『ワルプルギスの夜』 公演情報 劇団Q+「『ワルプルギスの夜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    チームB

    「ワルプルギスの夜」もしくは「ヴァルプルギスの夜」とは、死者と生者の境目が弱くなる特別な夜。魔女達がブロッケン山でお祭り騒ぎをすると云う。
    80年代の小劇場にタイムスリップしたかのような舞台。世界観はレトロSF風味で、『フラッシュ・ゴードン』やらあの辺の安っぽい未来世界が心地好く、観てると段々時空概念が狂ってくる。選曲のセンスも良い。凄くちゃっちいヴィジュアルが一周回って魅力的。

    地球が核戦争で滅んで千年後、一部の人類は月と金星と火星に逃れて生き延びていた。地球の陸地は水没し、人の住めない真っ青な惑星。舞台は地球の観測をずっと続けてきた月のコロニー。ミュータントのような奇形な道化達がかつての地球の昔話を伝えて走り回って遊ぶ。はるさん演じる「兎頭」と呼ばれる道化がキーパーソン。双子のレーナ(小泉愛美香さん)とミーア(藤咲優希さん)が奇抜なファッションとメイクで踊りまくり、松田桜さん演じるバレリーナは皆の間を縫って舞う。月人類の口調が何故か花魁詞(おいらんことば)で『ありんす』調。お洒落なPUNKSファッションの観測員達。
    そんな中、火星から探査船に乗って数百年振りに3人の火星人類がやって来る。

    柳本璃音さん演じる見習い観測員リエットが魅力的。若い頃のマリアンみたいにキラキラしていた。
    火星からやって来た考古学者ルベリオ役は佳乃香澄さん、上品。
    同じくサンダー役は和泉涼太氏。演技も演出もキャラも“THE 80年代”といった暑苦しさ。
    月の女王ユリウス役の神野(じんの)美奈実さんは声色を使い分けてムードを高める。

    デヴィッド・ボウイの名曲が高らかに鳴り響き、真っ当、誠実でスタンダードなSFが語られる。レイ・ブラッドベリ風味のラストも美しい。凄く好きな感じの脚本。

    ネタバレBOX

    『スターマン』
    「空ではスターマンが待っていて
     彼は“それを無駄にしてしまうな”と言っている
     その全てに価値があることを彼は知っているのさ」

    デヴィッド・ボウイが亡くなった頃に日本公開されたマット・デイモン主演の『オデッセイ』。見せ場でこの曲が一曲丸々大音量で流され、観客は皆涙ぐんだもの。ボウイの息子のダンカン・ジョーンズが撮った『月に囚われた男』なんて映画もあった。

    金星は滅び、火星と月の見通しも暗い。地球の再生を願い、探査船で調査に降り立ったルベリオとリエット。しかし地球はすでに完全に滅び、死の星と化していた。絶望的な現実を前に、女王ユリウスは地球に遺してきた全ての魂に懺悔して息絶える。そこに解読された金星人類からの最後の通信が読み上げられる。それは聖書の一節のような讃美歌のような荘厳な詩。『希望は自身の胸の中にこそある。暗闇を自らの希望の炎で照らし出せ』。

    「兎頭」の死など雑な展開もあるが、デヴィッド・ボウイの歌で掻き消された。

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    2022/10/01 08:01

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