ヴォンフルーの観てきた!クチコミ一覧

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第70回公演「ベンガルの虎」

第70回公演「ベンガルの虎」

新宿梁山泊

花園神社(東京都)

2021/06/12 (土) ~ 2021/06/23 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

御歳72歳の風間杜夫氏が初のテント芝居。アングラ×風間杜夫は化学反応と知的快楽に満ち溢れている。『スチュワーデス物語』からほぼ同じルックスのまま、一向に老いることを知らない。ド迫力語り草になるラスト・シーンも必見、観るなら今しかない。
3時間三幕(休憩10分×2)。
『ビルマの竪琴』の続編として始まり、現地で遺骨収集を続ける水島と彼から送られてくるバッタンバンの象牙の判子を待つ妻のカンナ。元中学校の家庭科教師で現在は錦糸町でホステスをしている。しかし水島の妻を名乗る別の女が現れ、困惑したカンナは再会したかつての教え子・銀次と逃避行に出る。

役者謝肉祭を観ているような狂熱のステージ。
水島カンナ役の、水嶋カンナさんは終始鬼気迫っている。二人乗り自転車の荷台の上にスックと立つシーンが美しい。(12年前の『ベンガルの虎』公演から役名水島カンナを採って、水嶋カンナに改名。)
元大駱駝艦の奥山ばらば氏は超格好良い。ずっと観ていられる。褌一丁全身白塗り、182cm の体躯を活かし無法松のような下半身の肉体美で神話のように舞い踊る。この奇想天外な異空間に説得力を持たせる絵力。
平山もとかず氏(a.k.a iLHWA〈イルファ〉)はプロレスラーTARUを思わせる強面の風貌で鈴木雅之のような美声を披露。
風俗マネージャーと薔薇族カメラマンの二役、松永健資(けんすけ)氏が凄まじいインパクトで二役とも暴力そのものの強烈さ。
カンナの母親役の渡会(わたらい)久美子さんの苛烈な印象。松田洋治氏もかなりパンチの効いたキャラクター。全てのアングラを優しく見守るお母さん的存在、のぐち和美さんの安心感(客入れも担当していた)。金守珍(キム・スジン)氏のおこそ頭巾の灰撒き婆ァこと、産婆のお市。室田日出男を彷彿とさせる藤田佳昭氏。矢鱈イケメンな二條正士氏。
他国籍ホステスに扮した女優陣によるエロい『うっせぇわ』は新宿ゴールデン街に隣接した花園神社のロケーションにぴったりの選曲。
中嶋海央(みお)氏熱演の流しの銀次、彼の貫き通す純情が魑魅魍魎渦巻くカルマの闇を引き裂く一筋の月光となる。

1列目2列目と花道脇はビニールシートで客自身が自己防衛。水や灰が飛んで来るし車券の雨も振る。季節柄、虫も多いので注意。

ネタバレBOX

ビルマ(現ミャンマー)、ベンガル(今ではインドとバングラデシュに分断された地域)、バッタンバン(カンボジアの州)、羅紗緬〈らしゃめん〉(海外に売られて行った娼婦、今作ではからゆきさんをイメージ)と東南アジアのかなり広い地域を舞台にとっている。 

二幕は競輪場のレースからスタート。皆既日食が起こり、カンナと競輪選手でもある水島の再会。明治に時は飛び、カンナの母親である羅紗緬の物語と出生の秘密。
三幕は入谷の朝顔市。水島がカンナを迎えに来るが、月光仮面と化した銀次がそれを許さない。

唐十郎の作劇は、より詩的な情景、より詩的な台詞を目を瞑って探り当てるかのようにうねうねうねうねと右へ左へ曲がりくねってゆく。物語ではなくたった一行の胸に突き刺さる煌きを求めているかのようだ。劇中何度も繰り返される、羅紗緬(からゆきさん)の叙述が一番胸に残った。

ラストはステージ上のプールが大きく口を開け側面から噴水状に水が吹き出す中、次々に飛び込んで行く役者陣。いよいよ水嶋カンナさんが飛び込むと屋台崩し。ステージ奥から本物のショベルカーが登場しそのバケットに乗り込むびしょ濡れのカンナさん。重機がゴンドラ宜しくゆらゆら揺れ歌い上げて去って行く。圧巻の終幕。
外の道

外の道

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2021/05/28 (金) ~ 2021/06/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

海鳴りならぬ、空鳴りのする田舎町。UFOが接近したのではないかと思う程の異音、みんな反射的に空を見上げる。何十年振りに偶然再会した男女、安井順平氏と池谷のぶえさん。二人が語る近況と誰にも信じて貰えない本当の話。
本格的SFとして設定が面白い。ただ、後半池谷のぶえさんの話に移行してからが余り盛り上がらない。黒沢清の『回路』のように孤独に世界と戦っている哀川翔みたいな存在が欲しかった。

ネタバレBOX

思いっ切り黒沢清っぽい語り口から始まる。辺鄙な田舎にある小さな喫茶店のマスター(森下創氏)が手品に見せ掛けた超能力ショーを余興として公開しているセンス・オブ・ワンダー。物体の中に傷一つ付けずいとも容易く物体を挿入させてみせる。それを見た主人公(安井順平氏)はかつて遭遇した不思議な事件を思い起こす。与党の大物代議士がパーティーの最中、突然昏倒、脳内出血で亡くなるのだが、脳の中から割れたビール瓶の破片が出てくるのだ。外傷一つ無かった為その事実は伏せられたのだが、主人公はこのマスターの仕業だと確信する。マスターの帰り道を待ち伏せして超能力について問い詰める主人公。マスターは「自然の理に過ぎない」と答える。約束を破り他人にこの秘密を漏らした主人公はマスターによって脳に氷を挿入され、少しずつ見えるものが変わっていく。

マスターがマツモトクラブ的でカッコイイ。『スキャナーズ』っぽい描き方で現実に紛れ込んだ異邦人としての超能力者のリアリティー。彼が主人公で良かったんじゃないか。

池谷のぶえさんの話は、見知らぬ誰かから届いた宅配便の小包、品名には“無”。開けてみると何も無い。悪戯かと放置したが、数日中に漆黒の闇である“無”がどんどん家中を覆い始め遂には池谷のぶえさんも呑み込まれてしまう。日の出によって“無”から解放されたが全裸で遠くのマンションの屋上に立っていた。「こうして日が昇ることの方がよっぽど不思議だ」との名台詞有り。何とか帰宅してみると見たこともない自分の養子(大窪人衛氏)が“無”から創生されていた。

“無”に対抗するのが想像力であることがスティーブン・キングっぽくて良い。話のエッセンスが『ミスト』っぽいかも。

誤配を意図的に繰り返して宅配会社を馘首になる主人公。自然に在ることを肯定し始める(『森田療法』っぽい)。どんどん妻(豊田エリーさん)の顔が整形を疑う程に美しく見えてくる。入院を迫られて逆上し妻の浮気を告発するも、只の思い違いであること(しかも自分は知っていた)に愕然とする。
池谷のぶえさんは家中が真っ暗闇に包まれ、最早生活が出来ない。「何も見えないのではなく、“無”が見えるようになったんだ」との名台詞。突然存在し始めた養子は証明書の類がある為、誰も疑わず周囲に馴染んでいく。池谷のぶえさんは自分に関する証明書類を全て破り棄てる。

二人が真っ暗闇の“無”の中に飛び込んでいくのがラスト。

他にも認知症になり精神が十七歳の頃に逆行した池谷のぶえさんの母(清水緑さん)の姿が、養子の目には十七歳の少女に映るなど至る所に謎は散りばめられている。

が、全ては隠喩でも暗喩でもなくナニカの意思でもなく、解釈されるべき答えもない。ただ呈示しているだけであることが観客を不安と不快に陥れているのであろう。
青森県のせむし男

青森県のせむし男

演劇実験室◎万有引力

ザ・スズナリ(東京都)

2021/06/04 (金) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

二回目。
せむし男のヴィジュアルはhideの『HIDE YOUR FACE』のジャケットを想起。
森ようこさんの台詞は口角の動作がきっちりしていて美しい。
高田恵篤氏は本当は一体何処の誰なのか皆目見当が付かない。彼こそがお化けなのだ。

ネタバレBOX

森ようこさんの台詞。
「美しさも醜さ、醜さも美しさ。」
「美しさの醜さ、醜さの美しさ。」
自身が三十年前手籠めにされた土手の上で、無理矢理息子と思しきせむし男に口淫をするマツ(高田恵篤氏)。その地獄の光景を生い茂る茅の隙間から震え上がって覗き見ている女中(森ようこさん)。
マツは奉公先の息子に無理矢理犯された時、茅の葉で手の平を切り、真っ赤な血の手形が男の法医学書にべったりと付いたと追憶する。
「美しさも醜さ、醜さも美しさ。」
「美しさの醜さ、醜さの美しさ。」
シュベスターの祈り

シュベスターの祈り

ピウス

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2021/05/27 (木) ~ 2021/06/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

公演4日前に急遽主演宮瀬玲奈さんの代役として岸本・ルチア・来夢役での出演を決めた花奈澪さん。流石の女優魂に同業者もファンも大興奮。5公演見事に大役をこなしてみせた。宝塚の地獄を生き延びてきたのは伊達じゃあない(偏見)。これぞ元宝塚と云う肩書の化物たる所以。観てみると判るがこれ、本当に演ったのかと思う程の出番と台詞量、凄すぎ。
今回は当初からの配役、一之宮・ミカエラ・日葵(ひまり)役として出演。生き生きと楽しそうに演じていた。

宮瀬玲奈さんを初めて知ったのだがアニメキャラそのもののルックスとアイドル性抜群のオーラ、人気が出ない訳がない。
豹変する眼鏡っ娘、大滝紗緒里さんは役者バカ系の匂いが。殺陣の上手さも相まって今後活躍の場が増えそう。クールな天才役武藤志織さんは美しく、巨乳コメディリリーフ教官役遠藤三貴さんはプロ、教官役楠世蓮さんは流石のモデル。魅力的なキャストが勢揃い。

設定は『エンダーのゲーム』を魔法美少女学園モノにしたような感じ。
近未来、地球にヒュージと呼ばれる異星生物が侵略を開始。人類の開発した決戦兵器CHARMは十代の少女が一番扱うことに適していた。より優れた戦士(リリィ)を育成する為、世界中で養成機関としての女子校が開設。主人公の姉はエリート戦士であったが戦場にて殉職。主人公は姉の想いを背負って学園の門を潜る。

ネタバレBOX

学園では政府公認の人体実験をしており、優秀な戦士にヒュージのDNAを投与し能力の向上を研究。主人公の姉はその副作用で爆死したことが明かされる。タイトルのシュベスターとは、学園の伝統である上級生と下級生の姉妹の契りのこと。

BIG TREE THEATERは座席の幅が隣の人と肘が密接する程に狭い。思えば池袋の劇場はそんな所が多いような。客層はガチ勢主体の声優のイベントみたいな熱気。終盤結構涙ぐんで観ている人も多く、これだけの人間をガッチリ掴んでいるコンテンツは流石にプロフェッショナルで照明のタイミングも効果もバッチリ。限られた予算内で出来る限りの演出。演っている女優陣が求められているもの以上のなにかを追求し落涙しながらの熱演。客を舐めて適当に演っている感じが全くしない。みんな何かと戦っているようにさえ見えた。
出雲の阿国の時代から、客を呼ぶのは美男美女。観客に何を見せようとするのかがキー。

稽古5時間だけで代役となみおさんがツイート。信じられない。
青森県のせむし男

青森県のせむし男

演劇実験室◎万有引力

ザ・スズナリ(東京都)

2021/06/04 (金) ~ 2021/06/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

歌人、シナリオ作家、編集者として若くして大成功を収めてきた寺山修司。1967年に劇団『天井桟敷』を結成、その旗揚げ作品がこの『青森県のせむし男』。
大して観てきた訳ではないけれども今まで観賞した寺山作品の中で一番良かった。
森ようこさんのファンならば今作は必見。かなり出突っ張りでオン・ステージ感もある。
PUNK BANDのデビュー作を聴いている感じで、思うが儘に喚き散らしている。後々になると理性が邪魔をして理論武装の処世術に陥るのは世の常。恥知らずの一発目であるからこその幼稚で稚拙な絶叫が歳を重ねても胸を打つ。今作を寺山初体験で観たかった。

青森の名家で次期当主の息子が醜い女中を手籠めに。彼女が孕んでしまった為、世間体を慮り仕方無く入籍。出産の前に息子はコレラで死亡。周囲の冷酷な視線に耐えかね女中は産んだ我が子を山に捨てた。運か不運か生き延びた赤子は畸形のせむし男。因果の旅の末、生家に盗みに入り捕らえられる。三十年振りの母との再会であった。しかし、この話には嘘があり・・・。

安っぽいPOPな美術が歪な異空間を中和している。映画『エレファント・マン』調に写実的に演ればうんざりする題材だろう。
今回は観ておいた方が良い。

ネタバレBOX

森ようこさんの妖艶なTATTOOまでも曝け出すラストが美しい。照明が素晴らしく、この効果はどうやっているの?と何度も思った。暗転の真暗闇の中での舞台美術の配置や役者の移動も凄いとしか言いようがない。

生まれついてからずっと鬼ごっこの鬼をやらされていると言うせむし男。「一体僕は何を追っ掛けさせられているのだろう?」との自問自答。永遠に何処かの誰かに届いていく台詞である。これがある限りこの作品は永遠だ。

村八分の『あッ!』を思い出す。「助けてくれと言った所で助けてくれるけ?俺の事 もういいさお前等 俺の事振り向くな 俺は盲 盲者 すべての見える盲者 そうさ全て俺のせいさ 解っているよ俺の事 もういいさお前等 俺の事振り向くな 俺は片輪 片輪者 心の醜い片輪者」
ARC 薄明・薄暮

ARC 薄明・薄暮

山海塾

世田谷パブリックシアター(東京都)

2021/06/02 (水) ~ 2021/06/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

トラウマ・アングラの親玉。一度は観てみたいと誰もが思うが結局観ることはない暗黒舞踏。自分的にはPUNK BANDと受け取っていて30年以上前から興味があった。天児牛大(あまがつうしお)氏が1975年に創設。勝手なイメージとしては曲調は平沢進、ヴィジュアルは『ベルセルク』の蝕であった。

いざ始まると久石譲調の美しい旋律に銀河と戯れる一人の人間の姿。宇宙と手探りで対峙する一匹の動物としての人間がそこに。絶妙なバランスで均衡する秤を配置した洒落た舞台美術とヴェーダ哲学を刺激する圧倒的スケール感。次々に曲調が変化すると共に舞踏手も人数も変わってゆき、『ブッダ』の苦行林を思わせる衝動的無意識達の乱舞。演舞の意味を探ると云うより、矢張り重要なのはそこに流れる音楽であろう。メロディーから連想するものが大きすぎる。
舞踏自体はそれ程特別なものに感じないのだが、曲と嵌ると一気に奥行が広がりその先の先の果てまで見えた気がした。

ネタバレBOX

曲の良し悪しが激しく、退屈なものは凄まじく退屈。生演奏で演った方が絵的にも良いのでは?
でも多分また観に行く。
十一夜 あるいは星の輝く夜に

十一夜 あるいは星の輝く夜に

江戸糸あやつり人形 結城座

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2021/06/02 (水) ~ 2021/06/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

休憩10分含む2時間35分。物語はシェイクスピアの『十二夜』。
一糸座は何度も観ているが結城座は初めてなことに終わってから気が付いた。(2003年結城座から独立する形で一糸座が結成される。)
人形遣いの湯本アキさんと大浦恵実さんが上品な姉妹のように美しく目を惹く。
唯一、人形ではない、客演の植本純米氏が語り手であり、ほぼ主役。何とか客席を盛り上げようと八面六臂の大活躍に大リスペクト。“阿呆”と呼ばれる道化を演じる。

双子の美形の兄妹の乗る船が嵐の海に呑み込まれ離れ離れに。妹ヴァイオラは男装しシザーリオと名乗り流れ着いた土地の公爵に仕える。公爵は自身の恋する伯爵令嬢の使いにシザーリオを送る。伯爵令嬢は使いのシザーリオに恋してしまう。そのシザーリオ(ヴァイオラ)は実は公爵に恋をしている。まあいつものシェイクスピアのラブコメ節。登場人物が方言丸出し(福島弁?)なのにも実はきちんと理由がある。

ネタバレBOX

最前列でも居眠り、休憩時に退席など、客の反応は厳しいものが。とにかく人形劇にする必然性が殆んど無い話の為、ぼんやりとした印象。
ホンのせいなのか演出のせいなのか、人形を使う利点を活かせずだらだらとした展開。シェイクスピアの悪い点ばかりが目に付く。

ラスト、二組のカップルが祝言を挙げようと大団円。祝いとして“阿呆”に歌を所望。それをやんわり辞退しようとする“阿呆”だったが断り切れず、「いいんですかい?全てが流されちまっても?」と歌い出す。
暗転と暗幕による3.11の表現、大津波の後の福島の海岸にて満天の星空を仰ぐ“阿呆”の独り語りで終わる。周囲には登場人物の人形達が散乱している。冒頭の大嵐の海と3.11を掛けていて(『三.十一夜』)、全てが流れ消え去った後『十二夜』目が始まるのだろうか。まるで先程まで夢を見ていたかのような美しさ。
キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】

キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】

劇団四季

キャッツ・シアター大井町(東京都)

2018/08/11 (土) ~ 2022/04/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

四季劇場[夏]では『ライオンキング』が6月12日に大井町公演ファイナルを迎え、閉館。
キャッツ・シアターでは『キャッツ』が6月20日に千秋楽を迎え、こちらも同じく閉館。
大井町から劇団四季が消えてしまう。

三回目、チケット表記5列目が最前列。
ジェリクルキャッツ〈誇り高き特殊な猫達〉のリーダー格マンカストラップ(金本泰潤氏)が新生鷹の団にいそうな格好良さ。
おばさん猫ジェニエニドッツ(笠原光希〈みき〉さん)がゴキブリを従えてタップダンスを踊るシーンは矢張り最高。
泥棒猫ランペルティーザ(片岡英子さん)の動きは目を見張る。
ジェリーロラム=グリドルボーン(奥平光紀さん)のコミカルな細かな仕草が印象に残る。
シャム猫軍団が可愛い。(子役だと思っていた。)

ネタバレBOX

グリザベラ (金原美喜さん)の名曲『メモリー』は『愛の讃歌』に構造が似ている。
ライオンキング【東京】【2023年1月22日昼公演中止】

ライオンキング【東京】【2023年1月22日昼公演中止】

劇団四季

四季劇場[夏](東京都)

2017/07/16 (日) ~ 2021/06/30 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

チケット記載4列目が最前列。
ヤングシンバ役の中谷謙介君が生き生きとしていて素晴らしい。子役が輝いている舞台は良いものだ。二度目の観劇だが、劇団四季は席がかなり重要。体験型アトラクション要素が高い為、前の方だと見えるものが違ってくる。只今馬鹿売れ中の『アナと雪の女王』の演出も凄いことになりそう。貴種流離譚の一種なのだが、己が何者なのかを自覚する覚醒の物語、京劇要素満載。
ヒヒのシャーマン、ラフィキ役の福井麻起子さんが裏主人公。客席の子供達も彼女の一挙手一投足に夢中。歌声はゴスペルだ。「お前のなかに生きている (リプライズ)」が胸に来る。
名曲「終わりなき夜」を熱唱するシンバ役永田俊樹氏。ずば抜けた跳躍力による肉体讃歌。「求める時は必ずいると貴方はいつも誓った。僕は一人貴方を求めその言葉を待ち続ける。」

ネタバレBOX

物語は『ジャングル大帝』の『ハムレット』風味。父を殺してハイエナと共に国を乗っ取った叔父を討ち果たすのだが、クライマックスは絵的になかなか盛り上がらない。もうちょっと何か出来たのでは?
チーター役の人の鬘がパンチパーマに剃り込みなのは何か意図があるのだろうか?
獣唄2021-改訂版

獣唄2021-改訂版

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2021/05/25 (火) ~ 2021/06/07 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

前回、五日目の公演後主演の村井國夫氏が軽度の心筋梗塞で降板。三日休演の後、原口健太郎氏を代役として公演再開。自分は初日に観ていたので、これらのニュースに心底驚いた。自分の観たその年ベストの舞台であったこともある。
村井國夫氏主演での改訂再演の知らせに「もう一度観れるのか?」とそれにも驚いた。
こんな作品を現在進行系で生み出せることに、コロナにも何某かの意味はあったとすら思える傑作。

ハナトと呼ばれる珍しい蘭を採集するプロ(プラントハンター)と不要不急の現実社会では必要なしとされる演劇(役者)とを掛け合わせている。時代の要請で花の売買を禁じられ、生活に困窮する関係者達、「一体どうしたらいいのか?」とハナトの村井國夫氏に尋ねる。「ワシは花のことは何でも知っておるがそれ以外のことは何も判らんのじゃ」と頭を抱える村井氏。
茸採りの名人役の鈴木めぐみさんが脇をきっちり固めて印象的。もう一人の主人公と言ってもいい原口健太郎氏の存在感と巧さ。原口バージョンの『獣唄』も観れば良かったと今更ながら後悔。

コロナ禍に対する演劇界からの一つの回答がこの作品である。

ネタバレBOX

素晴らしい作品だった。
それでも自分にとっては初演の前回の方が更に素晴らしく思えたのも事実。色々と理由を考えたのだが、はっきりとはしない。ラストシーンの花吹雪や舞台全体が嵐の大海原のように畝る光景も前回の方が衝撃的だった。座っている位置の違い(前回は最前列)や全体像を把握して観ている前知識の有無、妙にテンポが良く整理され過ぎている違和感、ハナト一家が急に仲睦まじ過ぎる、コロナを意識し過ぎた台詞・・・?『獣唄』の説明も丁寧に遣り過ぎでしっくり来ない。何か『獣唄』はもっと人知を超えた理解不能なものを垣間見せないと成立しないのだ。
もう一回観ようかと思ったら当然だが全日程全席完売、そりゃそうだ。
ビニールの城【5月8日~5月9日花園神社公演中止】

ビニールの城【5月8日~5月9日花園神社公演中止】

劇団唐組

花園神社(東京都)

2021/05/08 (土) ~ 2021/06/03 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

神谷バーでトリス(国産安ウイスキー)を飲んでベロベロになっている男、隣の止まり木に腹話術の人形を置き独り言を呟いている。カウンターの上には封の切られていない昔懐かしのビニ本(無修正のエロ本)が酒の肴なのか鎮座して、何処かで見たことのあるような気がする表紙の女が黙ってこちらを見詰めている。男の呟きは酔いと共に勢いを増し、何だか文学めいた詩人めいた文言を発するのだがいよいよ意味は掴めない。
そんな舞台。

ネタバレBOX

どんどんどんどん藤井由紀さんが美しくなっていく。
魔界転生【5月4日~5月11日東京公演中止、6月5日~6月6日大阪公演中止】

魔界転生【5月4日~5月11日東京公演中止、6月5日~6月6日大阪公演中止】

日本テレビ

明治座(東京都)

2021/05/04 (火) ~ 2021/05/28 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

第一幕70分休憩25分第二幕105分。
マキノノゾミ氏の脚本に期待し、堤幸彦氏の演出に不安を覚え・・・、演劇と云うより舞台ショー的な感じ。背景のプロジェクションマッピングが凄まじいのだが、慣れてくると安っぽく感じる人間の不思議。全ては使い方とセンス、効果と言い訳の違い。
上川隆也氏の柳生十兵衛は意外にも千葉ちゃん調。勿論松平健氏の但馬守は素晴らしかった。荒木又十郎役の木村達成氏はヴィジュアル系バンドマン的に病んでいてカッコ良い。
石川賢版の漫画っぽい設定に『帝都物語』のエッセンスを加えた風味。
宮本武蔵の独り歌舞伎から十兵衛のキャラまでかなりコメディ調な展開が続く。核になるこの世への無念、未練が表現出来ていない勿体無さ。
『魔界転生』にはかなり思い入れがあるので、ついつい観てはガッカリする。深作欣二の映画と石川賢の漫画以外は何か根本的に違う気がする。永井豪の『デビルマン』関連と同じで、見ない方が良いと判っているのに見てしまう。そんな人間はきっと日本にいっぱいいるのではないか?
ラストの全員でのダンスは最高だった。

ネタバレBOX

マキノノゾミ節は第二幕から。怨念の化け物と化した淀君(浅野ゆう子)を義理の娘となるお品(藤原紀香)が諭す。憎悪と復讐の塊であった淀君が自ら成仏するのが見せ場。怨霊の鎮め方が今作品のテーマに。
山田風太郎による柳生十兵衛三部作、『柳生忍法帖』『おぼろ忍法帖』(『魔界転生』)『柳生十兵衛死す』。『柳生十兵衛死す』は江戸時代の柳生十兵衛と室町時代の柳生十兵衛が夢幻能に因って入れ替わり、別の時代で己の義を貫く。到頭最後には互いに相手を斬らなければならなくなってしまう傑作。石川賢の漫画もあるが酷い出来で、いつかちゃんとした作品を誰か作ってみて欲しい。能舞台としても観てみたい。
ラビビト

ラビビト

イベント企画OZ

萬劇場(東京都)

2021/05/19 (水) ~ 2021/05/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

往年の『少年サンデー』系のドタバタコメディ(但しラブコメ要素無し)。シェアハウス「うさぎ荘」に集うキャラの立った男女の群像劇。
石川県から一人上京してきた主人公(加藤圭貴〈けいき〉)が部屋を借りた処、前に住んでいた住民(小林亜実)が突如出戻りを希望した為、何故か一緒に住む羽目に。
ラビビトとは、寂しいと死んでしまうとされる兎(ラビット)と人とを準えている。
売れない俳優の彼女役船越真美子さんが相変わらず可愛らしかった。
小林亜実さんはほぼ素なのでは?

ネタバレBOX

小林亜実さんが自らの半生を赤裸々に曝すクライマックス。苦難と不遇に塗れてそれでも「生きて幸せになってやる!」と言い聞かせる様に何度も何度も繰り返す。この口上だけでも作品の価値はあった。
こあみの声は声優向き(少年っぽい)なので、きちんとトレーニングを積んだ方が良い。
父と暮せば

父と暮せば

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2021/05/21 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

山崎一(はじめ)氏、伊勢佳世さんの『父と暮せば』は二回目の観劇。前回は三年前の俳優座劇場。同じ配役とは思えない程違って見えた。
伊勢さん演じる美津江が『この世界の片隅に』のすずさんとだぶる。どちらかをまだ観ていない人がいるならば、どちらも必ず観て欲しい。『父と暮せば』は黒木和雄の映画も良いのだが、今上演中のこのキャスト版の観劇を強く勧める。伊勢さんはここからとんでもない女優になるのでは。

戦後の広島、生き残った被爆者は死んでいった者達に申し訳なく思って暮らしている。そんな娘の下に死んだ父親がひょっこり現れる。

ネタバレBOX

勿論、皆啜り泣きの館内。
この作品、原爆や戦争を抜きにして、幸せに生きることに申し訳なさを感じている人への死者からのエールとして受け取っても意味深い。
引き結び

引き結び

ViStar PRODUCE

テアトルBONBON(東京都)

2021/05/19 (水) ~ 2021/05/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

事故で恋人を失った天才発明家の主人公、27年経っても彼女を忘れられず時間移動の研究を続けている。神の悪戯なのか、到頭成功してしまうのだが・・・。恋人を救う為に失わなくてはならないものがあった。
主人公、湯口智行氏(FUJIWARAフジモン似)が出突っ張りの印象。キャラクター設定がイマイチ判り辛く天才なのか神の傀儡なのかハッキリしないのが残念。因果律の迷路、無数の世界線の境目を手探りしながら恋人の面影を求め彷徨い歩く。
音楽の使い方が上手い。単調な展開に退屈感を覚えた頃、ドーンと旋律が奏でられ一気に感情の流れが変わる。ぐっと登場人物の心情に引き込まれ舞台上の風景は先程迄とは様相を異にする。
因果の糸を手繰り寄せた先のその先に、そこから解き放たれた光景が待っている。
ハインライン好きな人に悪い人はいない。

ネタバレBOX

神の気まぐれ、実験であるならば、装置としてのタイムマシンは必要ないのでは。曖昧な記憶の底を旅する詩的な物語で良かった。
うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた

うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた

劇団チャリT企画

座・高円寺1(東京都)

2021/05/16 (日) ~ 2021/05/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

客入れのSEに何故か『あばれはっちゃく』、それだけで心を掴まれた。
良く出来たホーム・コメディを観ていたつもりが、いつしか滅茶苦茶シリアスな社会学・文化人類学を突き付けられていく。
凄く奥行きと世界観のある脚本で「SNSなんか皆さっさと手放してしまった方が良い」、帰り道そんな気分になること請け合い。
とにかく面白いし、いろんなことを考えさせられる作品。

高齢者暴走事故、SNSデマ拡散、ネットリンチ、You Tuber、Uber Eats···、全てが絶妙に絡み合ってしかも喜劇であり続ける90分。
父親役梶野稔氏と母親役の石本径代(いしもとみちよ)さんの醸し出す安心感が観客を自然と作品世界にいざなう。石本さんの存在感は作品の軸となっているようだ。埴生雅人(はぶまさと)氏演じる娘の婚約者のキャラがまた面白い。微妙にズレた笑いをちょこちょこ巻き起こしていく。

ネタバレBOX

数年前、松澤くれは氏の『りさ子のガチ恋・ 俳優沼』を観た時にTwitterの舞台表現法に驚いた記憶がある。今回はイタズラ電話やスマホの通知音ばかりで新味がなく表現が古い気がした。不特定多数の悪意に全面的包囲されている焦燥感、個人情報から過去の経験からありとあらゆる自分自身の全てを公表され、身動きが取れなくなるまで追い詰められていく窒息感。尾崎豊の「核〈CORE〉」みたいな感覚が欲しい。

最近では伊是名夏子(いぜななつこ)さんが車椅子障碍者の無人駅利用について問題提起をした処、“親の敵”ぐらいに叩かれ続けている。論点の善し悪しではなく、ネットリンチの目的化の加速。女子プロレスラー木村花さんなども傍から見れば大したことでもないような理由で自殺に追い込まれて行った。
現代病などではなく、これはそもそもが人間の習性であり、DNAにプログラミングされた本能なのだろう。気晴らし、憂さ晴らし、歪んだ正義感の発露、僻み妬み嫉み、偉そうな他人を引き摺り下ろす快感、自身が社会に参画している充足感、匿名の加害者の圧倒的なる自由。そもそも人間は太古の昔からそんなものなのだから、どこかで諦め受け入れるしかない。
超ではない能力

超ではない能力

24/7lavo

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2021/05/13 (木) ~ 2021/05/17 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

まあ超能力っぽいものを持っている人達が集まるOFF会。まあそれなりにそれなりなのだが、発起人の男には世界に打って出る野望があった。

ステージを囲んで三方向で二列。一列目はフェイスシールド必須。
開幕からかなり面白い。センスのあるシナリオで話にぐぐっと惹き込まれてゆく。ネタ自体は結構あるモノなので、これをどう落とし込むかに興味がいく。
超能力(?)の発現を補佐する黒子がまたいい味を出す。
ニートと恋愛無縁が一つのステータスを象徴するかのようで興味深い。
地底アイドル役の環幸乃(たまきゆきの)さんが余りに本物だったので、そういう方面の人だと勝手に思い込んで観ていた。彼女の役回りはかなり重要でここを温くすると一気にぐだぐだになってしまう。作者の提示する世界観を観客が共有出来るかどうかの分水嶺。
コミュ障役の安藤悠馬氏も実に魅力的だった。

ネタバレBOX

youtubeでメンバーを人気者にしようとする発起人。けれども上手くいかず空中分解の憂き目。
クライマックスは飛び降り自殺を試みる女子高生を止めようとするメンバー達。勿論それぞれの超能力は全く何の役にも立ちはしない。「何の役にも立たないことにも何某かの意味がある!」との暴論が勇ましい。いつの時代も意味や価値は行動の後の報酬でしかない。それ自体に意味や価値の無いものを情熱で無理矢理中身をパンパンに膨らませてこそが宗教や革命の源泉であったのだ。

『七瀬ふたたび』のように超能力者狩りの秘密結社に追われても面白かった。
「母 MATKA」【5/17公演中止】

「母 MATKA」【5/17公演中止】

オフィスコットーネ

吉祥寺シアター(東京都)

2021/05/13 (木) ~ 2021/05/20 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

“ロボット”の言葉の産みの親であり、手塚治虫に多大な影響を与えたチェコのSF作家の遺作とされる戯曲。ナチス批判を繰り返し、命を狙われ続けていた。
夫と長男を失うも、女手一つで息子四人を育て上げている母親が主人公。夫が戦死したことから戦争と関わることのないよう息子達を教育した筈が、内戦と他国の侵略の危機の中、子供達は自ら戦場に志願していく。
母役の増子倭文江(ますこしずえ)さん始め役者陣の品の高さとぷんぷんする色気が舞台を充満。亡き夫役の大谷亮介氏が三船敏郎っぽくダンディーで格好良い。キーマンでもある末っ子役の田中亨氏がジャニーズ系の美少年。
シリアスな固い話と身構えさせて、実は良質な喜劇でもある。悲劇と喜劇のギリギリの立ち位置で行われる家族対話が痛快。
クライマックスの母と末っ子の遣り取りは『身毒丸』や『毛皮のマリー』を想起させる寺山修司調に。かなりの作家達に影響を与えたであろう古典だ。
非常に味わい深く面白いのでお勧め。

ネタバレBOX

死者と生者が共存する世界観。母親の下に死んだ夫や長男が普通にやって来る。今しがた死んだばかりの次男も、死の報告に訪れる。最終的に末っ子以外みんな死んでしまうのだが、父親含め六人の死者が末っ子の出征を認めるよう説得しに来る。ブラック・ユーモアたっぷりの死者と生者の討論が秀逸。ただその展開がかなり長過ぎてだれてしまいもするが。

前作の戯曲『白い病』では徹底した戦争反対を訴える主人公が群衆に私刑されて無惨に殺されるラスト。今作では小学校への爆撃で沢山の子供が殺されたニュースがラジオから流れ、それを黙って聴いていた母親が末っ子に銃を渡し戦場へと促すラスト。作家の心境の変化なのか、他に何か秘められた意図があるのか?
ボイルド・シュリンプ&クラブ

ボイルド・シュリンプ&クラブ

劇団6番シード

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2021/04/29 (木) ~ 2021/05/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

椎名亜音さんはひたすら元気。開幕からカーテンコールまで凄まじいエネルギーを発散しまくっていた。③での宇田川美樹さんの悪徳刑事はハマり役。今月閉館の決まったアップリンク渋谷で去年『ディープロジック』を観たことを思い出す。映画でも女ジョーカーのようなヴィランをふてぶてしく演じていた。こういう役が好きなんだろうなあ。
花奈澪さんはまさに峰不二子。
高宗歩未さんはどんな役でも様になるので、制作側としては最高の素材であろう。
④の土屋兼久氏の佇まいが最強の敵の雰囲気で盛り上がる。
①②③と観て来た積み上げもあり、④がかなり面白い。勿論全部観た方が良い。

③デリヘル店のサンドイッチマンが口論中の揉み合いで店長を殺害してしまう。恋人のデリヘル嬢と当てのない逃避行へ。下の階に事務所を構える探偵二人がその様子を不審に思い尾行を開始。店の利権に絡んでいた悪徳刑事も執拗に追跡。
④妻からの依頼で潔癖症のエリート警視の浮気調査を。振り込み詐欺グループとの奇妙な癒着関係に勘付く探偵。

ネタバレBOX

③がもう『シティーハンター』調のアニメ的展開でどうも話に乗れなかった。デリヘル店の店長が従業員の親を脅して二千万円恐喝とかリアリティーがまるでない。
④がきっちりした話で秀逸な出来。多面的に話が語られていく構成が成功。
ただ土屋兼久氏が高校時代の暴行事件から潔癖症になった設定がイマイチ。もっと彼のキャラクターを掘り下げれば凄い物語になった気がする。高宗歩未さんが卒業アルバムから証拠を突き付けるのも切れ味が悪い。ラストの変化球を予告して投げ、バットを持つ探偵が迎え撃つ絵は素晴らしかった。
ボイルド・シュリンプ&クラブ

ボイルド・シュリンプ&クラブ

劇団6番シード

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2021/04/29 (木) ~ 2021/05/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

演るも地獄、やめるも地獄。外は酷い雨。この状況で初日を迎え満員の観客が馳せ参じた。
漫画調のノリと展開は好き嫌いが分かれるであろうこの劇団。弘兼憲史の『ハロー張りネズミ』を思わせる人情系探偵劇。秀逸なのは『ルパン三世』大野雄二調のカッコいいブリッジでスタイリッシュな場面転換があっという間に行われる。役者総出で見事なる動線を描きセットや小道具が忽ち出現、相当練習したのだろうなと感心する。とにかくスタイリッシュに拘った演出。
久し振りに舞川みやこさん(コスプレ三昧)を観たが更に美しさを増していた。
①地下鉄水天宮前駅で半蔵門線をジャックするとの脅迫電話。痴漢冤罪事件を追っていた探偵二人が巻き込まれ、その裏に隠された意図を暴く。
②高級イタリア料理店のワインセラー内で店のスポンサーの男が死体となって発見される。怪しいオーナーには完璧なアリバイがあった。

ネタバレBOX

①製薬会社の薬害事件で濡れ衣を着せられた男が三年前水天宮前駅で失踪。恋人の行方を探し続ける女がメッセージとして地下鉄ジャックを企てた。
②店のオーナーである料理長が味覚障害になったが本人は気付かず、店の売上は落ちていく。それを見兼ね、彼を敬愛する副料理長が味の手直しを隠れて行っていた。スポンサーが副料理長をメインに店の建て直しを提言するも怒った料理長に殺される。隣のビルの改築の足場を利用すれば移動時間が短縮されアリバイも崩れる。

料理長の味に惚れた福嶋仁美さんが毎日のように通い詰めるも彼女も味覚障害であったと云うオチがあるのだが、どうして副料理長は味の手直しをしなかったのかが一番の謎である。
痴漢を訴えた女子高生役の花実優さんが②で中国人ホステス、風風(ファンファン)を怪演、素晴らしい。

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