KAEの観てきた!クチコミ一覧

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リーディング・フェスタ2010 戯曲に乾杯!

リーディング・フェスタ2010 戯曲に乾杯!

日本劇作家協会

座・高円寺2(東京都)

2010/12/11 (土) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

愉快で迫真の審査会でした
今日は、新人戯曲賞の公開審査会で、その前に、初の試みとして、最終候補作品のプレビュー・リーディングがありました。

どの作品も、全部を朗読する時間はないので、冒頭から15分だけのリーディング。そのため、スタンバっていた役者さんが、一言も発せないまま退場される場合もあり、何ともお気の毒でしたが、候補作品の雰囲気が掴めて、後の審査会の説明と繋ぎ合わせると、作品のイメージがしやすくて、助かりました。

リーディングで、その先が気になり、休憩時間に最後まで読んだ戯曲2作が、史上初めての2作同時受賞作に決まり、観客としても、まるで、審査に加わったかのような喜びを感じました。

今回は、候補作品も、レベルの高いものが多く、また、審査員も、それぞれ、作風や演劇への取り組み方は様々ながら、どなたも本当に真摯に演劇に情熱を燃やしている劇作家ばかりでしたから、審査員のキャラクターにも、審査過程にも、なまじの芝居以上のエンタメ性があり、本当に、気持ちがワクワクする、審査会となりました。

情実で決まる賞も数多い中、この劇作家協会の審査会は、いつも公開で、公明正大で、私のような真に演劇を愛してやまない人間には、何よりのありがたいイベントの一つです。

ネタバレBOX

渡辺えりさんは、本当に、正直な方なのだなあと、また再認識しました。
リーディング・フェスタ2010 戯曲に乾杯!

リーディング・フェスタ2010 戯曲に乾杯!

日本劇作家協会

座・高円寺2(東京都)

2010/12/11 (土) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

オリザさんの旅芸人に笑った
リレー戯曲「嵐が丘」と、月1リーディングで、見事ブラッシュアップされた「海待ちノ月」を観て来ました。

「嵐が丘」は、高橋長英さんと渡辺美佐子さんの主役コンビがやはり素晴らしいお陰で、予想より悠に楽しめました。
2回目にして、既に、企画者の渡辺えりさんの思惑と大きく外れた、旅芸人を登場させ、後の劇作家を困惑させることになったオリザさんの所業に対しての、各劇作家のコメントが大変愉快でした。

私がかつて働いていた放送作家組合も、いろいろなタイプの作家が集まっていましたが、作家達が集合して何かやるというようなイベントはなかったので、劇作家協会のこうしたイベントは、種々雑多なタイプの劇作家が、主義主張も異なる中で、よくこんなに一つのイベントを成功させることができるものだといつも感心します。
そして、本流とは別の面白い出来事が多々あるので、暇つぶしにはもってこいのイベントだと思います。

6月の月1リーディングで取り上げられ、ブラッシュアップされた「海待ちの月」は、別役さん御指摘の、なくなって残念な部分も確かにありましたが、前回より、とても構成がスムーズになり、各登場人物の内面描写も深まり、大変興味深い作品に仕上がっていました。

この出来栄えなら、本当に、上演が待ち望まれるレベルになったと感じます。
燐光群主体のキャストのレベルも高く、これが500円で観劇できるなんて、とても得した気分になりました。

百枚めの写真

百枚めの写真

トム・プロジェクト

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/12/08 (水) ~ 2010/12/12 (日)公演終了

満足度★★★

役者さんには文句なし!
だけど、劇作、演出が、残念ながら、とてもプロの仕事とは言い難いものがありました。
まるで、小学校低学年の子の書く遠足の作文みたい。

幾ら原作があるからと言って、その何に比重を置き、何をクローズアップし、何を削るか、原作のいいとこ取りをして、どう自分の戯曲として昇華させるかが、プロの劇作家の腕の見せ所だと思うのですが…。

挿入音楽も、馬鹿の一つ覚えの、叙情的楽曲の安直リフレインで、観客の涙腺を緩ませようという魂胆が見え見えな感じを受け、途中から辟易しました。

でも、大西多摩恵さんを始めとする、役者さん達の演技はどなたも素晴らしく、こんないじけた根性の観客でさえ、ちょっとほろっとさせられてしまいました。

星は、全て、役者さんへの賛辞です。

ネタバレBOX

さすがの名優、田中壮太郎さんも、冒頭の、脚本的に芸のないナレーション台詞には、珍しく自信のなさが見えました。
だって、あれだけ、長々と演劇と言う本質と掛離れた説明台詞が延々続いたら、役者さんは、体感でわかると思うのです。観客の気持ちをどんどん置き去りにして行く状況が…。それでも、記者役になり切って、無理矢理演じ続けなければならない田中さんが、お気の毒に思いました。

これで、もし、役者さんの奮迅がなければ、途中で退席していたかもしれません。

戦時中の、兵隊の留守家族の写真という、事実の重さに寄りかかり、まるで、創意工夫のない、脚本、演出には、呆れましたが、その99枚の写真の家族の中で、代表として取り上げられた一家族の物語部分は、役者さんの熱演のお陰で、それなりに、笑いも感動もあり、卒のない芝居になっていたことが救いでした。

田中さんファンなので行ったのですが、3人の女優さんの芸達者ぶりに、観劇を後悔するまでに至らず、大変感謝しました。
くにこ

くにこ

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2010/11/26 (金) ~ 2010/12/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

文学座は演出家次第と、知る
いいだろうなという予想を悠に超えて、とても楽しい芝居でした。

何だか、こまつ座の井上芝居(あくまでも鵜山演出に限る)を彷彿としてしまいました。

向田さんの半生が実に生き生きと活写されていました。
3姉妹の様子も、観ていて、ずっと微笑ましくて、ずっとほっぺたが緩みっぱなしでした。

久しぶりに、文学座に素敵な芝居を見せて頂き、大満足!!

ネタバレBOX

中島さんの作品は、ご自身が演出されるより、鵜山さんや、鈴木裕美さん等、信頼に足る演出家に演出してもらう方が、絶対、何倍も光を放つのだなと、また痛感しました。

本当に、ずっと心がワクワクしっ放しの舞台でした。

向田作品の、「寺内勘太郎一家」や「阿修羅の如く」などの元ネタエピソードをうまく織り込みながら、向田さんを知らない観客にも充分楽しめる普遍性を持たせ、古き良き、大衆向け商業演劇テイストも加味した、大変、贅沢な仕立ての、お芝居でした。

くにこ役の女優さんが、「わが町」の時とは打って変わって、生き生きとくにこを舞台上に再燃させて下さって、向田ファンだった私には、終始感無量の舞台でした。どことなく、向田さんの面影そっくりでした。

ベテランの塩田さんが、笑わせ役を一手に引き受け、面白かったのですが、よく、台詞をとちられ、それだけはやや残念。

それにしても、最後に、字幕で紹介される、向田作品、何と、全部制覇していた自分に気付き、これにも驚きました。

ドイツ語で歌う「野ばら」や、腹巻の巻き方…。向田さんは、同世代だったのだと、痛感しました。
今更ながら、惜しい作家が早逝してしまったものだと、悔やまれてなりません。
男の一生

男の一生

三田村組

ザ・ポケット(東京都)

2010/11/26 (金) ~ 2010/12/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

チラシの意味が後で、わかる
三田村組、拝見するのは、これで3度目。もっと早くに出会っていたかったと後悔しきりです。

蓬莱作品は、何故か、外部への提供作品は、どれも好みで、今回も、例に漏れず。
田村作品同様、終盤、意外な展開を見せますが、こちらは、人物の心情に納得が行くので、観客としての不快感は一切なく、まったくお見事な作劇と感服しました。

役者さん達も、皆さん、とてもいい!

ラストまで、観て、三田村さん全裸のチラシの表す意味が飲み込めて、ちょっと、感無量となりました。

ただ、帰路、後ろから「役者っていっぱいいるのねえ。」「そうそう、成功してるヒトは、ホンの一握りなのねえ」とため息を漏らすおばさんの声が…。
その方達にとっては、テレビで顔を知っている斉藤さんお一人が、「成功している役者さん」と認識されていたようで、生まれながらの舞台演劇ファンの私には、とても悲しい反応でした。
私にしてみれば、これだけ、役者が揃った舞台はそうそう、ないのにね。

ネタバレBOX

本当は、たった4行で語れてしまうという、主人公の老人の告白台詞に、先日、NHKの番組を観て、衝撃を受けた、「無縁社会」を想起し、心が辛くなってしまいました。

帰りに寄った喫茶店で、「何か食事できるメニューはありますか?」と、一人、椅子に腰掛けた老女が、注文をし終えた後、携帯で、家族に電話し、「あー、あのね。皆が、一緒に食べて行こうって誘うから、夕飯食べて行きますけど、いい?」と、作り話をしているシーンに遭遇。
今しがた、観終わった、「男の一生」とダブり、何だか切なくなってしまいました。

たとえ、いがみ合っても、本音で語り合える家族がいる自分は、幸せなんでしょうね。
この雨ふりやむとき

この雨ふりやむとき

TPT

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2010/11/08 (月) ~ 2010/11/28 (日)公演終了

満足度★★★

題名の違和感が全てに繋がる
「この雨降り止まぬ時」ならすんなりと胸に伝わるのですが、「この雨ふりやむとき」という題名のしっくり来なさが、作品の本質にも繋がっている気がします。「この雨がやむ時」なら、どうだったか?などと、余計な邪念が湧いてしまいました。

傑作戯曲だとは思うものの、キリスト教に対する浅薄な知識しかない、この作品の重要な骨格となる問題について、どうしても、自らに引き寄せて、共感し辛い部分がある、私には、やや疲れることの多い芝居でした。

ミスキャストと思われる方もお二人いて、もっと違うキャストで、もう一度観てみたい作品ではありました。

ただし、須賀さんは、とても良い役者さんだなあと、再認識。田畑さんとの若い二人のシーンには、常に心が奪われました。

ネタバレBOX

時と人物が入り組み、わかり辛いかと聞かれたら、そんなことはありません。とお答えします。

これは、やはり、鈴木裕美さんの演出力によるものだと、感心します。

ただ、残念なのは、冒頭ほとんど一人芝居状態の役者さんの滑舌が悪く、演技も一本調子なので、台詞を聞き取ることと、状況把握に、観客として、初めから相当力仕事を強いられて、すぐに疲れてしまいました。

もう一人の重要人物を演じる女優さんも、体格が良く、肝っ玉母さんタイプなので、この役の、はかなさや悩める妻と母を演じるには、ちょっと不向きな感じがして、それだけで、この芝居の世界に入り込むのが、私としては、至難の業でした。

その上、キリスト教の倫理観や教義にも、疎く、また、児童を対象とする、倒錯愛についても、観て想像はできても、共感理解にまでは到底及ばず、夫がそういう嗜好のある妻の苦悩にどうしても、気持ちが近づいて行かず、ずっと、舞台を傍観するしかありませんでした。役者さん自身も、このテーマを体で理解して、自分に落とすところまでは行かなかったのではないでしょうか。

日本で上演するには、やはり相当の演出、役者力の結集が必須な戯曲だという気がします。

「レ・ミゼラブル」の楽曲のように、時や人物が交差する中で、違う人物の口に何度もリフレインされる、名台詞は、大変戯曲の効果的な側面なのに、その良さが、このキャストではいまひとつ生きなかったのがとても残念でした。

とにかく、観客はよく舞台を観て聞いていないと、置いてけぼりを食う作品で、しっかりと見守らないと、大事なところを見落とす可能性大です。
後半の、八十田さんと、植野さん演じる夫婦のありかたには身につまされるものがたくさんありました。これから、ご覧になる方は、植野さんの一挙手一投足を、是非ともお見逃しなく!
月いちリーディング/10年11月

月いちリーディング/10年11月

日本劇作家協会

座・高円寺稽古場(B3F)(東京都)

2010/11/27 (土) ~ 2010/11/27 (土)公演終了

満足度★★★★

好きな女優さんがみつかりました
月1リーディングも会を重ね、流れもスムーズになり、和気藹々と意見が言いやすい雰囲気が生まれ、ブラッシュアップの目的にも適うデイスカッションに定着しつつあるように思います。

そんな中、戯曲に関して討論する以外にも、いろいろ新たな発見があり、参加する楽しみもまた倍増しています。

今日の収穫は、青年劇場の女優さん、伊藤めぐみさんを存じ上げられたこと。とても雰囲気のある素敵な女優さんで、一目でファンになりました。
テレビドラマでも大活躍されている円城寺あやさんも、フランクな方で、益々ファンになりました。

有名劇作家や、有名女優さんと、円陣になって、フランクに語れる場は、大変貴重に思います。

基本的には、月末の最終土曜日に、座・高円寺の地下3階の稽古場で開かれるこの会、参加は、一般の方でも大丈夫です。
是非、演劇ファンの方は、お気軽に参加されてみては如何でしょう!

ネタバレBOX

ちょっと調子に乗って、閉会宣言される長谷さんのお言葉を無視して、コメント続行してしまいました。
帰宅後、いたく反省中です。
長谷さん、失礼しました。

ゲスト劇作家の人間性も垣間見える会で、今日は、reset-Nにも興味が湧き、一度拝見してみたくなりました。
黄昏

黄昏

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2010/11/20 (土) ~ 2010/11/28 (日)公演終了

満足度★★★★

名優は何があっても名優だと実感
この作品は、私は映画での出会いの方が先でした。

そのためか、山村想さんと確か八千草薫さんが演じた舞台を観た時は、これは絶対映画に軍配が上がると感じたものです。

でも、私も、そろそろアラ還世代となり、身近に親子仲のギクシャクしている親戚等を見ていると、今回の舞台は、自分でも予期しない場面で涙腺が緩み、やはり、この作品は、珠玉の戯曲だなあと、改めて実感しました。

たかしまちせこさんの翻訳台本も、最近の若者言葉をうまく取り入れ、古さを感じさせず、秀逸でした。

ただ、残念なのは、背景のセットが、ゴールデンポンドの広大な大自然の広がりを微塵も感じさせず、いつもの青年座の書き下ろし芝居風のセットだった点。このセットの雰囲気だけは、昔見た日生劇場の「黄昏」の方が空気感を感じました。

ノーマンが、娘の恋人ビルに嫌味を言う肝心な場面で、津賀山さんが台詞を忘れ、久しぶりに、客席にはっきり聞こえるプロンプターの声に、一瞬こちらも冷や汗でしたが、舞台上の津賀山さんと横堀さんは、全く動じる様子がなく、目も泳いだりすることもないので、やはり名優の舞台は違うと、逆に感じ入ってしまいました。

津賀山さんは、「オリバー」で拝見した時から、大ファンです。どうか、いつまでも、舞台上で輝く役者さんでいらしてほしいと心から念じてしまいました。

ネタバレBOX

取り立てて、事件が起こるわけでもない芝居で、2時間半以上の上演時間なのに、全く厭きることがないのは、やはりこの戯曲が類稀な程、人間の家族間の有り様を実に巧みに芝居に構成しているからでしょう。
時や場所を越え、家族への思いが、誰の心の琴線をも揺らす真実の心情として、脚本に表現されていて、皆が自分の思いをどこかで、反芻してしまうのだと思います。

大袈裟でない、自然な家族の会話で終始する芝居なので、男優陣に比べ、女優陣の演技過多な部分がやや目につくところがありました。
岩倉さん演じるエセルと、那須さん演じるチェルシーの演技が、より自然体だったら、もっと、感動が深まったのではと思いました。

父と娘の確執が、どうも、自然に見えず、演じられているという雰囲気が否めず、そのために、もう一歩前のめりで、舞台に引き込まれなかった気がして、やや残念でした。
やけたトタン屋根の上の猫

やけたトタン屋根の上の猫

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2010/11/09 (火) ~ 2010/11/28 (日)公演終了

満足度★★★★

映画を観ていないからか
私は結構楽しめた舞台でした。

何故か、新聞評でも、ここでも、あまり評判の良くない、しのぶさんの1人まくし立てシーンも、もう1人の名女優のしのぶさんの演技よりは、うるさくないし、アメリカ的ではありながらも、万国共通の女性心理にも共感を覚えたりして、長い観劇時間でしたが、厭きることなく観られました。

個人的には、銀粉蝶さんの演じた老妻の夫に対する思いに一番共感してしまいましたが…。

ネタバレBOX

そりゃ、ポール・ニューマンの演じた役を北村さんが演じるのですから、映画をご覧になったヒトには違和感があるのは当たり前かもしれません。

でも、北村さんて不思議な役者さんで、素顔はお世辞にもハンサムとは言い難いタイプなのに、かつて、人気者だった、フットボールのハンサム名選手にだんだん見えて来るから、ビックリします。

好評の、北村さんと木場さんの二人芝居シーンは、私は逆に、やや眠くなりました。

夫の方は、顔も見たくないし、話声にもイラつくのに、妻の方は、長年連れ添った夫に対し、家族としての愛情が溢れ、彼が末期癌で苦しむのに耐え切れず、慌ててモルヒネの注射を取りに来る…、そんな見覚えのある妻像を、可愛く演じられた銀粉蝶さんの演技が、とにかくとっても魅力的でした。

そして、この子達が下手だったら、思い切り、舞台のクオリティが下がりそうな難役を演じた子役達の、まあ、なかなかに芸達者だったことと言ったら…。
私が子供の頃の日本の子役達のレベルの低さを思い出すと、ただもう感激するばかりでした。
カーディガン

カーディガン

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2010/11/01 (月) ~ 2010/11/23 (火)公演終了

満足度★★★

キャスト陣には文句なし
パルコと中井貴一さんはとても相性がいいようで、パルコの中井主演作はどれも、今まで好感触。今回も例に漏れず、とても好演されていました。
大好きなキムラ緑子さんとの、夫婦役も息がピッタリ。戸田恵子さんとの組み合わせより、相性がいい気がしました。

市原さんも、舞台俳優としても、文句ない好演!!芸達者なんだんだなあと感服。

ずっと、人情コメディを観ている感覚で、心地良く笑っていたのは、これが、あの田村脚本だということを忘れていたから…。

やっぱり、田村さんの作劇には、最後で、小骨がささったような、若干の不快感はつき物なんですね。

ネタバレBOX

誰もが、ここで終幕だと思い込み、絶大な拍手が客席に響いた後、まだ、2場が用意されていました。
これが、まあ、いつもながら、それまでの心地良さを一転不快な気分にさせる、田村流の落としで、どうも、私の性には合いません。「おしるし」の時も、三田村組の時も、同じ不快感がありました。

客席が盛大な拍手をしたところで、終わっていたら、どんなに、楽しい観劇気分で、家路につけたことかと、個人的にはとても残念でした。

最初に登場するような嫌な部下とかはともかく、芝居の終盤になって、それまで、観客が好意的に観ていた人物を、実は実のない計算高い人間だった的名展開に持ち込む手法は、どうしても好きになれません。
RENT

RENT

東宝

シアタークリエ(東京都)

2010/10/07 (木) ~ 2010/11/23 (火)公演終了

満足度★★

ソニン1人が圧倒的に素晴らしい!
東宝版RENT、初演、再演と観て、思うのは、制作側に、深みのある舞台作りの意欲が欠けているのでは…ということ。

こういう芝居は、1ヶ月、同じキャストメンバーで、関係性を深め、それを舞台に投影してこその作品だと思うのですが、元々、役者力はあまりないように感じるキャストが多いところへ、同一メンバーでの舞台が続かないせいか、皆さん、ミュージカルというより、コンサートで、歌っているような風情でした。

以前の、日本「RENT]初演、再演版に比べると、どうしても、演出力、役者力の差を感じてしまいます。
訳詞も、圧倒的に、松田さんの方がしっくり来ます。

その中で、期待通り、ソニンさんのミミは、群を抜いて、素晴らしい役作りをされていて、ソニンさん目当てで行った身には、まあ、目的は達成できて、満足ではありましたが、+αがあれば、尚良かったのにと、とても残念な気がしています。

ネタバレBOX

本当に、演出の意図を図りかねる公演形態でした。

映画などで予備知識があればともかく、この舞台だけで、この登場人物の状況や関係性をどれだけの観客が理解し、共感できるのか、疑問を感じました。

特に、皆に多大な影響を与えて、早逝するエンジェルの存在が、この公演の舞台上で、あまり上手く露出されないので、その死の描き方と、それ以降の各人の行動、言動が上手く噛み合わない気がして、ひどく違和感を感じました。

また、後半、マークが記録した仲間達の映像を映す場面がありますが、あの映像は、もしや、この公演稽古のシーンではないのでしょうか?映っているキャストが役としてではなく、役者個人として映っているように思えたのですが、もし、そうなら、やはりこれは、役として、マークが撮影した映像にすべきところだと、思います。

「RENT]ファンの1人として、とても落胆度の大きい舞台でした。
りんごりらっぱんつ

りんごりらっぱんつ

劇団競泳水着

サンモールスタジオ(東京都)

2010/11/12 (金) ~ 2010/11/23 (火)公演終了

満足度★★★★

完成度の高い群像劇、お見事です
上野作品、4作、拝見して思うのは、本当に、群像劇の名手だなあという点。
あrだけの、登場人物が舞台上に生き生きと、その人生をそれぞれ、魅力的に映し出して下さる、脚本、演出、役者さん達…。ただただ感嘆します。

安心して、このストーリーの中に浸透しつつ、あっという間に、2時間10分が過ぎていました。

皆、舞台上の佇まいがすごく魅力的で、だれもを愛おしく感じて、56歳のおばさんなのに、涙腺緩みっぱなしでした。

競泳水着の女優さんは、皆さん、魅力的な役者さんばかりですが、中でも、主役の冬美を演じた細野今日子さんは、とてつもなく素敵でした。

この作品、舞台もいいけれど、映像バージョンも無性に観たくなりました。

最後が意外な展開なのも、洒落ていました。

いつも思うのですが、楽曲のセンスも抜群です。

説明過多でない、塩梅の良い脚本、本当に秀逸で、切なくなりました。
出来の良い、トレンディードラマを堪能したような気分でした。

ネタバレBOX

時折挿入される、フラッシュバックのような回想シーンの、バランスの良さがとても、心地良く感じました。

上野さんの脚本て、説明台詞がないにも関わらず、すぐに、人物関係や、事情が観客に飲み込めてしまうのが、いつも感心するばかりですが、今回は特に、その匙加減の絶妙さに唸ってしまいました。
良い写真家のように、役者さんを魅力的に見せる術を知り尽くした、脚本力、演出力に、脱帽するばかりでした。

家族や恋人や、友人に、言えない思いの表出具合がどの人物も、本当に素敵で、どこかで、自分の記憶の琴線に触れ、切なくて、何度もウルウルする瞬間を体験しました。

ストーリーのためだけに、作者の御都合だけで登場する人物が1人もいないのは、本当に感嘆ものです。

時間が許せば、何度でも観たくなる、味わいのある作品でした。
蛇と天秤

蛇と天秤

パラドックス定数

ギャラリーSite(東京都)

2010/11/09 (火) ~ 2010/11/15 (月)公演終了

満足度★★★★★

社会派エンターティンメント芝居にドキドキ
もう!!野木さんのセンスには、今回も脱帽!!

戯曲を書く段階から、きっと会場選びも、視野に入れているのでしょうね。

話だけ追えば、かなり心痛になりそうな内容にも関わらず、遊び心が随所にあって、深刻な中にも、どこかワクワクする感情が芽生えてしまいます。

「東京裁判」や「棄憶」同様、言わばドキュメンタリータッチの筋立てでありながら、登場人物一人一人の深層心理まで焙り出して行くような、野木さんの筆致には、ただただ感嘆するばかり。
そして、それを、まるで、やはりドキュメンタリーのように、芝居とは思えない所作や表情、言い回しで、リアルな人間像を見せて下さる、役者さん達の力量が、これまた、尋常ならざる表現力で、圧倒されるばかりでした。

野木さんが、当パンで書いていらっしゃる通り、今まで拝見した作品よりは、数等ライトな印象でした。
こんな、社会派の深刻な題材を、こんなにライトな感覚で、照射できる劇作家兼演出家は、きっとなかなか見当たらないと思います。

パラドックス定数の舞台は、今後も、万難を排して観に行きたいと、強く思わせられる、刺激的な作品でした。

ネタバレBOX

細部に亘る、作演の野木さんの、頭脳明晰な工夫の数々に、終始ワクワクしながら、見入っていました。

内容は硬派なのに、何故か、デイズニーランドの参加型アトラクションを観る様な、高揚感がありました。照明の使い方も、実に効果的!!

声高に正義を主張するわけでもなく、どの登場人物の思考や行動にも、人間の持つ、身勝手さや、出世欲、保身、嫉妬等、リアルな味付けが、戯曲・演出・役者の表現力に助けられて、観客の目の前に、自然に露呈されるので、本当に、実際のドキュメンタリー番組でも観ているような錯覚に陥る時が何度もありました。

パラドックスの役者さんは、憎らしい役の方は、本当に憎らしく思えるし、その人が苦悩し、揺れ動いていると、こちらの感情までが、波長を合わせて波立つし、とにかく人間業とは思えない技量の持ち主ばかりで、いつも、度肝を抜かれる思いがします。

とにかく、パラドックス定数未体験の演劇人には、是非一度体感して頂きたくなる、類稀な劇団です。
タンゴ-TANGO-

タンゴ-TANGO-

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2010/11/05 (金) ~ 2010/11/24 (水)公演終了

満足度★★★

不思議な魅力のある芝居
考えてみると、相当、粒揃いのキャストで、贅沢な舞台でした。

森山未来さん、初舞台から拝見していますが、いつの間にか凄い俳優さんになったなあと感慨深いものがありました。

今の若者のしたり顔の幼児性も仄見え、大変興味深い作品でした。

一幕は圧倒的に面白く、ニ幕は、一般的不条理劇風になり、途中眠くなったりしました。
一幕は、☆4、ニ幕は、☆2で、トータル3ぐらいでしょうか?

ネタバレBOX

とにかく、1幕の運びは刺激的に痛快でした。
森山さんは、ほとんど、早口で、常に喧嘩腰の台詞の量が生半可じゃないのに、しっかり、感情も台詞も伝える技術が身についていて、お見事です。

吉田剛太郎さんと、未来君の壮絶で愉快な掛け合いシーンは、かなり必見ものでした。

おじさん役の辻さんを、1幕の間、串田さんかと思って観ていました。皆さん、普段はあまり演じないタイプの役で、新鮮でした。

最初と最後に登場する、演出の長塚さんの存在感が圧倒的でした。

鐘下さん的な、カーテンコールのない舞台に意表をつかれたお客さんが多く、これはあっても良かったように思うのですが…。
熱演の役者さんに、たくさん拍手を送りたかった気がします。
乱歩の恋文

乱歩の恋文

てがみ座

王子小劇場(東京都)

2010/11/03 (水) ~ 2010/11/10 (水)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしすぎて声も出ない!!
何でしょう!!長田育恵さんて!!才気に溢れすぎています。

とにかく、旗揚げから拝見していますが、観る芝居、観る芝居、作風が全く違い、一体この作家はどれだけの味付けの戯曲を物すことができるのか!!
と、まずそのことに驚愕します。

ベタな部分もたくさんあるのに、そのベタさが特化していて、全然嫌な気がせず、逆に、観てて気持ちが良いくらい。
リアル以上にリアル。乱歩とその妻は、本当に、真実、こういうヒトだったに違いないと、思えて来る。

井上ひさしが、「人間合格」で、新たな太宰像を鮮烈に描いたように、長田さんは、独自の視点と切り口で、見事に、新たな乱歩像を、舞台上に生き生きと投射して見せて下さいました。

脚本、演出、キャスト、スタッフの仕事ぶり、全てが一級品の舞台。
素晴らしい!!私的には、今年観たどの作品より、演劇賞に一番相応しい作品だと思いました。

演劇を本当に愛する方には、必見の舞台だと、自信を持って断言できます。

ネタバレBOX

今までも、作家を主人公にした名作舞台には、幾つか出会いました。

でも、この作品が、それらと異なるのは、この作品の主人公は、あくまでも、乱歩の妻、作家の妻である点でしょう。

この乱歩の妻を演じた、西田さんと、和田さんが、共に、魅力的な女優さんで、長田さんは、作家としての才能はもちろん、プロデューサー感覚にも、優れていると感心しました。

長田さんの紡ぎ出す台詞の、心に深く残る美しさには、感嘆するし、この作品の味わいを、本物にした、扇田さんの演出力にも目を見張りました。
キャストも、今までのてがみ座公演中、ダントツ粒揃いのメンバーでした。

最後の場面も、あーすることで、作家を描くのではなく、作家の妻になった隆子を描いたこの作品の帰結として、大変秀逸なラストシーンとなっていました。もし、男性作家なら、乱歩と妻が、朝の浅草の街に光明に導かれ、出て行くところで、幕にするのではと思いました。

乱歩のこの先の作家人生も、くどくど説明したりせず、「怪人20面相」等、知っている人には匂わせ、そうでない観客には、興味を持たせる台詞に終始し、長田さんは、決して、調べた資料の知識をひけらかさないのが、またこの作品の質を高めています。

普通なら、陰隠滅滅とする素材なのに、所々に、無理のない笑いも盛り込み、本当に、劇作家としての並々ならぬ才気を感じるばかりでした。

演出の手腕もまた素晴らしく、場転の、ヒトの動きすら、舞台上の作意に転化する業には度肝を抜かれました。

全てが、刺激的で、目も耳も、感覚も、演劇好きの血も、鋭く研ぎ澄まされ、久しぶりに、五感がワクワクしっぱなしの2時間15分でした。
図書館的人生 vol.3 食べもの連鎖

図書館的人生 vol.3 食べもの連鎖

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2010/10/29 (金) ~ 2010/11/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

イキウメ熟成期ですね
今まで拝見した短編集の中では傑出した作品だと思いました。

イキウメの劇団自体が、熟成中の感あり。

前川さんの作劇は益々磨きが掛かり、演出はスタイリッシュ。「ハーバーリーガン」の長塚さんにも感じたのですが、やはり海外で修行された後の演出は小粋な感じがしますね。

どうなるか予測のつかない展開に、終始目が離せないまま、2時間15分、息をつくのも忘れ、舞台を見守ってしまいました。

役者力も、全員が急激にアップ。
つい最近までは、まだ新人らしさの抜けなかった若い役者さんの力量アップに驚異的嬉しさを感じました。

脚本も演出も、役者力もグングンと成長し、益々目の離せない劇団になりそうです。

イキウメほど、実際に舞台を観ていない人に、この魅力と面白さをうまく伝えにくい劇団はないかもしれません。本当に類稀な傑出した劇団だと痛感しました。

ネタバレBOX

オムニバスでありながら、登場人物がリンクし、短編集と銘打ちながら、実は、一つの長編劇の態を成しているのが、何しろテクニシャン!!

前川さんの発明する、まるで、実在しそうな単語やロジックに、今回もまた、実に簡単に、現実感を感じさせられてしまい、してやられた感で、感服!!

こんなこと有り得ないという内容のストーリーに、どんどんハラハラさせられる自分に、今回もまた、驚かされました。

最後の、3分クッキングのシーンの、各キャスト陣の粋で秀逸な演技には、心の中で、何度も拍手喝采しました。
特に、窪田さんの、アナウンサー振り、最高!!

イキウメらしからぬ、ウイットに富んだラストストーリーで、私的には、大変好みの味付けでした。
俺の屍を越えていけ【無事に終了しました】

俺の屍を越えていけ【無事に終了しました】

七里ガ浜オールスターズ

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2010/11/01 (月) ~ 2010/11/07 (日)公演終了

満足度★★★★

身につまされつつ、笑った
何しろ、自分の以前の職場が舞台。そして、我が家の長い間の生計を支えた業界が舞台なので、何となく、似たような、状況設定や、人間描写に思い当たること、盛りだくさんで、ずっと、当事者気分で、成り行きを注視してしまいました。

脚本のレベルが高く、説明台詞や、回りくどい表現がないのが、とても心地良い観劇体制を整えてくれます。

瀧川さんは、ご自身も重要な役を演じながら、よくあれだけ、ナチュラルに役になり、尚且つ演出も冴え渡り、かなりの才人だとただただ感心!!

知り合いの誰かにいそうな各キャラクターを、各キャストが、皆さん、実にそつなく演じられて、大変クオリティの高い舞台でした。

ネタバレBOX

今回もまた、佐藤みゆきさんが圧巻!
ずいぶん彼女の舞台は拝見していますが、また、新しい顔を見せて下さって、彼女の才気に感服しました。

人気アナウンサー役の方も、雰囲気がピッタリで、番組のナレーションも大変お上手で、一応、経験者としては、プロの喋り手としての原稿の読み方に満点さしあげたく思いました。

最後の、アナウンサーの読む原稿が、「がま口」が、「ガム」に変化していて、大ウケ。こういう細部の、脚本の頭の良さが、演劇レベルの高さを示していて、随所でニンマリしたくなる芝居でした。

現実社会の生き辛さを、適度に、デフォルメして、明るく描くこの芝居のテイストが大変、自分好みでした。
家族の写真

家族の写真

俳優座劇場

俳優座劇場(東京都)

2010/10/28 (木) ~ 2010/11/03 (水)公演終了

満足度★★★★★

鵜山さん心酔度がまた高まりました
題名から、もっと深刻な家族劇か、お涙頂戴ものを想像していましたが、さにあらず。
大変愉快な心温まる、ライトタッチな、大人向けハートフルヒューマンコメディでした。

脚本・演出・スタッフワーク・出演者…、全てが粒揃い。

ここでの評価に惑わされ、とんでもない駄作に出会ったことも多々あった反省を踏まえ、やはり自分の直感で、観に行く芝居を選ぶ、以前の方式に戻してからは、素敵な舞台に出会えるチャンスが増えて、最近幸せに思います。

ネタバレBOX

まず冒頭の回り舞台の美しさに目を奪われました。
舞台上のセットや大道具等が、背景に影となって映るのですが、それが、まるで、外の風景のように見えるのです。
最初から、鵜山マジックにしてやられた印象。
すぐに、観客は舞台上の架空世界の住人になれてしまいます。

以前から、何度も拝見している石田圭祐さんが、いつの間にか素敵な中年俳優さんになられていて、これにも感激!!

ロシア現代劇の女性作家の作品とのことですが、万国共通の、家族への思い、愛が見事に描かれた秀逸な戯曲で、すっかりファンになりました。

4人の役者さんも全員、魅力的で、その世代の理想的な人間像を舞台上に形作って下さいました。

死期の迫っていることを自認するおばあさんの、幸せが増え、不安や心配が軽減する度、自分の死期の予測が、1週間後から、2,3年先まで、どんどん伸びて行くのが、粋な戯曲を証明していました。

主人公のターニャが、やがて結婚することになるイーゴリの、若い恋人と、いつの間にか、心を通わせる関係になるという展開も、とても洒落ています。

客席の随所で、心地良い笑い声が生まれる、素敵な舞台。
全国の演劇鑑賞団体に取り上げられるのが、実に納得行く上質の演劇でした。
こういう本物の演劇を、もっとどんどん世間に広めてほしいなと痛感しました。
月いちリーディング/10年10月

月いちリーディング/10年10月

日本劇作家協会

座・高円寺稽古場(B3F)(東京都)

2010/10/30 (土) ~ 2010/10/30 (土)公演終了

満足度★★★★

だんだんと実のある会になりつつある
前回オヤスミして久々の復帰参加でした。

会の進行がスムーズになり、フランクに戯曲について論考できる場ができていました。

最初の頃、ゲスト劇作家の存在が重視されすぎ、会の目的と相反する危惧を感じましたが、円になって、誰でも口を開きやすい環境が整い、これなら、新人劇作家の戯曲のブラッシュ・アップの目的が少しは果たせる雰囲気が生まれて来たのではと嬉しくなりました。

プライドが高すぎる自己主張のあまり強いゲスト劇作家の存在は、むしろ弊害があると感じた会もありましたが、今回のゲスト劇作家は、この会の主旨もよく理解されている、常識ある方で、何よりでした。

一度取り上げた戯曲を作者が推敲した後、またリーディングで取り上げるという試みもあってもいいのではと感じました。

動かない生き物

動かない生き物

らくだ工務店

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/10/23 (土) ~ 2010/10/28 (木)公演終了

満足度★★★★★

観られて幸せでした
そうなんです。こういう芝居が観たくて、私はいつも劇場通いをしているんだと、つくづく実感させられる、素敵な作品でした。

変にストーリーを作りこむことをせず、登場人物全員の佇まいや舞台上での居ずまいが自然で、まるで、日常の一こまを切り取ったスケッチ画のような芝居。
それでいて、全然厭きることはないのです。

脚本、演出、キャスト・スタッフの仕事ぶり、全てが、大変好ましく、自分好みのテイストで、久しぶりに、心底、舞台世界で、心地良くひと時を過ごすことができました。

この機会を与えて下さった間瀬さんに感謝!!

ネタバレBOX

冒頭から、あーこの芝居は、私の気持ちを裏切る作品ではないなと直感できました。

皆さんの会話がとても自然!!
それだけで、観てて嬉しくなってしまいました。

皆それぞれが、自分の家庭や日常には何らかの悩みや不安を抱えながら生きているのですが、それを大仰に露呈することなく、皆、職場では、明るく同僚と接しながら、働いています。
そういう、日常の動物園の情景描写と、心象描写の匙加減が絶妙で、石曾根さんという作、演出家の大ファンになりました。

キャストも、皆さん、本当に、動物園を職場とする人間の体現がお見事で、ずっとこの職場の方達とお付き合いしていたくなりました。
こんなに、どれを取っても、及第点の芝居には、実はなかなかお目に掛かれないので、演劇ファンとしては、ビックサプライズのような、らくだ工務店との出会いに、心から感謝しました。

玉置役の古川さんが、動物の気持ちがわかるかわからないかの話から、自然に、寝たきりで意識のない、妻の話題に移行して行く時の、素晴らしい演技には、まるで、実話を聞いたような気持ちの揺れを、客席でも体感しました。

引きこもりがちな子供との距離の持ち方に悩む松永。動物と触れ合うことで、自分のスタンスを保つ和田。子供が懐かないことに心を痛める熊野。動物には信頼さえるのに、女性とのコミュニケーションが苦手な小木。夫とうまく行かず、心の支えとして、同僚男性に擦り寄ろうとする山口。明るく皆に愛されるキャラなのに、何故か動物とのコミュニケーションは不得手な前田。もうすぐ子供が生まれることで、有頂天になり、妻の気持ちをやや思いやれない成瀬。夫を愛し、励まし、きっと素敵な母になるのを予感させる、成瀬の賢妻…。

これだけの、登場人物の一人ひとりにリアルな命を吹き込んだ、作演の石曽根さんと、出演者の皆さんに、心から、感謝とエールを送りたいと思いました。

我が息子と養成所同期の間瀬さん。入所間もなくの代々木公園での自主練ビデオを拝見した時から、この役者さんはきっと素敵な俳優さんになると確信していましたが、自分の目に狂いがなかったことも実感できて、本当に幸せな観劇タイムでした。

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