ロスト・イン・ヨンカーズ 公演情報 パルコ・プロデュース「ロスト・イン・ヨンカーズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ニール・サイモンの目の優しさが好き
    三谷さん同様、私も、ニール・サイモンは大好きな作家なので、これまでもかなりの作品を拝見していますが、この作品は未見でしたし、内容も全く知りませんでした。

    キャスト名を拝見し、勝手に、松岡さんと中谷さんが主役かしらと思っていたのですが、家族劇で、誰が主役というのでもなく、強いて言えば、孫役の二人が一番重要人物だった気もします。二人の目を通して語られる、父親や、叔母や叔父や祖母の物語といった趣。そして、この二人の子供達の存在が、彼らに影響を及ぼして、ギクシャクした家族関係が少しだけ好転するというストーリー構成が、実に秀逸な舞台でした。

    このまだ子供の年齢の孫兄弟を演じられた、浅利さんと、入江さんが、とにかく、ものすごく魅力的でした。

    確執がある家族だけれど、そこに、作者の、人間を観る温かい目があって、各登場人物それぞれが、苦手な家族に対しても、どこかで、愛情深く相手をみつめている様子に、感銘を受けます。

    最近、昔、一人っ子の私をさんざん羨ましがらせた、友人の兄弟関係が、無残にも打ち砕かれている事例が多く、仲良しの兄弟関係が、これほどにも破綻するのかという現実を直視することばかりなので、たとえ、芝居とは言え、人間関係が破綻しないよう努力しているこの一家の物語は、大変清々しく、心に沁みました。

    ネタバレBOX

    厳格な母に育てられた、この家族の兄弟達は、皆、どこか、精神的なバランスを欠き、エディは、大人になっても泣き虫で、母親になかなか本音を口にできず、結婚後は、母とは疎遠になっている。そのエディが、亡くなった妻の入院費などで、金欠になり、出稼ぎに行くので、息子達を、母親に預かってもらう算段をしに、久しぶりに、ヨンカーズの母の家にやって来たところから、この物語は始まります。

    苦手なおばあちゃんだけれど、父親の仕事のために、やむなく、祖母の世話になる道を選ぶ、幼い兄弟。このジェイ(ヤコブ)と、アーティ(アーサー)の二人のやりとりがとても愉快で、観ていて、気持が和みました。

    誰にでも気さくで、明るいベラ叔母さんは、でも、軽度の知的障害があるのか、精神的に未成熟で、感情の起伏が激しく、これまでは、友人も恋人も皆無という淋しい生活を強いられて来ました。

    やくざなルイ叔父さんは、ギャングの手下らしく、裏社会のお金で、結構羽振りは良い様子。他に、呼吸困難になるガート叔母さんも、その原因は、厳格な母親。

    家族に対して、殊更厳しく、愛情深い言葉ひとつ掛けない祖母は、昔、二人の子供を亡くしたせいで、家族に対して、過剰な対応をしてしまう。

    こうして、大人達には、それぞれ、屈折した精神事情があるのですが、幼いジェイとアーティは、そんないびつな家族関係をものともせず、すくすくと、順当な成長をして、その二人の成長に、大人達が刺激を受け、少しだけ、関係が改善に向かう様が、本当に素敵です。

    ニールサイモンの戯曲は、いつも、こういう等身大の人間がリアルに描かれ、お互いの関係がホンの少し好転するかなという、とても良い匙加減で幕となるところが、堪りません。

    敬愛する作家の作品ということで、三谷さんの演出も、きめ細かく、愛情深く、とても素敵だったと思います。

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    2013/11/02 00:22

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