芝居屋風雷紡 第十廻公演
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夜が更ける。
庚申待の夜が更ける。
庚申待を知っとるか?
人間の身体の中には三尸(さんし)の虫っちゅうのがいてな。そいつが庚申の日に天に昇って、天帝にその人がした悪さを言いつけるっちゅう。
だから今夜は寝てはなんねぇ。
一晩中起きて、三尸の虫が昇っていけねえようにするだ。
鉱毒被害と強制破壊ですでに廃村に等しい谷中村。
村で唯一家屋の形を残しているのが、この神社だ。
神社は唯一村民たちの集いの場でもある。
60日に一度の庚申待の日には、谷中村にへばりつくようにしてなんとかその日を過ごしている残留民も、村を立ち退かざるをえなかった旧村民たちも、みんなが集まってくる。
庚申待の夜は眠っちゃなんねぇ。
一晩中三尸の虫を見張ってねぇといけねえだ。
見ざる聞かざる言わざる
あの夜俺たちがかぶってしまったこの面はどうしたらはずせるんだろう。
明治。
近代化されていく世の中の激流に飲まれ、沈められた一つの村の、お祭りの夜のお話。
団体
風雷紡
フウライボウ
(千葉県)