満足度★★★★
鑑賞日2020/03/28 (土)
その空間を作り出すのに全くの妥協なし。本物の能舞台をベースに、衣装から琴の生演奏から… その場を形作るモノを、まず外堀からしっかり埋めて…目にも耳にも心地良い。
その上で… 古の日本で育まれ…苦悩に苛まれる禁断の恋心を「和歌」に託して紡いでいく雅な世界が尊い。
この厳しい世相の局面で、まさしく薄氷を踏みつつ上演に漕ぎ着けてくれたこと、それを観にこれて生で味わえた幸運に感謝したい。
たった4人のキャストに… 煎じ詰めると結構シンプルなシナリオにも関わらず、一人一人の掘り下げと移ろいの表現が充実していて、人物の所作と心情の奥を窺う観客の空気が凄く張り詰めていたのを生々しく感じた。勢いで誤魔化すことの出来ない難しい心情の表現を…じっくり丁寧に…詳かに顕現されたのを目の当たりにした。結末の割りに登場人物全てに好感が残ったのも一興…不思議な後味。