タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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ありふれた話

ありふれた話

劇団水中ランナー

d-倉庫(東京都)

2017/07/06 (木) ~ 2017/07/10 (月)公演終了

満足度★★★★

大学(映画サークルメンバー)卒業後の人生、と言っても30歳くらいまでの”ありふれた”生活を切り取った青春群像劇。
すべての人が経験するかわからないが、身近で起きるほろ苦い出来事であり、心情的に解る。   【Bチ-ム】
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

舞台は、左右で段差のある平台。客席側にはいくつかの丸椅子があるのみ。段差があることによって上下の動きが出て、変哲のない暮らしの中の細やかな変化や刺激を表現させ、それが心地よいテンポになっている。物語は、詩のような台詞を輪唱するような印象付けから始まる。

大学時代・映画サークルの活動、その集団としての見せ場から、卒業しそれぞれの生活という個人の見せ場に変化していく。大学時代の映画作りは妥協しなかったが、社会人になって、仲間の生活をドキュメンタリー映画にするには、妥協、打算という底が見えてくる。個々人が抱える問題は様々であるが、それは身近で起こり得る出来事であり、特別なことではない。それだけに観客…その生活に寄り添うようで、一枚ずつのモノクロ写真のように思えた。それが集まって彩のある物語(集合写真)を紡いでいくようだ。情緒というには少し切ないが、案外それが現実なのかもしれないと思わせる。

梗概…大学・サークルメンバーの今の生活を映画(ドキュメンタリー)にしたいと。今は30歳になり結婚している者、いまだバイトしつつ好きな役者活動を続ける者など、それぞれの人生を歩んでいる。その歩みに、親の介護、障碍のある妻、不妊治療、ボランティア活動、DV・ストーカーなどいろいろな背景を設定し”ありふれた”日常を描く。その障壁を乗り越えようと必死に生きる姿が一時期の自分に重なる。

其々の場面は身近な問題であり、それを当事者の視点で追うような感じ。それをドキュメンタリー映画として編集する展開であるが、そこに監督の視点(一人称)としてのどうしても撮影したいという思いが伝わらない。群像劇としてまとめていく手腕は見事であるが、撮影を通して監督の意図したことが果たせたのか。この劇の一つの見せ場ではないだろうか。日常にある”ありふれた”一遍を丁寧に織り込んでおり好感が持てるが、今ひとつ”力強さ”と”余韻”が弱いように感じたのが残念。

役者は本当に大学時代の友人のよう。その自然体の演技とバランスの良さが物語に集中させる。
次回公演を楽しみにしております。
「クラゲ図鑑」

「クラゲ図鑑」

えにし

「劇」小劇場(東京都)

2017/07/06 (木) ~ 2017/07/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

国籍は違うが、男女の愛憎、親子の情愛という普遍的なテーマを据え、ある出来事までの軌跡を丁寧に描いた秀作。タイトル「クラゲ図鑑」は、生き方そのものを暗喩した表現。ちなみにクラゲは漢字で書くと「水母/海月」になるらしい。母はこの物語の主人公、そして海月はチラシのデザインのよう。このデザインは母・ソン・ミンス役(赤瀬麻衣子サン)の手によるもの。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

セットは、中央にカーテンで仕切った回り舞台。上手側には少し高い位置に警察の取調べ室イメージの机と椅子。また上手壁にバスケットボールのゴールネット。下手側には水槽。回り舞台はその時々の情景や状況をイメージさせ、また小道具(例えば水商売の店内など)が置かれる。物語は主人公ソン・ミンスの生きて来た人生を息子が回想するという展開である。

物語は三章で構成...事件を取り扱った刑事の質問に答えるという形で、母、息子・崇明(前田勝サン)の歩んだ生活が順々に描かれる。第一章は、母と台湾人の父が結婚し僕が生まれた。僕は台湾人の名前が付けられる。その実父は職を転々とし、何時しか酒浸りになり夫婦関係は破たんした。僕は一時韓国の伯母さんのもとで暮らした。その時に韓国の名前で呼ばれた。第二章は、母が日本人と再婚し、僕は日本へ来て一緒に暮らすことになる。日本での名前が「崇明」...僕には名前が三つある。この義父は女癖が悪く、母の嫉妬は狂おしいほどの怒り。その挙句、母は義父を殺害し、自分も自殺してしまう。第三章は母と僕の確執と思慕が抒情豊に語られる。これからは僕の未来の物語が…。

子供の頃、台湾人の父と一緒にクラゲを釣り上げた。クラゲは波が無いと海に沈み死んでしまうらしい。自宅でクラゲを飼うため水槽へ。偶然であるが、自分の座席(上手側、前から3列目)からクラゲを水槽へ入れた後、それを眺めている役者の姿が硝子に映り込みとても神秘的であった。クラゲに必要な波...それはソン・ミンスにとっての「愛」の求め、捧げるという比喩のようなもの。そして韓国女性の直接的な感情表現、日本人の奥ゆかしいという曖昧さ。愛情表現のシーンで際立たせ民族性の違いを垣間見せる。
この公演は、脚本・西村太祐氏、演出・寺戸隆之氏、脚色・劇団主宰の前田勝氏の優れたチームワークによって観応えのある作品に仕上げた。また水槽の件といい、歌(昭和歌謡の数々、そして赤瀬サンが歌う天童よしみの「珍島物語」が悲哀)という舞台技術も効果的である。

国家観として描くには色々と制約や配慮が必要と思われるようなシーンも、人間、その感情に負わせることで違いを描き出し、想いをしっかり伝える。そこに国籍を超えた人間、母子の情感が浮かび上がる。ラスト…母と子の会話-慟哭と罵倒、憐憫と追慕、表現し難いような感情が錯綜し余韻を漂わす。

次回公演を楽しみにしております。
七、『土蜘蛛 ―八つ足の檻―』

七、『土蜘蛛 ―八つ足の檻―』

鬼の居ぬ間に

インディペンデントシアターOji(東京都)

2017/07/05 (水) ~ 2017/07/10 (月)公演終了

満足度★★★★★

この劇団の公演は、「地獄篇 ―賽の河原―」以来久しぶりに観させてもらった。
公演は、尊厳の否定、暴力の肯定という醜悪な面を掘り下げ、妥協せず、人の深淵を凝視し続けるような物語。安易に希望、光などという救いは欠片ほども見せない。それでも地べたを這いずり回り必死に生きる。逆に言えば”生”への執着、その力強さを浮き彫りにした力作。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

セットは、二階部を設えた上下二面で、時間と場所の違いを視覚的に分からせる上手い作りである。一階部(タコ部屋)は汽車が通るトンネルを掘る土工夫の非人間的な環境での肉体労働を描く。一方、二階部(女郎)は私娼窟で働かされる女郎(女将)部屋という設定である。また女将の部屋の和箪笥、衣装(遊女、土工服など)、つるはし等の小道具も時代感、臨場感を増す。当日パンフによればどちらも北海道という地である。
時代は、タコ部屋と女郎の間に20年ほど流れている。視覚的にはそれぞれのシーンが入れ子状態で展開するが、もちろん実際は交差していない。

タイトル「土蜘蛛」とは、平家物語ではまつろわぬ民の怨念と説明されているという。そして「土雲」と表記し穴倉や洞窟に住んでいた集団を意味するらしい。このタコ部屋は、現代日本の格差社会を思わずにはいられない。特にバブル崩壊後、持つものと持たざる者、貧富の差が拡大する。芝居のような直接的な暴力こそ見かけないが、怨嗟が聞こえてきそう。

一見、”人間”の強欲という「個」の面に目が向いてしまうが、先に記した”社会”という「集」への鋭い批判が浮き上がってくる。時代背景は昭和、それも戦時中らしい。その重々しい空気感が緊張をもたらす。会場全体が薄暗く、客席を含め穴倉へ導かれてしまったかのような錯覚に陥る。また上演前からの寒風吹く音響効果も見事な導入である。

この雰囲気の中で、役者の演技が迫力・緊密感で漲っている。演技のバランスもよく観客の集中力を途切らせないテンポ。特にラストシーンの女郎であった女将・綱(田中千佳子サン)と土工夫・辰夫(小島明之サン)の20年の時を越えて邂逅するような情景は圧巻。もちろん直接会うことはなく心象形成として観せているのであるが、このシーンこそ絶望の淵にいても、”信じる”という目に見えない拠り所になっている。全編にわたって金・物欲、暴力という否定的な見せ方の中で、細やかな抗いのようにも思える。それゆえ鬼気迫る情念のようなものが感じられた。
 
次回公演も楽しみにしております。
Hexagram

Hexagram

アブラクサス

OFF・OFFシアター(東京都)

2017/07/05 (水) ~ 2017/07/09 (日)公演終了

満足度★★★★

ジャンヌ・ダルク…世界史、特に欧州の歴史を学ぶ時、必ず聞く人物の名前であろう。歴史に名を刻んだ人物であるが、活躍した期間は短い。それでも600年以上前の異国の出来事に登場する名前は多くの人に知られている。

物語はジャンヌが神から啓示を受けて、オルレアンの地からイングランド軍を撤退させるが、味方の裏切りで敵に捕らえられの後…。ジャンヌを知る人達が集まり回想するところから物語は始まる。

欧州史に刻んだ出来事であるが、この公演ではその歴史的背景よりはジャンヌ・ダルクという人物に焦点を当てたヒューマンドラマとしての印象が強い。
(上演時間1時間45分)

ネタバレBOX

ほぼ素舞台。下手にクルスを模ったオブジェ…透明な箱に入った鑑賞花、その箱をクルスの形のように組み合わせ飾ってある。
百年戦争(当日パンフで概要の説明あり)最中、突如として神の啓示が”聞こえた”少女が窮地にあったフランスを救った。戦争に至った政治的背景などは、役者の台詞で型通りに説明されるが、むしろ少女の信仰、信念および慈悲といった人間的な描写が中心になっている。登場人物はわずか5人。ジャンヌ(羽杏サン)を除いた4人の回想とジャンヌ本人の行動を交錯させ、主観・客観という異なる立場で見せる。だだ、ジャンヌ火刑から22年後であり、もともと好意的な人々の集まりであることから、ジャンヌの気持に同情、同調しているかのよう。
そしてジャンヌが”啓示を受けたことを表す 羽杏サンの激しく踊る姿が神々しく思える。そんな表現が相応しい圧巻のシーンである。神と人との関係性を実に上手く見せている。
また演出として、社会・政治的な背景を最小限に描き、人間ドラマに重きを置いたことで物語を分かり易くしていたことに好感が持てる。

最近の日本の状況...特に平和、平穏を脅かすような法が次々に成立している。そんな時だからこそ、”聞こえる”に呼応した”声を上げる”ことの大切さを感じざるを得ない。昔のそれも異国の出来事として傍観するだけではなく、今の日本を考える上でも観応えのある公演であった。

個人的な好み...些細・卑小なことであるが、クルスが花屋の「飾り物」のように見えてしまう。公演全体は笑いを封じ一種の硬質感を醸し出している。その雰囲気に対しクルスが華やか過ぎるような...。照明によって流血の赤、未来輝く白などへ変化できるような素材が相応しかったと思うのだが。

次回公演も楽しみにしております。
誰も寝てはならぬ

誰も寝てはならぬ

めがね堂

高田馬場ラビネスト(東京都)

2017/06/28 (水) ~ 2017/07/02 (日)公演終了

満足度★★★★

この作品は、サスペンス・ミステリーとして観応え十分であった。物語の展開(脚本)、その舞台表現(演出)、そして役者の体現力(演技)、そのバランスが優れていた。
また、この公演タイトル、説明文が上手くどうしても観たくなる。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

暗幕で囲った素舞台、薄暗い中で懐中電灯の丸い光が妖しく照らされる。病院、新人看護師が夜勤巡回に行くことを躊躇っているところから物語は始まる。役者は9人で、一人何役かを担うキャストもいる。その誰もが怪しい人物に見えてしまう。

作品はミステリー要素が濃く、再演の可能性もあることから梗概(ネタバレ)は控えておく。だだ、”心の闇”、その彷徨するさまを(文書)倒置法のように確定している事を遡るように解明していく。その手法は、謎を提示し解決していくミステリーの王道とも言える。

舞台表現としては、素舞台であることから、状況・情況は観客の想像によって膨らむ。セットがあるとそれに捉われた印象を観客に与えるが、本公演はその要素をなくし自由に心または脳内を動き回る。状況は瞬時に変化(役者は出入りせず、違う役がらへ)する。そのフラッシュ・バックのような用法は緊張・緊迫感を醸し出す。また状況などの変化は、立ち位置を変え繰り返し表現することで過去と邂逅させているようだ(例えば、夜勤巡回を巡る先輩看護師と新人看護師のやり取りなど)。

演技は、皆さん素晴らしいが、特に主人公・川島ヨシオ(佐藤匡サン)の気弱な男の表情がリアル。その顔表情を含め心と体という心身が変化・変貌していく様が印象的である。

次回公演も楽しみにしております。
モラトリアム

モラトリアム

ウゴウズ

要町アトリエ第七秘密基地(東京都)

2017/06/29 (木) ~ 2017/07/02 (日)公演終了

満足度★★★

タイトル「モラトリアム」が気になり、哲学を学ぶ学生の青春物語という説明文に惹かれた。全体的な雰囲気はあまり哲学を意識させるシーンは少ない。話のテンポは独特のようで、ゆったりというか緩く、軽快なテンポの芝居を見慣れているともどかしく思えてくる。普段の大学生活を描くのは難しいが、もう少し芝居としてのメリハリがあると良かった。
夢と現実の狭間に揺れ、除々に現実を見据えるようになり社会へ旅立つ、そんな世界観に思える。
(上演時間1時間15分)

ネタバレBOX

舞台は白線で囲い、室内と室外を識別させる。室内(大学の哲学思想研究会というサークルという設定)は、テーブルとそれを囲う椅子4脚、上手側にソファー、書籍の入ったBOX、TVが置かれている。室外(廊下か?)にはベンチ。当日パンフに作・演出の本間玲音女史が自身も哲学科に通っており、その期間に色々なことを覚え吸収したことを記している。それは恋愛という経験、酒・煙草という嗜好だったようだ。その内容は芝居の随所に描かれている。
哲学科を思わせるのは、冒頭とラストの専門書の読み合わせぐらいか。あとはサークル内にいくつかのグループ活動があり、(西田)幾多郎の名前などの台詞を聞いたところ。むしろ、小演劇・映画の話のほうが盛り上がっており、芸術科らしい。

特に何か大きな山場があるわけではない。大学生活(サークル活動中心)が坦々と描かれ、現実に近い光景のように思える。社会的責任を果たすのを猶予するような青年期、それを大学生活に準えて社会人(就職)になるまでの期間を”モラトリアム”として描いている。大学年間=モラトリアムはよく耳にするが、そのあり来たりな描き方に終始したようで、芝居としての見せ場が少ない。

新入部員がピアスをするなど、女性の恋愛・感情・成長が垣間見えるあたりは秀逸な描き方。日常のそれも人間観察がよく出来ているよう。大きな物語の構成に、このような些細ではあるが感情変化、機微と余韻が醸し出されれば…。

大学卒業までの1年間のサークル活動、しかし季節の移ろいは感じられない。ラストにスーツ姿になったことで、卒業を思わせるが、それまでの間は衣装も同じで季節感、時間に流れが出ていない。
もう少し、芝居として観せる場面(モラトリアムを意識させる)が欲しいところ。演出なのか芝居なのわからないが、自分では観ていてもどかしく思えるようなテンポが残念であった。

次回公演を楽しみにしております。
学ばない時間。

学ばない時間。

グワィニャオン

【閉館】日暮里ARTCAFE百舌(東京都)

2017/06/23 (金) ~ 2017/06/25 (日)公演終了

満足度★★★★

初めて行く会場「日暮里ATCAFE百舌」。そこで繰り広げられる笑劇は、まさに笑撃であった。グワィニャオンの初めてのギャラリー公演ということであったが、その小空間に見合ったシチュエーションとキャストで観せてくれた。
タイトル「学ばない時間。」で、『。』が付いている。なぜか「モーニング娘。」を思い出してしまった。モーニングのコーヒーに単品の食べ物が付くお得感を出すためのネーミングであるようなことを聞いたことがある。この公演も”笑い”という効用のお得感を味わえた。

(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

舞台セットは、演劇部の物置のような場所に横長テーブルとパイプ椅子、そして模造刀などの小物。そこで中学校の卒業式・謝恩会に披露する歌の練習をすることになっていたが…。二年担当の教師がゆるゆると集まってくるが、何となくやる気がないような。時間だけが過ぎていく中、一人の教師が突然出し物を変更したいと言い出した。

出し物は、歌から演劇へ変更したい。やる気のない教師を半ば強引に演劇の練習に巻き込んでいく。一種のサクセスストーリーのような展開である。最後は情熱の勝利か。この練習での過程が面白可笑しく描かれる。

小スペース、謝恩会という逃げ出せない状況は、観客の意識を繋ぎ止めるに十分な設定である。演劇を作り上げていく、その過程はこの公演そのものであろう。キャストの等身大(やる気がないは違うが)の姿であろう。実に観応えのある演技である。教師役ではないが、矢島・演劇部部長の さいとうえりなサンの発声練習(早口言葉)は見事。この件は、ラストに全員で行う印象付への伏線になっている。

最後、会場出入り口のところで、見送りに出ていた渡辺サン、佐伯サンを含め何人かの観客によるレヴュー?が始まった。その会話は、公演による”笑い”の効用で緊張感が解け、楽しいひと時を共有したからかもしれない(少しヨイショかも)。

そのレヴューの中で、細かいが次のような話が出た。
学年主任の江間先生は勤続35年ということで、校長を目指していると。定年退職までの年数が短かすぎないか。
当日パンフで教師の担当教科が紹介されていたが、その教科にちなんだ台詞があったら面白い。例えば、江間先生は国語教師であり、劇中劇の台詞について国語的におかしいとあった。謝恩会の演目変更を言い出したのは、英語担当の藤田先生(佐伯さやかサン)であり、その練習中に英語の発音があったりしたら面白い。卑小なことだが、自分も感じていたこと。ご紹介まで。

次回公演も楽しみにしております。
キョーボーですよ!

キョーボーですよ!

劇団チャリT企画

新宿眼科画廊(東京都)

2017/06/09 (金) ~ 2017/06/13 (火)公演終了

満足度★★★★

タイトル「キョーボーですよ!」の通り、国会審議で注目されている「共謀罪」を扱った内容。それもストレートな描き方で法案そのものの問題性を浮き彫りにする作風である。
身近な市民サークルがいつの間にか…そんな怖い世の中になっている様を観せつける。物言えば唇寒し秋の風ではないが、批判めいたことは言えない時代になってしまう。ほんの少し先にあるような物語はタイムリーに選れ、話題性に勝れた公演。実に面白かった。
(上演時間1時間15分)

ネタバレBOX

ほぼ素舞台で、真ん中にテーブルと相向かいに椅子があるのみ。普通の料理サークル(メンバー)がテロ集団と認定され、警察に事情聴取されることになる。身に覚えのない”一般市民”がいつの間にかテロ(準備)行為に看做されるという怖い世の中になっている。この公演では共謀罪が成立しており、憲法改(悪)定している前提である。憲法9条、国家斉唱、教育勅語など国民感情を逆なでするようなシーンの数々。その逆、表現の自由など、現憲法下にある保障などが危うくなっていることが伝わる。

この劇団の特長である、時事ネタや社会問題などのシリアスな題材を「バンカラ・ポップ」という独特なセンスで軽妙に笑い飛ばしたコメディ…その真骨頂を観させてもらった。問題意識はしっかり伝わる。内容の重大性からすれば硬質な演出にすることも可能であろうが、あえてコミカルなシーンを取り入れ芝居として観(魅)せる工夫は見事。

公演では、テロ集団であることの通報があったことから警察の事情聴取に至ったようだが、気にいらない人を陥れるために用いるような怖さも垣間見える。誣告(ぶこく)罪なんか関係なくなるのだろうな~。ちなみに通報の件は明らかにせず、追及しないで割愛したようだが、以外なオチがあったら印象的だったようにも思う。

ラスト…東京・有楽町で爆発音のような、そして”テロか”という台詞からは、共謀罪を肯定した?実にシュールな展開のようだ。
次回公演も楽しみにしております。
遠心力の求め方

遠心力の求め方

こわっぱちゃん家

ワーサルシアター(東京都)

2017/06/09 (金) ~ 2017/06/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

どこにでも居そうな家族(母、兄・妹)が、生きることに真剣に向き合い、悩みながらも前進する心温まる内容。この変哲のない家族とその周りの人々が織り成す物語は、在り来たりである事から、役者の表現力に依る見せ方が重要になっている。
本公演の役者陣は、映画のワンシーンを切り取り、アップにしても堪えられるのではないかと思うほどに見事。その感情表現は素晴らしかった。
さらに舞台美術はシンプルであるが、それだけに情景・状況設定を固定化することなく、役者の演技を邪魔しない作りも良かった。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

家族物語…その中で兄妹を中心に展開する。兄は知的障がい者、妹は高校三年生で進路選択で悩める日々を過ごしている。この家族に関わる人々との交流が実に生き活きと描かれ、”普通”であるがゆえに身近な問題として感じられる。兄の障がい者として、人として生きることの喜び、それは働くという行為によって得られる。また妹は(将来)”やりたい事”に対する思いが伝わる。兄、妹の特別ではない思いが、過去の自分自身の思いに重なり共感を覚えてしまう。この2人に対し、登場シーンこそ少ないが母の子を思う気持がしっかり伝わる。子が生まれ育てて思う親の感情であろう。

この家族(兄、妹)に関わる人々も、それぞれの事情を抱えながら今を生きている様子がしっかり表れている。兄が勤めている(中小零細)工場は、その経営存続をかけている。個人の生きがいと経営という狭間に悩む人がいる。そこに日本経済を牽引してきた中小零細企業の困難と矜持を見る。
また妹の悩みは、その年代の多くの若者が抱えるものだと思う。真にやりたい事がわかっているだけ幸せかもしれない。高校でのクラスメイトとの何気ない語らいなど、どこかで見聞きした光景が微笑ましい。
母親の自分が大学進学出来なかっただけに、娘には大学へ行ってほしい。その気持も分かる。これらを日常生活として描き出し、先にも記したが”普通”を強く意識させる。

総じて若い役者であるが、その”普通”を見事に演じている。舞台セットは作り込んでいるわけではないので、その情景・状況を役者の演技で体現しなければならない。演技、特に顔表情は映画のワンカットを切り取っても堪え得るようなもの。
いくつかの見せ場はあるが、日々の暮らしの中にこそ至福があることを改めて感じさせる秀作。

次回公演も楽しみにしております。
Lady Bunnies Burlesque

Lady Bunnies Burlesque

Lady Bunnies Burlesque

渋谷Star lounge(東京都)

2017/06/07 (水) ~ 2017/06/07 (水)公演終了

満足度★★★★★

カーテンコールの説明では、構想は今(2017)年1月、それから稽古期間3カ月。公演日はたった1日の豪華・贅沢なもの。妖艶という行儀のよい言葉よりはもっと色っぽさを強調した内容である。それは出演者が女性として、その肢体・姿態を十分意識し強調して観せようとしている。
この公演の最大の魅力は、観(魅)せること、観客に楽しんでもらうこと。それがしっかり伝わり、1時間30分がアッという間に過ぎた。まさしくエンターテイメントと呼ぶに相応しいショーであった。
実際観て体験しなければ、その楽しさは分からないが、少なくとも会場内は大盛り上がりであったことは間違いない。
映画「バーレスク」の話題沸騰をそのまま東京・渋谷に再現し…。

ネタバレBOX

クリスティーナ・アギレラ主演の映画で認知度が高まった。その「バーレスクショー」をライブ形式にして上演した。

メンバー構成はメインシンガー3名、バックダンサー4名…7人による妖艶・セクシーダンスで魅了する。全員がセクシーな衣装に身を包み、ステージ上だけでなく、時には会場に降り立ち、客席の間を体をくねらせ踊(躍)り抜ける。
歌は、キューティーハニーなど全19曲を聴かせる。その曲間の話も面白く会場・観客の気を逸らせない。

観客・出演者やスタッフが一体となって熱狂と興奮を演出したワン・ナイト。商魂逞しく、出演者へチップを渡すシステムが…バーレスクショーらしい、遊び心を誘うのも見事!?

次回公演も楽しみにしております。
Die arabische Nacht|アラビアの夜

Die arabische Nacht|アラビアの夜

shelf

The 8th Gallery (CLASKA 8F)(東京都)

2017/06/02 (金) ~ 2017/06/05 (月)公演終了

満足度★★★★

公演では、マンション内は断水という設定であるが、観劇日はドシャ降りの雨という皮肉。最寄り駅から徒歩12分とチラシに書かれており、行くのを躊躇ったが、観に行って良かったと思う秀作であった。原作は、ドイツ人作家・オーランド・シンメルプフェニヒ氏だが、その翻訳劇は外国作品というような違和感を感じなかった(登場人物名は原作通りのようであるが)。
(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

文化が国民性を創るのか、国民性が文化を創るのか分からないが、翻訳劇ではその違いが怏々にして違和感を持たせる。しかし、この公演は国民性を越えた人間の深い思いと典型的とも思えるような行動が観てとれる。その観せ方は、特に照明や音響といった舞台技術に頼ることなく、役者の演技力・その体現のみに依る。にも関わらず、情景と状況はしっかり伝わるという心象形成は見事だと思う。

会場はCLASKAの8階ギャラリー。窓からは、都心の夜景が濡れて幻想的な光景を見せている。舞台はコンクリート床にソファー、その傍らに残り少なくなったウイスキー瓶。周りを囲うように線が引かれ、その外側に客席(パイプ椅子)。

役者が発語する擬音のブザー音、パントマイムによる状況説明など、「ト書」と「台詞」を起用に区別して物語を展開させる。その世界観は、過去と現在の交差。その繋がりがこの部屋にある。
この部屋(マンション8階。この会場と同じ階数にした状況演出か)には女性2人が住んでいる。登場人物は、この2人、マンション管理人(男)、部屋女の彼氏、この部屋を覗いている男(後の闖入者)5人のみ。それぞれが自分の思いを遂げようとしている姿がコミカルに描かれる。

上演前からソファーで眠り続ける女性、20年ほど前に旅行先で両親をはぐれ迷子に…その記憶・心の彷徨や嫉妬と呪いを思わせるような描写が滑稽と怖ろしさを感じさせる。同時にその女性に対する男性の本能、それを抗い切れない行為が可笑しい。
これら全てが、役者の発する言葉と表現する身体で観せる作品、堪能した。
なお、ギャラリー会場ということもあり、柱を舞台の区切りにしていた。自分の席(演技者との間に柱がある)から闖入男が女性を(脚立の上)覗いている演技が観にくく、その見切れが残念であった。

次回公演を楽しみにしております。
夜を忘れなさい

夜を忘れなさい

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2017/06/02 (金) ~ 2017/06/06 (火)公演終了

満足度★★★★

夢にある「癒し」と「怖れ」を炙り出すような物語。
人は記憶と忘却という優れた特徴があると思うが、その特徴を夢か現か幻か、それが判然としないような展開で描き出している。舞台はシンプルであるが、それだけにシチュエーションと役者の演技力に依るところが大きい。
(上演時間55分)

ネタバレBOX

舞台セットは中央に大きなベットとその枕元に水差しが置かれているだけ。それを三方向(客席)から観る。夜寝れない人(女)に添い寝する。そんなバイトをしている男、その男女の奇妙な会話劇。その室内が何となく妖しげな雰囲気を漂わせている。バイト男の大学の友人曰く、風俗だと貶す。

女・サオリ(金子優子サン)が男・ナオ(藤家矢麻刀サン)がバイトしている部屋に訪ねて来るところから物語は始まる。会社でのミスを思い悩み眠れない、また別の女・ミカ(川島佳帆里サン)はパートナーからの暴力であろうか、体に痣がある。バイトは傾聴、添い寝だけだが、いつの間にか自分の内面に澱のように沈殿していく。そのナオの悩みを解消するために現れた彼女(安部智美サン)だが、ナオは悩みの解消の代償に何(記憶?)かを喪失する。

中国の「邯鄲(かんたん)の枕」を引き合いに人生の喜怒哀楽、栄枯盛衰といった移ろいを諭すような台詞。また日本旅館に鍵がない時代に大切な物は枕の下に隠していたと。それが衆人に知れると盗みも”簡単”になる、というオチも...。

サチコ、ミカという2人の女性の話を入れ子状に自己言及し、さらに彼女という仮想者を同時に進行させるような物語は混迷の度合いが深まるかのよう。
この公演、いくつかの対比するような描写が印象的。まず、女性2人の衣装、サチコは白いブラウスに黒のパンツという典型的なOLスタイル。一方ミカは寝間着。その違いが男との距離を表しているのだろうか。そして大学の友人の方言(九州地方か)は、夢と現実の区別であろうか。さらに住む場所、大型スーパーなど一見不自由ない街と昔ながらの商店を引き合いに出し、画一化された生活の味気なさ、素っ気無さを嘆く。何となく比喩を思わせるようなシーンの数々が印象的であった。
全体的に不安や困惑を重層的に描いた不思議ワールドと言った印象を持った。

次回の公演も楽しみにしております。
『あぁ、自殺生活。』4月~6月/365

『あぁ、自殺生活。』4月~6月/365

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2016/12/31 (土) ~ 2017/05/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

無人受付(改札)を通り抜け、自分で硬券(「青春18キップ」ならぬ「黄昏18キップ」)に改札鋏を入れる。場内は暗幕で囲い薄暗がり。物語はタイトルのように矛盾…自殺と生活という死と生の狭間を揺れる様な公演。
この芝居、観ているのが現実なのか心内の彷徨なのか、その判別は難しい。敢えてその線引きを明確にせず、観客の感性に委ねたと受け留めるべきか。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

置き物としては中央に椅子のみ。いたる所にキッチンラップが張り吊るされている。また2人の男もラップを体に巻き付けている。ときどき現れる1人の女性。登場人物は3人のみだが、その関係に緊密さは感じられない。

表層的には、こうえんまえ という駅ホームに佇み飛び込み自殺しようとしている男。別の男が何となく自殺しようとしている行為を妨げる。その後、暗転し場面は こども公園へ移動しているようだ。その公園に現れる人々を1人の女性が演じ分ける(衣装を変えるなどの見せる工夫)。
男2人の会話…自殺しようとしていた男に対し、”自殺許可書”を持っているかと奇妙な質問をする。その”天邪鬼(あまのじゃく)”のような質問、求められる頓智(とんち)のような回答、その繰り返しの言葉が漂流しており、いつの間にか立ち位置が分からなくなる。実際に見える光景、その現実性をシュールに描いたもの。

一方、実際いるのは男1人。もう一人は自分自身。その分身(ドッペルゲンガー)がお互いを照らす。心内の彷徨を通して自問自答を繰り返し生活か自殺か、その生死の挟間を漂っている感じだ。台詞の端々に社会、特に会社での理不尽な扱いを嘆く。分別ゴミになぞらえて会社でのダメ人間をイメージさせる。通勤で利用する駅ホームは「死」に近い。その反対の「生」は公園という憩いの場所で見せる。未来に対する希望と怖れを炙り出すようだ。

作・演出としてどう観せるか、その確固たるコンセプトがあるのかどうか。観客の感性に任せるという自由裁量なのか。1年間を通じての公演であり実験的な試み(都度、演出等を変化)であるとすれば、その変化に注目したいところ。

演出…女性の存在は、物語に漂う曖昧模糊とした景色・状況に現実感(第三者、傍観者)をもたらすようで重要な役割を担っているようだ。さらにラップを引き裂くような行為は、心の呪縛を解き放つ、自由への解放をイメージさせる。この2点は秀逸で印象的であった。

台詞が説明口調、それゆえ雰囲気、世界観が理屈っぽくなり硬くなったのが残念だ。また演技面ではラップを取り去る作業に気を取られたのか、物語の流れがぎこちないのが勿体なかった。個々の役者の演技は軽妙でテンポもよかったが、全体の雰囲気が硬くなりすぎたと思う。

1年間を通じて、どう変化していくのか楽しみな公演である。

恋バナ’17~ほしいモノ...ひとつだけ~

恋バナ’17~ほしいモノ...ひとつだけ~

TEAM花時。

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2017/05/26 (金) ~ 2017/05/29 (月)公演終了

満足度★★★★

進路に悩み、恋に揺れる高校3年生の少女。その彼女を中心にした高校生活、楽しく時に切なく描いた青春群像劇。多くの人物が登場するが、主役と脇役という役割がはっきりしており、物語も本筋と脇筋(挿話)を絡ませながら展開していく。
(上演時間1時間50分)

ネタバレBOX

舞台セットは、上手側に図書館を思わせる本棚。それは2階部にもある。中央には横向きに階段が設けられ2階へ通じる。下手側は和室(主人公が住まわせてもらっている叔父の家、または修学旅行先の宿)。そこにハート型のちゃぶ台が置かれている。中央はダンスシーンや合唱部の活動を観せるため、大きな空間をつくる。

梗概…両親を早くに亡くし、叔父の家に住んでいる姉・瀬戸桃花(高校3年 川崎清美サン)と弟・雄太(同1年 菅原昌規サン)を中心に物語は展開する。姉は担任教師に憧れ、将来は教師になりたいと思っているが、経済的には厳しい。そこで新聞配達による奨学生として頑張ることにした。一方、弟はサッカーの有望選手で将来はプロを目指している。彼には彼女がいるが、もう1人彼を好きな女性がいる。この女性が嫉妬し、不良グループに唆されて彼に大怪我を負わせてしまう。姉は弟の治療費工面のため、一時進学を諦めかけるが周囲の援助で教師になることが出来た(教育実習生として母校の教壇へ)。脇筋は、合唱部の活動、修学旅行時の恋バナ、新聞集配所の仲間との交流、担任教師と叔父の娘の淡い恋バナなどが挿話となっている。
ラストシーン、制服姿の高校生がスーツ姿(衣装)へ着替え、大人に成長したイメージ。

登場人物のキャラクターと立場はしっかり描かれ、物語を生き活きと展開させる。本筋にいくつかの挿話を交えるが、それは高校生活や新聞集配所の仲間という交流の近いところから、それ以外のエピソード的な話はさらに脇筋へ。困難に立ち向かい夢を叶えようとする姿…ありきたりの様だが清清しく観ていて気持ちが良い。また不良グループのその後は、表象的には深追いせず無視(飛び降りるシーンで処理)するようで、あえて解決を見るような予定調和にしない。

気になったのは次のこと。
第1に、舞台セットで図書館を表している。不良グループの更生方法として図書係を命じているが、その意図、効果なりが分からない。せっかくのセットをもう少し活用してはどうか。
第2に、笑いの多くを麻倉ロリータ有紀(青木愛サン)の艶技に負っていること。
第3に、当日パンフは立派なものを作成。そこに登場人物名と年齢が記されている。叔父・笠原治朗53歳、娘・仁美38歳と…年齢設定に無理があり、他の役柄の年齢にも疑問が…年齢の記載がなくても想像できる。記載するのであれば無理ない設定を望みたいところ。

次回公演を楽しみにしております。
ポルカ

ポルカ

劇団芝居屋

テアトルBONBON(東京都)

2017/05/24 (水) ~ 2017/05/28 (日)公演終了

満足度★★★★

今まで観てきた芝居屋のイメージに比べると、社会性が色濃くなったという印象である。確かに今までも地方都市、僻地を際立たせるような内容もあったが、もっと直裁的な描き方であった。また登場人物は基本的には善人ばかりであった。ところが今回は悪人も登場する。演じた役者も、当日パンフで「これまでにない役柄に挑んでいます!」と。
(上演時間2時間10分)

ネタバレBOX

「ポルカ」という喫茶店。場内に入ったと同時に店内のようだ。上手側はテーブルとベンチ椅子(またはソファー)、壁面は大きな窓、その奥に店の出入り口がある。下手側はカウンターとスツール。時間経過を表す照明は、趣のある射光のようで印象的だった。

梗概…東京近郊(台詞では「とよだ」)の住宅地。その一角にある「ポルカ」という二代に亘って愛されて来た老舗喫茶店がある。今、昼間だけの純喫茶では立ち行かなくなり、夜はスナックとしても営業している。ここに集まる常連客の日常生活、活動を通して市井の姿を覗き観る。不動産屋社長、保険外交員、ミニコミ誌編集者、パン屋、さらに母親を最近看取ったばかりの女性(後、探偵事務所勤務)が常連客である。

昨今のオレオレ詐欺など、高齢者を狙った犯罪が頻発している。その被害に遭わないような取り組み(シルバーガード)、その集まる場所として、この店に白羽の矢。この地域の高齢者の割合は25%、特に団地住まいの高齢者が多いことも話題にする。この公演も東京郊外だが、現実の団地も多くは郊外に建てられている。当初想定した、若い核家族の夫婦が入居し、その後は次世代の夫婦が入居するというサイクルは起きなかった。今は高年齢者が多いと…。その現実に詐欺という社会性を突きつける。物語は、地域の名士のような元不動産会社社長が、某パーティで上品な女性と知り合って起きる騒動。

現実には犯罪絡みであるから危険を伴っているが、そこは地域(常連客)の結束、その人情味を描くことを優先した展開である。作・選出の増田再起氏は、「現代の世話物」を標榜しているだけに、現実的な対応でないことは百も承知の上のことであろう。この劇団にとって、現実過ぎることは卑小なこと。
なお、一樹さんの歌うシーンは一考(工夫)が必要かも…。

次回公演も楽しみにしております。
ペンション林檎の樹物語

ペンション林檎の樹物語

昭和歌謡コメディ事務局

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/05/25 (木) ~ 2017/05/28 (日)公演終了

満足度★★★★

公演「昭和歌謡コメディ 築地そば屋笑福寺」を楽しみに観ている者としては、その原点と言える本作品はぜひ観ておきたかった。
昭和歌謡コメディは、芝居と歌謡笑 いやショーの2部構成になっているが、この公演は芝居の劇中歌としている。その融合したスタイルの延長線上が昭和歌謡コメディになっている。
(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

舞台セットは、中央に歌、ダンスを行うためのスペースを大きく確保している。上手側に暖炉・薪、壁にギターが飾られている。下手側にテーブル・イス、その後方に窓。正面奥に横長の棚が設えてあり、その上に小物が置かれている。

梗概…物語は恋の騒ぎ。登場人物は全員が善人で安心して観ていられる。舞台は信州にあるペンション「林檎の樹」。ここは、少しお調子者のオーナー・森本茂(江藤博利サン)が経営している。その森本は妻を亡くし、一人娘のエミを男手一つで育ててきた。
ある日、娘の友人・ユミ、その恋人・藤井、彼の恋人だと言い張る奈々子がペンションで鉢合わせし騒動が…。ペンションに集う様々な人々の人生と想いが交差し、やがて思いがけない真実が明かされていく、ちょっぴりホロリのハートフルコメディ。

昭和という時代に流行った歌とその振り付け、その聴かせ、観(魅)せるパフォーマンスが懐かしくもあり楽しい。前説は、劇中では受験生の片山(田中達也サン)が担当していたが、客席との一体感(手拍子など)が場内を盛り上げる。その言葉通り温かい雰囲気に包まれた公演、心底笑い楽しめた。

次回公演(再演)を楽しみにしております。
雨と猫といくつかの嘘

雨と猫といくつかの嘘

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2017/05/23 (火) ~ 2017/06/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

終演後、作・演出の吉田小夏女史に挨拶と簡単な感想を伝え劇場を出たところ、雨が降り出した。ふだんであれば鬱陶しいと思うところであるが、その夜は劇中に引き戻されたような特別な感慨が…。同じように劇場から出てきた人々も異口同音の感想を漏らしていた。この公演、一言で言えば抒情豊かな仕上がりの珠玉作といったところ。
【Aチーム】

(上演時間1時間15分)

ネタバレBOX

舞台美術が素晴らしい。この舞台セットは初演時と同じだという。舞台中央は畳敷きの和室イメージ。周りを通路のように囲い、上手・下手側に収納BOXが置かれ、その上部に飾り棚のような。舞台奥は客席に平行に飛び石、その上部・垂直に粗い暖簾(紐)のようなものが吊るされ、そこにビー玉(雨イメージ)のようなものが取り付けられている。全体的にしっかり作り込むという感じではなく、骨組を出現させるという表現の方が相応しい。

梗概…熟年離婚した水野風太郎は60歳の誕生日を迎えた。その一人住まいに娘とその婚約者が訪ねて来るところから物語は始まる。この風太郎の子供、中年、そして現在(還暦誕生日)の日常生活を通して、一人の男と男を取り巻く家族の滋味ある人生が描かれる。先に記した部屋はアパート。その部屋はそれぞれの時代の住んでいた部屋に変わり、しっかり作り込んでいないことが、観客の想像力を豊かにする。それが年代層が違う観客の描く情景・状況に寄り添うことになる。大きな事件が起きることもなく、坦々と過ぎる日々の暮らし…そこに市井の幸せがあるかのようだ。

水野風太郎の子供・中年・現在の時代を往還するように描くが、その視点はいつも主人公のもの。それゆえ、キャスト6名は風太郎以外、複数役を担うことになる。そのキャラクター、立場の変化は見事で観応え十分である。いくつかリフレインシーン(例えば、猫の玉三郎が家を出るところ)があるが、心象形成とその確認のようで説明過多になりそうな微妙なバランスにあったと思う。

劇中の台詞、人生で泣くのは3回…生まれた時、大切な人が亡くなった時、生きていて良かったと思った時だという。その意味で本公演は還暦を迎えた大人の生まれ変わり、という回想が心情に迫ってくる。

最後に演出について、室内(通常)と戸外(スロー)の動きの違い。そこに現在と過去の時間の流れ、違いを感じる。また雨の音と傘の情緒性が良い。傘は透明のビニールで、表情がしっかり観てとれる。ラストは還暦イメージの赤い傘。2008(平成20)年が初演というが、携帯電話を用いず生身の人と人、家族の向き合った会話が昭和をイメージさせる。

次回公演を楽しみにしております。
から・さわぎ

から・さわぎ

ZIPANGU Stage

萬劇場(東京都)

2017/05/24 (水) ~ 2017/05/28 (日)公演終了

満足度★★★★

タイトルが洒落ている。シェイクスピアや某TV番組「恋のから騒ぎ」を連想させるが、さらに当日パンフを見て伏線があることを知る。全体的にはドタバタコメディという印象であるが、シェイクスピア戯曲のパロディと思わせるようなシーンの数々。そこに人間性と社会性が観て取れる、そんな深みが感じられる公演であった。
(上演時間1時間45分)

ネタバレBOX

公演は、唐沢製菓という会社の社内ラウンジで巻き起こる喜劇。セットは下手側に飲料を提供するカウンター、それ以外はテーブルとイスという休憩スペースといったところ。下手寄の正面壁(際)に「KARASAWA」という社名ロゴが見えるが、そのロゴにハートマークの照明が…。実にオシャレ。

物語は新人が取締役会へ新商品企画をプレゼンテーションするため、その予行演習を行っているところから始まる。いくつかの試作品とそのコンセプトを説明する。直接的に取締役会シーンは描かれない。社長・専務・常務などの取締役会メンバーが息抜きなどの理由を付けてラウンジへ現れる。そこへ営業部員が現れ、解雇されたと嘆く。なんと社長に向かって厚化粧と暴言を発してしまった。激怒した社長が解雇すると言い出し、何とか撤回してもらいたい。そこで思い付いたのが社長を恋の虜にすると…。

人間性から 社長の恋は漂流するかのように心が揺れ、その様を面白く描いている。その過程で観る場面は、シェイクスピア戯曲を連想させるシーン(例えば死んだ真似など)もあり可笑しい。また男女の恋心は共通でも、その性別、役割のような生まれながらの違い(夫の好きな料理か妻の栄養管理か)を強調する。
社会性から 役員と社員の立場の違いというか、最近の流行語のような「忖度(そんたく)」という言葉を連想する。その「他人の気持をおしはかる」という意味から、こちらもシェイクスピアの宮廷を取締会になぞらえて茶化すようで意味深である。

役者はそれぞれのキャラクター、立場の人物像をしっかり立ち上げ体現している。その登場人物の名前も江崎、東鳩など製菓会社を使用しており笑える。演技のバランスもよく、嘘、その糊塗、混乱、収拾という展開はまさに空騒ぎで楽しめた。

次回公演を楽しみにしております。
GK最強リーグ戦2017

GK最強リーグ戦2017

演劇制作体V-NET

TACCS1179(東京都)

2017/05/17 (水) ~ 2017/05/21 (日)公演終了

満足度★★★★

観客参加型の演劇イベントという触れ込み。1チーム50分の短編作品を上演し、観客の支持の多さが勝敗を決する。そして今年のテーマは「酒」である。
もっとも、別の”感慨”も連想させるが…。

観劇したのは、Bチーム「見慣れた知らない景色の中で」とCチーム「one night after 12AM」の対戦。対戦はキャスト代表者によるジャンケンで先・後攻を決める。その結果、C・Bの順になった。感想もその順で書かせていただく。
どちらのチームも芳醇な香り、酒がまわるよりも早く物語に酔ってしまう。たとえ酒が嫌いな観客でも、その駘蕩(たいとう)たる雰囲気に酔う、そんな珠玉作2編。

ネタバレBOX

両チームとも舞台のセッテングから始まる。

【Cチーム「one night after 12AM」】
あるマンションの1階にある酒場(Bar)。セットに使用するのは幾つかのBOX。テーブルや椅子に見立て、または縦に重ねてカウンターをイメージさせる。
亡き父が通っていた店。時間はもうすぐ午前12時。その閉店までのわずかな時間の物語。今、亡父の知り合いが集まって、店のママも交えて歓談中。そこへ20歳になった娘が来店し、初めての「酒」を体験する。娘が小学校入学した年に亡くなったと言うから、十三回忌といったところか。
滑稽な観せ方であるが、雰囲気的には抒情豊かで静かな話。

【Bチーム「見慣れた知らない景色の中で」】
地方の酒蔵。こちらは舞台奥に仏壇が置かれている。冒頭、暗闇で酒瓶が割れる音は迫力ある。バンド活動がしたいと家を出ていった息子が突然帰ってきた。父は喉頭がんに侵され、先々が心配である。しかし母の三回忌にも帰らなかった息子を許さない。この家には娘がおり、その結婚を考えている彼氏、息子のバンド仲間や彼女も絡みどう展開していくのか…。そのスラプスチック・コメディのような動きのある話。

このGK最強リーグ戦2017、ルールは上演時間50分、テーマ「酒」ということは先に記した通り。今回観た両チームは、テーマ以外の共通点として「死」を感じさせる。
暗幕で囲んでいる舞台、そこに白い衝立を等間隔に並べ立て、まるで鯨幕のよう。Cチームは亡き父を偲ぶ。Bチームは母の死(仏壇)と父の病。
違いは、雰囲気が「静」と「動」という印象。「都会」と「地方」という感覚。

それぞれ気になる所…蛇足ですが。
Cチームは、BOX上で一人ひとりが独白する演出。前列席だと見上げることになり、観にくいと同時に圧迫感もある。俯瞰・印象付けする演出なのかもしれないが…。
Bチームは、息子のバンド仲間が登場するが、その存在自体が必要だろうか。息子が帰ってきた事と父親との確執、その氷解の過程に力を入れたほうが…。
両チームのキャスト数、Cは7名、Bは15名と倍以上。ルールには関係ないだろうが、バンド仲間3名を登場させなくても話は成り立つように思う。

次回公演も楽しみにしております。
幕末疾風伝「MIBURO~壬生狼~」

幕末疾風伝「MIBURO~壬生狼~」

TAFプロデュース

かめありリリオホール(東京都)

2017/05/19 (金) ~ 2017/05/21 (日)公演終了

満足度★★★★

全二幕、2時間30分(途中休憩10分)の長編、現代-時代劇。物語の構成としては目新しさはないと思うが、観せ方、舞台美術などの効果的な印象付けは工夫を凝らしてあり好感が持てる。
ただ、上演時間が長く、特に一幕目は緩い笑い、遊びが過ぎて冗長に思える。一幕目をもう少し引締め、公演全体を2時間程度にすると観客の集中力も保てるのではないか。それだけに少し勿体無かった。

ネタバレBOX

舞台は殺陣・剣舞・アクションスペースを確保するため、作りはシンプル。それでも骨組みだけの高い城壁門イメージを左右対称に設置し、その間に半円形の障子窓(和風)がある。

梗概…現代、明治期に絶滅したと言われているニホンオオカミを探すため、イヌ岳に入山し遭難した兄・妹。妹は一週間後に救助されたが、その間に経験した出来事を日記に残し、それを基(治療用)に回想する。兄・妹が再会したのは幕末の京都。兄は新撰組の八番隊長になっていた。妹は弟と性別を偽り入隊し、新撰組の盛衰(約4年、池田屋事件→分裂騒動)を目の当たりに見る。現代と回想・幕末期の時間の流れの早さが異なる。浦島伝説のように物理学で言うところのウラシマ効果で観せる。

江戸から明治という、日本の激動期。時代に翻弄されながらも、生きる価値を模索し続けた漢(おとこ)達をマジックリアリズムの手法で描く。タイト「MIBURO」は、新撰組の屯所があった場所。その暗殺集団と恐れられた新撰組を狼-ニホンオオカミに準えている。現代、「生きていく意味」に向き合うことを見失っている。本公演は新撰組の生き様を通じて、生きることへの価値・意義のようなものを、娘の体験を通して伝える。

物語の設定は、もちろんフィクション。文献史ではなく記憶史として、個人の視点から描いている。真のサムライを夢みた隊士=その大志という大きな国家感と、二幕目に出現させる遊郭、花魁との遊興は人間臭さを感じさせる。その鳥のような俯瞰と虫のような近視眼の対比する見せ方も面白い。

最後に、殺陣と剣舞を分けて観せる。またその演出として刀が交わる音響、花柄文様の照明など舞台技術も印象的であった。
次回公演を楽しみにしております。

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