コマギレ 公演情報 ラビット番長「コマギレ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    開場前から長い行列が出来、皆(?)スマホで将棋を指しているような凄い絵面。
    藤井聡太監修の伊右衛門ペットボトルを観客全員にプレゼントの太っ腹。

    将棋のプロ棋士(六段)・熊谷学、演ずるは井保三兎氏。両親のいない貧しい家庭で育ち、何とかプロ(四段)になるも今は負け続き。史上最弱のプロとしてネットで妙な人気を得ている。
    その弟子、女性で初めてプロ棋士となった天野桂子(岡本美歌さん)。彼女の凛とした美しさと関西弁が女流棋士っぽく魅力に溢れる見事な配役。(現実世界では里見香奈女流五冠が棋士編入試験を今まさに行なっているところ、未だ達成されていない)。

    熊谷一門の道場は毎日弟子が遊びに来て、豚肉のカレーライスとコーヒーでおもてなし。出世頭の郷田竜王(渡辺あつし氏)、マスコミ大注目のスター、天野桂子・香子(鈴木彩愛さん)姉妹。そんなある日、桂子が脳梗塞で倒れてしまう。退院後、復帰をするもどうも後遺症が残ってしまい・・・。

    流石によく出来ている。後半からの盛り上がりが凄い。熊谷の幼少時代のエピソードをシルエットで再現するセンス。天野役の鈴木康平氏と友人役の門地ジル子さんが実に巧い。『無法松の一生』の回想シーンを思い出した。ぐっと感情移入させておいて山田洋次流の落としで笑わせるテクニック。いつのまにかに劇場は熊谷師匠の心の風景の中に、観客はその安らぎに身を委ねてしまっていた。
    昔、Kioskで毎週『週刊将棋』を買っていた頃の気持ちを思い出した。

    江崎香澄さんと鈴木彩愛(あやめ)さんはスピンオフで観たい程キャラが立っていた。

    ネタバレBOX

    「○○? 強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ。だけど・・・、オイラ(俺は)負けないよ。」
    「えー、こまたっ、駒達が躍動するオイラ(俺)の将棋を、皆さんに見せたいね。」
    佐藤紳哉棋士の名台詞を橋本崇載棋士がパロり、『ハチワンダイバー』にも載った定番ネタ。
    将棋連盟会長役の野崎保氏が見事に決めてみせた。

    中盤まではよくある話であんまり嵌まれず。熊谷の幼少時代、天野と仲良くなるエピソードあたりからぐっと来た。貧乏で勉強も運動も駄目な気弱な子供、唯一の武器が祖父から習った将棋だった。ガキ大将の天野に認められ、片道二時間以上列車に揺られ神戸の将棋大会へ。中学生達を相手に優勝してしまう。天野の家でお母さんに振る舞われた豚肉の入ったカレーライス。初めて食べたカレーライスが美味しすぎて涙を零す。ずっと自分を応援し続けてくれた天野は早逝し、忘れ形見の娘二人を我が子のように可愛がることに。

    意識が途中で途切れてしまう、棋士としては致命的な桂子の後遺症。手番が分からなくなり、二手指しを繰り返して敗れ続ける。タイトルは「駒切れ」かと思わせて、意識の「細切れ」とは成程。
    クライマックス、師匠から弟子に思い入れのある大事な扇子を譲ったように見せ、いざ対局中にそれを広げてみると『キフよめ』。慌てて記録係から棋譜を見せて貰い確認する桂子。自身の引退を賭けて対局に臨んでいる女流名人(山本綾さん)が桂子の二手指しを自ら制する名シーンと合わさって今作の肝、胸に焼き付く。
    エピローグ、漫画家(野田あゆみさん)が完成した雑誌を皆の前でお披露目、巻頭カラーの美しい見開きに熊谷・桂子の師弟対決。狙い通りの畳み掛けがズバリ決まって大喝采。
    深刻な後遺症すら呑気に受け流す熊谷師匠の楽天的な人生観、アイディアの大勝利。

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    2022/09/23 14:25

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  • ヴォンフルー様
    「コマギレ」ご観劇いただきありがとうございます!
    細かな感想、そして私の名前も取り上げていただけて嬉しいです!ありがとうございます!

    2022/09/25 10:11

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