けむりのゆううつ 公演情報 劇団芝居屋かいとうらんま「けむりのゆううつ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/11/20 (金)

    想い人達の“逢いたい想い“が… “逢えない社会事情“に翻弄される悲恋の名作「八百屋お七」を… コロナ禍での想いも込めて大胆アレンジ。禍難の愛のみならず… 周囲が作り出す「身勝手な真実」にも比重を置き、社会風刺としても刺さる。

    ネタバレBOXに続く

    ネタバレBOX

    獄中に在ると思しきお七が語る回想では… 何故か3色(人)のお七が入り乱れて演じられる。それは三面六臂の阿修羅観音にも喩えられ、無垢・迷い・悟り と意味付けられた。その切り替えは… 最初はお七の心情の変化を表すものと思って観ていたが、次第に趣きは変わり…彼女らは あたかも「並行世界」に生きるが如き多様な結末を迎える。

    黄色いお七は…無垢なる想いを拗らせて 逢瀬を叶えんと募った妄想の果てに火を放つ。

    青いお七は…自分で決断する事…自立を望み、自らの過ちを正さんと一命に代えて半鐘を鳴らす。

    赤いお七は… 自暴自棄の果てに、取り巻く社会もろともに破滅の道を望んで その身すら業火に焼く。

    この有り様は、実際の「八百屋お七」の作品としての変遷も彷彿とさせます。

    放火/火刑の記録しかない史実に…噂話に伝わる悲恋が上乗せされた井原西鶴の小説が「八百屋お七」作品の起源だが、人気に後押しされて色んなジャンルに伝搬し、その都度 創意に溢れた脚色を纏っていく。浄瑠璃や歌舞伎などの舞台作品に至っては、死罪の理由は放火ですらない。

    その多様性に対して…本作では1つに絞ることなく… 各々のケースにしっかりと寄り添って真実味溢れる芝居を演じた。その上で更に…その装飾された真実により… 自らの「想い」が歪められることに憂う お七の姿を描き出した。

    真実を問われるお七は… 逆に真実の意義を幾度となく問い返す。人は結局 自分に都合の良いことを信じるだけだ… そう社会の有り様を揶揄し、その結果として3人のお七の結末を突きつけた。それはスキャンダルを消費する民衆に対する皮肉なのかと最初は思ったのですが… なんと彼女はそれも否定する。
    「事実」は好きに弄べばよい… ただ…ただ「想い」だけは捻じ曲げないで欲しい… そんな願いが伝わってきた。

    そして遂に3色のお七もろともに… 想いを叶えた多幸感溢れる最後の表情はまさしく「ハッピーエンド」のそれでした。
    怪談さながらの趣きもあった流れからは… 真逆の着地。「八百屋お七」にそんな後味を感じたのは初めてのことでした。

    想い人達にはどんな時にも… 幸せを感じていて欲しい… そんな願いの伝わる… かいとうらんま流の「八百屋お七」でしたね。

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    2021/01/05 23:03

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