実演鑑賞
満足度★★★
二階に上がる階段から舞台美術は始まっている。飾られるのは月の公転を刻んだオウムガイ(劇団名の由来)。とにかく細やかな気の遣い方と“おもてなし”に満ちている空間。座席に一つ一つ置かれたトートバッグは全員にプレゼント。舞台を見やると下手に大木が生えていて、それはすでに美術の範疇を超えている本物。地面の土と言い、よくぞここまでの世界。終演後、観客は染み染みとそれを眺めて帰ることとなる。(上手にもあるが迫力が違う)。
三話の短編集。①占い師が女の片想いを成就させようとアシストする話。占い師役は劇団主催者の秋葉舞滝子(まさこ)さん。丁度細木数子の逝去がニュースとなっており、イメージが重なって見えた。②とある山奥で行われる青年へのカウンセリング。青年役渡部康大(わたなべやすひろ)氏がリアルなサイコパスを感じさせる存在感。錆び付いたバス停の標識がまた素晴らしい。③エピローグ。
不思議な空気感、奇妙な味わい。死者の存在(オカルト)を受け入れることにより、固定観念に凝り固まった生者の生き方がほんの少しだけ解放されていく。そのほんの少しの視点のズレが真暗闇で四方の壁に閉塞されていた筈の世界から、脱け出せる扉が幾つもあった事が見えてくる。この空気感を是非味わって頂きたい。