いのうえシェイクスピア「鉈切り丸」~W.シェイクスピア<リチャード三世>より 公演情報 パルコ・プロデュース「いのうえシェイクスピア「鉈切り丸」~W.シェイクスピア<リチャード三世>より」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    シェークスピアを凌ぐ深さ
    イヤア、あまり期待せずに行ったので、正直ビックリ!

    以前、古田新太さんが演じた「リチャード3世」があまりにお粗末だったので、これほどの上出来なお芝居が立ち上がるとは期待していませんでした。

    源氏の戦乱の時代に、うまく話を置き換えて、その手腕に脱帽。

    客演陣も、お一人を除いて、皆さん、大健闘の好演ぶりでした。

    千葉さんの出番が少なかったのはやや残念でしたが…。

    ちょっと目を覆いたくなる残虐な場面もあるけれど、それがまた、主人公の生まれと環境の帰結としての残酷な現実や、人間の性を活写して、心に残像を刻む所以でもありました。

    ネタバレBOX

    脚本の青木豪さんは、何故か、演劇業界で、かなりの言われ様をされて、いつも腑に落ちないのですが、今回の作品も、私としては、文句のない作劇だったと思います。

    「IZO]も私は、大好きでした。未だにラストシーンの悲哀感が強く印象に残っています。
    、頼朝の弟、範頼をリチャード3世になぞらえ、「東鑑」の書き換えられた真実は実はこうだったという、奇想天外な作劇構成のアイデアがお見事。

    普通、外国の原作を日本に置き換えたりした作品で、あまり上等な仕上がりのものを観た記憶はありませんが、この舞台は、原作の流れを生かしつつ、源氏の抗争もそれらしくストーリーを組み立てて、矛盾が見当たらないことに、ただただ感嘆しました。

    巴御前の成海さんは、義仲と共に戦う最初の登場シーンの物腰が、どうにもそれらしく見えず、愕然としたのですが、範頼の妻になってからは、健闘されていました。

    ただ、他の役者さんが、皆いいので、お一人ちょっと粗目立ちするのは、やむをえません。

    麻実さんの建礼門院の生霊の凄味。若村さんのハッチャけた迫力の政子。木村了さんの目にも鮮やかな殺陣と眉目秀麗さ。秋山さんの、幸せを夢見たために不幸を背負った老女の悲哀。生瀬さんの笑いとリアルの塩梅絶妙な当意即妙な名演ぶり。いっけいさんも同様で、宮地さんや千葉さんも含め、客演陣の、適材適所の配役が、これまたお見事な布陣でした。

    大江広元の山内さんは、相変わらず面白いスタンスで、陰湿な内容の芝居を楽しくさせる得難い役者さんでしたが、「東鑑」を読み上げる時の滑舌が悪かったのは、ちょっと残念でした。

    そして、この名役者陣の中、一番驚いたのは、ついこの間まで名子役さんだった須賀健太さんの成長ぶり。若さ故に兄の怒りを買ってしまう義経の未熟さと一途さをよく表現されていて、感嘆しました。

    森田剛さんは、大河ドラマで主人公の少年時代を演じられた時から、その演技力に大変注目していましたが、今回も、運命に翻弄されて、悪事にひた走る、ある意味、大変不幸な人間の狂気と不気味さと悲哀を、ないまぜに表出されて、好演でした。

    私は、また時々、青木脚本で、森田さん主演のこうした舞台を期待しています。

    0

    2013/11/29 21:18

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大