小刻みに戸惑う神様
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
かなり昔の映画[お葬式 ]を思い出しました。
暗いお話を想像していましたが、笑いあり、人情ありの楽しいお芝居でした。
ネタバレになるので書けないのですが、ワーって言う感じの素敵なアイディアというか工夫がされていて、そこの部分が個人的にいいなあと思いました。
一番嬉しかったのは、劇団さん特製の非売品のバックのお土産でした。
可愛いいバックです。
以前より大きいサイズになっていました。
どこの劇団探してもこのサービスはないのでスゴいです。
小刻みに戸惑う神様
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2022/06/15 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
この頃ボケが始まったのか、観ている途中でこの演目、3年前にジャブジャブサーキットのこまばアゴラ劇場公演で観たのを思い出した。今回のバージョンも負けず劣らず良かったですね。つい最近家族の葬式を行ったばかりで、特に身に沁みました。
夏至の侍
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2022/06/07 (火) ~ 2022/06/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
(うっすらと内容に触れているので念のためにネタバレBOXへ)
ネタバレBOX
ハードな悲劇が得意(?)な桟敷童子、今回は珍しくソフトランディング?
美しいラストも複数に解釈できるが悲劇側に受け取っても救いがある感じ。
終盤の台風の場面で音無さんが表現した「母の愛」がそちらに導いたのかも?
そこに時代の流れから終わりゆくものの切なさが漂い「あぁ、これもやっぱり桟敷童子だな」な感じ。
瀬沼さんのことを何も知らない
ライオン・パーマ
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2022/06/08 (水) ~ 2022/06/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
下北沢での公演が中止になり、やっと観られた。台詞の面白さや間の取り方など相変わらずのライオンパーマらしさ。メロンパンなどお約束の笑いだが、やっぱり笑いを誘う。個人名のタイトルがそのまま役名というのは、なるほどだった。そして今回、明らかに深化した作品に仕上がっていたのはライオンパーマの進化の証だと思った。コロナ禍にめげず、劇団の神化を期待‼️
オロイカソング
理性的な変人たち
アトリエ第Q藝術(東京都)
2022/03/23 (水) ~ 2022/03/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
亡くなった姉の子を育てた祖母、シングルマザーとして奮闘する母、性暴力事件をきっかけに溝が生まれてしまった双子。女性だけの三世代の家庭を舞台に、性暴力が残し続ける傷、その深さにいかに向き合い、寄り添うかが描かれます。当事者の哀しみ痛みだけでなく、周囲の戸惑いや過ちも静かに見つめ、解きほぐしていく手つき、プロセスが印象的な作品でした。
とりわけ、音信不通となった姉・倫子(西岡未央)と、その心を追って旅することになる妹・結子(滝沢花野)の関係は、少女期の二人のアンサンブルの良さも手伝って、直接の被害者ではない(と思っている)人間が、どのように、性暴力や差別と向き合っていくかというヒントを示しているようにも思えました。
ネタバレBOX
会場の割には、やや声を張った芝居が多く、そのことが演じるキャラクターを「典型」に見せてしまうところはもったいなかったなと感じています。また、母、祖母の世代が何を感じ、考えていたのかはそれほど語られず、双子だけでない家族(母から娘)の肖像はやや薄いように感じました。ただ、二人のキャラクターをそれぞれが生きた時代の肖像としてとらえ、想像を膨らますことはできましたし、それもこの物語の背景には欠かせないものだったと振り返っています。
残火
廃墟文藝部
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2022/05/20 (金) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
「平成」にフォーカスしながら、いつか訪れる東海地震への漠たる不安を抱える少年と阪神淡路大震災で生き残った少女との出会いと、20年強にわたる交流を描くドラマ。
両親と片腕をなくし、深い悲しみ、トラウマを抱えながらも生きるヒロイン「火花」の強さ、美しさが際立つ舞台でした。後に東日本大震災に遭遇することになる友人「歩鳥」も交えた日々の風景に、語り手の少年(後の青年)の持つ「カメラ」の視点が持ち込まれるのも(ベタだともいえますが)効果的だったと思います。
3つの震災を並列にしそれぞれを主要な登場人物が経験するという筋立ては、(「平成」がそうした災害と共にあったという見立てにはうなづく部分もありつつ)図式が過ぎるとも感じましたが、俳優たちが発する今を生きていることの迷いや輝きが、その作為の跡を薄くし、ドラマをうまくドライブさせてもいました。
ネタバレBOX
それだけに終盤、架空の「東海地震」が多くの犠牲者を伴う形で起こり、ヒロインに死をもたらすという展開には非常に驚き、考えさせられました。「平成」を象るものを明確にし、ここまでに少しずつ積み重ねてきた生の喜び、強さを、逆照射するためだとしても、これは悪しきセンセーショナリズムなのではないか。2つの震災を、そのトラウマも含めて描いてきた時間はなんだったのか。疑問が残りました。
9人の迷える沖縄人
劇艶おとな団
那覇文化芸術劇場なはーと・小劇場(沖縄県)
2022/05/13 (金) ~ 2022/05/14 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
まずチラシやタイトルロゴが洒落ていて「おっ」と目を惹かれました。そこに9人、いるんですね。そして「9人」という人々がそれぞれ『有識者』『本土人』などのあるカテゴリーを背負っているのですが、それが、物語のための設定になりすぎず、そこに生きる一人ひとりの人間の存在として立ち上げられていました。それは取り上げたテーマの切実さでもあり、演劇への信頼と積み重ねがあるからではないかなと感じました。
ネタバレBOX
舞台は、1972年の本土復帰目前に集められた人々……を演じる現代の演劇の稽古場、です。この劇中劇の差がそれほどなく、物語としてはわかりづらいといえばそうなのですが、私はポジティブに受け取りました。1972年の9人の迷う声は、過去のものではありませんし、色褪せてはいけない。現代の自分達にとってもリアルな日常なのだ……という意志だと思えました。2つの時代がまざっていく感覚は、切実さでもありました。そう感じたのは、私の子どもの頃の沖縄での戦争研修にはじまり、その後何度か基地問題などに関わった実体験が呼び起こされたからかもしれません。とすると、観劇した人の沖縄との関係によって、感じたことや見える景色が違ってくるのかもしれない……他の人の感想がとても気になるなと思いながら客席に座っていました。
また、「役を演じているシーン(劇中劇=1972年)」と「演じていないシーン(現代)」が入り混じっていくことで、演劇(非日常)と演劇以外(日常)の境界が曖昧になります。それは、沖縄のなかでさまざまな演劇活動をする俳優達が集った今舞台において、「演劇ってけっこう身近だよ」「演劇を好きになってほしいな」というアプローチにも感じられました。沖縄で活動する9人の沖縄演劇人たちによる、演劇熱に満ちた作品だと思います。
復帰にまつわる情報量が多く混乱するところもありますし、構成としても「学び」感があります。けれども、息を抜ける工夫も散りばめられていました。スクリーンとイラストを用いるシーンでは客席からリラックスした笑いが起こり、深刻な話が続く中でちょっと離れた場所で太極拳(?)をする復帰論者(犬養憲子さん)は空気をまろやかにしていました。宮城元流能史之会の宇座仁一さん(文化人役)が踊るシーンは劇中において大きく空気を変え、それまで作品を覆っていた「言葉」とは違う手段で沖縄の歴史や文化を舞台上に出現させる印象的な時間でした。
また、地元で上演したからでしょうか、上演中に客席から「へえ~!」「あれってこうだよね!」など気負いないポジティブな声が聞こえてきたのも印象的でした。
ドラマティックな音楽や照明など、基本的には賑やかな舞台のなかで、音はせずに存在する扇風機がいいですね。風が吹き続けますように。
終演後、個人的に沖縄の味や踊りを楽しみ、またひめゆり平和祈念資料館や平和記念公園をまわりました。これまで何度か訪れた沖縄が、また違ったふうに見えました。劇場に入る前と出た後では世界が変わっている。それが身に染みた観劇でした。
これまで沖縄以外で上演されたこともあるそうですが、今後も再演していくにあたっては、県外の人に向けた「作品+沖縄の〇〇」のパックやツアーなどもあると、演劇と生活と自分の生活以外の現実が地続きになっていくのではないかな、それができる強度のある作品だなと思いました……と勝手な願望と妄想が膨らんでしまうほど、沖縄で観られて良かったです。
透き間
サファリ・P
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2022/03/11 (金) ~ 2022/03/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
観劇前の第一印象は「難しい企画だな」というものでした。アルバニアの実際にあった“復讐の掟”を題材にした小説『砕かれた四月』と、コソボ紛争経験者との対話と、作者の祖父という個人的な要素をひとつの作品で同時に登場させようというのですから。現実に存在する他者の痛みと作り手個人の痛みを作品において繋げれば、「相手の痛みを奪っていないか」「芸術のもとに搾取していないか」という問いかけがうまれます。この時に、いかに題材となる他者を尊重し誠実であるか、あるいは自分の物語として最後まで覚悟を持ち切って創作を走り切るか……。いずれにしろ素朴ではいられない、と私は思っています。
というところで観始めた今作ですが……
ネタバレBOX
せりふのほぼないフィジカルな表現のため、上演からはそれらがなんの要素から立ち上がったものかは明言されません。当日パンフレットの<場面構成>を読むと、基本的には『砕かれた四月』を踏襲しているよう。そうした表現と構成の選択は、上演にあたって非常に良かったと思います。観客の想像力によって、ある地域のある大きな流れのなかに存在する問いが、徐々に私たち多くの人間が抱えているはずの課題や、(おそらくはからずも)現代の社会情勢と重なっていく。後半、妻(佐々木ヤス子さん)が、ほかの人びとに飲み込まれるような動きの時は胸が苦しくなりました。せりふを極力廃したことも功を奏していました。
冒頭、舞台上に敷かれた台の隙間から出てくる手が非常に美しかったです。一気に引き込まれました。その後の台の下での動きなど、シンプルながら分断と連なりを感じさせる空間の使い方も興味深かったです。ただ後半につれ、私の作品背景(アルバニア等)への無知さゆえかもしれませんが、なぜこの場面でその身体表現をもちいたのかわからなくなるシーンも、正直ありました。
当日パンフレットが上演に深く触れ、あまりにも充実していたため(作成、本当にお疲れ様です…!!)、その存在に気づかず受け取りそびれた人が数名いたようなのはもったいないなと感じました。コロナ禍において、たとえば手渡しできないなど劇場のルールなどもあるのかなと思うのですが、もうすこし目に付く形で当日パンフレットをもらう/もらわないの選択ができるといいなと思います。
20世紀初頭のアルバニア地域での価値観や文化背景について、私は深く知りません。そこに生きた登場人物たちにとって、慣習や起こる出来事はどういう意味を持っていたのか……。作品に入り込むほどに、その地で実際に命を奪われた/奪った人々・遺された人々の思いを想像しきれないということに直面します。最初に「痛み」について書きましたが、「痛み」「傷」「暴力」などは背景が変われば、当人にとって意味や正当性が変わる可能性があるものだということをあらためて忘れないようにしようと思いました。
ふすまとぐち
ホエイ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/05/27 (金) ~ 2022/06/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
テキストと空間の立ち上げ方に巧緻さが光る、ホエイの代表作となり得る一作。
ネタバレBOX
姑による嫁に対する「いびり」とその結果の嫁の押し入れへの引きこもりが表出する家庭内の歪みを、時にコミカルに時に不条理に描く。温かい言葉はほとんどなく、互いに対する不寛容だけが込められているが、津軽弁のリズミカルなやりとりによって本来そこにある陰湿さがなくなっている。テキストは「嫁いびり」を通り越して家庭内暴力にまで展開する粘着と苛烈さを、しかしそれらを感じさせずにエンタメとして展開しており、山田百治のバランス感覚に脱帽した。
そのバランスは俳優の演技にも見て取れる。山田が演じる老婆、中田麦平が演じる小学生男子は、もうほとんど本人であり老婆や小学生に見えるかというと怪しいのだが、それゆえに滑稽さと嫌悪感を抱かせるのに十分な効果がある。特に印象に残ったのは成田沙織の演じる小姑である。嫁や自分の娘に寄り添うように見せながら実は誰よりも自分本位である、その図々しい様を見事に演じ切っていた。
嫁が引きこもっていた押し入れがやがて姑が寝たきりになるベッドとなる構造は見事であり、また単なる復讐劇にしない結末は観客に思考の余韻を与える。他方で、テーマとなるその押入れの「ふすま」を最後まで見たかったという欲望もなくはない。また、コミカルに振ったためか、いまひとつ感情的に動かされる部分が少なかったのは(恐らく意図的だろうが)やや物足りなさを感じた。とはいえ、テキストと空間の構成、演出の合致は見事であり、本作はホエイの代表作となり得るだろう。
ふすまとぐち
ホエイ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/05/27 (金) ~ 2022/06/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ほぼ全編津軽弁によるドタバタ家庭劇。上演前にプロデューサーによる簡単な津軽弁講座があり、(結局わからない部分は思っていた以上にありつつも)楽しく観劇できました。
いじわるばあさんを思わせる姑・キヨ(山田百次)と必要な家事以外の時間は押し入れに閉じこもって暮らす嫁・桜子(三上晴佳)の嫁姑戦争を軸にした物語は、過剰な事件も交えつつ、終始ハイテンションな演技で進行します。ですが、実のところこの物語の背景にあるものはむしろ、重苦しく苦い現実ではないでしょうか。
非正規の仕事しかない長男・トモノリ(中田麦平)しかり、出戻りの娘・幸子(成田沙織)しかり、キヨの支配するこの家から自立すべきだと知ってはいても、すぐにそれを実行できるような状況にはないようで、だからこそなんとなくキヨの支配に従っています。一方、敵対しているはずの嫁姑の関係には、キヨが嫁に悩みを共有する「親族」なる怪しい団体と引き合わせようとしたり、桜子がキヨの嫌う虫をハサミで撃退したり、急病の気配にいち早く気付いたりと、緩やかな絆を伺わせる面もあります。二人は共に孤独を抱えながら「家庭」を支える役目を負う仲間でもあるのです。
ネタバレBOX
桜子が閉じこもり、時折内側から抵抗の意を示すために「ドンッ」と叩く押し入れは、終盤キヨの療養するベッドとして使われます。この押し入れが、この家族の心臓部なのではないか、逃れたくても逃れられない「家族」を象徴し、つなぐものではないかと想像すると、この劇の空間設計のダイナミズムに驚くと同時に、日本(のとりわけ地方)を覆いつづける生活の不安と、「家族/親族」の呪縛のリアルな重みに思いを馳せずにはいられませんでした。
『器』/『薬をもらいにいく薬』
いいへんじ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/06/08 (水) ~ 2022/06/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
『薬をもらいにいく薬』先日観て、あまりにも良いので再度の観劇。やはりいい!(6分押し)104分。
不安障害を抱える女性(タナカエミ)がバイト仲間の男(遠藤雄斗)とカレシの出迎えに羽田まで行こうとする…、な話。選ばれた台詞での緻密な戯曲、丁寧な演出、それを出現させる役者陣、と、2度観て実に良く出来た芝居だなと思った。女性役のタナカエミの表情が場面に応じて変化する様子に改めて感激し、軸になる2人以外の3人のシーンが補完するものにも気づいて、実に深い作品だと思った。
もう1回くらい観に行きたいけど、チケットがないみたい(;/_;)。それと9時を回って終演する舞台で6分押して何も言わないのは、やめてほしい。
パンドラの鐘
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2022/06/06 (月) ~ 2022/06/28 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
若い演出者が野田秀樹の旧作を演出するシリーズの一つ。今回は古典から出てきた杉原邦生の演出である。
野田秀樹は古典演劇への造詣も深い。野田の戯曲は、過去から未来への長い人間の営みを壮大なスペクタクルに組み込む構造をとることが多いが、「パンドラの鐘」はその趣向がうまくはまった作品だ。古典への関心と造詣言う点では若い杉原邦生も同じだから、幕開き舞台を囲んで伝統舞台を想起させる横嶋の紅白の幕を切って落とすあたり、演出者の個性もうまく出している。
同じ戯曲だが、数年前に見た藤田俊太郎演出とも、かつて見た野田演出とも全く違う舞台が見られたわけだが、戯曲の本質は、当然とはいえ。変わっていない。しかし、見る時代によって観客は変わるわけで、ウクライナで戦争が起こり、きな臭くなっている時代に『水を!』と叫ぶミズオを見せられると、満席の客席には静かながらジワが拡がっていき、野田作品独特の感動の大団円になる。演劇の時代との切り結び方の実際を見せられた一夜であった。
俳優では片岡亀蔵が健闘。フェイクスピアでは危なかった白石加代子も復調。野田戯曲には初顔の成田凌、葵わかなもまずまず無難であった。
ネタバレBOX
杉原演出は、大地に耳をつけて過去の声を聴こうとする幕開きから、幕切れの未来での同じラスト、同時に蜷川もどきで、ホリゾント裏の大道具搬入口を開けて、現世の町を見せるところなど心得たものである。、
9人の迷える沖縄人
劇艶おとな団
那覇文化芸術劇場なはーと・小劇場(沖縄県)
2022/05/13 (金) ~ 2022/05/14 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
沖縄を描いた歴史的古典作品になるべき秀作である。
ネタバレBOX
作品単体ではなくその周囲の環境も観劇体験に含むとすれば、本作は他にないベストな状態で観劇できたと言えるだろう。那覇文化芸術劇場なはーとが、沖縄の本土復帰50周年に合わせて企画した「沖縄・復帰50年現代演劇集inなはーと」の一部であり、会場前に立てられたパネルには各劇団および作品のテーマとなる出来事の背景説明が書かれていた。これにより、不勉強にして沖縄についての知識をほぼ持ち合わせていなかった關のような観客でも、作品が取り上げる問題を事前に手軽に学習できる機会となっていた。
作品自体も予想を上回って優れたものであった。単純な社会派ドラマにせず、劇中劇の構造にストーリーを組み込むことにより、沖縄の抱える問題の複層性を明示していた。それぞれ立場の異なる群像劇ではあるが、個人の問題として散逸化するのではなく、あくまで沖縄であるがゆえに抱える「迷い」に焦点を当てられていたことも高評価に繋がった。登場人物はややステレオタイプに依っていたものの、宇座仁一氏をはじめ粒揃いの魅力的な俳優たちがストーリーを膨らましている。東京から来た身として、<うちなーぐち>でのやりとりが聞け、(簡略的なものであったとしても)組踊の一部が見られたのも楽しい経験だった。
せっかく劇中劇であるのに劇的現実と劇中劇との差があまりないことや、効果が不明の演出(作品の最初と最後にあった謎の照明転換や宙に浮いた窓枠の存在)などが散見され、また作品全体を通じてどうしても「勉強会」感が拭えない印象もあった。しかし、俳優たちが描く、もがきながら迷い続ける沖縄の人々の様は胸を打ったし、歴史的な出来事をフィクション作品のテーマとする際の姿勢が非常に誠実であると感じられた。
聞いたところ、俳優たちは一般企業の社員や公務員として就職しながらプロフェッショナルな俳優としても活動しているらしい。働きながら俳優業を行える環境は、継続的創作の基盤となるため、学ぶべきところが多い理想的なものだろう。そのような環境を整えられていることも評価に含まれた。
「沖縄」であることがあまりに強固に出た観劇体験だったため、作品単体と環境を切り分けることは困難だった。そもそも周囲の環境と上演はいかに関係し、また分けられるだろうか。他方で、演劇が現実に対して掲げる鏡であるとするならば、本作は間違いなくその姿を明確に打ち出しており、その点において高く評価できるだろう。今後も定期的に上演を重ねていって欲しい作品である。
残火
廃墟文藝部
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2022/05/20 (金) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★
実際にあった震災をテーマにしており、それゆえの困難さが演出やテクストに瑕疵として残ってしまっているドラマ作品だった。
ネタバレBOX
まず、震災によるPTSDを中心的なテーマとして取り上げていながら、観客の側にそれを抱えた人を想定できていない点で決定的な過失であろう。作中における地震の描写は暗転中に音だけで示す手法がとられており、その音響効果はかなりリアルであったため、間違いなく事前の注意喚起が必要だったが關が確認した範囲内では見つからなかった。震災を主題にしていることの提示だけでは不十分だろう。
加えて、被災者をドラマチックなフィクションとして消費してしまうようなストーリー展開にも疑問を感じる。観客として、『残火』からは感傷的な同一化を狙っていること以外に特にメッセージは受け取れず、ストーリーの複数の箇所に安直な印象を受けた。災害を扱う作品はそれ以外の作品以上に慎重さが求められるが、いまひとつ感じられなかったのが残念である。
キャラクターの人物描写は基本的に好ましいものだった。優れていた俳優としては元山未奈美氏が挙げられ、被災者として心身ともに傷を負いながら持ち前の強さと愛情深さで戦っている女性というデリケートな役を、緻密にかつ魅力的に演じていた。他方で、俳優の演技力に差が見られ、いまひとつ一体感に欠いた印象も受けた。
震災という取り上げるに困難なテーマに果敢に取り組んだ意気込みは評価するものの、リアリズムに則した演出はどちらかというと映像向きのように感じられ、歴史的事件をテーマとする際に演劇には何ができるのかという問いが掘り下げられていなかったのが惜しかった。
パンドラの鐘
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2022/06/06 (月) ~ 2022/06/28 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
23年ぶりに観たが、若さを感じた舞台だった。面白い。140分。
野田秀樹が蜷川幸雄に依頼されて書いた戯曲だが、蜷川版(コクーン)と野田版(世田谷パブリックシアター)が同時に上演され話題になった作品を、今回は杉原邦生が演出したが、過去の両作とも観た者として思い出しつつの観劇だった。ミズヲ(成田凌)とヒメ女(葵わかな)の淡い恋を描きつつも社会性のある内容が印象に残っていたが、丁寧に伏線を張りエンターテインメントとしてもしっかりした作品である。今回は主軸となる葵の若さが光っていたと思う。初舞台の成田は前半やや上滑りな印象があったが、後半の葵との2人のシーンから安定し終盤をしっかり背負った。ピンカートン未亡人を演じた南果歩とその娘を演じた前田敦子の母娘コンビのブッ飛び振りも興味深く観た。
野田版で野田本人が演じたヒィバアを演じた白石加代子はさすがの貫禄だったが、カーテンコールで一人一人舞台後方から走って来るのは、ちょっと気の毒。お決まりのように3回のカーテンコールをするのも…(ー_ー);。
ネタバレBOX
狂王の遠眼鏡は、大正天皇に関して語られた噂で、その狂王の次の王ということでヒメ女は昭和天皇だから、昭和天皇の戦争責任を扱った、と当時語られたのを思い出す。
甘い手
万能グローブ ガラパゴスダイナモス
J:COM北九州芸術劇場 小劇場(福岡県)
2022/04/23 (土) ~ 2022/04/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
地元に愛された、俳優の個性が活かされているエンターテインメント作品である。
ネタバレBOX
高校の学園祭を巡る群集劇であり、「周囲を気にせず好きなものを追求する」という本作のテーマは団体の方向性も示しているように感じられた。そういう意味において、内容と一致した劇作術が巧みである。個性の強い俳優たちは個々に魅力があり、しかもそれぞれにマッチした役を演じていたことから、客演の俳優とも良好な創作関係を結べる劇団としての強みが見られた。特に劇団所属の横山祐香里氏は、登場人物のキャラクターの落差を見事演じ切っていた。
そのような団体に対する客席からの愛情が強く感じられた。普段、首都圏の劇場ではなかなか感じられない温かさを持った客席は、筆者のような外からの観客も排除することなく飲み込み、「ホーム」という印象を与えた。そのような客席を、時間と誠意をもって作り上げてきたであろう団体の努力が感じられた。
他方で、かなり力技で押し切られているという印象も拭えない。戯曲の構成や設定、俳優の演技も細かく見れば瑕疵が見えるが、勢いとノリで乗り切ってしまっている。作中の劇中劇が「これなんー!?(これ何!?)」という展開で終わってしまったことから、もう力技でも色々崩壊していてもエンタメだからOK!という表明だとも受け取れるが、小さな無理も見えなくなるほどの力技ではないとも言える。
このことから、エンターテインメントとして成立していれば許されてしまうこと、許してしまうことについて考えた。恐らく、勢いで押し切ってしまうというのは劇団の方針の一つだろう。巧緻な細工よりも大きな柄で人の目を惹きつける方が、本作のテーマとも合っている気もする。しかし、他団体や他作品ならば必ずマイナス点として議題に挙がるであろう点を、エンタメだからというだけの理由で見逃して良いのだろうか。
とはいえ、このような普遍的な問いは、万能グローブガラパゴスダイナモスがエンタメとして優れていたからこそ生まれたものであろう。評者である關も、その点について問いつつも作品自体については大いに楽しんだ。強引さも団体の強みとしてこのまま猛進してほしい。
不思議の国のアリス
壱劇屋
門真市民文化会館ルミエールホール・小ホール(大阪府)
2022/03/24 (木) ~ 2022/03/25 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
美しい美術と愉快な音響効果が印象的だったが、いまひとつ没入感を欠いた作品だった。
ネタバレBOX
個々のアイデアは面白く、特にアリスが小さくなるシーンは大きさの違うロープの輪を用いて示しており、なるほどと思わされた。『不思議の国のアリス』の原作は言葉遊びを含む独特の言語を特徴の一つとしているが、台詞を用いずに身体表現のみで上演するという試みに意気込みを感じた。
しかし、それが成功していたかは疑問である。まず、俳優の技術にやや不安を覚える部分が複数箇所あり、それがユニークな世界観への没入を妨げる要因となっていた。本来、技術的に優れているパントマイムであれば観客の想像力を喚起し得るであろうシークエンスも、何を意図しているのかを観客の側から汲み取る努力をしなければならず、観客の負担が少し大きかったように思う。結論として、アイデアは面白いがそれだけに終わってしまっている印象を受けた。劇場の造りが適していなかったのも要因だろう。学校の体育館のように客席よりかなり高い位置に舞台があり、見上げて見る形になってしまっているのは作品にとって不利だった。また、非常灯を消すことができず、暗幕を貼り付けていたが光が漏れてしまっているために完全な暗転ができなかったのも気になった。
上演に際してワークショップを同時に開催したり、物販にかなり力を入れていたりと観客へのアプローチは十分に用意されていたため、本来団体としてはサービス精神に富んでいるのだろうと推測できる。他の作品の方が恐らく評価が高いのではと類推され、もったいないと感じた。
ふすまとぐち
ホエイ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2022/05/27 (金) ~ 2022/06/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
全編、津軽弁。あえて東京公演とのことで、基本的には津軽弁がわからない人に向けて、どこまでの言葉ならそこで起きていることが伝わるか/伝わらないか、意識的に言葉を整理されていたと思います。さらに事前の津軽弁講座がありがたく、教えてもらった言葉を探しながらせりふを聞きました。おかげで津軽の空気とともに、その場でなにがやりとりされているかも伝わったと思います。津軽弁の音も美しく、東京にいながら東北の土地の音を聞けたことは良い体験でした。
ネタバレBOX
冒頭のキヨ(山田百次さん)の爆発的なキャラクターからはじまり、登場人物たちがエネルギーにあふれていて引きつけられました。デフォルメされているとは思いますが、実は、一生懸命しゃべっている人達は実際あのように独自の威力があったりするので、ふと「見たことある……」という瞬間にも出会えるのも笑ってしまいます。
笑うだけでなく、迷惑をかけあっても離れられない不器用で複雑な思いが交差していく様には、物悲しくも、愛しくもなりました。また、血縁者は離れられないからこそ離れ、非血縁者であるからこそ離れない……「家族」とはなんだろうと考える戯曲構成でした。
また、俳優個々にパワーがあるため、言葉の端々から想像できる個別の人物背景は、もっと明確であってもよいのかなと思いました。それほど、今、ここ、で起きている生身の発信に力があったと思います。
居間と押入れの間との間に壁があり(←舞台上にはないですが)一度廊下に出なければいけない、また、闇の向こうにある玄関という舞台美術と照明がよかったです。見えないけれど、そこにある壁。しかし少し手間をかけてくるっとまわれば到達できる空間。しかしその奥にはふすまが閉じている。また、どこか外の世界へと続いている戸口。それらは人物たちの関係性や心理をビジュアル化しているようで、それが田舎の日本家屋と密着していて、「家」に飲み込まれそうでした。
公演期間中、また公演終了後に、Twitterのスペースでゲストを呼んだトークを企画したのがいいですね。上演時間が2時間ほどあり、アゴラで自由席だったので2列目までは低いイスだということを案内いただけたら腰が幸せでしたが……長くは感じませんでした。
残火
廃墟文藝部
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2022/05/20 (金) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
冒頭、唯一つけられていた道久のマイクと、作中のテロップ(年表)が、この作品における登場人物の物語とは別次元のデジタル的な演出でした。また、年表の項目のピックアップに法則性がなく個人的であること。それによって、今作で描かれる「時間(平成)」は、道久にとっての私小説なのだと思って観ました(もしくは作者の目線を通した平成)。
ネタバレBOX
道久を主軸とすると、道久から見た火花、道久から見た景色が描かれていき、それらが輝いて見えることが作品の引力となります。子どもの火花(瀧川ひかる)も、大人の火花(元山未奈美)も、難しい役どころながらとても魅力的でした。彼女の複雑な思いがほぼ表情以上で語られないのも、道久からの視点と思うと納得です。むしろ、もっと道久に焦点を当てる演出(立ち位置など)であれば、より全体の構成のメリハリがきくのではと思いました。もし群像劇であるのならば、幼馴染3人と皐月の関係性がより丁寧だとそれぞれの人生が折り重なってドラマ演劇としての深さが出ると思います。
一方で、一部の人しか手に取ることができないのは残念なくらい、事前清算チケット特典の短編小説が登場人物たちの厚みを担っていました。
震災については、事前に注意喚起アナウンスが必要なほど直球の描写でした。フィクションの地震が起こることや、その地震により火花に起きる出来事は、演劇というフィクションが描ける未来のifです。それらは道久の物語と考えるとすべて合点がいきますが、であるならばやはり道久をもっと主人公として引き立たせる構成(道久を中心に置いたり、または全員よりも一歩引かせたり)だと、後半の展開にも切実さが増すのではと想像します。
ただそこで、火花のおばあちゃんである初枝の長セリフが、突然のフィクションのシーンに強度を持たせていました。年齢的にも難しい役だと思いますが、おぐりまさこさんが丁寧に演じていました。
全体を通して俳優達が各シーンを引っ張っていました。小ホールとはいえステージには十分な広さがあるので、奥行きを感じさせる動線を引くと、より俳優が動きやすいのではないかなと感じました。
甘い手
万能グローブ ガラパゴスダイナモス
J:COM北九州芸術劇場 小劇場(福岡県)
2022/04/23 (土) ~ 2022/04/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ドタバタコメディと言っていいのか……そういう印象を受ける元気の良さ、勢い、キャラクターの濃さ、賑やかさ、コミカルさなどが詰まっており、さらに細部へのこだわりもかなり練られていました。チラシのビジュアルとも重なるパッチワークのような美術が印象的で、サーカス小屋の入口のような、おもちゃ箱のイメージのようなワクワク感もあります。同じく当日パンフレットの顔写真つきの人物紹介も楽しい。音響や照明もベタな挿入だけれど描きたい世界がはっきりしていて思いきりがよく、さらに俳優もふくめて「うちの表現はこうだ!」という自信や信頼も垣間見えました。
ネタバレBOX
これまで九州ではいくつかの舞台を拝見したくらいですが、演劇に関わる人々の勢いと熱量を毎回感じます。今回はさまざまな俳優が出演していますが、九州のなかでどんなポジションやイメージなのかなど、客席と共有されている方が複数名いるなと思いました。劇団や俳優や演劇が、観客と関係を築いているのだなと嬉しくなる客席でした。実際、わたしも“ファン”になる気持ちです。
いろんな登場人物のエピソードが、よくこの時間内にこの人数分入ったなぁと驚くほど詰め込まれています。みんなが主人公で、みんなにドラマがあって、みんなに人生がある。どの人物も基本的には「誰か他者を思い、他者のために行動する」。そんなまっすぐな人物たちを生き生きと演じていて、デフォルメもされているけれどリアリティもきちんとあって、この学校に通いたいなぁと思うような(大変そうだけど、笑)、みんなを好きになっちゃう幸せな空間でした。
先生と付き合ってる(かもしれない)女子生徒というのは、一瞬「この設定大丈夫かしら…」ともよぎりましたが、先生側の思いが明らかになるにつれて納得できる展開に。女子生徒の恋心に限らず、いろんな型にハマっている若者の思いは肯定しつつ、その関係を肯定するわけではない作劇でした。昔ながらのキャラ設定ではあるのでもっと批判性をもって描いてもいいとは思いますが、基本的にはどんな思いの、どんな価値観の人物も、愛を持って作り上げられていました。
また、方言の響き(とくに語尾)が明るくて、その音の余韻が劇全体に漂っていく。方言であることが作風にとっても効果的でした。最高のエンターテイメントであるとともに、九州のことも好きになる地域密着の魅力がたっぷりでした。