ちーちゃな世界 公演情報 青春事情「ちーちゃな世界」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    素晴らしい。ささくれ立った脳髄が不思議と癒される。何か甲本ヒロトの事を考えてしまった。ヒロトのブルーハーツ時代の名言、「幸せとはなるものじゃなく、それを感じる事が出来る心を手に入れることなんだ」。宗教家か?と思う程のカリスマ性。全国の救いを求めた少年少女達の熱量を処理し切れずにバンドは解散した。

    満員の観客は劇団への信頼に満ちている。舞台は東京から5~6時間掛かる片田舎のペンション。そこに居るのはちょっと失礼な人懐っこいオーナー、物忘れのひどい奥さん、ヘビースモーカーの料理人、毒舌のIT社長、書けない児童文学者etc.···。そして東京から訪れる闇を抱えた女性。まあ有りがちな人情喜劇と思わせつつ、かなり人間世界の深い所まで思索した上で刃を切り込んでいる。この手の話は諸刃の剣で、作劇に嘘があると観客は敏感に察知して拒否反応を起こす。今作は安易なカタルシスで逃げなかった点も素晴らしい。
    凄まじく残酷な世界にうんざりしながらも生きていかざるを得ない人々が、どうにか“想像力のカプセル”を飲み込んで立ち向かっていくような喜劇。いい事ばかりじゃないけど、悪い事ばかりでもない。気の滅入ってる人にお勧め。

    ネタバレBOX

    IT社長役加賀美秀明氏は毒舌の山寺宏一的なキャラで、皆に嫌われるが発言は一貫して筋が通っている。物語を上手に掻き回す。
    作・演出の大野ユウジ氏はタピオカ屋としてチョイ役で終わったのが残念。もう少しラストに仕掛けが欲しかった。(自分は『ささやかだけれど、役にたつこと』のケーキ屋のようなものを想像していた)。
    若年性アルツハイマーの奥さん役、後藤飛鳥さんは本物か?と思わせる凄さ。「彼女を肝として泣かせに入るんだろうなあ」とのミスリードが上手い。
    スランプの児童文学作家役内海(うつみ)詩野さんは流石。出ただけで場の空気が変わった。
    リベンジポルノによって現実世界から居場所を奪われた中学教師役、板本こっこさんも巧い。無意識に巨乳をわざと強調する着こなし等は秀逸。
    ギャンブル狂の料理人、ナカムラユーキ氏はやたらリアル。ラスト、持ち逃げしたように見せた金をギャンブルで何十倍にして持ち帰ってみせるお伽話。「すみませんでした」と泣きながら土下座してから、金をバラ撒いても良かった。

    主演の本折(もとおり)最強さとし氏の見せ場であるクライマックス、恥辱の写真を不特定多数に半永久的に流されて苦しむ被害者の女性を何とか励ます。このシーンがイマイチで、ここで観客全員を泣かせて欲しかった。皆ボロボロ泣いている情景で、ペンション全焼と云うのが正しいオチだった。

    タイトルとチラシがつまらなそうで勿体無い。

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    2021/10/27 22:13

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