満足度★★
表層的な脚本と女優陣の演技
一家揃って、大の小池徹平さんのファンなのと、信頼する唯一の劇評家の方が、賛辞を書かれていたので、大変楽しみだったのですが、今回ばかりは、Hさんの劇評とは、真逆の感想を持ちました。
ソンドハイムの楽曲は、彼にしては、親しみ易く、耳馴染みの良い曲が多く、満足でしたが、脚本がまず浅薄この上ない気がしました。
人間描写も、エピソードも、既成の劇作と比べても、独創性もないし、深みも感じられませんでした。如何にも安易に頭で考えたというエピソードの積み重ねで、登場人物の葛藤が、安っぽく映りました。
その上、これは、演じ手の女優さんのせいと言うよりは、キャスティングされた方の選択が間違っていたと思うのですが、役を掘り下げる演技力のない方が、まるで御自身とは共通性のない役柄を演じているために、作品のレベルをかなり下げてしまいました。
20年の歳月を掛けたストーリーにも関わらず、誰も、舞台上で、年月の変遷を体現して下さらない。メークとかを変えないでも、表情や仕草や舞台上の佇まいで、その人の人生を演じきる技量のある役者さんはそもそもあまり存在しないとは言え、このあまりにも変化なしの20年にはちょっと唖然としてしまいました。
脚本にも、演技にも、あまりにもリアルさがないので、登場人物の誰一人にも共感することができず、ずっと傍観するのみでした。
それを証明するように、客席の拍手にも、観客の熱は感じられませんでした。
でもでも、やはり、小池さんは、芸能界の奇跡!
彼のお見送りを受けた観客は、老いも若きも、皆ルンルンで、「可愛い!会えて良かった!」と叫び、幸福感に満ち溢れて、帰路についたようでした。
初ミュージカル出演で、しかも、難曲のソンドハイムを歌いこなせるかと、内心心配でしたが、美しく力強い声で、熱唱され、小池さんの歌唱が、実は一番胸に沁みました。