ふすまとぐち 公演情報 ホエイ「ふすまとぐち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    テキストと空間の立ち上げ方に巧緻さが光る、ホエイの代表作となり得る一作。

    ネタバレBOX

     姑による嫁に対する「いびり」とその結果の嫁の押し入れへの引きこもりが表出する家庭内の歪みを、時にコミカルに時に不条理に描く。温かい言葉はほとんどなく、互いに対する不寛容だけが込められているが、津軽弁のリズミカルなやりとりによって本来そこにある陰湿さがなくなっている。テキストは「嫁いびり」を通り越して家庭内暴力にまで展開する粘着と苛烈さを、しかしそれらを感じさせずにエンタメとして展開しており、山田百治のバランス感覚に脱帽した。
     そのバランスは俳優の演技にも見て取れる。山田が演じる老婆、中田麦平が演じる小学生男子は、もうほとんど本人であり老婆や小学生に見えるかというと怪しいのだが、それゆえに滑稽さと嫌悪感を抱かせるのに十分な効果がある。特に印象に残ったのは成田沙織の演じる小姑である。嫁や自分の娘に寄り添うように見せながら実は誰よりも自分本位である、その図々しい様を見事に演じ切っていた。
     嫁が引きこもっていた押し入れがやがて姑が寝たきりになるベッドとなる構造は見事であり、また単なる復讐劇にしない結末は観客に思考の余韻を与える。他方で、テーマとなるその押入れの「ふすま」を最後まで見たかったという欲望もなくはない。また、コミカルに振ったためか、いまひとつ感情的に動かされる部分が少なかったのは(恐らく意図的だろうが)やや物足りなさを感じた。とはいえ、テキストと空間の構成、演出の合致は見事であり、本作はホエイの代表作となり得るだろう。

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    2022/06/16 13:19

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