かもめ 公演情報 第七劇場「かもめ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/11/01 (日)

    原作の後日談的な時系列の中、フラッシュバック的に「かもめ」のシーンが差し挟まれる構成。自らの夢の挫折と… コーチャスの自殺への自責の念で心を病み、精神病棟に隔離された独自設定の「ニーナ」を核に展開する。潤色/翻案というよりスピンオフ的な切り口で原作の中にある「弱き者への眼差し」に絞って再構成された様にも感じました。いや… のみならず、この中には… シチュエーションに合わせてか、作中10分程がチェーホフの他作「六号室」等のテキストの引用だそうで、チェーホフのこの思想のエッセンスになっている…と言えるのかもしれません。

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    ネタバレBOX

    最も印象深い存在は「心を病んだ人」… ニーナと共に入院している患者達です。

    彼女達は次第に… あたかもコロスとしてその場に在る様になり、最初は如何にも心を病んでいる挙動不審な振る舞いから始まって、次第に… まるでニーナに纏わりつく亡霊の如く虚ろに言葉を発し… 舞台を彷徨う。

    それは… ある時は世間を写し出す鏡となり、そしてある時はそれに抗する苦悩の人となる。並んで壁に向かって語るシーンでは、彼女達を苛む世間に対して… まさしく耐え忍んでいる姿に見えました。究極は…舞台上を走り回るニーナの姿で、さながら悪夢に追い回されるが如き… 戦慄が走ります。何でだか… ドールン医師から奪ったカバンをまるで赤子の様にあやす ある患者の姿が目に焼き付いています。しかし、公開されている2012年金沢公演の映像を観てもそんな印象は湧かないので、ちょっとした演技ひとつで、与える印象は様変わりするのでしょう。

    そもそも、この芝居自体…パッチワーク的な構成であることも相まって、文脈自体はすぐに呑み込めない難しさを秘めており、コロス達の生み出す雰囲気に呑み込まれる見方になることが多そうな気がしています。それ故に…観る者の経験と置かれている環境次第で、作品から脳内に想起されるイメージと圧力は相当に違いそう。

    次第に話が「自殺志願者の心理と生き方」にフォーカスされた印象を受ける流れの中、夢を追うことなく… 生活を確保できる進路の中から生業を選び、どんなに辛くても未だ死にたいとまで思ったことがない私は、まだ一枚オブラートに包んだ状態で作品を味わっているな… という自覚があります。

    一方で、だからこそ観るべき芝居であったかもしれません。若者の死因のトップが「自殺」である日本で、生まれるべくして生まれた舞台とも言えそう。

    そんな辛さが前面に立つ芝居なのに、終盤に降り続ける「雪」が…光も相まって極めて象徴的… 私の観劇史上でも屈指の美しさと言える光景でした。

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    2021/01/05 22:52

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