Jeanne 公演情報 鬼の居ぬ間に「Jeanne」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ジャンヌ・ダルクと云えば、ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』を観たような気がするが全く記憶にない。ゴダールの『女と男のいる舗道』で娼婦ナナ(アンナ・カリーナ)が映画館でそれを観て涙を流す名シーンの方が印象的。
    ちなみにジャンヌの故郷のドンレミ村は上野のドンレミー・アウトレット店(激安スイーツ販売で有名)の語源にもなったとのこと。

    主演の奥野亮子さんが美しい。19歳で火刑に処せられることとなる、600年前フランスの軍隊を率いて戦った男装の少女に相応しいカリスマ性。神のお告げを聞いた片田舎の農夫の娘が王太子シャルルの下を訪ね、軍の指揮を任される。戦意高揚の旗印としての宣伝効果を狙ったものだろうが連戦連勝、シャルル7世の戴冠に貢献することとなる。だがイングランド軍に捕らわれるとシャルル7世は見捨て、見せしめの異端審問で虐め抜かれて死刑。その裁判記録が克明に残っており、余りの非論理的な遣り取りにうんざりする。
    ドンレミ村の幼馴染役笠島智さんも印象に残る。時節柄、眞子さまに似てるなあと思った。
    執行官役菊池豪氏は『一九一一年』の良心的弁護士役が記憶に残る。今作では『ベルセルク』の異端審問官モズグスを思わせる強烈なキャラクター。
    ジャンヌの母親役田中千佳子さんの秘められた胸の内が物語のキーとなる。

    1431年のジャンヌ・ダルクの異端審問と1455年のジャンヌ・ダルク復権裁判が同時進行で語られていく。前者では彼女を見棄てたシャルル7世(伊藤俊輔氏)が何故今頃こんな申し立てをするに至ったのか?それにはある女性(小口ふみかさん)の登場が関係してくる。

    ネタバレBOX

    ジャンヌが12歳の時、聖マルグリット、聖カトリーヌ、大天使ミカエル(ミシェル)が現れて神の声を伝えたとされる。古今東西、このような幻視体験や“神のお告げ”は無数に記録されている。但しそれを信じて行動した者は大体最後に裏切られて無惨な末路が待つ。「エリ、エリ、レマ、サバクタニ(我が神、我が神、何故私をお見捨てになったのですか?)」と当のキリストも叫んでいる。一体この声の正体は何なのか?電波(幻聴)が聴こえる作家、故村崎百郎氏は「奴等の声に決して耳を貸すな」と書いた。「奴等の正体は神を名乗る狐かも知れない。素直に信じた奴が地獄に堕ちるのを見て愉しんでいやがる」と。

    ホンも構成も演出もちぐはぐ。女優陣の熱演がド迫力なだけに本当勿体無い。話の語り口が混乱しているような。“神”への信仰を全て空虚な茶番にしてしまった故ではないか?大映テレビのような司教や執行官、軍人の大仰な遣り取りが今作にそれ程必要だとも思えない。山田風太郎の『首の座』や『明治十手架』のように逆説的な“神”の顕現が見たかった。

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    2021/10/24 10:55

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