残火 公演情報 廃墟文藝部「残火」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度

     実際にあった震災をテーマにしており、それゆえの困難さが演出やテクストに瑕疵として残ってしまっているドラマ作品だった。

    ネタバレBOX

     まず、震災によるPTSDを中心的なテーマとして取り上げていながら、観客の側にそれを抱えた人を想定できていない点で決定的な過失であろう。作中における地震の描写は暗転中に音だけで示す手法がとられており、その音響効果はかなりリアルであったため、間違いなく事前の注意喚起が必要だったが關が確認した範囲内では見つからなかった。震災を主題にしていることの提示だけでは不十分だろう。
     加えて、被災者をドラマチックなフィクションとして消費してしまうようなストーリー展開にも疑問を感じる。観客として、『残火』からは感傷的な同一化を狙っていること以外に特にメッセージは受け取れず、ストーリーの複数の箇所に安直な印象を受けた。災害を扱う作品はそれ以外の作品以上に慎重さが求められるが、いまひとつ感じられなかったのが残念である。
     キャラクターの人物描写は基本的に好ましいものだった。優れていた俳優としては元山未奈美氏が挙げられ、被災者として心身ともに傷を負いながら持ち前の強さと愛情深さで戦っている女性というデリケートな役を、緻密にかつ魅力的に演じていた。他方で、俳優の演技力に差が見られ、いまひとつ一体感に欠いた印象も受けた。
     震災という取り上げるに困難なテーマに果敢に取り組んだ意気込みは評価するものの、リアリズムに則した演出はどちらかというと映像向きのように感じられ、歴史的事件をテーマとする際に演劇には何ができるのかという問いが掘り下げられていなかったのが惜しかった。

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    2022/06/16 10:16

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