KAEの観てきた!クチコミ一覧

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BLUE/ORANGE

BLUE/ORANGE

シーエイティプロデュース

ワーサルシアター(東京都)

2010/04/22 (木) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

空席がもったいない!!
コリッチメンバーの皆さん、こんな素晴らしい芝居を観ずして、どこの劇場に行ってしまったの??と叫びたいくらい、見逃したらもったいない感いっぱいの何もかもクオリティ高い名作舞台でした。
あーそれなのに、客席、4分の1くらいかな?空席ありました。
残念です。本当に…

「兵器のある風景」でも感じましたが、このジョー・ペンホールという作家は、相当のつわものです。2時間半以上の会話劇をちっとも長いと感じさせない!!
スゴイです!!驚嘆します。
そして、見事この上ないキャスティング!!
千葉さんは、主要な役を演じつつ、よくぞここまで名演出ができるものだと、また敬服!!中嶋しゅうさんは、もちろん期待以上だし、チョウソンハさんも、もはや若手ナンバーワンではと思える実力!!
観ないと損だと断言できる名舞台でした。

ネタバレBOX

統合失調症か、境界性人格障害か、判断がつきにくい一人の精神疾患患者を巡って、2人の医師の間で繰り広げられる、全編、会話劇の重厚舞台。
長い会話劇でありながら、単なる説明台詞はないし、一つとして、無駄な台詞がないのも、「兵器のある風景」同様でした。
人間、自分の思考と思っていても、どこかで、他人の言動の影響を受け、それを自分の意思と思い込んで生きている…
それは、精神病の患者でも、常人でも、同じこと。だから、2人の医師も、自分の感情を抑えられなくなったり、精神安定剤に頼ったり…。
精神病患者と、正常人の境界も実ははっきりしない、人の世の常。
そんなことが、3人の名演により、実に丹念に活写された、近来稀に見る、会話劇の名作中の名作でした。
患者一人を部屋に残し、対立する医師2人の言い争いが、隣室から声のみ聞こえ、その間に、間もなく退院する患者が、何気なく、ライターをバックの中へ入れてしまう…。彼が退院した後、何かが起こることが暗示されながら、それ以上の説明はなし。その作劇と演出の妙に、心酔しました。

単なる、意見の違う人間同士の対立劇に留まらず、少数民族に対する、多数民族の優越意識とかも、巧みに織り交ぜ、脚本としては、超一級品の名作を、それを本以上に独自の色で彩色した3人の名演に、心から拍手喝采!!
最近、精神異常な役柄が多いチョウソンハさんも、その都度、役作りが違って、感心しました。益々、楽しみな俳優さんです。
厠の兵隊

厠の兵隊

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2010/04/16 (金) ~ 2010/04/26 (月)公演終了

満足度★★★

古き良きアングラの香り
桟敷童子、初観劇でした。
まず、会場の劇団員一丸となった、観客への心からの接待振りにとても好感を抱きました。
セットも素敵!!
旅芝居のアングラ版劇団風。
昔、寺山や、唐芝居が苦手だった自分には、あまり好きなタイプの演劇ではありませんでしたが、でも、この劇団の空気を好きな方にはたまらない魅力がある劇団だろうと、容易に推察できました。
何となく、先日観た黒色奇譚カナリア派風な舞台でしたが、同じアングラ色なら、私はこちらの方が好みです。
東さんが描こうとされていることが明確で、清々しいのですが、やや、説明過多だったのではと感じました。

ネタバレBOX

私の子供の頃は、都会でも汲み取り式のお便所で、時々、バキュームカーが、汚物を回収に来ていました。
夜、そのお便所に一人で行くと、納戸に置いてあった、人形がリアルにこちらを見ているような錯覚を覚え、怖かったことを思い出しました。
なかなかリアルなバキュームカーもどきの戦車?が大道具として、大変効果的に登場して、この劇団の志の高さを感じさせられました。

月子役の板垣さん、透役の鳥山さんが、見事に役を生きていて、舞台上で、輝いていました。
如何にもアングラ演劇におあつらえ向きな音楽も効果的で、耳に残りました。

ただ、少年の母親に対する思慕の象徴的描き方が秀逸なのに、殊更、説明台詞を付け足す必要を感じませんでした。
一切の説明を廃し、観客任せにした方が、この芝居の空気感にはそぐう気がしました。

7歳の少年が、母親に別れを告げるシーン、ふと、次男が幼稚園の時に「兄ちゃんはお父さんと結婚して。僕がお母さんと結婚するから」と言ったことを思い出し、心の中で一人受けてしまいました。
我が家の還暦夫も、未だに、郷里の母親の前では5歳の子供に返ります。
男性にとっては、やはり母親は永遠の女性なのでしょうね。
そんなことを考えさせられる、男性目線の芝居でした。
死ぬのは私ではない

死ぬのは私ではない

ワンツーワークス

劇場HOPE(東京都)

2010/04/21 (水) ~ 2010/04/29 (木)公演終了

満足度★★★★

テーマ自体は、難しいけれど
久しぶりの古城作品、やはりいろんな意味で、見応えありました。
死刑について考えさせる、テーマ自体は重たいし、瞬時に答えも出せない、難問を提示したような芝居ではありますが、古城さんの作品は、社会派であっても、演劇として、しっかり成立する要素の揃ったものなので、基本的に、いつも面白く拝見することができて、大好きです。

今回の舞台も、実際の事件に材を取り、作者自身の疑問や政治や社会に対する不審などを提示した大テーマがあるけれど、演劇作品として、不可欠なストーリー性や、登場人物の肉づけ、構成も見事な、無駄のない展開で、やはり古城さんは、演劇界でも、あまりいないタイプの得難い作家であり、演出家でいらっしゃると、感心しました。
アフタートークも含め、久々に、観劇後、少し、思慮深くなったように、錯覚できる、貴重な体験をさせて頂きました。

一跡ニ跳を解散されて淋しく思っていましたが、ワンツーワークスとして再スタートを切られて、今後の作品がまた楽しみになりました。
最初に、主人公の幸司役を演じられた、越智哲也さんは、目力と言い、ひときわ異彩を放つ役者さんで、今後、注目したい若手男優さんがまた一人増えました。

ネタバレBOX


実際の事件に材を取り、死刑制度に対する、古城さんの様々な疑問を、演劇という形態で、提示した舞台でした。
死刑を執行される幸司と、その双子の兄で、こちらは無期懲役になる憲司の2人の役は、キャスト7人で、代わる代わる演じるという、斬新な手法で、つまりは、一つの裁判を誰目線で見るのか、その目線によって、一つの事件や、被告の人間分析も変化するのだという、実験劇風作りになっていて、興味深く、拝見することができました。
観終わった後、私も、死刑制度に対する疑問や、ではどうあるのがベストなのだろうとか、いろいろ考えあぐねてしまいました。

でも、とにかく古城さんの作品は、そういった作者の思いを上から目線で押し付けるのではなく、きちんと、演劇として、芝居として、破綻なく、観客を常に厭きさせずに、最後まで見せてしまう手腕がお見事で、感服しました。
たとえば、この事件を取材する、女性ジャーナリストは、別居している夫と、話し合ってももはや意味がないと思っていたのに、取材するうちに、死刑を宣告された極悪人の被告が、人間性を回復する事実に触れて、最後、夫との話し合いに応じる様子を見せます。こういった、ストーリーの本流とは違う視点で、何気なく描く、登場人物の背景の見せ方が秀逸でした。

ただ、最初にある、コンテンポラリーダンス風の振付は、同じ振りがやや長すぎて、しつこい感じがしましたし、終盤の方の振付は、せっかくリアリティのある芝居の流れを壊し、不要というか蛇足というか、むしろあの演出はない方が良かった気がして、それだけがちょっと残念でした。
父との夏

父との夏

三田村組

サンモールスタジオ(東京都)

2010/04/21 (水) ~ 2010/04/29 (木)公演終了

満足度★★★★★

ジワーッと泣けました
前回公演、えらく不愉快なラストだったので、あまり期待せずに行きましたが、今回の三田村組には、じんわり泣かされました。

演劇ならではの手法をうまく使い、ハートウオーミングな家族劇に仕上げて、お見事でした。
やや、音響効果がベタな気はしたものの、でも、その音楽の巧みなフェードインに余計涙を誘われたのも、正直なところ。
照明や音響のスタッフ技術も優れていました。
キャストは全員が好演でしたが、中でも金坂役の水口さんが素晴らしくて、感嘆しました。
感動して、近くの喫茶店で余韻に浸っていたら、その水口さんが、役柄とは似ても似つかない風情、言動で、お仲間と歓談していらして、その役柄とのあまりのギャップに、かなりガッカリしたものの、舞台自体は、とても上質な作品でしたので、☆は、迷わず5つです。
まだ、かなりチケットが余っているそうです。お時間のある方は是非!!
三田村組、次回の蓬莱作品で、終了だそうです。
良いユニット劇団を知ったばかりなのに、残念です。

ネタバレBOX

フライヤーから、もっと戦争中のストーリーなのかと想像しましたが、現代の父と息子の確執と、その氷解が描かれた、上質な家庭劇でした。
朴訥な父役の三田村さんは、戦時中の話を息子に語る時、時々、台詞が咬むのですが、それがまた、その父親の朴訥さを滲ませて、逆に自然に見えました。
父と兄の仲を取り持とうと躍起になる、娘役の田口さんは、後半、今は亡き母の、若い時の役も兼ねますが、その両者の役作りに工夫が見られ、感心しました。
舞台を観ているに連れ、登場人物全てに愛着が湧き、部屋の橙色の明かりと共に、心が、じんわりと温かくなるのを感じました。

父が、劇作家である息子に、戦時中の話をし出すと、縁側が、戦時中の列車内になり、その戦時中の17歳の少年兵である父と、茶の間の息子と、息子の婚約者が、普通に会話をしたりするのも、何だか無性に微笑ましく思える、素敵な演出でした。
父の友達の少年兵役を演じた、水口ケンロウさん、全く当時の少年兵を実にリアルに演じ切られて、あっぱれ!!
それだけに、素の水口さんを拝見しなければ良かったと、喫茶店に入った自分の選択を後悔しています。(笑)
でも、見方を変えれば、それだけ名優だということですよね。
役者、水口さんと、作、演出の高橋いさをさん、今後も注目させて頂きます。
THE LEFT STUFF

THE LEFT STUFF

Piper

本多劇場(東京都)

2010/04/10 (土) ~ 2010/04/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

無性に嬉しさがこみ上げる公演
後藤ひろひとさん、以前から尊敬する演劇人のお一人ですが、今回の舞台で、益々ファンになりました。
何て、楽しいんでしょう!!!
もう、最高!!
こんなに、客席を上手に巻き込む公演には初めて出会った気がします。
後藤さんの、客をその気にさせる才能は大したものです。天才的!!
相武紗季さんも、どこの舞台女優さんだっけ?と思うくらい、舞台女優としての楽しみな才気を見せて下さって、もう、ひたすら幸せ感いっぱいになれた舞台でした。

今までに比べてドタバタ度は減ったけれど、むしろ各人の演技の幅を感じさせられる舞台で、不思議な感動すら、ありました。

ネタバレBOX

全然口コミも知らずに観に行ったら、舞台上にたくさんの観客がいてまずビックリ。
開演ギリギリに着いたので、説明は聞き逃しましたが、どうやら、観客は、調査員の一員として、ストーリーに参加する様子。
開幕したら、全く嘘偽りのない、観客参加型芝居の真髄を行く運びで、これまたビックリ。その日の観客の意思次第で、ストーリー展開は何通りにもなるようでした。これじゃ、違うパターンの日も観てみたくて仕方なくなります。

ストーリー展開は、時間堂の「月並みなはなし」のコメディバージョン的な筋立てでしたが、とにかく、後藤さんの才気に溢れたストーリー運びと演出アイデアが冴え渡り、客席の意見を求められる度に、私も本気でその誘い水に乗って、このお遊び風演劇を心底堪能させて頂きました。
こんなに、最初から最後まで、嬉しさを満喫した観劇経験は初めてかも。
下らない話のようでいながら、結構、矛盾とかなくて、骨格がしっかりしたコメディだし、ホントに最高!!
後藤さんは、笑いを生み出す天才、笑いの王様みたいでした。

最後に、全員が見せるパフォーマンスはとても息が合って、かなり感動ものでした。きっとすごく稽古されたんだろうなと感じました。
その日の観客に選ばれない場面もたくさんあることを考えると、相当この舞台の稽古は密度が濃かったのではないかしら。そのことを思うにつけ、真のエンターティナー集団のPiperには、限りなく賛辞を惜しみません。
本当に、ありがとう!!素敵な時間を過ごせました。 
『ハチクロニクル』 (公演終了)

『ハチクロニクル』 (公演終了)

劇団鋼鉄村松

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/04/16 (金) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度

アイデアセンスはいいけれど
前回公演、御ひいきの8割世界、吉岡さんの客演に惹かれ、観に行って、一度でファンになった、剛鉄村松。
だけど、どうも今回は、波長が合いませんでした。
「ハチミツとクローバー」を全く見たことがないので、台詞とかは、なるほど!と共感する部分もあるけれど、「これは誰さんスタンス」とか言われても、全然理解できないというネックもあったけれど、それ以上に、どうもストーリー運びがスマートでない感じを受けました。
理系、文系、哲学など、ありとあらゆる思考回路で、話を進める、斬新なアイデアと、小道具や大道具に名札つけたりするセンスには、好感持てたのですが、前回の、弾けるような面白さはなく、どうしてか?と改めて、当パン確認して、納得!
前回と作者が違うんだ!!
前回大変面白かった戦隊ものの作演は、今回、吉村役を演じた、バブル村松さんで、この芝居の方は、ボス村松さんだったのですね。
次回は、また、バブルさんの方の作演のようなので、次回に期待したいと思います。
前回、一目惚れした、ムラマツべスさんと村松かずおさんは、今回も、とてもナチュラル演技で、素敵でした。

ただ、この劇団、どうも、一般客を想定してない空気が…。
受付で名前を名乗ったら、「どなたのご関係ですか?」と聞かれ、ビックリ。
まるで、関係者しか来ないと想定してるみたい。終演後、ほとんど誰も席を立たないのも、皆、劇場内での役者面会を待っていたかららしく、私のような一般客はかなり少数のようでした。
だからなのか、あまりお客さん目線で、作劇されてない雰囲気があるのかも。
これは、前回も感じたのですが、べスさんや村松かずおさんに、他にない魅力がある反面、かなり、素人レベルの役者さんもいるのです。
何となく、どこかの学祭の催し物的な演劇表現レベルなのが、今回も気になったところでした。

ネタバレBOX

私も、以前、著作権関係の仕事をしていたので、皆さんと同じに、版権問題とかはやたら気になりました。
ウサギの洗濯機は、なかなか笑えました。
パソコンの蓋が透明なのもグッドアイデア。
いろいろ、着想が面白いだけに、劇団内部の自己満足に留まらず、もっと、客の思いを察した芝居作りを心がけてもらえたら、凄く、ユニークな劇団になるのではと思いました。
ブラッド・ブラザーズ

ブラッド・ブラザーズ

東宝

THEATRE1010(東京都)

2010/04/17 (土) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

拍手は嘘をつかない!!!
本当に、素晴らしい舞台でした。
皆さん、本気で拍手し続け、普通なら、それで終わりだった筈のカーテンコールが、何度もありました。
昨年、クリエで観た時は、演出も何だか腑に落ちませんでしたし、舞台を台無しにするキャストがいたため、愕然とする出来栄えでしたが、今回は、その2人のキャストが変わって、安崎さんと杜けあきさんになったので、本当に見違えるような素晴らしい作品に生まれ変わっていました。
今日が初日で、これから、日本全国の公演後、東京に戻るような雰囲気でしたから、是非是非、多くの演劇ファンの方にご覧頂きたい公演です。
田代、藤岡コンビは未見ですが、武田、岡田コンビの演技が賛辞の言葉が足りないくらい素晴らしいので、私としては、このお2人の方をおススメします。

楽曲も、ストーリーも、舞台セットも、とにかく、申し分のないミュージカルです。
最終的には悲劇ですが、本当に、人間が良く描かれているし、役者さんの演技が秀逸で、幼い頃のシーンは、笑いの絶えない作品です。
鈴木亜美さんも、キュートで素敵でした。

ネタバレBOX

東京キッドブラザーズの公演は観ていないものの、ジャニーズと歌穂さんの公演と、昨年のクリエで、今まで、4回程、観ています。
ストーリーの結末を知っているので、最初から、笑いつつ、泣いてしまうの連続でした。
30代の武田さんと、40代の岡田さんが、登場すると、どうしても、7歳のやんちゃな男の子にしか見えず、二人の、微笑ましいまでの、やり取りが、愛おしく、切なく、ずっと1幕を観ていたい思いでした。
2幕では、14歳から、成人する頃まで、お2人と亜美さんが、舞台の上で、無理なく成長して行く様を体現され、本当に、その演技の素晴らしさに、何度も胸が熱くなりました。
2人の兄サミー役の、伊藤明賢さんもいいし、杜けあきさんの、ライオンズ夫人が、これまた秀逸。
ナレーター役は、私の観た中では、一番適役の安崎さんで、安心して観られましたし、金さんのミセス・ジョンストンも、若いTSUKASAさんより、母親の哀切さと、肝っ玉の太さが混在する難役を演じきれていた気がします。
クリエでは、ラストシーンがあまりにもわざとらしくて、白けましたが、今回は、それ程の違和感がなく、感動的でした。
クリエの時より、楽曲が減ったり、展開もスピーデイになったようで、作品の緩急の度合いも、見事な配列でした。

今まで、あまり好きでなかった、演出のグレン・ウォルフォードさん、ちょっと見直しました。

本当に、可能な限り、たくさんの方の目に触れてほしい舞台です。    
戯伝写楽

戯伝写楽

フジテレビジョン

青山劇場(東京都)

2010/04/07 (水) ~ 2010/04/17 (土)公演終了

満足度★★★★

演技者揃いのミュージカルは嬉しい!
このところ、歌えるだけで、演技は蔑ろのミュージカルに当たることが多かったので、取りあえず、楽曲にはピンと来ないけれど、演技をできる役者さんの揃ったミュージカルは、それだけでも拾いものでした。
主役二人を脇で支える、山路さん、葛山さん、東山さん、ソニンさんが、特に素晴らしくて、一幕後半あたりから、ストーリーや演出にではなく、この脇役陣の好演に終始ワクワクしました。
楽曲と衣装がもっと質が高ければ、なかなか上出来な舞台だったろうにと、残念に思います。
橋本さんのキャラクターは、ご本人を良く知る中島さんの脚本が裏目に出た気もしなくはないかなと思います。もう少し、屈折した性格づけの方が、このストーリーには見合っているように思うのですが…。
大和さんは、きっと宛書きが効を奏したように思えました。

ネタバレBOX

一幕のラストの合唱が、名脇役に引き立てられ、本当に客冥利に尽きる嬉しいシーンでした。
中島さんの脚本と、荻田さんの演出の相性は今ひとつな感じではありましたが、後半の、山路さん、ソニンさんの演技には、固唾を呑んで見守るところが度々ありました。
東山さんの十返舎一九は、軽妙洒脱で、実に好感の持てるキャラクター。東山さんの軽やかな演技には脱帽しました。
ソニンさんは、何故花魁役?と最初は解せなかったけれど、後半の場面で、大納得!!本当に、素晴らしいミュージカル女優さんになられて、感無量でした。
これだけの好演者揃いの舞台はそうないだけに、楽曲が詰まらなかったのが、とても残念でなりません。
わが町

わが町

文学座

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2010/04/09 (金) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度

戯曲だけ読めば良かった(泣く)
昔から、文学座の芝居をあまり面白いと思った記憶はありませんが、それにしても、まさかここまで低落の極みとは思いませんでした。
古色蒼然の鼻白む演技を我慢して観ていたら、気分が悪くなりそうでした。
こんな芝居を子供に見せていたら、日本の演劇界に未来はないとさえ思います。
これは、由々しき大問題です。文学座の皆さん、老舗劇団在籍に胡坐をかいていないで、小劇場の精鋭劇団のワークショップでも受けてみたらと、本気で提言したい思いです。
ご高齢の戌井さんのご健在ぶりに敬意を表して、☆は一つですが、正直言えば評価外の舞台でした。
この劇団、才能ある役者さんも演出家も、このところ外部公演ばかりで、これでは、この劇団の未来はないと、心底危惧してしまいます。

ネタバレBOX

セットもほとんどなく、小道具は一切ない舞台。皆さん、ジェスチャーで、小道具がそこにあるかのような演技をされるものの、誰一人、その見えない小道具をあるように見せて下さる役者さんはいませんでした。その上、全員、役を演じている文学座の役者にしか見えない人だらけ。ただの一人も、その役の人物として舞台に存在してくれる人も、見当たりません。
特に、主役二人は、年月が過ぎても、年齢が変化した演技がまるでできなくて、これでは、養成所の研究生以下だと、呆れました。
結婚式の場面で、聖歌隊の一員として、素人さんが出演したり、子供なら誰でも良いとチョイスしたような、子役さんが登場しましたが、これは、文学座の皆さんの演技を引き立てるための要員かしらと、穿った見方までしたくなりました。
本当に、久しぶりに、心底、落胆し、怒り心頭の情けない観劇体験です。
もう、文学座、観たくないかも。
Side Show

Side Show

フジテレビジョン

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2010/04/07 (水) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★

観て良かったとは思うけれど
誰もがミュージカルに期待するような「ワクワクと、楽しい気分」とは全く対極のストーリーなので、ミュージカルなのに、ずっといろいろ頭の中で、思考がやむことがありませんでした。
予備知識なく観に行きましたが、この主人公の姉妹は実在の人物だったのですね。
だったら、実際の姉妹の話に即したストーリーなのでしょうが、これが、ブロードウェイミュージカルだという点に、ちょっと引っかかりました。
作者は、どういう思惑でこの作品をミュージカルにしようと決めたのか、大変気になりました。

ヒルトン姉妹を演じたのは、元宝ジェンヌの中でも、演技力に定評のあるお二人なので、後半は特に二人の哀切な演技表現に、涙が出そうでしたが、お一人、長く某劇団に在籍されていた役者さんが、演技者としての表現力が乏しい方だったために、その出掛かった涙が何度も目の奥に引っ込みました。
むしろ、大澄さんと役を交代されていたら、もっとクオリティの高い作品になっていたかも知れません。
その反面、若い伊礼彼方さんが、演技も歌も、身体表現も、実にフランクな表現力があって、また彼の表現者としての資質に、頼もしさを覚えました。

板垣さんの演出は、全体としては好きでしたが、最初、アンサンブルの人達が、一人一人登場してから、音楽が始まるところだけは、再考の余地ありと感じました。
楽曲の素晴らしさ、照明の美しさは、特筆ものだと思います。

ネタバレBOX

テリーのデイジーに対する真実の思いが、テリー役の役者さんの演技表現から、全く読み取れないので、このストーリーの真の哀切さがまるで伝わらない気がしました。テリー役が、もっと感情表現に優れた役者さんだったなら、もっとこの作品の深さが理解できたかも知れません。
逆に、伊礼さんは、歌も演技も身体表現も、実に見事で、感心しました。
最後に、姉妹が、二人が生きて行くために選ぶ道が、最善策ではあるだろうけれど、観る者には辛い選択なので、カーテンコールになっても、しばし、心が宙を彷徨うような思いでした。
最後の、樹里さんと貴城さんのデュエットは、心の琴線に触れる名曲でした。
この歌を聴いたことと、伊礼さんの好演を観られて、行って良かったと、心から思えたような気がしています。
かたりの椅子

かたりの椅子

ニ兎社

世田谷パブリックシアター(東京都)

2010/04/02 (金) ~ 2010/04/18 (日)公演終了

満足度★★★

評価に迷います
待ちに待った永井愛さんの新作上演、その上、御ひいきの役者さん、大沢健さんと馬木也さんの共演!逸る気持ちを抑えて三軒茶屋に向かいました。

一幕は、文句なく面白く拝見し、相変わらずのセットの配置や使い方の巧さにも唸りました。役者さんも、全員、素晴らしい!!

でも、2幕で、これは演劇作品としては、どうだろう?とだんだん疑問が湧いて来て、評価は、☆3か4で迷っています。
やはり、私としては、「歌わせたい男たち」のような、演劇作品としてのレベルの高さを期待していましたから…。

役者さんは、皆さん、本当に好演されていましたが、中でも、花王おさむさんの九ヶ谷の役作りは絶品でした。初めて拝見した、吉田ウーロン太さんもとても良い味を出されていました。馬木也さんは、いつ観ても素敵な役者さんで、間近の席で惚れ惚れしてしまいました。
あー、このキャストで、もっと永井愛さんの真骨頂舞台を拝見したかった!!

ネタバレBOX

この作品は、明らかに、近年話題になった、新国立劇場の芸術監督解任問題に材を取っています。
この問題に関して全く知らない観客にとっては、なかなか面白く観られる作品であることは確かだという気はするのですが、永井さんのように、当事者の一人なわけでもなく、この問題を中途半端に知っている、私のような観客には、この舞台、どのように映るだろうかと、後半はずっとそのことばかり、考えてしまいました。
というのは、銀粉蝶さん扮する天下り理事長の答弁の台詞には、かなり実際の新国立劇場の理事長の答弁そのままの台詞が引用されていたのです。
ここまで、題材を露呈しては、これは、演劇ではなく、非戦の会的なアジテーションになりはしないかという疑念が持たれました。
馬木也さんの演じる入川のモデルが、現芸術監督のUさんなら、後で、彼を裏切ることになる、竹下さん演じる六枝は、後任監督に決定している、Mさんと、事情を知る観客なら、どうしても想起しない筈はなく、このエンディングでは、Mさんを色眼鏡で観てしまう人が現れてもおかしくない気がしました。
更には、今年の演劇賞を取られたUさんに関しても、何か裏で画策があったかと誤解させるような台詞もあり、これが大変気になりました。
私は、演出家Uさんの大ファンなので、彼の受賞は、心底納得行くものなので、終盤の、入川に、自分から辞任してほしいと言うシーンで、交換条件として、賞の授与等の恩恵提示部分の台詞にとても引っかかりを感じてしまいました。
「歌わせたい男たち」は、永井さんのメッセージが色濃く出ていた作品ではありましたが、それをメッセージ臭くなく、巧く料理されて、一級品の演劇作品に創り上げていらしただけに、これは、何だか、永井さんの個人的私憤が強く出過ぎて、演劇作品としては、やや気持ちが上滑りしたのではという気がどうしてもしてなりませんでした。
そのことだけが、とても残念でなりません。
ムサシ

ムサシ

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2009/03/04 (水) ~ 2009/04/19 (日)公演終了

満足度★★★

今日、書いておこう!
過去の観劇作品については、特に良かったものだけ、書こうと決めて、「ムサシ」に関しては、コメントしていませんでしたが、作者が亡くなった今、やはり書いておこうと思います。
ちょうど、井上さんが、この「ムサシ」を書いていらっしゃる時に、戯曲セミナーの講義があり、「僕は、絶対、登場人物を死なせたくはない」とおっしゃっていたことを思い出します。だから、小次郎を死んだことにはせず、こういう作品を思いつかれたのだと思います。
復習の連鎖を断ち切らなければというお話もされていました。
そういう、作者自身の作劇意図を聞いた上で、この芝居を観たので、私自身は、結構この作品の奥深さを感じはしましたが、そういう先入観のない人には、あまり理解されない作品なのではと感じた舞台でした。
てんぷくトリオ的ドタバタギャグシーンがややしつこかったり、席の位置が悪く、前半ほとんどキャストの半分以上が見切れてしまい、声しか聞こえないのも残念でした。
後半の、白石さんと鈴木杏さんの丁々発止のやりとりは、痛快で、お二人の熱演は喝采ものでしたが…
いつのことからか、藤原さんの台詞が聞き取り辛くなり、役者さんとして、ちょっと低迷期に入られたか?と心配にもなりました。

ネタバレBOX

主役のお二人は、熱演ではあっても、好演とは言い難い気がしました。
とにかく、脇役陣の好演に支えられた舞台でした。
白石さんには、とにかく、何度も、涙が出る程、笑わせて頂きました。本当に、スゴイ女優さんです。
作者の意図もメッセージも、明快に理解はできるけれど、演劇としてのクオリティからすると、かなり、推敲の余地ありと感じざるを得ませんでした。
脇が全て幽霊だったというオチは、結局、作者の言いたいメッセージまでも、ファンタジーの世界に追いやってしまう結果になるだけなのではと、とても残念に思ったエンディングでした。
通し狂言 四谷怪談忠臣蔵

通し狂言 四谷怪談忠臣蔵

松竹

新橋演舞場(東京都)

2010/04/01 (木) ~ 2010/04/23 (金)公演終了

満足度★★★

新感線で観てみたい演目
猿之助一門の歌舞伎、久しぶりでした。
以前は体型まで、猿之助さんそっくりだった右近さんが、少しスッキリされて、歌舞伎役者としての華が増した気がしました。
元々、忠臣蔵外伝である、「四谷怪談」と、「仮名手本忠臣蔵」をうまくドッキングさせて、スピーデイに見せる演出手腕は見事でした。
何しろ、仮名手本は大序から4段目あたりまでが遅々として進まず、通し上演の時など、必ず睡魔に襲われ、かなり居眠りしても、まだ由良之助は着かず、塩冶判官と一緒に「由良之助はまだか」って言いたくなりますもの。(笑)

でも、忠臣蔵の方が巧くスピーディだった反面、四谷怪談の方は若干モタモタした印象がありました。

忠臣蔵と四谷怪談、どちらも一度は観てみたいという歌舞伎初心者にはおススメですが、演目の味わい深さには欠けるので、何度も両演目ご覧の方は、肩透かしを食うかもしれません。

これにもっとエンタメ要素を加味したら、新感線でやったら、とても良さそうな気がしました。途中から、この役はじゅんさんとか、これは粟根さんとか、勝手に脳内キャスティングして観ていたら、妙に楽しくなりました。

ネタバレBOX

何故か、新田義貞の霊まで出て来たり、いつもは敵役の定九郎がいい人だったり、四谷怪談の伊右衛門が、討ち入りの時は、師直の配下の小林平八郎に改名していたり、かなりとんでもない話に変わっている部分もありながら、本軸は、両方の演目の流れから逸脱していなくて、なかなか趣向が楽しい作品でした。
一幕の幕切れの両国橋の花火が綺麗!!普通の歌舞伎では見ない演出でした。
忠臣蔵がスピーデイに巧くまとまってわかりやすかったのに比べ、四谷怪談の方は、やや役者さんの動きがぎこちなくて、次の場面のための仕込みが客に気取られる箇所が何度か目に付き、気になりました。一番おかしかったのは、お岩が、後で自分の首が刺さって死ぬための刀を、懸命に柱の穴に突き刺していたこと。喜劇じゃないんだからと突っ込み入れたくなりました。
門之助さんと笑也さんが良かったなあと思いました。
無頼の女房

無頼の女房

劇団東京ヴォードヴィルショー

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/04/03 (土) ~ 2010/04/11 (日)公演終了

満足度

うーん、面白くない
中島さんの作品、ご自身の演出舞台は、あんまり面白くないってことを忘れて、観に行ってしまいましたが、やはりつまらなかった。
どうしてだろう?
あめくみちこさん、大西多摩恵さん、井之上隆志さんは、すごく良かったし、B作さんも悪くなかった。斉藤清六さんもいい味を出されていました。
でも、何か全体に面白くなくて、何度かウトウトしてしまいました。
何だか、一番の原因は本の出来ではと思います。
実在の作家をモデルにしているのだから、もっと深みのある作品になっていい筈なのに、何だか掘り下げ足りずな印象でした。
役者さん達が、皆さん、同じトーンで、声高に喋るのも、どうもうるさい感じがして、耳障りでした。

ネタバレBOX

たとえ一瞬にしても、原爆被害者で笑いを取るのは、ひどく不愉快に思いました。
たぶん、中島さん、演出には向いていらっしゃらない気がします。
これを鈴木裕美さんの演出で観たら、もっと印象が変わっていたかも。
たぶん、太宰をモデルにしたと思われる、豊臣の描き方が、非常に薄くて、残念でした。
でも、とにかく、あめくみちこさんは、実際の年齢を微塵も感じさせない可愛らしさで、驚愕ものでした。大好きな女優さんお二人の共演には、楽しませて頂けました。
とりあえず寝る女

とりあえず寝る女

箱庭円舞曲

駅前劇場(東京都)

2010/04/02 (金) ~ 2010/04/06 (火)公演終了

満足度★★★★

99%のリアル感
噂に違わず、箱庭円舞曲、大変実力ある劇団でした。古川さん、なかなの切れ者とお見受けしました。
一般家庭のそんじょそこらにあまり見受けられない情況設定なのに、何故かどこにでもありそうな話のような妙なリアル感のある、不思議な芝居でした。
とにかく登場人物の台詞が、全然作り物めいていなくて、そうそう、そんな言い方されたら、そういうリアクションになるなとか、こういう性格の人間は、ここでこんな見当違いなこと言う言うとか、妙に納得できてしまう自然体の台詞で、舞台が進行し、それでいながら、各人物の内面や関係性も、自然に観る者に理解させてしまう、作者の力量に、感服しました。
こんなに普通の会話劇テイストで、説明台詞が一切ないのに、こんなにクリアに情況把握させてくれる作品には初めて出会ったかもしれません。
役者さんも、皆さんすごくいい!!中でも、赤澤ムックさん、小林タクシーさん、爺隠才蔵さんの自然体の存在感には敬服しました。
これだけ、自然にリアル感があるので、唯一つ残念だったのは、特に最初のシーンの方で、人物間の台詞のやり取りの時、「えっつ、え?何?」的な言いよどんだりした時の間合いだけが、やけに嘘臭い芝居染みた微妙な間になっていた点。他の会話があまりにも自然体だったので、余計目についてしまいました。

舞台装置や照明も音響も、スタッフ技術も大変優れていて、また追いかけたい劇団が増えてしまいました。

ネタバレBOX

幕開きの庭の風景のため息の出るような美しさにまず魅了されました。
空気が読めず、思い込みの激しい純朴ストーカーの塩野谷役の和知さんの佇まいが、一服の清涼剤的な雰囲気でした。
高校生役を好演された井上みなみさんや、前述のお三人と合わせて、大変気になる役者さんが、また一挙に増えました。

あまりよく把握していないのに、奥の間に入って、赤澤ムックさん扮する千代海が、喧嘩の仲裁に入るシーン、表舞台では、別の人間模様が同時に繰り広げられ、その台詞がどちらもしっかり聞こえる、この上級者レベルの演出技にも感心しました。
何気ない台詞の中に、この家族の赤裸々な過去や、トラウマを小出しにして行く、古川さんの手腕に、かなりこの作品一つで心酔しました。
それだけに、あの前説は余計な感じがしました。キャラメルやセレソンとは違い、あーいう作風なら、すぐに芝居の世界に客を誘導した方が得策ではないかと思います。
数分の暗転で、見事に何もない部屋になってしまった時の驚きは、そのまま、真理と殊の心の空洞に重なった気がして、秀逸な転換でした。
真理と今野の抱擁、その時、真理が囁く台詞にぞくっとして、これで幕かと思いきや、まだその後があり、芝居はここでエンディングだぞ的でない、その幕切れシーンがまた見事でした。
あの時、美麗は、あんなに躊躇っていた、母親が買ったブラウスを着ていたのですね。
本当に、細部にまでこだわりのある舞台、2時間20分が、全く長く感じられず、素晴らしかった!!
団地に見えない間取りとか、過去に犯罪者だった人間が親睦会長?とか、そんな区画整理はあり得るか?とか、意地悪に観れば、突っ込みたくなる箇所もありましたが、それを超越するだけの、観る者を引き込む力のある、実に秀逸この上ない作品でした。
DOWNTOWN FOLLIES vol.7

DOWNTOWN FOLLIES vol.7

Aux-Sables

青山円形劇場(東京都)

2010/04/04 (日) ~ 2010/04/13 (火)公演終了

満足度★★★★

とても楽しかったけれど
高平さん、やはりさすがの構成、演出でした。
玉野さん、吉野さんがいないのに、二人が参加している時とは趣を変え、しっかり楽しめるエンタメショーを構築していました。
だけど、やっぱり、二人がいた方がずっと面白いし、見応えがあるのは確か。
いつものダウンタウンフォーリーズを100とするなら、70%位の楽しさでした。
さすがの香寿さん、歌穂さんと、2年振りに復帰の北村さんの芸達者女優3人の共演は、でも文句なく楽しめました。何だか平澤さんが場繋ぎ要員的スタンスで、それがちょっとお気の毒な感じではありましたが、極上のレビューショーであることは、間違いありません。

ネタバレBOX

大好きな歌穂、北村コンビのトクホン姉妹、昨年から登場の歌穂、香寿コンビの叶姉妹がとにかく愉快!!
落語の「たらちね」を、「マイフェアレディ」の替え歌でやったり、平澤さんの「ガリレオ」の福山さんの真似や、宝塚のグランドフィナーレのパロデイや、とにかく、ベテラン構成作家の高平さんならではの、アイデアの宝庫のようなレビューショーは、全制覇していますが、一度も面白くなかった例がなく、ただただ感服するばかりです。
やっぱり、観に行ってよかった!!
乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女

乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女

みきかせworks

ワーサルシアター(東京都)

2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了

満足度★★

イチゴ味が断然好み
今日は、シンクロ少女とてがみ座のハッカ味の方を観ました。
先日のイチゴ味が予想外に良かったので、期待していましたが、こちらは、どうも味付けが好みではなく、順番逆に観劇すればよかったかと後悔しました。
シンクロ少女は、いろんな意味で、強烈でした。あそこまで、私小説的演劇だと、何だか潔くて、嫌な気にはならなかったものの、どうやら、全て実話で、名前も仮名とかではないらしく、これ、無関係の人間は笑って観ていられても、もし私が、二人の親の立場だったら、絶対観たくない芝居だと思いました。
てがみ座は、いわゆる一般的なリーディングテイストで、シンクロ少女とは真逆で、安心して観られる反面、舞台としての面白さには欠けました。本公演を観ているので、どうしても比べてしまいますが、この「カシオペア」という作品は、やはり普通の演劇形態に向く作品ではないかなと強く感じました。日替わりキャストにしたのも、この公演にはマイナスに作用した気がします。他のキャスト日を観ていないから、断言はできませんが、少なくても、今日のお二人は、まだ、役が体に落ちていない感じがして、本を離して演技する部分以外は、どうしても、本を読んでいる感が強く、何だか、ワークショップ見学でもしているような気分でした。
ただ、てがみ座で唯一いいなと再発見したのは、最初と最後のト書きの言葉。本公演の時にはもちろんト書きなんて読まれないので、初めて聞いたわけですが、そのト書きの言葉の美しさにため息が出ました。長田さんって、こんなト書き一つにも才能を感じさせて下さるんだと、感激しました。

ネタバレBOX

2作品とも、離婚前の夫婦の話でしたが、テイストはまるっきり違い、そのコントラスト自体は大変面白いと思いました。
シンクロ少女は、台本の扱い方が、演出として大変効果的で、そのアイデアには感嘆しました。ただ、登場人物の名前までが実名なのは、何だか、近所の家の痴話喧嘩を、意思に反して目撃してしまったような、何とも言えない居心地の悪さも同時に感じてしまいました。そして、一番思ったのは、息子の嫁は、できれば演劇界の女性以外にしてほしいということ。(笑)
てがみ座の「カシオペア」は、本公演を観たから、余計そう思うのかもしれませんが、これは、二人の表情とか、距離感がとても重要な芝居だと思うので、椅子に座って、本に目を落としたリーディングでは、長田さんの描いたこの本の美しい心の軌跡が巧く表現し辛い形態だなと実感しました。
まして、日替わりキャストなので、たぶん他の3劇団より、キャストの役に対する思い入れがどうしても薄くなっているのではと感じました。
その証拠に、てがみ座が始まった途端、客席が軋む音が随所で起こり始めました。たぶん、集中力が切れて、椅子を座り直したり、気持ちが舞台から一歩引いた人がたくさんいたように感じます。演出的にも、他の3劇団に比べて、工夫が足りないと言うか、まだアマチュア的な演出だという気がしました。
一番期待したてがみ座が一番あたりまえの朗読公演になっていて、とても残念な気がします。
CLUB SEVEN 6th stage!

CLUB SEVEN 6th stage!

マリアート

天王洲 銀河劇場(東京都)

2010/03/29 (月) ~ 2010/04/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

「ありがとう!」と叫びたくなるショー
「クラブ7」は、大好きなショーで、いつも必ず観に行っていますが、毎回感嘆するのは、スタッフ・キャストが一丸となって、全身全霊で、お客さんを心行くまで、エンジョイさせて下さる、ショーマンシップの素晴らしさ!!
今回の公演は、正直言って、見た目の美しさで魅了させくれるタイプのキャストは一人もいませんでしたが、そのことが、内容的な充実に繋がったようで、大変密度の濃い構成の、楽しいエンタメショーに仕上がっていました。
半端ない運動量と早替わり、振りに、台詞に、歌詞に、出はけの順番と、キャストの皆さんのご苦労と記憶量は、尋常ではないと思うのに、そんな裏の大変さを微塵も感じさせない、プロ中のプロの大エンタメショーに、入場料だけではとても代価として不足だと感じるくらいの、たくさんの感激と満足を頂きました。
来年は、7ステージ目で、かなり大掛かりなものを計画されているとか。
今から、その「クラブ7」7thを拝見できる日が待ち遠しくてなりません。

ネタバレBOX

吉野さんや東山さん等の華のあるダンサーがいなかった分、いつものお茶らけたショート・コント風な場面が少なくなり、一つ一つのショートステージが、しっかりと構成されていて、厭きずに、ダレずに、楽しめた極上のショーでした。
ベテランの瀬下さんが加わったことで、本当に、コメディとしてのクオリティが高くなり、心底笑える面白さに満ちていました。
「レ・ミゼラブル」の楽曲を使用した、会社員の悲哀話に大ウケし、ドラマ収録コントの、端役女優役の瀬下さんの美輪さんパロデイ歌に喝采を叫び、原田さんと和音さんの美しい歌声に酔い、玉野さん、西村さん、原さんの、クラブ7常連メンバーのエンタティナー振りに心酔し、最後は、恒例の、五十音順ヒットメドレーをひたすら堪能し、これ以上ないくらい至福の時間を過ごさせて頂きました。
もう、感謝の気持ちでいっぱいです。
乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女

乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女

みきかせworks

ワーサルシアター(東京都)

2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

御見逸れしました!本田ライダーズ
いの一番に会場に着いたら、受付の周りに見知った顔!顔!顔!
これは、あまり面白くなかった時、コメント書き辛いななんて心配しましたが、まったくそんな心配はご無用で、こんな面白いリーディング公演には、初めてお目に掛かりました。
今日は、こゆび侍と本田ライダーズのイチゴ味でしたが、きっと劇団の雰囲気として、リーディングの形態はお誂え向きと予想したこゆび侍は期待通り。ところが、それ以上に、見せるリーディング形態が見事にはまった本田ライダーズの作品が超面白くて、まさか、リーディングで、こんなに笑うことになるとは予想だにしない楽しい作品でした。
本田ライダーズ、役者さんも皆さん凄く良いし、気になる劇団がまた一つ増えました。アフタートークで、チャリT企画の楢原さんが、「付いて行けない」を連呼していましたが、彼は、付いて行けないのではなく、最初から斜に構えて観ていたからではと思いました。だって、楢原さんの2倍ぐらいの年齢の私でも、心底可笑しくて、何度も大笑いしていましたから。

ネタバレBOX

こゆび侍は、椅子の足元を、衣類で埋め尽くし、蟻地獄に見立て、一方、本田ライダーズは、教会のパイプオルガンに見立てた、青い蛍光灯を縦置きして、共に、聴かせるだけでない、見せるリーディングを意識していました。
元々、成島作品は、聴かせる要素が強いお芝居が多いので、期待通り、むしろ、声だけで伝える方が相応しいと思える作品世界が構築され、廣瀬さんと佐藤さんの好演もあり、とても切なくなる幕切れでした。何度か、涙腺が緩みそうになりました。
本田ライダーズの方は、びっくりする程大きな台本を持っての朗読で、そこから既に、この愉快なお遊び芝居的作品世界にピッタリの小道具が用意されていて、すぐにこの劇団カラーに客席を誘導するセンスが抜群だと感じ入りました。脚立に足を広げて座る、ト書きの台詞も愉快で、役者さんのレベルも相当高くて、本田ライダーズの底力を、余すところなく見せて頂き、大満足でした。ずいぶん前に書かれた作品の焼き直しのようですが、何年も前の作品とは到底思えない、現代性があって、非常に好感を持てる作品でした。クドカン作品のような、痛快なユーモアがあり、林さんの作劇センスのファンになってしまいました。
聴かせるのと、見せるのと、全く味わいの違う二つの作品でしたが、案外、テーマは似通っていた気もします。
本田ライダーズの本公演、俄然楽しみになりました。
7ストーリーズ

7ストーリーズ

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/31 (水)公演終了

満足度★★★

5ストーリーズぐらいが良かったかも
モーリス・パニッチは、俳優座で上演した「金魚鉢の中の少女」がとても面白かったし、小林七緒さんは、「標的家族!」の演出が面白かったので、大変楽しみな舞台でした。
まず、劇場に入った途端、洒落たセットに目を奪われ、始まってしばらくは、期待通りに面白く拝見したのですが、6っつ目の窓の中の住人の話しになったあたりから、だんだん眠気が襲って来て、ちょっとウトウトしてしまう箇所が出始めました。私だけでなく、その頃から、客席にワサワサとした空気が充満し始めて、何となく皆の集中力が途切れた空気が伝播するのを感じました。
人生哲学テイストのブラックコメディ風で、7つの部屋の住人達のキャラクターも、デフォルメされているとは言え、なかなかいそうな人物ばかりで、大変ストーリー展開も気が効いて面白かったのですが、7つの住人のエピソードはやや長く感じました。
5つのストーリーぐらいにして、1時間半に収めた方が、もっと厭きずに観られたし、中身も濃くなった気がします。
一人だけ、一役を通した、男役の小森創介さんが、自然体の演技で、終始舞台を引っ張って、素敵な舞台表現で、魅せて下さった反面、石橋さんの如何にも演じています感漂う演技と波長が合わず、そのことが、舞台全体のクオリテイを下げてしまう原因になり、残念でした。
青年座の大家さんは、八面六臂の活躍で、特に、最初の元俳優の役は、コメディセンスが素晴らしく、大家さんて、こんなに喜劇向きな方だったかと、認識を新たにしました。
三鴨さんはいつ何を観ても三鴨さん風ですが、でも彼女の独特な声や演技は、いつでも、舞台を明るくする効果があり、決して苦手な女優さんではないのですが、今回の舞台では、もう少しトーンを落とした喋り方の方がベターな気がしました。
「オールナイトフジ」にご出演の頃は、どちらかと言えば、好きになれないタレントさんだった、山崎さんは、その後、文学座で、験算を積まれて、大変味わいのある女優さんになられたなあと、感じ入りました。
変な心理学者と、100歳のお婆さん役を演じられた、柴田さんが、この作品の核になる役を好演され、舞台を引き締めていました。

終わった途端、後ろの席の熟年女性客が、口々に「あー、疲れた!絶対、こんな芝居、こんな劇場、もう二度と来ない!」とえらくご立腹の様子でしたが、これもきっと、もう少し、ストーリーが手際よくまとまっていたら、そこまでの思いは生まれなかったのではと思います。
序盤が大変興味深く楽しめただけに、終盤が、やや冗長に感じられたことが、もったいない気がしてしまいました。

ネタバレBOX

七つの窓が、舞台平面にしつらえてあり、何となく、日光江戸村のからくり忍者屋敷風な、視覚的錯覚を生み出し、大変ユニークなセットでした。
一番素敵だったのは、自殺しようとしていた男と、元俳優の結婚詐欺師まがいの男が、並んで、窓枠に腰掛けて話すシーン。つまり、それは二人が実際には、舞台に寝て話すわけですが、どう観ても、窓に座っているようにしか見えず、洒落た演出だなと感激しました。
男役の小森さん以外は、全員、各部屋の住人や来客役を、早替えで、何役も演じますが、大家さんと柴田さん、山崎さんの演じ分けが見事な反面、同じ人物が違う窓から登場したのかと勘違いしてしまう、役者さんもいて、キャストの演技レベルに差があったのが、残念でした。好演の大家さんでさえ、何度か台詞を噛んでいたし…。
最後の窓の住人の100歳のお婆さんは、何となく、オスカー・ワイルドの「幸福の王子」を想起させました。
モーリス・パニッチのオリジナル舞台を知らないので、何とも言えませんが、このセットや、演出が、もし小林七緒さんの工夫だとしたら、小林さんは、演出家として非凡な才能をお持ちだとお見受けします。
モーリス・パニッチと小林さんは、私にとって、共にこれからも注目したい舞台人となりました。

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