たむらさん
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2020/10/09 (金) ~ 2020/10/11 (日)公演終了
満足度★★★
豊田エリーさんが舞台に現れ、奥の台所で調理を始める。
次に橋本淳氏が登場し、観客に向かって「たむらです」と自己紹介。「皆さんに一つ質問があります。その前に僕のこれまでのことを知って下さい」と三十年の半生を語り出す。
ここからはほぼ橋本氏の一人語り。豊田さんはひたすら調理。(時たま語りに合わせて効果音を出すくらい)。
半生を語り終えた後、豊田さんも加わりあるシーンの再現。
その後、観客に向けてある質問をすることになる。
ダークマスター VR
庭劇団ペニノ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2020/10/09 (金) ~ 2020/10/18 (日)公演終了
満足度★★★
これがVRか、大したものだ。
20人の観客がそれぞれ個室に入り、ゴーグルとヘッドフォンを装着。
解像度の多少の荒さと見える物の大きさが一回り小さい位でかなりリアル。
体験型アドベンチャー・ゲームをしている感覚。催眠セラピーを受けているようでも。匂いや震動もサービス。
やはり目が疲れるが、いろんな可能性を感じる。
開始から一時間程で終わった。
日高ボブ美さんがとにかく凄まじい。
帰りはやたら腹が減る。
音楽劇「銀河鉄道の夜2020」
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2020/09/20 (日) ~ 2020/10/04 (日)公演終了
満足度★★★
広大なステージに迫力のある大掛かりなセットと生演奏。船の舵と錨と時計の振り子を合わせたような象徴的なオブジェが荘厳。汽車は客船を思わせる作り。宮沢賢治的役回りの岡田義徳氏と歌唱担当のさねよしいさ子さん(精霊アメユキ)が苦しみ足掻く少年ジョバンニの姿を見守り続ける。
さねよしいさ子さんの歌は、矢野顕子調で歌詞こそ聴き取れないが曲と歌唱は絶品。聴いているだけで作品世界に溶け込んでいく気分。
前半の貧しい苦学生が出稼ぎの父の逮捕の噂で学校で虐められ、家には病気の母と、現実に追い詰められていく様が見事。
そこからの後半、銀河鉄道の旅の中で『本当の幸い』に人生を捧げていく過程が時間の都合もあって唐突、なかなか理解しづらいのでは。
カムパネルラが降りる、石炭袋と呼ばれるブラックホールの演出が秀逸。スモークと照明の美。
二階の一番後ろだったが、観易くて満足。
フランドン農学校の豚/ピノッキオ
座・高円寺
座・高円寺1(東京都)
2020/08/28 (金) ~ 2020/10/03 (土)公演終了
満足度★★★★
ピノッキオ
昨年からの二回目。辻田暁さんのラストの舞踏が観たくて堪らなくなる。理屈や論理を越えたもの、畏怖するしかないもの、言語化出来ないもの。そこに“神”が宿るのか。人間論のような作品。
MISHIMA2020
梅田芸術劇場
日生劇場(東京都)
2020/09/21 (月) ~ 2020/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★
三島由紀夫の作品を若い演出家がアレンジして再構築する企画。各一時間に満たない程の中篇で、休憩が二十分入る。NHKのカメラが入っていた。
①『真夏の死』(『summer remind 』)/作・演出:加藤拓也。
中村ゆりさんと平原テツ氏の二人芝居。他に医者の声が入る。椅子に腰掛けた二人でスタート。中村ゆりさんが観客に向け自分の身に起こった出来事を語り始める。夏に家族で海に行くが、一人旅館で昼寝をしている間、子供が二人水死してしまう。子供達の死に対する罪悪感を背負い続けて生きていこうとする話。椅子が高くせり上がってライヴ会場になったり、出産シーンは桃(?)の形に膨らむ巨大なゴム風船だったり工夫が効いている。赤ん坊は巨大なへその緒で表現。中村ゆりさんがひたすら美しかった。
②『班女』近代能楽集より/演出:熊林弘高。
乱歩の世界を美内すずえが漫画化したような話。背後のスクリーンに映像が同時進行で投影されたりする。
キャッツ【7月22日~7月30日、12月8日、2月24日昼公演中止】
劇団四季
キャッツ・シアター大井町(東京都)
2018/08/11 (土) ~ 2022/04/17 (日)公演終了
満足度★★★★
二回目の観劇。タントミール役の間辺朋美さんがやたらと目を惹いた。凄い身体能力。
話はあってないようなもの、予備知識として映画版『キャッツ』を観てからの方が楽しめると思う。(メチャクチャ酷評されているが自分は好き)。フランチェスカ・ヘイワード演ずるヴィクトリア(舞台では産まれたばかりの赤ん坊猫シラバブ的な存在)がガイドラインとして判り易く世界観を伝えてくれる。
物語を語る作品ではないので、簡単なキャラ設定を知っていた方がいい。何度も何度も観た方が楽しめる作りにされている。実際、初回より俄然面白かった。
隣の小学校低学年の女の子が、ラストの『猫に対する礼儀の講義』で号泣していた。これぞ正しいミュージカル体験。
絶え間なき躍動感の強烈なる放射が、眩い圧倒的な光の照射となって胸に突き刺さる。
ホテルニューパンプシャー206
UDA☆MAP
キーノートシアター(東京都)
2020/08/12 (水) ~ 2020/08/17 (月)公演終了
満足度★★★
舞台と客席を大きなアクリルパネルで遮り、客席は一席ずつ両側共に仕切り、演者は全員口元をフェイスシールドで覆い・・・。ここまでするかのコロナ対策。何年か後には笑い話になっていて欲しいもの。
安いラブホテルの一室、訳有りの掃除婦と帰らない女性客、間違ってやって来たホテトル嬢、隣の部屋からは銃声が。90分程のハイスピード・コメディ。ワン・シチュエーションでここまで疾走感があるのは見事、面白い。
小林亜実さんは声が独特で台詞がはっきりと聞き取れる。観る度に生き生きとしていて、演技という水の中を自由に跳ね回る魚のよう。
一番驚いたのは高宗歩未さんの怪演。狂ったように顔芸を競い合う。この人のノーマルな状態の想像がつかない。
ベッドの上をごろんごろん転がり捲る役者陣。汗だくだくで熱量が凄かった。
無畏
劇団チョコレートケーキ
駅前劇場(東京都)
2020/07/31 (金) ~ 2020/08/10 (月)公演終了
満足度★★★★
非常に衝撃的な作品。ドラマとして観れば平坦な作りだが、自分は論戦として受け止めた。
東京裁判にて死刑となる、南京大虐殺の最高責任者、当時の陸軍大将松井石根(林竜三氏熱演)と弁護士との対話。
このネタは時代が時代なら大揉めで酷い難癖をつけられていたことであろう。NNNドキュメント『南京事件』のような良作も糞味噌に言われる世の中なのだから。
初フェイスシールドは思ったより悪くはなかった。ここまでして、舞台を演り、舞台を観る、というのが人間の面白い所。コロナを逆手に取った新しい観劇スタイルなんかが生まれてくるんだろうなあ。
南京事件を扱った作品は巨匠チャン・イーモウ監督の『ザ・フラワーズ・オブ・ウォー』ですら黙殺される日本。(主演クリスチャン・ベール。韓国版Blu-rayにて日本語字幕有り。)
「何故、自称愛国者達はこれらの事(従軍慰安婦問題など)を禁忌としたのか?」「これらが事実であると何がまずいのか?」そここそが日本人論の焦点。
クライマックスの弁護士の詰問はド迫力。作者が時空を越えて松井石根を恫喝しているようにすら見えた。ここまでするか・・・。流石である。
バロック
鵺的(ぬえてき)
ザ・スズナリ(東京都)
2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
超観たかったので、観れて嬉しい。ワン・シチュエーション・ホラーものなのにスズナリの舞台が無限の空間に思えた。照明の技術が凄すぎて、まずそこを褒め称えたい。暗転の瞬間に人が消えたり現れたり。光と陰の効果にかなり知恵を絞っている。『霊は光には映らない』という鶴田法男監督の言葉を想起。照明の阿部康子さんにRESPECT。ホラー・エンターテインメントの中心は映画館から小劇場へと移ったか。
古典的な呪われた洋館に閉じ込められた一族と悪霊の対決みたいな感じだが、古臭さがなくセンスが良い。二役の福永マリカさんが強烈だった。声の変わりっぷりに慄く。春名風花さんは巧く、野花紅葉さんはエロく、笹野鈴々音さんは実に映画的。死んだ伯母を愛して気が狂う祁答院雄貴(けどういんゆうき)氏のキャラも良い。近親相姦に取り憑かれた一族なんて、上手い設定。生と死、善と悪とが二元論からアウフヘーベンされるような世界観。佐藤誓氏演ずる旦那は普通なら簡単に殺されそうなキャラの処、作者の人生観を象徴するような飄々とした重要な存在に描かれる。狂った浮浪者役、吉村公佑氏も欠かせない。死に様が美しい。
きらめく星座【公演中止3月5日(木)~8日(日)】
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2020/03/05 (木) ~ 2020/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
正しい音楽劇の傑作。レコード店主人の後妻役松岡依都美(いずみ)さんが凄かった。松竹少女歌劇部出身の設定を生かし、コミカルに踊る踊る。躁状態でイッちゃったサザエさんのようなキャラクター。観てるだけで楽しくなってくる。生演奏で次々に歌われる戦中流行歌が名曲揃い。灰田勝彦『燦めく星座』、市川春代『青空』、霧島昇とミス・コロムビア『一杯のコーヒーから』、中野忠晴『チャイナ・タンゴ』等々。明るく生き生きとした日本。
日中戦争中の昭和16年、レコード店オデオン(音楽堂の意味)堂一家の物語。翌昭和17年12月太平洋戦争開戦前夜の閉店までを二幕で送る。
店主の娘役の瀬戸さおりさんがやたら綺麗。その旦那となる義手の元軍曹、粟野史浩氏がド迫力。第一幕のクライマックスとなるシーンは素晴らしかった。本来憎まれるべきキャラクターである木村靖司氏演ずる憲兵が、物語の進行と共に愛すべき人間味を醸し出す井上ひさし節。
共骨
オフィス上の空
彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)
2020/03/07 (土) ~ 2020/03/15 (日)公演終了
満足度★★★
8歳の時、母を癌で失った少女。思わず遺骨を食べてしまう。父との慣れない二人暮らしが始まる中、母の亡霊が現れ助けてくれるように。母が現れる時、決まって骨が痛み出す。
主演の新垣里沙さんがまた凄い。虚無演劇界のファム・ファタールのようだ。彼女の独り芝居でも良かったんじゃないかと思う程に圧倒的。アンナ・カリーナのように存在そのもので作品を成立させる。
『家族』という宗教、『愛』という宗教、『自分』という宗教に囚われて苦しんでいる人に、「そんなに大したものでもないよ」と少し気を楽にさせてくれるお芝居。自分が何に支配されているのかを色々と考える切っ掛けにも。是非観て貰いたい。
Pickaroon!<再演>
壱劇屋
DDD AOYAMA CROSS THEATER(東京都)
2020/02/25 (火) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
『少年ジャンプ』っぽい世界観。よく知らないけど、『ワンピース』とかの感じでは。凄く大衆に受け入れられる裾野の広さ。古代中国をイメージしたような架空世界、“ピカルーン”(盗賊の意味)と呼ばれる七人の盗賊が盗んだ宝箱の中には一人の赤ん坊が。七人は共同でその女の子を育てることにする。
女の子、『御姫』役の柿澤ゆりあさんが超美少女。アイドルかと思ったら「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞の16歳。個性溢れる“ピカルーン”達もそれぞれが魅力的なキャラ設定。高安智美さん演じる陸上飛(おがうえとび)はフラフープのような武器を使う。漫画のキャラのような表情と動作に目を奪われる。西分綾香さん演じる紙研(しげん)は番傘を差し、無数の紙を宙に舞わせる。複数のアンサンブルが真っ白な紙を一枚ずつ両手に掲げ、アクションに合わせバサバサとはためかせる素晴らしい視覚効果。武俠映画のようでカッコイイ。日置翼氏演じる伊武は百面相の男。次々にありとあらゆる姿へキャラ・チェンジ。ゲーム画面を観ているような華やかさ。集団舞踏的に全員の動きで場を作り上げていてテンポが良い。主題歌もキャッチー。
カーテンコール後、舞台上で作演出&男虎(おのとら)役の竹村晋太郎氏が「世界にはたった一人でも何処かに自分を助けてくれる人がいると信じています。そういう気持ちをこの話に込めました」的な挨拶を。希望に未来がパンパンに膨れ上がった劇団だ。早目に観ておいた方が良い。
誰にも知られず死ぬ朝
劇団た組
彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)
2020/02/22 (土) ~ 2020/03/01 (日)公演終了
満足度★★★
不老不死の主人公を取り巻くある家族の年代記。『亜人』や『無限の住人』的に死んでも死んでも再生してしまう村川絵梨さん演じる美しい女。人を好きにならないように何百年(?)も生きてきたのだが、平原テツ氏演じる男を愛し結婚してしまう。男の兄の一家とのエピソードと二人の出逢いから愛し合うまでをコラージュする前半。
半円系のコロッセオはかなり観易い。イメージと異なり、凄く静かな芝居。登場人物が『○○歳くらいです』と自分達の設定を各々説明してくれる。開幕の安達祐実さんが13歳設定なのだが、本当にそう見えるのが怖い。彼女こそが不老不死なのでは。
少女仮面
metro
テアトルBONBON(東京都)
2020/02/19 (水) ~ 2020/02/24 (月)公演終了
満足度★★★★
超怖い。例えるならば抗争中のヤクザの事務所で、喧々囂々のクンロクの入れ合いをじっと黙って無表情で見守っている堅気の心境。役者ってのは行き着くと本当に恐ろしい。主任役若松力氏は全てがヤバい。関わってはいけない人だ。緑丘貝役の熊坂理恵子さんも黒木華的に何にでもなれる水のような女優でずっと観ていられる。老婆役の村中玲子さんの唯一無二の存在感。metroは配役が見事、映画的。皆歌が巧く、聴き惚れる。音楽センスは抜群。月船さららさんの全てをひん剝いてもひん剝いても、そこには果てしのない空虚が何処までも広がっている、そんなゾッとする舞台。
『物語を楽しむ』とかそんなジャンルではなく、舞台に呪われた亡霊となって尚彷徨う、永遠の乞食としての役者を指の隙間から恐る恐る覗き見てしまったような。
天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】
東宝
日生劇場(東京都)
2020/02/08 (土) ~ 2020/02/29 (土)公演終了
満足度★★★★
二幕、3時間35分(休憩20分込み)、豪華な舞台であった。役者バカ系がごっそり揃っており、主演の高橋一生氏(白土三平調)にはニヤニヤした。シェイクスピアのエッセンスを煮込みに煮込むと、人間の業の深さに気が滅入るジェノサイド演劇に。余りに陰鬱なストーリーなのだが、終わってみるとやたら爽快な気分なのが不思議。井上ひさし流の『それも含めて人間って面白いな』という達観した人間観なのか。
歌の歌詞など、左右に字幕が映し出されるので有難い。ヒロインの唯月ふうかさんを事故以来久し振りに観たが、凄まじく巨大なオーラを放つ女優になっていた。これからどうなることか益々目が離せない存在。オフィーリアの熊谷彩春(いろは)さんも可愛かったし、浦井健治氏のハムレットも流石にカッコイイ。一度観た方が良い。
野兎たち【英国公演中止】
(公財)可児市文化芸術振興財団
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2020/02/08 (土) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★
脚本が秀逸で映画向きの題材。英国にて暮らす女主人公が結婚する予定の英国人とその母を伴い四年ぶりに故郷、日本に降り立つ。なかなか一筋縄ではいかない実家に待つのは・・・。主人公の母親役、七瀬なつみさんが美しく巧く惹き付けられる。この空間にずっしりと君臨する薫りのような存在感。父親役の小田豊氏も抜群のキャラクターで場を盛り上げる。リアリティーに拘り抜いた演出。英語の台詞には可動式の柱のような数本のヴィジョンに同時進行で字幕が映し出される。夢のような舞台装置だ。これさえあればありとあらゆる国の最新の舞台を十分楽しむことが出来る。音楽も素晴らしいセンス。一瞬も飽きさせないよう工夫を凝らした濃密な空間。日本人論としても面白い。役者のレベルが高い。薔薇のプレゼントもあり。
KAIRO -カイロ-
UDA☆MAP
萬劇場(東京都)
2020/02/05 (水) ~ 2020/02/12 (水)公演終了
満足度★★★★
温いアイドル2.5次元ファンタジーではなく、押井守の『イノセンス』や伊藤計劃の『ハーモニー』を彷彿とさせるサイバーパンク。脚本の細川博司氏の熱意を感じた。綺麗どころの女優も満載で華がある。『ブレードランナー2049』の雰囲気が好きな人には堪らない。
W主演の栞菜さんと小林亜実さんが実に良い。こういうハードSFのシリアスな役回りの方が似合っている。衣装もクール。もう一人の主人公、那海さんも見せ場がたっぷり。「成る程こう来たか」と演技プランと演出に感心した。兵藤祐香さんの反体制ゲリラも格好良く、腰抜け保安官役の八坂沙織さんは女優として賢い。こういう役回りこそが役者の醍醐味。
最終戦争後、荒廃した近未来。徹底的に管理された砂漠都市で謎の死が多発。キリスト教系の教会と神道系(?)の寺院から一人ずつ調査員が派遣されてくるのだが。
面白いのでお薦め。
おんにょろ盛衰記
糸あやつり人形「一糸座」
座・高円寺1(東京都)
2020/02/05 (水) ~ 2020/02/09 (日)公演終了
満足度★★★
化け物のような怪力の暴れ者、おんにょろ(仁王)と異名をとった熊太郎が主人公。久し振りに帰った故郷で村人を脅して好き放題にやっていたが、首を吊ろうとしている老婆と出くわす。老婆は旦那をうわばみに殺され、孫息子を虎狼に喰われたと言う。この二つの怪物を熊太郎が退治にいくのだが。
三味線に女義太夫、アクション・シーンは京劇と、アイディア満載。熊太郎役の丸山厚人氏がえらくカッコイイ。老婆の人形を操る結城一糸氏は流石の名演。ラストの熊太郎の痛切極まる咆哮が印象的。
エドワード・ゴーリーのにんぎょうげき「うろんな客」&「むしのほん」」
人形劇団ひとみ座
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(神奈川県)
2020/01/17 (金) ~ 2020/01/19 (日)公演終了
満足度★★★
何の前知識もなく、ひとみ座への興味から足を運んでみた。下から針金で人形を操作するスタイル。美しい舞台美術は絵本の世界そのまま。ナレーションのみで台詞もなく、音楽も少ない。『静かな演劇』と言ったところか。エドワード・ゴーリー氏の『むしのほん』と『うろんな客』が互い違いに各三幕ずつに分けられて語られる。
コミカルな虫の動きに小学生の男の子がケラケラ声を上げて笑う客席がのどか。居眠りをしている男性の寝息も響いた。通好みの渋い人形劇。話というより、雰囲気を楽しむ世界。
私たちは何も知らない
ニ兎社
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2019/11/29 (金) ~ 2019/12/22 (日)公演終了
満足度★★★★
ラップ調の『元始、女性は実に太陽であった。』から開幕。主演・平塚らいてう役の朝倉あきさんが美しすぎる(髪型は蒼井優調)。いざ目の当たりにすると、驚く程の美人。『青い山脈』の原節子を思わせる気品。らいてうのイメージが魔性のファム・ファタールのようにも見えてくる。伊藤野枝役の藤野涼子さんは何となく松岡茉優調。『ソロモンの偽証』の中学生がもう伊藤野枝になるとは。伊藤野枝は虐殺事件の被害者のイメージが強いが、奇妙な愛嬌がある人だったのだろう。何を為しても悪者には見えない。
初心者に優しい作りであり、何も前知識がなくても楽しめる。明治から大正にかけての日本ウーマンリブの先駆者達の苦悩。作・演出の永井愛さんによる女性目線で描かれている為、清々しい。男性作家目線だと、もっと陰鬱で残酷な内ゲバ話になったのかも知れない。登場人物全員が良い人で、宮崎駿の『風立ちぬ』っぽい。
第一幕は夏子さん演ずる尾竹紅吉のキャラの面白さで引っ張っていってくれる。かなりエキセントリックで魅力的。保持研役の富山えり子さんがまた巧くバランスを取る。第二幕は伊藤野枝による文芸誌『青鞜』の乗っ取りがメイン。山田わか役の枝元萌さんが重要な存在感。入門編としてよく出来ている。男優は一人だけの、女優が咲き乱れる舞台。