実演鑑賞
満足度★★★★
主演の松本穂香さんにやられた。彼女のファンなら絶対必見。そうでなくても叩きのめされる筈。公園の砂場をモチーフにした円形舞台にほぼ出突っ張り。隅には天井からぶら下がる長大な鎖に繋がれた二基のブランコ。もう一方の隅には人の登れるアスレチックネットが。
特にファンではなかったのだが、彼女の舞台はまた観たいと素直に思った。男を駄目にする性的フェロモンをムンムンと無意識に身に纏っている。それが自然に表現されており、演じている感じが全くしない。素でこういう人なんだろうなと勝手に思い込んで観ていた。作者の口癖である「〜なので」も大量に作品内に炸裂。『火の鳥・未来編』のムーピーを想起させる。(相手の心を読み取って好む容姿に変化する究極の異星生物)。
演出の狙いでもあるのだろうが、役者の舞台上の声が小さく台詞が聴き取り辛い。ここはもう少し音響に頑張って貰いたいところ。自分は4列目だったのだが判らない会話がかなり有り、勝手に想像して観ていた。···なので、本当に作品を理解しているのかの自信はない。
『友達』がつまらなかったので、今作は全く期待していなかった。今や作者は何をやっても観客も批評家も褒めてくれる状況。何か不条理な鬼ごっこでも見せて、高尚な哲学でもあるようなそれっぽい雰囲気と余韻でごまかすんじゃないかと勘繰っていた。申し訳ない。
作者の分身である、(仮)彼氏役お馴染み藤原季節氏の相変わらずのクズっぷり。些細な言葉尻を捉えて、幼稚な口論に持ち込むいつものプレイ(西村博之か?)。毎回彼の演ずる役を見ていると「若手俳優には碌な人間がいないんだなあ」との偏見が刷り込まれていく。彼は何故かクッションの腕をいつも持ち歩いている。
男を駄目にする女と、女を駄目にする男のクズ・ロマンスが主旋律。松本さんはシッターのバイトをしていて平原テツ氏演ずる5歳児を担当。(自分は障害者若しくは引きこもり自閉症患者の成人男性と勘違いしていた。言う事が大人び過ぎている)。かなりの規模の地震が発生し、タワマンの外に出るが戻れなくなる。我儘放題に要求し泣き喚くガキにうんざりして別れ、独り男の家に歩いて帰宅してしまう。ドラマはそこから始まる。
作品内の世界では、子供が恨みを遺して死ぬと“ぽに“になり、縁の深かった者に取り憑いてその家に産まれる子供を冥界に連れて行くとされる。“ぽに“を御祓いする為に当事者は失明のリスクを背負わされる。
この一つだけズレている世界観が松本人志企画オリジナルビデオ『頭頭(とうず)』っぽい。設定は『ぼぎわんが、来る』っぽくもある。