
#456789の舞台
とよた演劇祭
豊田市民文化会館(愛知県)
2020/11/21 (土) ~ 2020/11/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/21 (土)
人類がその個性として 1677万種のコードで識別される "色" を生まれ持ち… 色相における反対色を持つ者同士は… 触れ合うだけで物理的な危険が及んでしまう分断社会。
星新一を彷彿とさせる… 日常にSFを滑り込ませた様な設定にまず引き込まれる。そして、それに対する人と社会の在り様が…しっかりと「現実」を暗喩し…シニカルな風味になっていることもまた然り。上質なショートショートの佇まいでした。
親から子へと繋がっていく物語構成も… 人の想いと時の流れの重奏な響きを作り出していて、メッセージに深みを添えていましたね。
色というモチーフを反映した… シンプルだけど印象的な衣装に… それを味付けする様々な効果。映像を照明の様に投影し… 光・水・波紋といったイメージで彩る演出も眺めていて心地よかった。
そして本作の象徴とも言える「赤い海に青い夕陽」の絵画… それそのものは舞台上には現れませんが、その絵画を前にして驚きに包まれるソラとアサヒ… その2人の少女のえも言われぬ表情は… 本当に見事にその感動を表していて素敵でした…とても好きなシーン。
彼女たちが眺めているその絵画の素晴らしさを… 見事にその表情に写し取っていて、観る者にそのまま伝えてくれていた感じでした。

バイバイリバティ・レチタティーヴォ
今日もミルクがこぼれそう
愛知県一宮市愛知真和学園 大成中学・高等学校 体育館(愛知県)
2020/11/21 (土) ~ 2020/11/23 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/21 (土)
とあるボーリング場で巻き起こる… 狂想曲が如き波乱に次ぐ波乱… いやVR波乱?(笑)
あたかも芝居に飢えた演劇人どものエチュード主導権争い勃発な感じでもあり… まさか…この剛腕力技な展開を2時間続けようとは(笑)、そしてそれで飽きさせなかったのも 凄いよ。様々なパロディを眺める感触も楽しく… そこから不意に突き落としてくる終盤の落差が見応えありました。
弄られ王いばさんの活躍と須原女史の華麗な元ヤン振りは必見。加川さんの憑依的演技も美味しい。

けむりのゆううつ
劇団芝居屋かいとうらんま
御浪町ホール(岐阜県)
2020/11/20 (金) ~ 2020/11/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/20 (金)
想い人達の“逢いたい想い“が… “逢えない社会事情“に翻弄される悲恋の名作「八百屋お七」を… コロナ禍での想いも込めて大胆アレンジ。禍難の愛のみならず… 周囲が作り出す「身勝手な真実」にも比重を置き、社会風刺としても刺さる。
ネタバレBOXに続く

OKiNaのキ
双身機関
道徳ハウス(愛知県)
2020/11/14 (土) ~ 2020/11/15 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/14 (土)
このコロナ禍にあって、日本の伝統文化に強い影響を受ける双身機関が疫病封じの流れを汲んで、まさしく神事そのものの想いと風合いをもって本公演のカタチとしたのは自然の流れだったのかもしれませんね。塗香(ズコウ)や神水… 灯明に見立てた線香花火など雰囲気たっぷりで儀式の中に観客を取り込んでくれて、祈りの一部に加えてくださった。今尚…私のメモ帳からはお香の香りが立っています。
ヒトガタに想いをのせて故人を悼み、災いをイキガミの怒りと捉えて鎮め、祓う…しかしその責を徒に課すでなく、共に祈る形になってゆくのが印象的。何となく現代の価値観を汲んだアレンジなのかな…とも想像しましたが、浅学ゆえ真偽のほどは分かりません(;^_^A
舞台上の演者(?)達だけでなく、スピーカー越しに聞こえてくる声も印象的でしたが、どうもリモート出演だったようです。
声だけでなく、楽器音や… 何とも言い難い効果音(?)… キーキーと擦れる様な… 必ずしも心地良くはない音まで含まれており、伝統文化の奥深さを窺わせてくれました。

『朽ちた蔓延る』
愛知県芸術劇場
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2020/11/07 (土) ~ 2020/11/09 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/11/08 (日)
とある遺跡… 「墓宮殿」という場を遡っていく時の流れ… 現代の観光客から…宮殿の盛衰を経て… それを築いた王その人に纏わる出来事まで、様々な身分/立場の人々が時間を入り乱れつつ、9つの独白を奏でる。
観る立場からすれば、それはあたかも「遺跡」という場に漂う多様な「残留思念」を眺めるが如きで、とめどなく流れる怒濤のテキストに呑み込まれ、更には多様な趣向と演出に目を奪われるうちに… 何が何だか分からないまま終演を迎えたと言うのが率直なところ。
観劇したというよりは… 何かを体験したという感触で、まさしく自分も遺跡を訪れた観光客の一人であったのだろう。
事前に半分までしか戯曲を読んでおらず、しっかり読んだところは その場でちゃんと印象が頭に刻まれているのだか、そうでないところは… 観劇後に戯曲を改めて読んでも 舞台イメージとしっかり繋がらない体たらくで、フワッとした観後感になったのは悔やまれる。
モノローグ単発での面白味はそれぞれにある… 歴史学者の妻は印象的。
ただ それらを繋ぎ合わせて通底する何かを掴み取るには咀嚼に時間が要る。アーカイブ配信で改めて挑む必要がある感じ。でもこの歯ごたえがAAF戯曲賞公演の常やな。

かもめ
第七劇場
三重県文化会館(三重県)
2020/10/30 (金) ~ 2020/11/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/01 (日)
原作の後日談的な時系列の中、フラッシュバック的に「かもめ」のシーンが差し挟まれる構成。自らの夢の挫折と… コーチャスの自殺への自責の念で心を病み、精神病棟に隔離された独自設定の「ニーナ」を核に展開する。潤色/翻案というよりスピンオフ的な切り口で原作の中にある「弱き者への眼差し」に絞って再構成された様にも感じました。いや… のみならず、この中には… シチュエーションに合わせてか、作中10分程がチェーホフの他作「六号室」等のテキストの引用だそうで、チェーホフのこの思想のエッセンスになっている…と言えるのかもしれません。
続きはネタバレBOXへ

頼朝の死
試験管ベビー
G/Pit(愛知県)
2020/09/26 (土) ~ 2020/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/10/02 (金)
やっぱり歌舞伎調のカッコ良さは堪んねえなぁ。しかもそこに本家には無さそうな講談ツッコミや飛び抜けた子供っぽさや現代的ジェスチャーが織り交ぜられて生じる「心地良いギャップ」の数々が試験管ベビーの名調子でした、お見事(^o^)/

君の庭
地点
穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース(愛知県)
2020/09/26 (土) ~ 2020/09/27 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/09/26 (土)
やはり独特の空気。地点なんてただでさえ独特なのに(笑)、天皇制というリスキーなテーマに加えて、更にコロナ禍対応で練られた演出が異様な空気を生み出す。
技術的にも"声"の扱いは興味深く、単なるコロナ対策を超えて踏み込んでいる辺りは演出の見事な自負だなと思う。
さて… 戯曲をぶった切って調理するのは三浦さんお手の物だけど、普通に物語が展開するのではなく、断片的な言葉の数々…その連なりと繰り返しに訳も分からず浸っているうちにボンヤリとイメージが浮かんでくる。それは… 伝わってくるというよりは台詞群を触媒に「現実」から浮かび上がってくる感じだ。
そもそも説明的な要素はほぼ無くて(と思うんだが…)、事前に未見だったフライヤーのあらすじは素より、登場人物名に応じた展開すらイメージに浮かんでこず、物語というよりは 主題を取り巻く人々の歪んだ想念やその亡霊の幻影をただ眺めて…連想する現実に想いを馳せていた。その割に響いてくるキーワードもあったし、誤読かもしれないが かなりヤバめな趣旨の提言も想起して戦々恐々だ。

UP
PUYEY
四天王寺スクエア(三重県)
2020/09/12 (土) ~ 2020/09/13 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/09/12 (土)
お話は…各々にずっしり不安を抱えた人達の… 足掻きと拘りと…不器用な優しさが滲む日常のひととき。一方で演劇的パフォーマンスユニットを標榜するのも頷ける"妙な動き"も多々楽しませてくれました。それを時間経過の表現に活かした演出に、演劇と融合した"らしさ"を感じましたね。

スモール アニマル キッス キッス
FUKAIPRODUCE羽衣
三重県文化会館(三重県)
2020/09/12 (土) ~ 2020/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/09/12 (土)
さすがの唯一無二な妙ージカル。その存在感は… 演劇ともミュージカルとも異にする趣き。NEWアルバムリリース記念コンサートの如きで、一本貫くテーマは見極め難いオムニバス。
コロナ対策の口パク公演との噂は流れてきていて、直に聴いても… マイクがなければあり得ない方向から声が来る感じは最初からあったから… 演劇としてなら違和感はあるものの、発声タイミングとしての不自然さは一度も無かった。何せ楽曲が主体だから、噂がなければ自分もどのタイミングで気づくのかな… という疑念があるレベルの完成度。
終盤… 歌声が流れる最中に… 息を切らしたかのように… ふと役者が息遣いのみになるシーンがとても印象的に仕込まれていて如何にも挑戦的であり、たぶん口パクを知らなかった人… 気づけなかった人は、この演出をさぞかし楽しめただろうと思うと、むしろ率直に羨ましい。

翼がもらえると聞いたんです。
試験管ベビー
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2020/07/10 (金) ~ 2020/07/12 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/07/12 (日)
4ヶ月半ぶりのホール観劇。否が応にも耳目を集める中、ホール公演の先陣を試験管ベビーが切りました。マスク/消毒/席間隔等の基本的な対策は勿論のこと、客の入退場や動線にも気を遣い、この劇団の売りの一つでもある客出しの交流も一部劇団員の最小限に絞って、とにかく密を避けようと頑張っていましたね。お疲れ様でした。
そんな雰囲気の中であっても…やはり普通に生のコメディに笑い声をあげられる日常が帰ってきた感触があって、感無量でした。試験管ベビーの芝居にこんな形容をする日がこようとは笑。自殺の名所という悪名を負ってしまった東尋坊でのドタバタ喜劇は、図らずも今の演劇の苦闘を投影するが如くで、そういう所でこそ… 悉く笑い飛ばす試験管ベビーの芝居が活きていた気がします。うん、笑った笑った、それで十分だ、笑う門には福来たるですわ。

眠っちゃいけない子守歌
広田二口企画
津あけぼの座(三重県)
2020/06/20 (土) ~ 2020/06/21 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/06/20 (土)
3ヶ月振りに本日開演の垂幕がさがる津あけぼの座。それだけでも感無量ですが… 更にその1ステ目なので舞台上だけでなく観客席も特別な空気が漂う。カーテンコールで… あの広田さんの目にも涙…という忘れられない時間となりました。舞台から発せられる圧を全身で受け、観客が息を詰めて見て…反応するからこそ蠢く空気。静かな芝居だからこそ実感できるモノがありました。堪んねぇなぁもう。
そして何せ別役実作品ですから、やにわには意図の計り難い会話が続きますが、奇しくも今のコロナ禍にも通ずる言葉が降ってくる。アフタートークで油田さんが語られた『別役さんが御存命だったら… 今まさにどんな戯曲を書いたか興味が尽きない。』というのに同感です。解釈したいことは色々あるけど、まずは印象的な演出/演技も端々にあって充実したと言いたい。幸せを噛みしめる。

沙翁十四行詩集 四月になれば彼女は
Contondo
AHAアトリエ・ギャラリー(愛知県)
2020/03/28 (土) ~ 2020/03/29 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2020/03/29 (日)
具体的な事柄も語られているのに、何故だか落とし所と関係性を素直には呑み込み切れない浮遊感が付き纏う…そんな不思議な後味。果たしてこの2人は同一の時空に存在しているのか、思いの外 想像が駆け巡る。元の詩も踏まえたら… また何か新たに感じ取れるものがあるだろうか。
言葉としては 概ね藤島えり子無双劇(笑)で一人芝居でも成立し得るぐらいだが、一方で相手方のKANAMORINさんの使われ方が実に良くって、ある意味 劇伴の新たな形とも言えるかも。小道具の存在感もとても味があって良い空間を堪能。

『謎は謎のままとぱぱ』『瀬戸内に行きたい人』
喜劇のヒロイン
円頓寺Les Piliers(レピリエ)(愛知県)
2020/03/25 (水) ~ 2020/03/30 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/03/28 (土)
新宮さん特有の奇妙な面白味に溢れた言葉の投げ合い…このいつもながらの旨味に、ノンバーバルを掛け合わせた不思議な絡みと…メルヘン世界と現実世界を掛け合わせた様な不思議な世界線の展開は楽しかった。
そして、まといさんのこの種の演技は、新宮作品にとても相性が良いのがよく分かりました笑。表情… 特に口元の演技が、言葉以上にモノを言う感じで、この奇妙な空間を良い塩梅に膨らませた。
一方で、作品解釈は一筋縄ではいかない印象も。終盤の落とし所に何が投影されていたのかはモチーフを踏まえての咀嚼の余地がとても大きい感触があったので、まだまだ余韻を楽しめそう。

薄ら氷
Queens of the Hill Company
名古屋能シアター久田館(愛知県)
2020/03/28 (土) ~ 2020/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/03/28 (土)
その空間を作り出すのに全くの妥協なし。本物の能舞台をベースに、衣装から琴の生演奏から… その場を形作るモノを、まず外堀からしっかり埋めて…目にも耳にも心地良い。
その上で… 古の日本で育まれ…苦悩に苛まれる禁断の恋心を「和歌」に託して紡いでいく雅な世界が尊い。
この厳しい世相の局面で、まさしく薄氷を踏みつつ上演に漕ぎ着けてくれたこと、それを観にこれて生で味わえた幸運に感謝したい。
たった4人のキャストに… 煎じ詰めると結構シンプルなシナリオにも関わらず、一人一人の掘り下げと移ろいの表現が充実していて、人物の所作と心情の奥を窺う観客の空気が凄く張り詰めていたのを生々しく感じた。勢いで誤魔化すことの出来ない難しい心情の表現を…じっくり丁寧に…詳かに顕現されたのを目の当たりにした。結末の割りに登場人物全てに好感が残ったのも一興…不思議な後味。

黒い砂礫
オレンヂスタ
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2020/03/14 (土) ~ 2020/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/03/16 (月)
総論として、ヂスタ得意の演出「描く対象とは異質の素材を使った美術/道具の運用により、具象と抽象の狭間で揺れ動いている感覚」は今回も秀でて、身体表現とも相性が良い。ドミノノで培ったモノが高密度に圧縮され、七ツ寺の近距離で身体/心理が迫る力は小劇場の醍醐味そのもの。
そして綺麗事では済まない登山の裏側を感じさせる現実味にも痺れた。マイナーな中にも厳然と存在する悪意なきマジョリティとの軋轢、否応なくカテゴライズされ切り捨てられる個人としての存在。一般的に山屋(登山家)のドラマとして注目されそうな、自己と極限状態との闘いではなく、多分に…題材として「個人と社会の軋轢そのもの」をそのままライブで提供している感触でした。結果として問題解決としての切り込みの甘さは否めませんでしたが、その渦中で思い悩み苦しむ人物の表現は人間ドラマとしての魅力に長けていました。

熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン
エンゲキマダシイ
円頓寺Les Piliers(レピリエ)(愛知県)
2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了
満足度★★
鑑賞日2020/03/14 (土)
トンデモ歌謡ミステリー&コメディとでも言うべきか… ノリも展開もかなりぶっ飛んでいて、おのが先入観と謎への拘りを捨て… 如何に早く本作の楽しみ方を見極めるかが観劇の鍵かも。割り切りが肝心だ。 登場人物のくるくる豹変する態度や口調も独特で楽しいが、私の印象ではそこに本作の面白味の核心がある為に、役者に相当な技量を要求する作品で… まだまだ道半ばな印象は否めない。でも、その熱いパッションはかなり迸ってましたね。

ラクダ
16号室
G/Pit(愛知県)
2020/03/01 (日) ~ 2020/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/03/08 (日)
2018年に私の観劇で年間ベスト5の逸品がトリプルキャストを引っ提げて再々演。
演出の基本路線は前回の再演を踏襲した印象でしたが、客席も取り込む様に作り込まれた店内装飾は相変わらずの絶品、中盤から終始ヒリヒリする場の空気の作り込みは秀逸でしたねぇ。そして、舞と後藤… 2人の冴えない人間が、それまでの生き方を180°反転させる転機を得て、足掻き、寄り添い、対峙する展開には何度観ても滅多刺しですわ。
ネタバレBOXに続く。

であったこと
安住の地
GALLERY maronie(京都府)
2020/03/05 (木) ~ 2020/03/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/03/07 (土)
無声劇。…といっても、よく見るパントマイムとも味わいは大きく異なる。
悠久の時の流れの中、まるで自然の営みを眺めているかの様な感覚に陥る。目の前に拡がるのは、まさしく「風景」に他ならない。
大小動植物の様々な命の育みは、役者の細かいモーションでリアリティを増していき、徐々に物語性も孕んでくる。人間社会も些かシニカルに俯瞰して、容赦ない惑星規模の活動の輪廻まで感じさせる。舞台美術に昇華された「布のパフォーマンス」が絶妙で、自然ばかりか時間までコントロールされた錯覚に陥り、唸る他はない。さすが芸術性に富む京都の風土が産んだ逸品というべきか。ギャラリー公演というのがとても馴染んだ。

その鉄塔に男たちはいるという+
MONO
四日市市文化会館 第2ホール(三重県)
2020/03/01 (日) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/03/01 (日)
劇団代表格の約20年前の作品と…そこに奇縁で繋がり同じ場所を舞台とする新作を結び付ける構成。この2作は劇団員の新旧を繋ぐものでもあるらしい。
会話自体はいずれもたわいない身内の諍いなれど、ともに戦地との繋がりを窺わせながらの諍いの本質と背景に…この大局に人々を誘った日本人の悪癖を想起させる。人が集まって個を失うと… 冷徹な人ならざるモノに変質する怖ろしさを滑稽味の向こう側に感じさせる不穏さ、それに目を逸らすかの様な楽観さのギャップが痛々しい。
一瞬の希望を感じた先に突き付けられる現実。2つのドラマが繋がって… 歴史が繰り返されたことを暗喩するシニカルさが突きつけられる。個を尊重する慎ましさを忘れ、安易に二極に切り分けて他を攻撃する… 今この世相の先にあるものを浮かび上がらせる。20年前の眼差しは今もって杞憂でないことを感じさせる…意義ある公演でした。
終演挨拶で作演の土田さんが不意に涙ぐまれたのがとても印象的で…この新型コロナウィルス騒ぎの状況下で、中ホール規模の公演を全うするプレッシャーと… 万全を期そうとする御苦労の大きさを感じずにはいられません。四日市市文化会館スタッフも含めて、その完遂に厚く感謝申し上げます。