息をひそめて―シリア革命の真実― 公演情報 ワンツーワークス「息をひそめて―シリア革命の真実―」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    テレビのドキュメンタリーよりは、身近に感じる
    学生時代、世界の情勢には疎い人間でしたが、池上さんのお陰で、ずいぶん、知識が増えた昨今、アラブの春以来、注目していたシリア情勢を勉強したい思いから、観劇して来ました。

    日本のドキュメンタリー番組はいいのですが、実は、私、海外のドキュメンタリー番組がやや苦手です。何故なら、ある大手声優プロダクションの俳優が、大仰に、吹き替えをするので、実際の映像を放映してるのにも関わらず、鼻白む思いをいつもするから。

    ですから、このドキュメンタリー芝居は、逆に、役者さん達の熱演により、真実を伝える効果がかなりあったと思いました。

    お若いのに、こんな激戦の地に足を踏み入れて、7か月も、秘密裏に取材を続けたゾウさん達のご努力には、本当に頭が下がります。

    国連でさえ、手を拱いているシリアの悲惨な現状を、我々日本人が知ったところで、手も足も出ないのですが、でも、こういう作品を、わざわざ劇場に足を運ぶ人ばかりでなく、もっと一般の方々にも広めていく方法はないものかと、強く思いました。

    アサド大統領は、映像で観る限り、顔つきも温和な雰囲気で、とてもこんな殺戮を繰り返している人には見えません。
    我が国の首相も、穏やかな雰囲気ですが、実は、かなりこの国を危険な状況に推し進めようとしています。
    シリアの問題は、決して対岸の火事ではないと思うのです。

    だから、まずとにかく世界情勢に目を向ける必要があります。そういう意味で、このドキュメンタリー芝居の手法は、一定の効果はあると確信します。

    ただ、この舞台の最初に、この芝居は、台詞の全てが、インタビューをしたシリアの人達の生の声で、何一つ言葉を変えることなく、そのまま忠実に再現されているといった注釈が付きましたが、この点に関しては、やや懐疑的な思いを抱きました。
    架空の人物を登場させてはいないと思うけれど、彼らの言葉を一字一句、何も変えずに、芝居に構築するのには、やや無理があるようにも思うのです。
    少なからず、劇的に見せるための配慮がなされているようにも感じられました。

    とは言え、日本で、安穏と暮らしていては見えてこない数々の事実が提示された芝居であることは紛れもなく、インパクトある演劇であることは、確実。

    我が国の行く末も含め、いろいろ考えさせられました。

    シリア難民の女性を性的対象として狙った、偽装結婚が横行しているというニュースを読み、遠く離れて、何ひとつ、援助の手を差し伸べられない状況に歯がゆさを覚えるばかりです。

    ネタバレBOX

    登場人物を、映像で、名前や人となりを手書きで説明する手法で、奥村さん演じるオマールを、最初の萩原さんのサミー役とミス表記があり、どうなることかと心配した幕あきでしたが、その後は、順調に舞台が進行してほっとしました。

    ゾウさん達が、シリアに、一般旅行者を装い潜入し、7か月の滞在の中で、インタビューして、舞台に構成した作品ですから、登場人物は、全て実在とのこと。

    主に、スンニ派の自由シリア軍の方や政府軍の犠牲になった遺族など、被害者側の証言が大半で、アサド政権による陰惨な虐殺が、リアルに語られ、胸が痛くなるのですが、一方で、一番注目したのは、萩原さん演じるアサド派のホテルオーナーの証言でした。

    彼は、こんな状況下でも、自分のホテル経営に勤しみ、呑気に暮らしている雰囲気ですが、メディアが、反体制派の動静を報じない姿勢には疑問を呈します。
    「俺は犬を飼ってるけど、実際、犬の姿を見ないと、本当に俺が犬を飼ってるってわからないよね。だから、メディアでも、アサドに反対してる人間の姿を見せてほしいんだ」というような含蓄のある発言をします。

    わが国も、マスコミがさらっと報道してしまうことの中に、後戻りできないような大事な問題がたくさん隠され、見えなくなっています。
    サミーのこの発言に、背筋が寒くなる思いがしました。

    当パンが、登場人物や、地図や、シリア情勢を簡潔にわかりやすく関連づけてレクチャーして下さり、大変勉強になり、感謝しています。

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    2013/11/13 02:01

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