Romantic Love?【ご来場ありがとうございました】
劇団競泳水着
サンモールスタジオ(東京都)
2013/12/19 (木) ~ 2013/12/26 (木)公演終了
満足度★
還暦目前おばさんのハートは撃たない
なくしてわかるものがあります。
芝居の内容に関してではありません。
今までの競泳水着を支えていた、類稀な名女優さん達の不在がただただ残念でした。
還暦目前の年齢ながら、これまでは、競泳水着の恋愛もの、大好きでした。
青春時代の胸キュンを思い出せたから。
でも、たぶん、今夜が、私と競泳水着の最後の時間だったと思います。
おばさんにとっては、腑抜け感と劣化感が否めない、大変残念な出来ばえの作品でした。
脚本の行間を埋められる役者さんが一人も存在しなかったのが、惜しまれます。
スクルージ
ホリプロ
赤坂ACTシアター(東京都)
2013/12/08 (日) ~ 2013/12/17 (火)公演終了
満足度★★★★
人生はやり直せる?
そうだといいけど、あくまでも寓話だという気もした物語。
でも、心は温かくなりました。
14年振りの再演だそうですが、私は、ミュージカルで観るのは初めて。
「サンキューベリーマッチ」の歌は、文句なく楽しくて、心が和みました。
前に、別のキャストの映像を少しだけ観ましたが、キャストが充実しているので、見応え十分な素敵な舞台でした。
今井さんの第二の聖霊が愉快。加藤清史郎君の弟さん、憲史郎君が、幼いながら、最後まで、役として舞台にいる姿には、感銘を受けました。今後、楽しみな兄弟です。
役者さん全員、溌剌として、観ていて、大変気持ちの良い舞台でした。アンサンブルの皆さんも、それぞれ素敵でしたが、特に、スープ屋さんを演じた俳優さんの動きがシャープで、印象に残りました。
市村さんのスクルージは、さすがなんですが、強欲爺の時は、もっと、嫌な人間になりきっている方が、後の変化が意味を持つのではと思いました。
最初から、愛嬌あり過ぎな気がして、テーマが薄まってしまう気がします。
交響劇「船に乗れ!」
アトリエ・ダンカン
東急シアターオーブ(東京都)
2013/12/13 (金) ~ 2013/12/21 (土)公演終了
満足度★★★★
人生哲学書を読む趣きでした
何も事前情報を知らずに観劇したので、意外な印象でした。
のだめの高校版的な、音楽学校青春ストーリーを想像していましたが、もっとシビアで、やや胸に痛いストーリー展開でした。
「若きウエルテルの悩み」とか「初恋」とか、「車輪の下」とか、柔らかバージョンの「罪と罰」風と言うか…。とにかく、青春時代に読み漁った、海外青春小説の雰囲気が漂う、かなり深い内容のミュージカルでした。
育三郎さんが、童顔なので、高校生役が無理なく観られ、まさに適任でした。
田中麗奈さんのピアノ教師は、同性の私から観ても、大変魅惑的で、男子生徒がときめくのも無理ないと思える好配役。青春の痛みを語る、主人公の壮年期を演じる福井さんも、相変わらず、こういう役柄では光ります。
後半、重要な人物になる、倫社教師の加藤さんは、授業シーンなどに、リアルな存在感があったのですが、1幕でマイクの調子が悪く、何度も雑音を生じてしまったのは残念でした。枝里子の母役の木の実さん、サトルの祖父役の小野さんなど、脇役も、大変贅沢な布陣で、ドラマに厚みを持たせました。
オーケストラの見せ方にも工夫があり、想像したより、遥かに見応え充分な舞台でした。
CHESS in Concert セカンドヴァージョン
梅田芸術劇場
東京国際フォーラム ホールC(東京都)
2013/12/12 (木) ~ 2013/12/15 (日)公演終了
満足度★★★
歌詞が聞き取りにくいのが惜しい
初演も観て、これは本ステージで観たかったと思いましたが、今回もコンサートバージョンでの再演。
アバの曲は難解ですが、どれも名曲揃いで、聴きごたえはあるのですが、どうしても訳詞のせいか、歌詞の語数が多く、演奏に打ち消されて、聞き取れない部分が多かったのは残念でした。
特に、カルテットの歌唱部分は、4人の歌う歌詞が折り重なり、荘厳ではあるのですが、肝心の内容にも言及している台詞代りにもなっているので、どういう意味の歌詞かが聞き取れないのは、痛手でした。
初参加の戸井さんは、口跡も良く、滑舌も確かで、一番歌がきちんと響きました。
AKANE LIVさんはロックミュージカル、「モーツアルト」の時にも驚きましたが、大変魅力的な女優さんで、今回のスベトラーナ役も、心に残りました。
マテさんのアービターは、ちょっと他の俳優さんと異質過ぎて、何故キャスティングされたのか、やや疑問を感じました。
安蘭さん、石井さん、中川さんの歌唱力には、文句はないのですが、3人の心情の変化が、これもコンサートの弱みか、あまり表現されていないので、ストーリーの流れを、体感できるまでには理解し辛く、その点に、やや物足りなさが残りました。
Be My Baby いとしのベイビー
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2013/11/27 (水) ~ 2013/12/08 (日)公演終了
満足度★★★★
ほんわか楽しいけれども、
それだけではない、裏に、人間の業や性も垣間見れる、ちょっとシビアな部分もあるのが、なかなか洒落た戯曲でした。
加藤義宗さんは、10代の初舞台の時から、拝見していますが、このところ、舞台経験を積まれて、安定した演技のできる俳優さんに成長されたなあと、嬉しく思いました。それに、声がとても素敵!
NLTでのご出演が最近滅多にない阿知波さんは、やはりこういう役は、安心して拝見できます。東宝ミュージカルでは、度々拝見していますが、こういうコメディのストレートプレイでのご活躍も、もっと観たいと思いました。
お父様の加藤さんも、伸び伸び楽しげに演じていらして、その楽しさが、客席にまで伝染するような雰囲気でした。
世の中、暗いニュースだらけで、将来への不安も増大している折、こういう心がほっこりとなれる芝居は、気持ちが救われます。
CLUB SEVEN 9th stage!
東宝
シアタークリエ(東京都)
2013/12/01 (日) ~ 2013/12/19 (木)公演終了
満足度★★★★
何はなくても50音ヒットメドレーは最強
もう10周年なんですね。
初演から、全公演観ているから、まるで、子供の成長を見る思い。
やはり、玉野、西村、吉野さんの3人が揃うと、舞台が締まります。
コント部分が、昔ほど面白くなくても、後半の50音メドレーの楽しさが、全てを凌駕。
これからも、続く限り、見続けたいと思いました。
やはり、女性陣がいないのは、やや淋しいけれど、若いエネルギーと、それを温かく見守る3人のバランスが絶妙でした。
さよならを教えて
サスペンデッズ
ザ・スズナリ(東京都)
2013/12/04 (水) ~ 2013/12/09 (月)公演終了
過去の七番煎じ?あり得ないくらい失望
何?どうしちゃったの?早船さん!と叫びたい気持ちでした。
幾ら、佐藤さんと伊藤さんが不在だとしても、それ以前に、とてもこれが、いつもの早船さんの作品とは信じ難いほどの駄作脚本であり、陳腐な演出で、正直、愕然とする思いでした。
ヒロインの女優さんが、役柄に合わないキャスティングだったことも手伝って、何一つ、心の奥に響くものがない舞台でした。
凄く素敵な作品を上演する劇団だからと、誰かを誘って観に行かなくて良かったと、つくづく思いました。
客席の皆さんに言いたかった。「いつもはこんなじゃないのよー」って。
ピグマリオン
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2013/11/13 (水) ~ 2013/12/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
比較演劇学のテキストとして最高!
「マイフェア・レデイ」は、日本初演の江利チエミさんのイライザから、大地さんの何度目かのイライザまで、全公演観た程の、「マイフェア…」フェチの私。
平幹二郎さんのヒギンズも、任でないイライザ女優には目を瞑り、拝見しました。
だから、今回の配役が発表された日から、今日の観劇を待ち侘びていました。
バーナード・ショーの原作は、大変シニカルだとは耳にしていましたが、実際「ピグマリオン」を拝見して、ミュージカルとほぼ同じストーリー展開、台詞でありながら、こうまで、真逆なシチュエーションの芝居だとは、目から鱗状態で、これ程、ワクワクドキドキしながら観劇したのも久しぶりの体験でした。
平父子のヒギンズを観られたことも嬉しく、その上、共演陣が、私の好きな俳優さんばかりで、個人的にも至福の時間でした。
ある意味、これは、最高のハッピーエンドかもしれません。少なくても、女性の私から観ると、イライザの悟りに歓喜してしまうラストシーンでした。
石原さとみさん、以前から、大変魅力的な女優さんだと思っていましたが、この作品、石原さんの代表作になるでしょうね。何もかも、どのシーンも魅力的でした。
いのうえシェイクスピア「鉈切り丸」~W.シェイクスピア<リチャード三世>より
パルコ・プロデュース
東急シアターオーブ(東京都)
2013/11/08 (金) ~ 2013/11/30 (土)公演終了
満足度★★★★★
シェークスピアを凌ぐ深さ
イヤア、あまり期待せずに行ったので、正直ビックリ!
以前、古田新太さんが演じた「リチャード3世」があまりにお粗末だったので、これほどの上出来なお芝居が立ち上がるとは期待していませんでした。
源氏の戦乱の時代に、うまく話を置き換えて、その手腕に脱帽。
客演陣も、お一人を除いて、皆さん、大健闘の好演ぶりでした。
千葉さんの出番が少なかったのはやや残念でしたが…。
ちょっと目を覆いたくなる残虐な場面もあるけれど、それがまた、主人公の生まれと環境の帰結としての残酷な現実や、人間の性を活写して、心に残像を刻む所以でもありました。
さらば八月の大地
松竹
新橋演舞場(東京都)
2013/11/01 (金) ~ 2013/11/25 (月)公演終了
満足度★★★★
演舞場作品としては合格だと思う
これが、もし、新国立劇場とかでの上演作品なら、緩さが大失点になるのではと思うベタさがありましたが、演舞場で、幕間35分ある芝居では、これで及第点だと思いました。
山田洋次監督の演出舞台は、「東京物語」に次いでこれが2作目だと思うのですが、心配された程、演劇を度外視した演出ではありませんでした。
そんな筈もないのに、勘三郎さんが、張の役を演じたのを観た記憶があるかのように、勘九郎さんがお父様を彷彿とさせる名演でした。
檀さんは、美しく清楚で、歌声も可憐。私の心の中で、双壁スタンスの俳優、馬木也さんと壮太郎さんの共演も、個人的に大変嬉しく、その上、馬木也さんのコメディ部門担当演技が絶品でした。
今井翼さんの台詞は時として、聴きとりにくい部分もありましたが、あの事務所の中では、大変引き出しの多い俳優さんで、第二の川崎麻世さん的な存在感がありました。
他にも、広岡さん、有薗さん、木場さん等、様々なジャンルの役者さんの集合体の舞台にも関わらず、お互いの演技に不協和音が出ず、チームワークの良さを感じました。
山田監督が、スタンディングの拍手に感激され、幾分涙声になっていらしたのは、新鮮な驚きでした。
満映の理事長役の木場さんのご両親は、満州からの引揚げ者だったそうで、両親にも見せたかったとのしんみり発言に、ちょっと貰い泣きしそうになりました。
中国人と、日本人が、お互いの映画愛で、簡単に理解し合えてしまう設定には、ややストーリーのベタさを感じなくもないのですが、娯楽舞台なのですから、これはこれで、上出来ではと感じました。
ただ、最後のシーンは、幾ら何でもやや引っ張り過ぎ。ソ連が攻めて来るかもと、緊迫した状況の別れ方には、とても思えず、最後で、やや白けてしまった印象は拭えませんでした。
片鱗
イキウメ
青山円形劇場(東京都)
2013/11/08 (金) ~ 2013/11/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
ホラー作品だとは思わない
久しぶりに、イキウメの本領発揮の舞台だと感じました。
思索的、哲学的にして、やや怪奇的味わいが絶妙!
小泉八雲の怪奇小説を思い出したりもしました。
現代の怪談的な作りながら、どこか究極の人間賛歌風な後味が素晴らしかった!
今回、一番驚いたのは、大窪さんの演者としての並々ならぬ躍進ぶりでした。
かなり、円形劇場の芝居は観ている方だと思いますが、この劇場の使い方も、私のベスト1という衝撃的なセッティングでした。
それにしても、手塚さん、存在そのものが不気味で、改めて凄い役者さんだなあと感嘆!森下さんも、私が観たこれまでの芝居の中で、一番存在感ある役柄でした。
今後のイキウメが益々楽しみ。そして、前川作品の演出は、やはり前川さんご自身じゃないとと、改めて痛感しました。
地を渡る舟 -1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち-
てがみ座
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2013/11/20 (水) ~ 2013/11/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
長田さんは、井上さんの再来かも
旗揚げから何作か拝見したてがみ座ですが、このところ、諸事情でしばらくご無沙汰していました。
久しぶりに観ようかなと思ったのは、古川さんがご出演になるのと、渋沢栄一の息子さん、渋沢秀雄さんと亡父が昔テレビ番組でレギュラー共演者だったので、私も何度か秀雄さんとは面識があったからです。
子供のころでしたから、渋沢家の事情には全く無頓着で、秀雄さんとこの芝居に登場する敬三さんの関係もよく存じあげませんでしたが…。
ですから、この芝居で描かれた物語は、私にとっては実に新鮮でした。
どこまでが虚構で、どこからが真実か、私には、わからないながら、このストーリーは、民俗学を通して、日本の戦争時代を投影する趣で、構成や演出がとても時機を得て巧みな舞台だったと感嘆しました。
大まかに分類すれば、歴史劇的な作りでもあるのに、しっかりと各登場人物に、血が通っている脚本に、敬意を表したくなります。
相変わらず、扇田さんの演出も、細やかで、技法が卓越していて、感心しました。
丁寧な長田、扇田ご両人の巧みの技に、華のある役者さんを得て、全てにおいて、申し分のない演劇だったと思います。
ここには映画館があった
燐光群
座・高円寺1(東京都)
2013/11/15 (金) ~ 2013/11/26 (火)公演終了
満足度★★★
舞台機構的には、成功作なれど
しばらく坂手作品には御無沙汰続きでした。
社会性があって、勉強にはなるけれど、少し理屈っぽくなって来たし、役者さんが高齢化されて、坂手さんの書く膨大な台詞を消化できなくなりつつある感じで…。
でも、私もかつて、映画に通い倒した時代があるので、懐かしくて、一昨日、劇作家協会割引で予約して、行ってみました。
伊東豊雄さんの建築物が大の苦手の私は、この劇場ができた時から、演劇愛を全く感じない劇場の作りに不満を覚えていましたが、今回の舞台は、弱点を生かした舞台機構のアイデアが成功していました。
横長の舞台を見上げる形の観劇は、芝居の内容以前に、人間工学的に不自然な体形を強いられ、苦痛を感じることが多々ありましたが、この舞台は、客席より、舞台が低位にあり、大変見易く、空間に馴染むのにも時間が掛りませんでした。
ただ、心配したように、社会性を前面に出す坂手風劇作は、今回の作品でも例外でなく、どうしても作者の言いたいことを伝える舞台が第一義となって、後半から、世界観がどんどんいつもの坂手風味になってしまったのは、やや残念でした。
古き良き映画館へのノスタルジーに主軸を置き、それとなく、沖縄問題などを隠し味ぐらいな感じで提示した方が、この芝居の場合、効果的だったように感じます。
芝居の中で、「ニューシネマパラダイス」がディレクターズカット版は感動作だったのに、完全版は、蛇足で、すっかり駄作になってしまったというような台詞があり、内心、そうそう坂手さんの書く芝居も、そういうところあるあるなんて思っていたので、観終えて、政治色が強い部分に、同じような感想を抱いてしまった自分に受けてしまいました。
当パンに記されている、劇中に言及される映画群リスト中、私が観た記憶のある映画は、ちょうど50本でした。
この作品の舞台になる時代に、きっと私も一番映画を観たのだと思います。
それに、自分のラジオ番組が始まる時に、ホテルでジュリアーノ・ジェンマさんと会って、私への応援メッセージを頂いたことがあるので、彼の名前が出てきた途端、自分まで、あの頃に気持ちがタイムスリップしたりもしました。
でも、これらの映画を観たことがない観客には、この舞台、どうだったのかと大変疑問でもあります。それでか、かなりモゾモゾ動いたり、寝ていた観客も多数いました。
そろそろ、燐光群の芝居作り、再考の時期かもしれません。
ブロードウェイミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング」~それでも僕らは前へ進む~
ホリプロ
天王洲 銀河劇場(東京都)
2013/11/01 (金) ~ 2013/11/17 (日)公演終了
満足度★★
表層的な脚本と女優陣の演技
一家揃って、大の小池徹平さんのファンなのと、信頼する唯一の劇評家の方が、賛辞を書かれていたので、大変楽しみだったのですが、今回ばかりは、Hさんの劇評とは、真逆の感想を持ちました。
ソンドハイムの楽曲は、彼にしては、親しみ易く、耳馴染みの良い曲が多く、満足でしたが、脚本がまず浅薄この上ない気がしました。
人間描写も、エピソードも、既成の劇作と比べても、独創性もないし、深みも感じられませんでした。如何にも安易に頭で考えたというエピソードの積み重ねで、登場人物の葛藤が、安っぽく映りました。
その上、これは、演じ手の女優さんのせいと言うよりは、キャスティングされた方の選択が間違っていたと思うのですが、役を掘り下げる演技力のない方が、まるで御自身とは共通性のない役柄を演じているために、作品のレベルをかなり下げてしまいました。
20年の歳月を掛けたストーリーにも関わらず、誰も、舞台上で、年月の変遷を体現して下さらない。メークとかを変えないでも、表情や仕草や舞台上の佇まいで、その人の人生を演じきる技量のある役者さんはそもそもあまり存在しないとは言え、このあまりにも変化なしの20年にはちょっと唖然としてしまいました。
脚本にも、演技にも、あまりにもリアルさがないので、登場人物の誰一人にも共感することができず、ずっと傍観するのみでした。
それを証明するように、客席の拍手にも、観客の熱は感じられませんでした。
でもでも、やはり、小池さんは、芸能界の奇跡!
彼のお見送りを受けた観客は、老いも若きも、皆ルンルンで、「可愛い!会えて良かった!」と叫び、幸福感に満ち溢れて、帰路についたようでした。
初ミュージカル出演で、しかも、難曲のソンドハイムを歌いこなせるかと、内心心配でしたが、美しく力強い声で、熱唱され、小池さんの歌唱が、実は一番胸に沁みました。
息をひそめて―シリア革命の真実―
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2013/11/11 (月) ~ 2013/11/17 (日)公演終了
満足度★★★★
テレビのドキュメンタリーよりは、身近に感じる
学生時代、世界の情勢には疎い人間でしたが、池上さんのお陰で、ずいぶん、知識が増えた昨今、アラブの春以来、注目していたシリア情勢を勉強したい思いから、観劇して来ました。
日本のドキュメンタリー番組はいいのですが、実は、私、海外のドキュメンタリー番組がやや苦手です。何故なら、ある大手声優プロダクションの俳優が、大仰に、吹き替えをするので、実際の映像を放映してるのにも関わらず、鼻白む思いをいつもするから。
ですから、このドキュメンタリー芝居は、逆に、役者さん達の熱演により、真実を伝える効果がかなりあったと思いました。
お若いのに、こんな激戦の地に足を踏み入れて、7か月も、秘密裏に取材を続けたゾウさん達のご努力には、本当に頭が下がります。
国連でさえ、手を拱いているシリアの悲惨な現状を、我々日本人が知ったところで、手も足も出ないのですが、でも、こういう作品を、わざわざ劇場に足を運ぶ人ばかりでなく、もっと一般の方々にも広めていく方法はないものかと、強く思いました。
アサド大統領は、映像で観る限り、顔つきも温和な雰囲気で、とてもこんな殺戮を繰り返している人には見えません。
我が国の首相も、穏やかな雰囲気ですが、実は、かなりこの国を危険な状況に推し進めようとしています。
シリアの問題は、決して対岸の火事ではないと思うのです。
だから、まずとにかく世界情勢に目を向ける必要があります。そういう意味で、このドキュメンタリー芝居の手法は、一定の効果はあると確信します。
ただ、この舞台の最初に、この芝居は、台詞の全てが、インタビューをしたシリアの人達の生の声で、何一つ言葉を変えることなく、そのまま忠実に再現されているといった注釈が付きましたが、この点に関しては、やや懐疑的な思いを抱きました。
架空の人物を登場させてはいないと思うけれど、彼らの言葉を一字一句、何も変えずに、芝居に構築するのには、やや無理があるようにも思うのです。
少なからず、劇的に見せるための配慮がなされているようにも感じられました。
とは言え、日本で、安穏と暮らしていては見えてこない数々の事実が提示された芝居であることは紛れもなく、インパクトある演劇であることは、確実。
我が国の行く末も含め、いろいろ考えさせられました。
シリア難民の女性を性的対象として狙った、偽装結婚が横行しているというニュースを読み、遠く離れて、何ひとつ、援助の手を差し伸べられない状況に歯がゆさを覚えるばかりです。
テロリストは山手線に乗る
劇団青年座
青年座劇場(東京都)
2013/11/05 (火) ~ 2013/11/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
芝居そのものは素晴らしいのに…
その前に、どうしても言っておきたいことがある。
自由席時の客席誘導係の方の、老舗劇団にはあるまじき言動に怒り心頭になりました。
中年の男性の方が、たぶん研究生の陣頭指揮をして会場案内をやっていたのですが、とにかくこの方の言動が、何から何まで、客に対しての礼を失しているのです。
手前に座っている客に対して、開演目前に来た客を座らせるために、「つめて下さい」と言う。その客が指図に従わないと、「前を通ってもいいんなら、そのままでもいいですけど」とかあり得ない暴言。大きな声で、「後二人!」とか叫んだり、「そこ3人並びで座らせて」とか言ったり、客席に座った青年座の俳優さんに呼び捨てで、「○○、悪い、そこどいて、あっち」とか移動させたり、もう、会社の忘年会の席順決めてるんじゃないのよとどやしたくなる気分でした。
こんなに手際が悪いなら、最初から指定席にすればいいのに。誰か一人が客席にいて、入って来た客をそれとなく、誘導すればまだしも、勝手に座らせておいて、後で移動させようとして、それも、「申し訳ありませんが、お詰め下さいますか?」とか、低姿勢で、依頼するならいざしらず、何、あの言い草!!
本当に、腹が立ちました。そうやって采配が下手だから、案の定、開演時間は過ぎても、一向に客誘導は終わりが見えず、10分ぐらい押しての開演でしたが、遅れるお詫びはもちろんなし。
でも、芝居が始まって、面白いので、舞台に集中して、その怒りが少し静まったのも束の間、まだまだ遅れてくる客続出で、その度、舞台前方に、補助席を作って、客を誘導するから、またまた、舞台の興を殺がれる。
結局、舞台の世界に気持ちよく入り込めたのは、開演後、1時間半ぐらいしてからでした。
いつもは、指定席が多い公演なので、慣れていらっっしゃらないのかもしれないけれど、研究生の実習公演ではないのだから、もう少し、観客の視点に立ったサービスを心掛けてほしいと痛切に思いました。
で、実際の芝居の方は、脚本、演出、キャスト、全てにおいて、すこぶる上出来な作品で、大満足でした。
青年座の俳優さんはもちろん、6番シードから参加された、宇田川さん、粟生さんの好演も光りました。
小暮さんの、気持のよい快演ぶりには、益々ファン度増しました。
また、ちょくちょく、松本さんに、青年座への書き下ろしをお願いしたいと思いました。駆けづり回る椿さん達、劇団重鎮女優さん達の汗が新鮮でしたから。
ショーシャンクの空に
フジテレビジョン
サンシャイン劇場(東京都)
2013/11/02 (土) ~ 2013/11/10 (日)公演終了
満足度★★★★
妄想と希望の挟間が心地よい舞台
映画は、何度か観ました。私以上に、子供達が大好きな映画でした。
で、ソンハさんが出るのならとチケットを買って楽しみにしていましたが、毎日、ハーフプライスのチケット情報を見たり、3時間ニ回の幕間ありと聞いて、かなり不安が増大しつつ、劇場に向かいました。
結果=観て本当に良かった!映画と遜色ない仕上がりでした。
映画では、アンディーが主役として描かれていましたが、こちらは、レッドに主軸が置かれた脚本です。
その視点が、とても効果的な舞台構成だったと思います。
ファーストシーンが、映画では、自分好みではなかったので、この始まり方は大変好みでした。
ただ、最後のシーンで、タイトルが出るのには、どうも違和感を感じました。
アンディーとレッドの二人だけの場面がもう少しあった方が良かったような気もします。
レッドを慕う少年とトミ―役を演じた、山崎彬さんの存在感が、とても印象に残りました。
ロスト・イン・ヨンカーズ
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2013/10/05 (土) ~ 2013/11/03 (日)公演終了
満足度★★★★
ニール・サイモンの目の優しさが好き
三谷さん同様、私も、ニール・サイモンは大好きな作家なので、これまでもかなりの作品を拝見していますが、この作品は未見でしたし、内容も全く知りませんでした。
キャスト名を拝見し、勝手に、松岡さんと中谷さんが主役かしらと思っていたのですが、家族劇で、誰が主役というのでもなく、強いて言えば、孫役の二人が一番重要人物だった気もします。二人の目を通して語られる、父親や、叔母や叔父や祖母の物語といった趣。そして、この二人の子供達の存在が、彼らに影響を及ぼして、ギクシャクした家族関係が少しだけ好転するというストーリー構成が、実に秀逸な舞台でした。
このまだ子供の年齢の孫兄弟を演じられた、浅利さんと、入江さんが、とにかく、ものすごく魅力的でした。
確執がある家族だけれど、そこに、作者の、人間を観る温かい目があって、各登場人物それぞれが、苦手な家族に対しても、どこかで、愛情深く相手をみつめている様子に、感銘を受けます。
最近、昔、一人っ子の私をさんざん羨ましがらせた、友人の兄弟関係が、無残にも打ち砕かれている事例が多く、仲良しの兄弟関係が、これほどにも破綻するのかという現実を直視することばかりなので、たとえ、芝居とは言え、人間関係が破綻しないよう努力しているこの一家の物語は、大変清々しく、心に沁みました。
a new musical『SONG WRITERS』
東宝
シアタークリエ(東京都)
2013/10/05 (土) ~ 2013/10/30 (水)公演終了
満足度★★★★★
見事なオリジナルミュージカル誕生に、賛辞を!
もう、心底驚きました。
まさか、こんな素敵な舞台に巡り合えるなんて!
ただ、中川さんの歌唱と、岸谷さんの演出に、興味があって、ぶらっと行ってみただけだったのです。
ところが、会場の空気が違いました。本当に、観たいファンで埋め尽くされた客席の温たかい空気!きっと何度もリピートされているんでしょう!
だって、特にどなたのファンというわけでもない私でさえ、この舞台なら、連日通い詰めたくなりますもの。
開幕してすぐに、これは素晴らしい舞台だという予感がしました。
終わる頃は、何故か、無性に涙が出ました。笑って、泣いて、日本にも、こういう演劇愛でステージ作りをしている方々が残っていることに、感謝しました。
久しぶりに、関係者の皆様に「ありがとう!」と言いたい舞台でした。
本気で、これを、ブロードウエイに、逆輸出してほしいとさえ思います。
日本のオリジナルミュージカルで、たぶん、最高の出来栄えだと確信します。
帰り道、口ずさめるオリジナル作品は、これまで、皆無でしたもの。
中川さんの歌声が壁に反響して、木霊のように時間差で聞こえたり、屋良さんの噂通りのダンスの技に魅了されたり、嬉しそうなコングさんの演技に、こちらまで、心がほっこりしたり、これ程、気持が清々しくなる舞台も久々でした。
とにかく、キャスト、スタッフ、全ての方に、称賛を惜しみたくない、素敵な素敵な作品でした。
イーハトーボの劇列車
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2013/10/06 (日) ~ 2013/11/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
本、演出、キャスト三拍子揃う佳作
あまり期待していなかったのですが、井上さんの戯曲の中でも、かなり出色ではと思う、構成力抜群の芝居でした。
鵜山さんの演出は、押しつけがましさがないのが、気持良い!
こまつ座お得意の、オープニングのキャスト勢揃い場面が、他の演出家の時には、やけに、わざとらしくて、生理的に嫌悪感を感じる場合が多いのですが、何故か鵜山演出だと、スーッと、舞台に導入されて行く感覚になり、不思議です。
宮沢賢治の評伝と賢治作品の登場人物を彷彿とさせる人間達がうまく物語に折り重なり、ユーモアとペーソスのバランスも、絶妙でした。
食の問題、貧困と富裕層の格差、宗教論争等、いろいろなテーマを含有していながら、核がしっかりしていて、散漫にならず、戯曲のお手本になりそうな作品でした。
「あまちゃん」の好演が記憶に新しい木野花さん、ベテランの辻さん、他、キャストの皆さんも、それぞれ、役を楽しく味わい深く造型され、どの場面も、見応え充分でした。
ただ、井上さんは、ハプスブルグ家チックな貴公子然とした佇まいが、賢治の泥臭さを出すには、やや無理があり、作業着とかが、お仕着せ感いっぱいで、全員で舞台に立つ時、一人目立って浮いた印象がありました。
方言でそれらしく見えると思ったのも束の間、2幕の標準語で話す場面では、
品が勝ち過ぎて、賢治らしく見えなくなり、ちょっと違和感を感じてしまいました。以前、映画で賢治を演じられた三上博史さんのイメージが強すぎたのかもしれませんが…。
賢治の作品は、一度も読んだことがないと、今まで思いこんでいましたが、セロを習っていたというシーンになって、子供の頃、絵本がボロボロになるまで読んだ「セロ弾きのゴーシュ」が賢治作品だったことに思い当たり、曰く言い難い感動が胸に去来しました。
井上ひさしさんは、一体、どんな「思い残し切符」を私達に残して下さったのかなあと、最後は、感慨深く、劇場を後にしました。