらしい)ジュラシックパーク」
※現地に伺えない關審査員の代わりに代理人が鑑賞したため、關審査員の評価は空欄です。
ポケット企画(北海道)
作品タイトル「さるヒト、いるヒト、くる」
趣向(神奈川)
作品タイトル「べつのほしにいくまえに」
※現地に伺えない關審査員の代わりに代理人が鑑賞したため、關審査員の評価は空欄です。
演技賞を受賞されたのは5名の方々です。おめでとうございます! (あいうえお順・敬称略)
梅村綾子(趣向「べつのほしにいくまえに」に出演)
審査員より(深沢)
現行の結婚制度に馴染めない面々のために意見交換会を主催している『べつのほしにいくまえに』のコーデリアは、父親に溺愛され望まない結婚をした過去に苛まれている。理知的で常に相手への敬意を忘れないジャーナリストというハレの顔と、同性のパートナーとその子ども、果てはパートナーが知り合ったホームレスの面倒までみる度量の広いケの顔を演じ分けた梅村綾子は、作中で要のような存在であった。俳優としての幅の広さを以て役の二面性を演じ分けることに成功していた。
小口ふみか(カリンカ「エアスイミング」に出演)
審査員より(松岡)
2人芝居であるカリンカ『エアスイミング』の演技を分けて捉えることは相当に難しく、その評価は本来一体的に行うべきではないかと言う意見は審査会でも頻出した。一方で演技賞は個人に渡す賞であるから、その一体的な演技を強引に引き離して考えねばならぬ悲劇をご想像頂きたい。その上で小口ふみかの演技は献身的で、本公演のプロデューサーも務める橘花梨のパワーを受け切った上で役の表現としていた。小口演じるドーラが不安定になっていく中盤から終盤にかけての揺らぎは、舞台そのものの揺らぎとして表現されていたと思う。演技賞にふさわしい熱演であったと思います。
端栞里(南極ゴジラ「(あたらしい)ジュラシックパーク」に出演)
審査員より(河野)
独特な世界観設定。個性的なキャラクター達。そのなかにあって、うまくかなさを集中力を途切れさせず一貫して演じていました。だからこそ、物語は大きく変化していくのに、作品としては湾田の少しの変化を大切なステップとして感じられ、この先も続く人生とその物語に期待してしまう。
失敗もするし、逃げ出すし、ずるさもある。それでも応援したくなる人物であったのは、役に一本筋が通り、それを懸命に演じたからだと思います。観客を引き込んでいく作品の核となっていました。
また、湾田の悩みや弱さや素直さを丁寧に積み重ねていくことで、他の登場人物たちの個性や魅力や役の強さも際立つ。他の役との良い相乗効果も構築されていました。
目黒宏次郎(ながめくらしつ「この世界は、だれのもの」に出演)
審査員より(關)
ながめくらしつ『この世界は、誰のもの』では総じて演者たちの技術が高かった。目黒宏次郎はその中で主にダンス部分を担当しており、その表現力には目を奪われた。「他者への関心」をテーマとする本作において、目黒のパフォーマンスは他者を前にして誰もが感じた経験があるであろう孤独や渇望、暴力性や慈愛などの感情をアンビバレントに描いていた。出演者全員のスキルが高く、また基本的にペアあるいはそれ以上でのパートが多かったため、目黒だけを演技賞に選出することは個人的にやや迷ったのだが、ソロとしての技術に加えて他のメンバーのサポート的パフォーマンスにも優れていたため、本賞を授与するのに相応しいと判断した。
和田華子(趣向「べつのほしにいくまえに」に出演)
審査員より(丘田)
“互助・共助のための結婚法”が施行された世界を舞台に人々の多様な関わりや社会的ケア問題を描いた『べつのほしにいくまえに』。その中で、人間の孤独や葛藤、ひいては世界の揺らぎを鳥瞰するように見渡していたのが和田華子さん演じるロビングッドフェローでした。達観にも諦観にも似た眼差しで世界を見つめる横顔や時にいたずらっぽく客席へと送り目配せ。現実と非現実を往来する難解な役どころを軽快な身のこなしと独特のチャームを以て体現するその姿にたちまち心を奪われました。目に見える舞台上での表現のみならず、軽快かつ安全であるために取り組まれたであろうフィジカルの鍛錬、自身の内側からチャームを紡ぎ出すアプローチ、見えづらいその過程の時間にも心からの喝采を送ります。
カンパニーの公演において、同じ北海道内で活動するほかの団体の同時上演をおこない、公演や創作活動を拡張する試みが注目されました。また、北海道での創作活動についてトークイベントを実施したりと、作品に関連のあるトークテーマであり、かつ、地元での演劇創作や劇団活動の未来を見据えた姿勢など、一段高いレイヤーを意識して北海道の演劇創作のハブとして活動している様子が力強く評価されました。それらを、団体主宰者や制作担当者だけでなく、劇団員が共有し運営ているところも高評価でした。
『エアスイミング』の「観てきた!」クチコミ数は34件でした(2024年7月9日時点)。
2024/2/28(水) ~ 2024/3/3(日)の公演について、こりっち審査員のクチコミ評も含めた投稿数を計算しました。
今回のまつりでは個性溢れる61作品の応募作品の内、まつりの最終審査対象として観劇した10作品をはじめ、個人的に観劇した12作品を加えて合計で22作品を観劇することができました。新たな団体との出会いにも恵まれ、いち観客としても豊かな春を過ごさせていただきました。まずは、本まつりへのご参加と最終審査対象作の全てが無事公演を完走されたことに改めて感謝と喜びを申し上げます。
今年から審査概要が一部変わり、再演義務とその支援として賞金をお送りする仕組みが解かれました。制約がなくなったことで団体の負担が軽減されたことや、(そのことも影響してか)昨年より応募数が増えたことを意義深く感じる一方、「再演されることの価値」という指針がなくなったことは大きく、催しの在り方や評価における視点をすり合わせる難しさを感じたのも正直なところでした。「作品の完成度の高さ」と「団体への今後の期待」をどういう形で、どんなバランスで見つめるのかということについては何度も議論になり、その都度意見を出し合って作品と団体の成果を紐解いていくことに時間を費やしました。対岸の意見に寄り添いながらも忌憚なき考えを共有して下さった他4名の審査員の皆様にもこの場を借りてお礼申し上げます。
そんな今年の審査で最も大きな特徴として挙げられるのは、グランプリの決定が比較的早かったこと、そして、グランプリ以外の賞の決定に史上最長の時間を要したことでした。
趣向『べつのほしにいくまえに』は、最初の投票から観劇をした審査員全員が候補票を投じており、その後、主題の深度や登場人物のキャラクター設定における議論を経て、全員が納得した上でグランプリと決定することができました。
一方で、準グランプリと制作賞と演技賞については、想定していたよりも審査時間を要しました。作品や団体における何のどこまでを「制作力」と見なし「作品力」と見なすのか、個人賞である演技賞において「二人芝居」という形式をどう扱うのかなどの議論を重ね、極めて慎重にどの団体や個人に賞をお送りするのかを考え抜いた審査であったと思います。以下がその詳細となります。
・準グランプリ/制作賞
半数以上の票を獲得していたコトリ会議『雨降りのヌエ』を準グランプリとするのか、制作賞とするのかの議論が持ち上がり、最終的には、「制作を含むチーム一丸でロングラン公演を叶えた企画力」や「作品全体が外部へと拡げたムーブメント」を評価する形で準グランプリに決定しました。
複数の審査員から推薦の声が挙がり、コトリ会議と拮抗した団体がブルーエゴナクであったことも明記しておきたいと思います。「自死」というセンシティブな題材に真摯に向き合いながら、唯一無二の劇空間を創り上げた素晴らしい演劇でした。
制作賞は、コトリ会議とともに名前が挙がったポケット企画に決定しました。北海道内他地域の若手同世代の団体と積極的に関わりながら、地域での演劇の広がりの寄与する姿勢が素晴らしく、団体の今後の展開にも期待を寄せたいと感じました。
・演技賞
俳優が自身の役割をどのように全うし、作品に影響を与えていたかを話し合う中で、共演者とともに起こす反応の濃密さを個人賞である演技賞にどう意味づけするかについて意見が分かれました。具体的には、二人芝居であったカリンカの出演者2名が最初の段階でともに半数以上の票を獲得していたことから、そのことをどう捉えるかが議論となりました。「異例で二人一組での受賞にするのはどうか」という声も複数挙がりましたが、個人賞である演技賞に容易に例外を設けることが事務局の判断として相応しいと言い切れないこともあり、それら議論を経た最終投票をもとに小口ふみかさん1名に決定を致しました。しかしながら、私の意向としては「精神の崩壊」という難解な心理的局面をそれぞれの身体性を以て貫いた橘さんと小口さんはともに演技賞に相応しいと感じ、初回投票から最終投票までその姿勢を崩さなかったこともここに示しておきたいと思います。俳優としての壮大な心のたたかいを登場人物たちに流れる緊迫や狂気へと繋げた素晴らしい挑戦でした。
私が審査内で名前を挙げた団体と個人についても改めて明記しておきたいと思います。
趣向『べつのほしにいくまえに』、カリンカ『エアスミング』、ブルーエゴナク『波間』。制作賞にコトリ会議、ルサンチカ、ポケット企画。演技賞に橘花梨さん、小口ふみかさん(ともにカリンカ)、和田華子さん(趣向)、松井壮大さん(早坂彩 トレモロ)、大石英史さん(ブルーエゴナク)、瀬安勇志さん(南極ゴジラ)を挙げました。名前を挙げなかった方の中にもその表現力に心を奪われた瞬間は多くありました。俳優の皆様のご健闘を心より激励したいと思います。
これは昨年から引き続き感じていることであり、繰り返しお伝えもしていきたいのですが、審査員とてそれぞれの価値観や感受性を持たざるをえない人間が、たった5人で一つのグランプリやその他の賞を決めること。その評価に臨むこと。そのことについては、審査員一人ひとりが逐一自身の権威性を自覚するとともに、時折、立ち止まったり、振り返ったりしながら慎重に進めていく必要があると痛感しています。何かを見落としてはいないか。何かを取りこぼしてはいないか。そんな気持ちは一次審査から今日に至るまでずっと私の中にあり、他の審査員の方も同様の気持ちであったのではないかと思います。そんな中で昨年同様に私の視点の支えとなったのは、客席のムード、つまり、観客の方の存在や反応でした。前の方がどんな姿勢で舞台を見つめていたか、隣の方がどんな表情で劇場を去っていたか、CoRich舞台芸術まつり!は6つの評価項目のもと評価をしていますが、同等の評価に値する作品が並んだ時の一つの道標として、私個人としてはそういったことを一部参考にもさせていただきました。
舞台芸術活動の持続を巡る様々な困難がある中で、カンパニーを旗揚げし、俳優やスタッフとしての仕事を続け、人の心に残る演劇を発表することは決して容易なことではありません。近年の演劇メディアの取り上げる団体や作品に偏りがあること、商業演劇の割合が著しく目立つこと。演劇に携わるライターとしてはそれら状況に疑問や危機感を覚えているのも事実です。そんな中で、舞台芸術の今を見つめ続けるこの催しが今後も長く続き、自分たちにしかできない創作と表現に挑む団体や作家や俳優に当てられるべき光が当てられること、語られるべき言葉が語られることを切に願います。そして、その重なりこそが舞台芸術全体の豊かな未来と可能性の拡張に繋がっていくことを信じています。改めましてこの度はCoRich舞台芸術まつり!へのご参加と応援をありがとうございました。観客の方のクチコミやSNSでの反応を拝読するのも楽しみの一つでした。ご注目をしてくださった全ての方に感謝を申し上げます。
2024年から催事(CoRich舞台芸術まつり!)の概要が変わり、再演支援という形ではなくなりました。新型コロナウイルスの蔓延により以前と比べて継続的な公演が厳しくなったという背景をおもに受けてのことだそうですが、これが、とても頭を悩ませました。過去の開催時は、「団体の将来のビジョン」が大事にされていたからです。
──催事の対象である「舞台芸術」とは、「小劇場」とはなんだったのか。
──これからの「公演」とは、「カンパニー」とはなんなのか。
あらためて自分に問い直し、ほかの審査員に問いかけ、広く舞台芸術について考える機会でもありました。
2月の第一次審査(ネット審査)時の話に遡ります。
さまざまな環境で、さまざまな状況で、さまざまな目的や思いで活動されている団体からの応募が集まりました。場所が違えば、それだけで創作の条件は異なります。私はCoRich舞台芸術まつり!においては、過去の開催時も、今年の第一次審査でも、各団体が自分たちの団体や公演をどうとらえ、どんな背景のもと集まり、上演をしているかに着目していました。そのため、私が候補にあげた団体は、小劇場公演やダンス公演などの枠にはまらない団体も多くありました。
それらは結果的に最終審査まで通過しませんでしたが、この数年、私自身は「舞台芸術」というものの概念そのものが変化してきていることを強く感じています。きっと、舞台芸術の、小劇場の、劇団やダンスカンパニーの、表現の境目はもっともっと曖昧になっていく。そんな予感のなかで今回のCoRich舞台芸術まつり!2024春をむかえ、さまざまな団体が応募をしてきてくださったことが、とても嬉しくありました。数年後もCoRich舞台芸術まつり!が続いていたら、今とは違う色の顔ぶれが最終10団体に並ぶ未来となっているかもしれません。
最終10団体の観劇・審査にあたっては、基本的には対象作品の上演における評価を基準にするという催事ルールをもって臨みました。
けれども、①各団体の活動や作品や目指すところが多種多様であること。②企画そのものの背景を排除して考えるわけにはいかない公演が多くあったこと。③冒頭に書いた「再演支援ではない」ということ。この3点を踏まえて、上演作品そのものの舞台公演としての強度、対象公演における団体の目指す作品・上演の方向性に対しての実行力(上演のクオリティ)を重視し、グランプリ審査ではコトリ会議・ブルーエゴナク・趣向の3団体(※上演順)を挙げました。
なかでも制作賞についてはとても迷いました。制作という役割は幅広く、かつ外側からは見えないことも多くあります。また、10団体それぞれが、ツアー公演、滞在制作、他劇団とのコラボレーション、野外劇、コロナの影響による公演中止からの再演など…形態がさまざまでした。その公演形態によって成すべきことや力点を置くところも変わるため、なにをもって制作賞とするのか、その判断はとても難しかったです。
そのうえで私は、対象作品の上演そのものにさらなる広がりを持たせ、観客と作品の懸け橋となり、応募時に掲げていた意気込みを力強く実行していたコトリ会議を推しました。結果としてコトリ会議は準グランプリですが、この結果には、制作力・企画力も含めた公演としてまた団体としての総合的な評価が高かったのだと納得しています。
制作賞を受賞されたポケット企画は、団体として長い視点で丁寧な公演をおこなっているだけでなく、他劇団への新作依頼また同時上演やトークイベントなど地域の演劇の将来性を見据えた視点と企画に力強さを感じました。
演技賞については人によって考え方がわかれるところだと思いますが、私としては、その作品を出演者としてより発展させ、作品の強度と精度を高めたと思われる11名の名前を挙げました。
最後に、どの公演の客席にも熱気と期待感があり、ほぼ満席の上演も少なくなかったことが思い返されます。どこの地域でも快く受け入れてくださりありがとうございました。その団体が選んだ公演場所で観劇することで、見えることがあります。CoRich舞台芸術まつり!の「審査員が全国どこでも観に行きます」というスタイルが今後も続くことを願っています。
今回は不測の事態を含め2団体も見ることができず、審査員としての務めを果たし切れなかったことが何よりも遺憾である。誠に面目なく、参加団体の方に心よりお詫び申し上げる。
恐らく他の審査員も同様のコメントを寄せると推測されるが、今回の審査は審査基準について、そしてCoRich舞台芸術まつり!に期待される社会的影響力について、これまで以上に考えさせられた。大賞受賞作品の再演を条件としないという変更もその発端であるが、それだけではなく、準グランプリを決定する際の議論もこのことについて考えることとなった。すなわち、本グランプリに「相応しい」とはどういうものか、という問いである。CoRich運営団体の意図は元より伝えられていたし、各審査員で見るポイントは違っている(だから複数の審査員がいる意義がある)が、それを踏まえた上で、賞の授与は「応援」なのか「評価」なのか、という問いが持ち上がったのである。
もちろん、今回受賞した団体、作品、個人はその成果が評価されたのであり、その結果は疑義を挟まない。ただこの問いは、評価基準が変化したCoRich舞台芸術まつり!の今後においても問われ続けるものであろうし、さらにはCoRich舞台芸術まつり!だけではなく、若手や小劇場を取り上げる賞やコンテストにおいても重要となるだろう。
ニューノーマル下となった今年の催事は全体を通して活気のあるものだった。どの公演にも多くの観客が詰めかけ舞台に熱い視線を浴びせていた。つい数年前は日常の光景であった検温や消毒、マスク着用義務などが見られなくなり、終演後に関係者に対面できるなど、一観客としては2020年以前に「観劇」は戻りつつある印象を受けている。
そして今回のグランプリ会議は難航した。各審査員によって票がバラけたというよりは、僅差の団体や個人への授賞が妥当かどうか仔細に渡る議論が繰り広げられた。
グランプリには上演順に1)ながめくらしつ『この世界は、だれのもの』、2)コトリ会議『雨降りのヌエ』、3)趣向『べつのほしにいくまえに』を推薦した。1)は大道芸とコンテンポラリーダンスを融合させたしなやかな身体と、静謐かつ情熱的な作品世界を、2)は充実した連作短篇の上演と、1ヶ月の長期公演の合間に多様なイベントを設けた制作運営、3)は議論を呼ぶ作劇と演技、演出の妙で2時間半の長尺に渡り充実した上演を成功させた点を評価した。
趣向『べつのほしにいくまえに』は割合早くグランプリに決定したが、準グランプリで俎上にあがったブルーエゴナク『波間』の評価が各審査員で割れることになった。私は当初、さまざまな舞台芸術の手法を融合させ独特の作品世界を形作った『波間』に傾きかけたが、観客に良質な作品を届けるにとどまらない、ほかでは得難い観劇体験を多くの観客に提供した『雨降りのヌエ』に最終的に票を投じた。
また演技賞の議論はさらに白熱し、各審査員の演技の評価軸が議論に上がることにもなった。これまでの経験に鑑みれば各審査員の票はバラけがちであり、必ずしも一人の出演者に票が集中することはなく、さりとて得票数が高かった順に選出されたこともない。得票数が少なくても一人ひとりについて議論を重ねた結果と思っていただければ幸いである。
末尾になったが参加団体と関係各位に深くお礼申し上げる。
まずは10団体全ての作品が無事に上演出来たということと、無事に全てを観劇することが出来たことに安堵しています。ご参加頂いた全ての団体及び関係者に感謝申し上げます。
CoRich舞台芸術まつり!の審査に2年続けての参加となり、昨年以上に多様な作品を同じ土俵に上げて評価、審査することの難しさを感じています。テーマに対するアプローチも、表現様式もどんどん多様に、個人的に、あるいは横断的になっている作品たちの中で、相対的に評価することは暗中模索です。舞台芸術作品を選考、審査するということは、個別演目に対する評価をはある部分においてそれぞれ異なる評価軸を持たざるを得ないにも関わらず、比較して賞の授与を決めるという行為について、これで良いのか、こっちの側面から観るとこちらの方が良いのではと、僕自身悩みながら続けています。それでもCoRich舞台芸術まつり!を含めたあらゆる枠組みは表現の場を、創作環境を担保して行くための不断の道のりの一助になるのだと信じて取り組んでいます。このまつりに参加して頂いた団体や個人が、表現を続けたいと想う限り続けられる環境となるように、一緒に作っていければと思います。
たくさんのご応募をお待ちしております!