こまごめとなりの観てきた!クチコミ一覧

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リチャード・イーター

リチャード・イーター

劇団銀石

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2009/08/12 (水) ~ 2009/08/16 (日)公演終了

満足度★★★★

軽やかに大仕事。
佐野木雄太が『リチャード三世』という大きな仕事に臨んだ。
新解釈や長尺の演目になったということで賛否両論あるが、
この夏のU-23の秀作として大いに推したいと思う。
(と言うほど、若手の芝居を見ていないのは愛嬌で許してください)

俳優も桜美林勢を中心に粒揃い。
特にリチャード・イーターの大役を背負った斉藤マッチュは、
水を得た魚のような大立ち回りで期待通りの仕事ぶりだった。
他も隙はあれど、ギラギラしたものばかり。
BIG TREE THEATERをしっかりと満たしてくれた。

ネタバレBOX

世界の悪を一身に背負うリチャード・イーターという大悪党。
いかにカッコよく見せるかに腐心しただけはある。
良心と悪心を切り分ける方法は目新しい感じもしないが、
良心が死に、悪心だけで生き抜くという解釈はショッキングだ。

それにしても、そろそろ銀石メソッドを謳うのはやめたらどうか。
独特の方法とはとても思えぬし、だったら利賀に行けばよい。
“体感”という当たり前を売りにするには、当たり前すぎるように思うが。
グッバイ・マイ・ダーリン

グッバイ・マイ・ダーリン

世田谷シルク

小劇場 楽園(東京都)

2009/08/06 (木) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

満足度★★★

本質を見失う距離。
最前列桟敷席。
女優陣との怪しいまでの距離感に頭がくらくらした。
こんなのが続くと、話がよく分からなくなります。
それでも本質を見失わぬよう、御御足の間から、
物語を見つめ続けていたので、妙に肩が凝った。

ネタバレBOX


世田谷シルクの面白さは、オムニバスの構成にある。
話から話へリンクしていくことでテーマが深みを増していく。
そんなやり口が好きだったのだが、今回は至ってシンプル。
セクキャバと家庭という2つの物語をスパイラル構成で進める。
しかし、一つの物語に向き合う時間が長くなった割に、
どうも深化していく感じを受けず、表層で滑っていく。
そんな妙な心持ちのまま終わったのは、正直想定外。

堀川は、パンフレットに新たなジャンルミックスの可能性を示唆した。
今回も多くのチャレンジがあったろうと思う。
それが、表層の変化に留まらないでほしいと切に願う。

中里順子の妖艶さを30センチくらいの近さで堪能。
本質を見失う妖艶さは、禁断の果実の物語に相応しい、のかも。
堀越涼について言えば、器用さばかりが語られる昨今の演技。
今回もさらりとこなしてしまっている雰囲気あり。ううん、巧いんだけど。
そして、椎名豊丸。華がある男のラストに相応しい、パフォーマンス。
彼にしか出し得ないものをしっかり目に焼き付けた。
少年少女

少年少女

範宙遊泳

神楽坂die pratze(ディ・プラッツ)(東京都)

2009/08/06 (木) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

満足度★★★

夢魔との再会。
範宙遊泳を観ることは、夢魔に会うことに他ならない。
それは愉快であったり、不快であったりするが、
終幕とともに眠りから覚める感覚に変わりはない。
一種のセンス・オブ・ワンダーとも言えるのだが、
そういう“その団体の感触”を持てる団体は強い。

それにしても、
山本卓はどこから来たのか。
山本卓は何者か。
山本卓はどこへ行くのか。
注意深く見つめていきたい。

常に最高の状態

常に最高の状態

財団、江本純子

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/07/28 (火) ~ 2009/08/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

それだけで十分最高ありがとマジで!
江本純子は、毛皮族で拒否反応を起こして以来避け続けていたが、
女優陣の豪華さに思わず、個人的禁忌を破ることとした。

この2人の中年女性と、3人の女子美大生で構成される会話劇は、
ポップな意地悪さがぐるぐると渦巻いている。
傍で見ていれば楽しいけれど、巻き込まれたくないといった感じだ。

ちょっと大袈裟な味付けがキャラクタをぐんと引き立たせているし、
些細な会話の魅力にしても、女優陣から引き出されるものだけではない。
「うーん、こういうことも出来るんだ」と江本を禁忌としていたことを反省した。

でも、毛皮族観たら、また拒絶しちゃうんだろうな。
とりあえず、「劇団、江本純子」は、しっかり追っていこうと決心できた。
それだけで、十分最高だと思う。

五人の執事

五人の執事

パラドックス定数

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2009/07/31 (金) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

満足度★★★

名家の名残り。
まず、星のホールの広さを大胆に使った美術に驚く。
シンプルながら、広い屋敷を想像させる造りになっている。

カズオ・イシグロ『日の名残り』を参考文献に挙げていたが、
執事スティーブンスを思い起こさせるような5人の面々だった。
名家の名残りが確かにそこにあった。

不条理劇としては面白かったが、条理に落とし込む手続きが、
少しばかり手間取っていたように感ぜられた。
テキストに細心の注意を払う作者だけに、違和が残った。

ネタバレBOX

主人が想像で執事を増やしていくという動機(淋しさ)はわかるが、
執事を始める動機が今ひとつ汲み取れない。

そして、決定的な欠陥が一つ。
「主人の分身である執事たちは顔も一緒だから、写真が残っていない」
という描写があったように思うが、演劇では限りなく実現不可能である。
そういう意味で、小説に向いた作品だったように思う。
肩の上で踊るロマンシングガール

肩の上で踊るロマンシングガール

「佐藤の、」

新宿眼科画廊(東京都)

2009/07/31 (金) ~ 2009/08/02 (日)公演終了

満足度★★★★

小気味のよい旗揚げ。
成島秀和の優しい目線が、小気味よい戯曲を生んだ。
広田淳一がそこにポップさを加え、小気味よさが増したのだろう。
そして、佐藤みゆき+根岸絵美というバランスも見事であった。

開演が15分遅れたことが悪い影響を与えなかったくらい、
作品に魅了されたことを告白し、小気味のよい旗揚げを祝いたい。
短い時間で如何にして観劇の至福を与えるのか。この挑戦を期待する。

ネタバレBOX

朝起きたら性転換という超がつくほど古典的なフォーマット。
それをうまく自分の元に手繰り寄せた成島戯曲の勝利だと思う。
(こういった戯曲は、ダルカラの谷賢一が得意そうだ、とも思う)

ホスピタビリティの面から言えば、心象は限りなく最悪に近い。
作品が良かったからで済む話ではないので、ここに記しておく。
アタシだけ超怒られた

アタシだけ超怒られた

バナナ学園純情乙女組

王子小劇場(東京都)

2009/07/30 (木) ~ 2009/08/03 (月)公演終了

満足度

切迫感の無さはアイドルを輝かせないのか。
再演ということで、クオリティに関しては保証されたものと思っていた。
作者を“亡き屋敷”にするぐらい、旗揚げから遅筆に悩まされた団体だ、
いよいよ彼女らの本領が遺憾なく発揮されるだろう。
今回ほとんど初めて、この団体に期待したことを告白せねばなるまい。

まあ、結果は、再演の意味を見出せなかった。微塵も。
初演の切迫感も一切なくなり、彼女らに余裕を与えたことは、
団体としての手ぬるさをまざまざと見せつける様となったと言えよう。
せめて、クオリティ的にやりきっていたら、もっと怒りが沸いただろうに。
私はずっと無関心で平静だった。

少し嘘をついた。浅川千絵だけは、わくわくした。
あのメタキャラだけは、バナナ学園が廃校になっても生き残る気がする。

ライブは初見だったが、YouTubeやニコニコ動画で叩かれたらいいと思う。
「踊ってみた」くらいしっかりやんなかったら、失礼じゃあないの。
やりたいことやってるのを見てもらうなら、それなりの責任を持って欲しい。

でもまあ、これでバナナ学園をしばらく見る必要がなくなった。
ちょっとこれを認めてしまうわけにはいかないのだ。
バナナ学園のアイドルたちよ、遠くでご活躍をお祈りいたします。

ネタバレBOX

初演の方が、菊池佳南が輝いていたのはどういうことだろう。
満を持した結果、空回りしてしまったのだろうか。
数少ない“演劇”的場面を魅せる人なので少しがっかり。

客演でのほぼ唯一の安定感を見せたのは、紺野タイキ。
ちょっと今後も見てみたい俳優。
cover

cover

ペンギンプルペイルパイルズ

本多劇場(東京都)

2009/07/17 (金) ~ 2009/07/26 (日)公演終了

満足度★★★

ど真ん中の肩すかし。
倉持作品の中でも随分とストレートど真ん中の作品である。
本多初進出ということで、相当気合が入っているのかと思ったが、
謎がすっかり戯曲内で完結してしまう点も、物足りなさに拍車をかける。
メインの謎めいた姉でさえ、全然謎ではなく退屈に感じられる。

それでも、会話の機微は流石の倉持戯曲。なかなかに笑わせる。
そういった違和から謎が発展していったりするのだが……。

初めてのPPPPならば、お薦めできる作品だったかも知れない。

旅がはてしない

旅がはてしない

アマヤドリ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2009/07/17 (金) ~ 2009/07/21 (火)公演終了

満足度★★★★

広田の旅がはてしない。
初演『旅がはてしない』から、明らかにひょっとこ乱舞が変わった。
その変化はあまり好ましく感じられなかったから、一時的なものだと思った。
が、いつの間にかそれが当たり前になり、5年くらい経ってしまった。
その違和の始まりをまた見られるという。

150分見させるだけの物語の強度は確かにある。
物語には新キャラクタというアクセントはあったが、ベースは変わらない。
懐かしいミネストローネがそこにあったという感覚を強く持つ。
しかし、回収されるはずの違和は、別の違和を残して去っていった。
広田淳一は本当にどこに行こうとしているのだろうか。

物語の中のダンスの迫力は何物にも変えがたい静かな昂奮がある。
役者のフィジカルの疲れを差し引いても、見応え十分だった。
(ただ、トラムや吉祥寺のような傾斜のある客席から見たかったように思う)

ネタバレBOX

残り15分の違和というのは、『プラスチックレモン』にも感じたことだ。
違和というのは適切ではないかもしれない。正直に言えば、“余分な感傷”。
広田淳一の特徴として、そこは指摘せざるを得ない。
そこを理解できたらいいのだが、5年経っても至らない。
73&88【満員御礼!】

73&88【満員御礼!】

カニクラ

アトリエヘリコプター(東京都)

2009/07/15 (水) ~ 2009/07/19 (日)公演終了

満足度★★★

小気味良い小品。
ワン・アイディアであっさり物語が生まれるのは柴幸男の強みだと思う。
その強みを十分に発揮したのがこの「73&88」だろう。

それぞれのコミュニケーションの形を観ているだけで、温かくなるものがある。
SF(すこしふしぎ)って、たまにはいいよね。という気分。

カニクラのふたりと客演ふたりの小気味良さも相まって、素敵な小品になった。
力が良い感じで抜けている作風も、この空間にはちょうどよかったと思う。
無線はやったことないけれど、「73&88」ってこんな気分で言うのかな。
蒸し暑さも忘れるようなすがすがしい70分だ。

ネタバレBOX

演者の“有り得たもう一つの自分”を役に投影することがなかなか面白い。
スーパーフラットに現実と空想をポイント切り替えしていく様は愉快痛快。
やりすぎると嫌みったらしいけれど、そんなこともなく。

アフタートークのカニクラ&上田誠はすこーし語りすぎかも。
スメル

スメル

キリンバズウカ

王子小劇場(東京都)

2009/07/04 (土) ~ 2009/07/12 (日)公演終了

満足度★★★

今年一番のもったいない!
登米戯曲は、設定やツールが面白い。本当にアイディアの人だと思う。
しかし、それが生きているように見えない印象が強い。
あくまでキャラクタたちは設定という箱庭の中で賑々しくやっているが、
別にそんな箱庭がなくてもいいんじゃないの、という印象を与える。
これでは、もったいないおばけが出てしまう。

キャストについては何も言うべきことはない。
ベテランから若手まで取って代わる人が無いといった印象。
だから「当然面白い」となってしまい、戯曲や演出の成果となりにくい。
なかなか辛いところだとは思う。

ネタバレBOX

東京永住禁止条例は秀逸。そこがいまいち生きないのが惜しい。
家族物語に落とし込むのは結構だが、それ以外が取り巻きにしか見えない。
もう少し、端役への気遣いがあってもいいのではないかと。

カーテンコール後のラストは蛇足の一言。
綺麗に締めるのが恥ずかしければ、最初から書かなければよい。
と言わせないほどの、説得力が求められる。
ケモノミチ

ケモノミチ

ブルドッキングヘッドロック

ザ・ポケット(東京都)

2009/07/08 (水) ~ 2009/07/12 (日)公演終了

満足度★★★★

あ、似てる。
序盤のSFに何の意味があったのかというくらいの家族物語。
そのへんも笑いに消化してしまっていいのかしらん。
シリアスな場面に笑いを強要するのは、まさにKERA風味。
喜安がナイロン100℃だからなおさら感じるのかもしれないが、まさにそう。

これだけ作風が似てしまうとデッドコピーに陥りがちだ。
が、そんなこともなく、2時間半をみっちり魅せる力には恐れ入った。
家族物語ではない部分も手抜きがないから、なおさらそう感じさせるのかも。
些末な部分にも手が込んでいると、安心してみていられるのは確かだ。

とりあえず次は、KERAっぽくない何かを次は見出したいと思う。
こうやって、次も観たいと思える劇団に会えることが素直にうれしい。

ネタバレBOX

深い部分の旨味はもう少し欲しい気もする。
2時間半やって、実はやりきれてない部分もあるんだろうなという感じ。
特に殺人者になった弟の思いがいまいち汲みきれない。
惜しい。
新しい男

新しい男

城山羊の会

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2009/06/26 (金) ~ 2009/07/05 (日)公演終了

満足度★★★★

からっと失敬。
「からっとして、失敬。」4
三鷹と招待カンパニーが作る太宰の演劇は通い始めて3年目。
こういった一つのモチーフで年に1本見られるのはなかなかよい。
今回は、城山羊の会。

これほどからっとコメディにしてくれると気持ちがいい。
当人たちが至って真面目だからこそ、真面目に笑える。
キャラクタがしっかり生きてくると、眩しささえ覚える。
特に初音映莉子。わがままな妹/恋人というキャラクタ。
かなりの当たり役だったのではないか。

ただ、太宰モチーフじゃなくても、これは書かれる戯曲だったろう。
この企画の難しいところは、そんなところにも感じられる。

ネタバレBOX

太宰が読めない“太宰役”というのは、悪くない。
ただ、“太宰役”をさらに相応しい人に譲るという行為に可笑しみがない。
もっと苦悩しろよーって思う。

三鷹芸劇職員の森元隆樹が“出演”をしていて仰天。ごちそうさまでした。
セインツ・オブ・練馬

セインツ・オブ・練馬

ロハ下ル

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/07/01 (水) ~ 2009/07/05 (日)公演終了

満足度★★★

大きくふくらみ、やっぱりしぼむ。
「大きな期待はしぼむもの。」3
山中隆二郎の新ユニットということで期待をもって臨んだ。
期待をしてしまうと往々にして気持ちはしぼむものだ。
今回も正直、徐々にしぼんでしまったことを告白する。

現実の事件を昭和偽史っぽく展開しつつ、実は家族物語。
そういった物語は好みのはずなのに乗り切れない。
超現代口語や劇画調の言葉が入り混じるせいだろうか。
それこそ山中戯曲特有のくすぐりなのに笑いきれない。

そんな中で、伊東沙保、遠藤留奈の仕事は印象に残った。
それにしても、山中演出の元で、遠藤は光る仕事が多いなぁと思う。

はたして、ロハ下ルはどういうユニットになるのか。
近作の『トカゲを釣る』や『クロウ』の路線を踏襲し続けるのか。
『Magie』や『Adam:ski』が懐かしくなった。

芍麗鳥(シャックリ)

芍麗鳥(シャックリ)

乞局

駅前劇場(東京都)

2009/06/17 (水) ~ 2009/06/22 (月)公演終了

満足度★★

途方に暮れる貴重さ。
「国家の興亡」というと大事のようだが、さにあらず。
「理想高きコミュニティの顛末」の方が収まりがよい。

今までの乞局のフレームとはまた違っているために戸惑った。
“人物が描ききれる”という強固な地盤があるからこその冒険か。

求めていたものとは違ったというのが正直なところだが、
本作のような作品はもう出てきそうにないだけに、貴重であった。
途方に暮れたけれど。

ネタバレBOX

今までリアリズムを追及している印象があったが、
今回は女(妻)が4人に分裂するという現象が起きてしまう。
まあ、それだけでリアリズムを捨てたとは思ってもいないけれど、
今までと違う方法を取ろうとしたことは興味深い。
愛妻は荒野を目指す

愛妻は荒野を目指す

チェリーブロッサムハイスクール

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2009/06/05 (金) ~ 2009/06/09 (火)公演終了

満足度★★★★

過剰な気遣い。
近未来(あるいは近過去)の大地震後の東京を描く群像劇。
残されたレストランを舞台に、様々な人間模様が交錯する。

やはり、CBHSは小栗脚本の骨太さと想像の余地が見事だ。
今回は、群像劇であり、誰が主役ということはない。
登場人物一人ひとりに上手い具合に余白を作っていたように思う。
それを柴田雄平の静謐な演出で観られなかったのは残念だ。
荒川修寺演出に難があったという訳ではないが……。

気に掛かったのは、場面転換の過剰な気遣いだ。
何もダンスの存在を否定するわけではない。過剰だと思っただけだ。
もう少し、脚本を信じてはいかがと思う。
それが無ければ文句なしだったし、逆に言えば致命的だった。

ネタバレBOX

舞台が回転するということで、場面転換に相当気遣いがあったと思う。
その試行錯誤は想像できるし、その結果がダンスだったというのも、
別に悪い結果ではなかったと思う。
ただ、それを魅せようとしすぎたように感じたのだ。
成れの果て

成れの果て

elePHANTMoon

サンモールスタジオ(東京都)

2009/05/21 (木) ~ 2009/05/26 (火)公演終了

満足度★★★★★

露悪な空気を求めて。
前回が公演中止ということで注目を集めていた今公演。
10ヶ月前に果たせるはずだった初見を、今回ようやく実現。

空気の引き締め方が巧さに舌を巻いた。
最初の引き締めで、この芝居の出来が変わってくるのだろうが、
この上なくバシッと説得力を持った形で決めてくれた。
それ以降も、緩めと締めの具合が絶妙。

露悪的な部分も、好みのタイプだけに好印象。
関係性が非常に劇的でありながら、空気感でリアルになっていく。
実に理想的な作り方をしていると感心。
当然のことながら、俳優陣の巧さもそれに寄与している。

若干の気に掛かった部分もあったが、それを圧倒する説得力。
今のところ、今年三本に入る文句なしの秀作。

ネタバレBOX



津留崎夏子(姉)、菊池佳南(妹)、永山智啓(姉の婚約者・昔妹をレイプした)。
このトライアングルが強固であるからこそ、この芝居が芝居たり得ている。
特に、先に述べたように最初に空気が締まる、妹の登場シーンの説得力。
その瞬間に、この観劇の成功を確信した。

若干気に掛かった部分。
妹が指示し、姉の婚約者がゲイ男二人にレイプされそうになるシーン。
最高に緊張が高まるのだが、どこか安全な見世物だなぁと思ってしまう。
妹が止めに入り、石で殴りつけるところなどなおさらだ。
暴力的なテキストが世界を強固にしているのだから、もったいない。
テキストをもっと信頼してもいいのでは。
NOT BAD HOLIDAY

NOT BAD HOLIDAY

劇団競泳水着

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2009/05/19 (火) ~ 2009/05/26 (火)公演終了

満足度★★★★★

トレンディードラマがとまらない。
正式劇団化第一弾。
トレンディードラマ路線の継続を謳ったようだが、果たして。

今回はいつも以上に脚本に魅せられたように思う。
現在と回想の織り交ぜ方など、構成も含めて巧さが滲む。
「これからどうなるんだろう」という純粋な気持ちで、
舞台を見つめていられることは、凄く大切で貴重な時間だ。
そこだけは、今後も変わらないだろう、と信じたい。

いつも以上に、ベタで愛せる力作だ。

ネタバレBOX

最初の段階で事故のシーン。
そこに至る経緯がだんだんと肉付けされていく。
そんなベタなストーリー展開が許せてしまうのも、肉付けの仕方が
丁寧でナチュラルだからだろう。
構成も含めて惹きつけ方の巧さが、今回は特に光っていた。
「ここで終わるのかよ」というラストシーンまで含めて、やられたな、と。

ラストシーンについて言えば、昔、人から聞いた言葉を思い出す。
「シンデレラは、結婚してからが物語だ」
そう、トレンディードラマはおわらないし、とまらないんである。

また、極端に記号化された職業が多いのに、血が通っている。
そのへんの温かみも、上野演出と俳優の成せる業か。
とにかく、劇団員を含め、俳優陣には好感しかない。
通過

通過

サンプル

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2009/05/15 (金) ~ 2009/05/24 (日)公演終了

満足度★★★★

読み応え。
松井周戯曲は『地下室』が初見だった。
その時の衝撃が、今もサンプルに通わせている原動力の一つである。
今回は、初期作品である『通過』ということで大いに期待していた。

結論から言うと、何の不満もなかった。
性不能・介護・ゴミ屋敷・DV・不倫。
現代の社会問題をあからさまにサンプリングしたような人物たち。
物語志向も見えて、実に“読み応え”のある戯曲であった。

実は最近のサンプルにそういったものを感じられずにいた。
サンプリングは巧いのに、それを並べてしまっている状況のような。
そんなことを少し思い、次作に思いを馳せた。

ネタバレBOX

舞台装置を見て、アトリエ・ヘリコプターかと思ってしまった。
劇場に入った途端に驚き、そこから芝居が始まっている。
それにしても、松井さんはゴミが好きなんだろうな。
邪道・プロポーズ

邪道・プロポーズ

柿喰う客

ぽんプラザホール(福岡県)

2009/05/22 (金) ~ 2009/05/23 (土)公演終了

満足度★★★

フォーマットは推す。
正直なところ、『結婚申し込み』が面白い戯曲とは思えない。
ロシア的あるあるネタであるし、そもそも時代が古い。
土地の話にしても、犬の話にしても、「あるある」とはなりにくい。

その問題の解決方法として、中屋敷はあるフォーマットを使った。
結果、なんとなく見られる“ネタ”になったのではないかと思う。

ただ、そのフォーマットにした必然性には乏しく、
説得力に欠くことに関しては、彼も否定できないだろう。
福岡のコンペティションに向けて、さらに推敲していただきたい。
顰蹙を買うならば、用意周到に。

ちなみに、蛇足の“中屋敷の時間”は、本当に蛇足であった。
そこは評価に含めません。一応。

ネタバレBOX

水掛議論に面白みのある『結婚申し込み』を漫才というフォーマットに
落とし込んだことは限りなく正しいと思う。
ただ、正しさだけでは、「ああ、そうね」で終わってしまう。

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