遠心力の求め方 公演情報 こわっぱちゃん家「遠心力の求め方」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    どこにでも居そうな家族(母、兄・妹)が、生きることに真剣に向き合い、悩みながらも前進する心温まる内容。この変哲のない家族とその周りの人々が織り成す物語は、在り来たりである事から、役者の表現力に依る見せ方が重要になっている。
    本公演の役者陣は、映画のワンシーンを切り取り、アップにしても堪えられるのではないかと思うほどに見事。その感情表現は素晴らしかった。
    さらに舞台美術はシンプルであるが、それだけに情景・状況設定を固定化することなく、役者の演技を邪魔しない作りも良かった。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    家族物語…その中で兄妹を中心に展開する。兄は知的障がい者、妹は高校三年生で進路選択で悩める日々を過ごしている。この家族に関わる人々との交流が実に生き活きと描かれ、”普通”であるがゆえに身近な問題として感じられる。兄の障がい者として、人として生きることの喜び、それは働くという行為によって得られる。また妹は(将来)”やりたい事”に対する思いが伝わる。兄、妹の特別ではない思いが、過去の自分自身の思いに重なり共感を覚えてしまう。この2人に対し、登場シーンこそ少ないが母の子を思う気持がしっかり伝わる。子が生まれ育てて思う親の感情であろう。

    この家族(兄、妹)に関わる人々も、それぞれの事情を抱えながら今を生きている様子がしっかり表れている。兄が勤めている(中小零細)工場は、その経営存続をかけている。個人の生きがいと経営という狭間に悩む人がいる。そこに日本経済を牽引してきた中小零細企業の困難と矜持を見る。
    また妹の悩みは、その年代の多くの若者が抱えるものだと思う。真にやりたい事がわかっているだけ幸せかもしれない。高校でのクラスメイトとの何気ない語らいなど、どこかで見聞きした光景が微笑ましい。
    母親の自分が大学進学出来なかっただけに、娘には大学へ行ってほしい。その気持も分かる。これらを日常生活として描き出し、先にも記したが”普通”を強く意識させる。

    総じて若い役者であるが、その”普通”を見事に演じている。舞台セットは作り込んでいるわけではないので、その情景・状況を役者の演技で体現しなければならない。演技、特に顔表情は映画のワンカットを切り取っても堪え得るようなもの。
    いくつかの見せ場はあるが、日々の暮らしの中にこそ至福があることを改めて感じさせる秀作。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/06/10 11:53

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