ヴォンフルーの観てきた!クチコミ一覧

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左手と右手

左手と右手

小松台東

駅前劇場(東京都)

2022/10/29 (土) ~ 2022/11/08 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

タイトルから楳図かずおの『神の左手悪魔の右手』を連想するが全く関係ない。
何でだが分からないが中国映画の『ただいま』を想起。何か中国とか韓国とかの80〜90年代の暗い映画はこんな雰囲気だった。日本だと自主映画にこんなテイストが多かったような。
濡れ場のない日活ロマンポルノ、古いAVのドラマ、ピンク四天王のような空気感。嫌な事件が起こる前触れの息遣い。

宮崎県の田舎町、十代から付き合ったり別れたりを繰り返して来たアラフォーの男女(松本哲也氏と吉田久美さん)。今は男の自宅の古い一軒家で同棲している。そこに訪れる来客との会話の中からゆらゆら浮かび上がる二人の実存、たなびく白煙。矢鱈飲み物と食べ物が出てくる。

吉田久美さんは綺麗で絵になる。冷蔵庫から麦茶を注ぐ。
松本哲也氏の諦観とスーパーの駐車場で買ってきたたこ焼き。
嫌な社長役の佐藤達(とおる)氏も強烈。やり過ぎ位の下卑た目線。視線で女を撫で回す。

冒頭から終演まで目に映る光景は変わらないが、二人の姿は驚く程違って見える。醸成した空気に演出をつけているような作品。卓越した舞台美術。

ネタバレBOX

土着系ドメスティックな日本映画は大嫌いな為、前半は辟易した。だが三組目の来客、東京時代のバイト仲間のカップルの登場から爆発的に面白くなる。全ての眠っていた仕掛けが音を立てて回り始め、舞台がうねり出す。
MVPは元ノベライズ作家役の桜まゆみさん。凄すぎるキャラ設定。何て台詞だ。こういうずれた自意識の女をこの空間に放り込む恐ろしさ。一気に客席の空気が変わり、どっと笑い声が上がり始める。かなり難解に込み入った喜劇だ。居酒屋のマスター役の今村裕次郎氏の合いの手のような台詞も絶妙。「ここの住所を教えて下さい!」

プロローグとエピローグ、新興宗教の勧誘に来る妹役・小園茉奈(おぞのまな)さんのエピソードも巧い。ポカリスエットを矢鱈飲み干す。
冒頭では駄目な男に引っ掛かってそこから抜け出せない姉に見える吉田久美さん。早く本当にいるべきところに行けと。だがエピローグでは何一つ変わっていないにも関わらず、こここそが思い描いていた“ここではない何処か”のようにすら感じる。見事な作劇。

Shoot BoxingのTシャツ。
インディヴィジュアル・ライセンス

インディヴィジュアル・ライセンス

24/7lavo

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2022/10/27 (木) ~ 2022/10/31 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

最高の役者陣、大人の演劇、村上春樹にも通ずる文学性。後々今作を観たことが誇れるようになるだろう。

『individual license』とは『個人免許』の意味。いつもちょっと取っつきにくいタイトルが損をしている。
「インディヴィジュアル」と聞いてTHE MAD CAPSULE MARKET'Sの『HI-SIDE (HIGH-INDIVIDUAL-SIDE)』を想起した人も多いのでは。
作品の完成度は高く、脚本のお手本のような出来。これはフェミニズムも含め時代に合致、映画に向いている。本当ケチのつけようがない。敢えて言うならば教官と元夫の漫画家エピソードが安っぽい位。脚本の米内山(よないやま)陽子さんにリスペクト。こんな真剣な作品を真剣に観たかった。

家族旅行、旦那(有馬自由氏)が運転する車で高速を走行中、海老名でふと垣間見えた富士山の美しさ。妻である主人公(新井友香さん)はこの美しさに天啓にも似た何かを感じる。ブラック企業のIT土方で身も心も追い詰められている息子(平井泰成氏)。専門学校生のコンビニバイト、推しに愛を捧げることだけが生き甲斐の娘(環幸乃さん)。旦那は定年退職し、嘱託として気ままに過ごしている。ふと免許を取ろうと思い立つ主人公。

新井友香さんは凄い。梨を剥く演出は何万言の台詞よりも物を言う。
有馬自由氏は奥田瑛二スタイル。巧いねえ。
平井泰成氏はふてくされた今現在の若者の依り代。ネガティヴのカリスマ。山本圭が学生運動家崩れのこじらせ左翼を象徴したように時代を象徴する存在になって欲しい。
環幸乃さんはほぼ素なのでは。童顔に過剰な憎まれ口、キャラ的にゆたぼんを想起。
金田一央紀(きんだいちおうき)氏はパブリック・イメージ通りのクズっぷりを炸裂。見事。
森谷(もりや)ふみさんも凄い。この人物造形はリアル。彼女が本物だから嘘臭いファンタジーにはならない。現実に労働して生活している痛みの中から零れ落ちる煌めき。

凄く人間の核心的な部分に手を伸ばしている作品。餃子のエピソードが秀逸。必見。

ネタバレBOX

環幸乃さんの推しの結婚ネタはタイムリーで櫻井孝宏を連想。
二役やる人は過剰に別人であることをアピールするのだが、平井泰成氏だけはそのまんま。
熟女の同性愛を『枯れ百合』と称することを初めて知った。

『推し』と接している時だけが生きている実感を得られる。これはかなり深い話で、キリストや仏陀、日蓮や天皇も『推し』の一つとして認識するならば普遍的な人間の思考パターン。人間はそうやって生きてきたのだ。
「ママ、推せる!」は名台詞。

途中、家族再生の話ではなく、『テルマ&ルイーズ』のように全て放り出して二人で逃避行に走って欲しいと願った。ラスト、北海道の「天に続く道」での昂揚は思い描いた通り、文句無し。
年齢も性別も肉体関係も超越したラブストーリー。好きになれる人間と今お互い出会えた幸せ。世界は新しい扉を開く。何て素晴らしいのだろう。
南極ゴジラの地底探検

南極ゴジラの地底探検

南極ゴジラ

王子小劇場(東京都)

2022/10/27 (木) ~ 2022/10/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

主人公、球李役の瀬安勇志氏が知り合いにそっくり。中村勘九郎っぽい美男子。ヒロイン、星役は端栞里(はたしおり)さん、功夫少女っぷりがイカしてた。愛犬アイロン役、瑠香さんは地下アイドル系山本彩、ルックスが目立つ。望まれる絵の描けない金飛来(キム・ヒーライ)役の古田絵夢さんはネガティヴなAI役が嵌まっていた。

関西弁が痛快で絶頂期の『SFマガジン』を捲っているような爽快感。筒井康隆の『チューリップ・チューリップ』など懐かしくも胸を熱くした古き良きSFの興奮を想起。
『地球空洞説』から始まり、『月世界旅行』まで。ブラウン管の古いテレビ、大小四台がタイトルを映し出し大活躍。
コント集と云うよりも散乱した断片が脈絡なくばら撒かれていく。

謎のメロディー(『未知との遭遇』調)を解読した冒険家達は、それがある座標を示すことに気付く。新宿の廃墟となった公団住宅の地下に巨大な穴を発見。探検隊を組織して降りていくことに。『地球空洞説』を裏付けるかのようにマントルはなく、未知の世界が広がっていた。

ネタバレBOX

地球の内部は同心円状にパラレルワールドが幾層にも重なっている。実は月こそがその世界を繋ぐ穴で、月を突き抜けると外の層の世界へと移行できる。無数の並行世界で共通していることは球李と星が互いを好きになる事だけ。地球の内部からマグマが噴き出し、内側の世界からどんどん滅んでいく。皆は外側の世界へ脱出しながら、この世界を救う方法を探す。

笑いがイマイチ振るわない。劇団系のノリが続くのでぼんやりと観てしまう。突然ガラッと別の話に変わるのだが、何かどれも掴みが弱い。脚を壊したアイススケート選手の転校生・星と毎日マラソンを続けている球李の仄かな触れ合いのエピソードだけが詩情豊かで絵になった。クライマックスの砲弾の中、電気を起こす為にバンドでアイロンが歌う曲も良かった。

上手くいけば『インターステラー』になれたネタ。ふざけた御都合主義的なキャラと展開ばかりで作品世界にのれないのは残念。配分が悪い。何処か純粋なジュブナイル要素が芯としてあった方が感情移入出来た。作家の本音が欲しい。
日本人のへそ

日本人のへそ

虚構の劇団

座・高円寺1(東京都)

2022/10/21 (金) ~ 2022/10/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

良い出来、良い劇団。これでラストなのは勿体無い。そう思わせるいい芝居だった。『虚構の劇団』、結構観た気がしていたが実はニ回だけ。『サードステージ』と混同していた。

井上ひさしの戯曲デビュー作。こまつ座で観た朝海ひかるさん出演の作品がエロかった。強烈に印象に残っている。
冷静に観ると、日本人論の塊。『日本のボス』なんて、今まさに暮らしているこの現実の仕組みを大声で糾弾している。一般的な皆さんはニヤニヤ苦笑いで収める話なのだが、山上徹也みたいな自爆テロリストがうようようごめいている時代の変革期。「こんな国は嫌だ!」と叫び出す奴が現れるかも知れない。同性愛ネタも強烈で、「昭和天皇のルックスがイマイチだから日本軍は弱くなった」と言いたい放題。タイトに削ってある為、作品の本質が掴み易い。

かつて一世を風靡したストリッパー、ヘレン天津を演じる小野川晶(あき)さんが魅力的。おかっぱの女学生姿はT-ARAのボラムを想起。葉山レイコに似た美人。
狂言回し的存在の久ヶ沢徹氏は膨大な台詞を炸裂。冒頭の歌の途中で「間違えた!この後何だったっけ?」と他の共演者に聞いてそこから立て直す場面も。観ているこっちがハラハラした。
小沢道成氏のスタイリッシュなヤクザ、渡辺芳博氏のクリーニング屋の親父も強烈なインパクトを残す。
健康的な木村友美(ゆみ)さんの肢体も目立つ。
下着姿で踊りまくる華やかな女優陣が美しい。
梅津瑞樹氏のファンが矢鱈いた。
ストリッパーのストライキの歌が秋元康調で良かった。

上部スクリーンにテンポよく映し出されるイラストが本当によく出来ている。膨大な言葉遊び、聴覚だけの情報が視覚を使ってより深く認識でき、井上ひさしの徹底的に詰め込んだ言語世界を密度濃く味わえる。

ネタバレBOX

岩手の山奥の村から集団就職で上京する女の子。「都会の男に汚される位なら」と、実の父親に強姦される。勤め先のクリーニング屋では主人に愛人になるよう懇願され、奥さんから追い出される。転げ転げて職を転々とし、トルコ嬢からいつしかストリップの舞台に。ストライキのリーダーになり初恋のバッタ屋(ヤクザ)と再会し結婚するもそれも束の間。日本の風習、権力者への贈り物として組長、右翼、遂には代議士の妾に。『嫌われ松子の一生』だ。小野川晶(あき)さんの佇まいが良い。

私立吃音矯正学院の教授の論説。『人間の尊厳を冒す「吃音症(=どもり)」とは“言葉”の病気である。“言葉”(=文字、言語)を操ることこそ、人間が他の動物と一線を画す拠り所である為、真の人間的病気といえる』。井上ひさし自身も吃音症に悩まされた経験があり、それが元になっている。
この人間の尊厳を取り戻す為の治療劇こそが今作。

井上ひさしは「吃音症の人は心の優しい人だ」と書いている。他人の反応を気にする余り、適切な言葉を見付けられず慌ててしまい喋れなくなる。自分の伝えるべき言葉が見付からないまま、羞恥に悶え苦しみ続ける。
結局、今作では誰のどもりも治ることはないのだが、この治療劇をずっと続けていくことそのものが治療であるという結論。井上ひさしは生涯治療を続けたのだろう。
野外劇『嵐が丘』

野外劇『嵐が丘』

東京芸術祭実行委員会

池袋西口公園野外劇場 グローバルリング シアター(東京都)

2022/10/17 (月) ~ 2022/10/26 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

2回目。
超面白い。音響が格段に上がっていて、台詞がほぼ全部聴き取れた。もう一回観たい位に良かった。
片桐はいりさんは『七人の侍』に勝手に歌詞を付けて歌っていた。そして『もののけ姫』。
ヒースクリフの見る夢が印象的。教会で罪業を並べ立てられなじられる。しかし、「最大の罪、それはお前だ!」と“死”に向かって掴み掛かる。
ヒースクリフとキャサリンの愛憎物語。地獄の門は天国に続いている。因果律に抗えない人間の無力さ。
マイケル・ジャクソンのゼロ・グラヴィティ(斜めに傾いていくマイム)が効果的。
菅波琴音さんが浅田真央っぽかった。

ネタバレBOX

ラストの演出も噴水孔から上る白煙だけでなく、そこをとぼとぼと横切る片桐はいりさんにアレンジ。
コメント有難うございました。
舞踏 天狗藝術論

舞踏 天狗藝術論

大駱駝艦

シアタートラム(東京都)

2022/10/21 (金) ~ 2022/10/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

江戸時代初期の禅僧・沢庵宗彭(たくあんそうほう)が柳生宗矩に宛てた手紙、『不動智神妙録』には“剣禅一如”が説かれている。人殺しの技術論が思想に至る“武士道”への転換点。殺しの技術と禅の目指す仏の道を同一と論じた。田村一行氏は「水上の箶蘆子(ひさご)のごとく」の一節に衝撃を受ける。
同様に江戸時代中期の戯作者・佚斎樗山(いっさいちょざん)が記した『天狗藝術論』、今作はそれをモチーフに創作。
『不動智神妙録』には「稽古は四季のように巡る」と書かれている。螺旋のようにループしながら少しずつ先へと歩を進めていくのか。

「空っぽになり、外側に目を向ける」
「自分は外側のもので作られていて、外側に実態がある」
「自我ほどつまらないものはない」
「動くんじゃなくて動かされるんだ」
「いかに空っぽになって動かされるか」

例えるならタイムスリップした先が古代日本の山奥の集落。篝火に照らし出されたこの宗教的祝祭を、夜風に吹かれ大木の陰から怯えながら覗き見てガクガク震え上がっているような興奮。
凄くいろんなことについて考えさせられた一時間余り。白塗りの彼等は愛すべき白猫を思わせる。
これを観れる歓び。

松田篤史氏は肩などに入墨があるので判別し易い。谷口舞さんの呆けた笑顔。
夢を見ていた男は小田直哉氏か?痙攣ダンスは観ているだけでどっと疲れる。自分は整体に通っているので鋳態(出演)の方達の身体が心配になった。相当な酷使。

ネタバレBOX

美しい竹林、ポカンと宙空を見上げる人々。侍が刀を振り上げて人々を連れ去る。首を掴まれた子猫のように連れて行かれる面々。一人だけ言いなりにならない男がいて、侍はそいつを気に入って刀を振らせてやる。

修行が始まる。禅で云うところの魔境を表現しているような。魔境とは、禅の修行中に神仏と一体化したような陶酔感を得て、自我の肥大により悟りを錯覚した状態。麻原彰晃なんかのイメージ。煩悩を打ち払い打ち払い魔境に到り更に打ち払い打ち払い。ビートたけしの痙攣ダンス。ゾンビが踊るEXILE。『少林寺』のような光景。宙空からの縄を掴んでブランコのように回転する侍。
兎に角退屈をさせない工夫に満ちている。常に何かをしていなければ。常に何かを表現していなければ。安っぽい世俗との結託が逆に力となる。

盥で水浴びをする女達を竹林から覗き見る男共。
女達が赤子のように抱きかかえる金の玉、胡蘆子(コロシ)=瓢箪。生々しいエロスの表現、悦楽。
情欲の煩悩を乗り越えた男達は自分達の境地に高笑い。もう胡蘆子には何の価値もない。
そこに現れる天狗、皆怯えて逃げ去る。一人逃げなかった侍は天狗の面を剝ぎ取ってみせる。正体は剣術に明け暮れていたあの男だった。
逆に背後から無数の天狗が湧いてきて男は慄く。
クライマックスの曲がTHE MAD CAPSULE MARKETSの『TRIBE』のイントロっぽくてカッコイイ。

ふと気付くと全ては男の見ていた夢であった。金屏風に描かれた竹林。
すると皆がポカンと宙空を見上げる。天狗が現れた。冒頭に繋がるループする世界。
野外劇『嵐が丘』

野外劇『嵐が丘』

東京芸術祭実行委員会

池袋西口公園野外劇場 グローバルリング シアター(東京都)

2022/10/17 (月) ~ 2022/10/26 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

開演前の広場の周り、頭のイカれた浮浪者が手押し車をガラガラ押しながら歌い続けている。小雨の中、『Singin' in the Rain』が朗々と歌い上げられ矢鱈上手い。ガラガラの関係者席を弄る。酔っているように観客に絡む彼女はキネカ大森の『もぎりさん』こと、片桐はいりさん。昔、弟さんにお世話になりました。
段々と石畳の円形のステージに人々が集まり始め開幕。マイムと持ち寄った小道具で嵐が丘屋敷が描かれていく。役者を人形のように用いり、台詞は外からマイクで別の者が入れていく。無声映画を観ているような気分にさせる入り組んだ演出。辻田暁さんは流石のたたたと駆けての空中舞踏。青いドレスの崎山莉奈さんはマイムの美しさと森若香織似のルックスで印象に残った。
複雑な話を70分で細かく描く為、粗筋を頭に入れておいた方が楽しめる。軽い嵐の中の野外劇、雨具を着て見守る観衆。ヒースクリフは自分も含めて関わる全ての人間を不幸に突き落としていく。チケットがなくても仕切りがない為、外から普通に観れる。是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

『嵐が丘』とは復讐劇である。
嵐が丘屋敷(ワザリング・ハイツ)と鶫〈つぐみ〉の辻屋敷(スラッシュクロス・グレインジ)の二軒にまつわる因果な物語。
①田舎に引っ越してきて鶫の辻屋敷を借りたロックウェル、大家のヒースクリフ(荒地崖男)に挨拶する為、嵐が丘屋敷を訪問。妖気漂う化物屋敷の様相に逃げ帰る。鶫の辻屋敷の女中ネリーが昔からの因縁話を教えてくれる。
②数十年前、嵐が丘屋敷の主人アーンショウが孤児を拾ってくる。ヒースクリフと名付けられたその少年は家の息子ヒンドリーに散々虐められる。妹のキャサリンは優しく二人は仄かな恋心を抱く。父親が亡くなるとヒンドリーはヒースクリフを召使いに落とす。
③遊びの延長で鶫の辻屋敷に忍び込んだヒースクリフとキャサリン。番犬に噛まれキャサリンは大怪我。屋敷のリントン一家に介抱され、息子のエドガーはキャサリンに恋をする。
④キャサリンとネリーのつねった、つねっていないの口論。その喧嘩がきっかけとなってエドガーの求婚を受け入れるキャサリン。ショックを受けたヒースクリフは屋敷を去る。
⑤三年後、鶫の辻屋敷で暮らすエドガーとキャサリンのもとに大金持になったヒースクリフが訪ねて来る。ヒンドリーには賭博を仕掛け彼の財産を巻き上げ、嵐が丘屋敷を手に入れる。
⑥エドガーの妹イザベラを誑かして駆け落ちするヒースクリフ。彼になじられ精神を病んだキャサリンは死の床で子供を産んで息絶える。ヒースクリフの暴力に耐え兼ねて逃げ出したイザベラは彼との子供リントンを出産。ヒンドリーが亡くなると、その息子ヘアトンをヒースクリフは召使いに落とす。
⑦イザベラが亡くなり、リントンを引き取るエドガー。キャサリンの忘れ形見、キャシーは嵐が丘屋敷でヘアトンと出会う。ヒースクリフは自分の息子であるリントンを屋敷に連れ去る。
⑧鶫の辻屋敷を乗っ取ろうと企むヒースクリフはリントンとキャシーを結婚させようとする。監禁や脅迫を用いて承諾を強要。エドガーは亡くなり、リントンも早逝。ヒースクリフは目的を果たす。
⑨今では嵐が丘屋敷に暮らすヒースクリフ、キャシー、ヘアトン等は失意と憎悪と罵倒と孤独にまみれて暮らす日々。
⑩ヒースクリフは死に、荒野を流離う彼とキャサリンの亡霊を見た者がいるそうだ。
高円寺が踊る

高円寺が踊る

東京高円寺阿波おどり演劇公演

座・高円寺1(東京都)

2022/10/13 (木) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

素晴らしい。これを無料で観れたなんて杉並区は太っ腹。阿波おどりにも高円寺にも何の思い入れもなかったが、ラストは郷愁たっぷりに見入った。池亀三太氏は流石の仕事をした。記憶の断片が降り注ぐ中、優しかった人、あたたかかった人の温もりだけが胸を衝く。

1957年、高円寺を盛り上げる記念行事の企画会議。自転車屋の銀次郎(中島多朗氏)が中心となって、踊りながら通りを練り歩く徳島名物の阿波おどりを開催することに。行きつけの居酒屋の娘、智恵子(松本みゆきさん)への秘めた想い。回を重ねる毎にどんどん盛り上がっていく『高円寺阿波おどり』。遂には海外のイベントにも招聘され、国を代表する民族舞踊として世界的評価を得るまでになる。昭和平成令和、一家三代の高円寺物語。

ネタバレBOX

銀次郎と智恵子は結ばれ、将太(あらおえみりさん)と葉子(小久音さん)が誕生。中三の将太は父親に抗い子供の頃からやっていた阿波おどりを拒否する。

京都の大学に行き、そのまま就職した将太(日下諭氏)は八ツ橋をメインとする和菓子屋の娘、百合(中坂弥樹〈みき〉さん)と結婚することに。久方振りに実家に帰省し、銀次郎(伊藤嘉信氏)、智恵子(やすみきよこさん)に紹介。そこで離れて初めて分かる、阿波おどりへの愛着を自覚。

結婚し高円寺に帰った将太と百合、麻美(小池舞さん)と久美(樋口双葉さん)を授かる。だが百合は思わぬ病で早逝。銀次郎も老衰で世を去る。
銀次郎の葬儀の後、智恵子が麻美に思い出話をするところから舞台は開幕。

ラストは現在、軽い認知症に陥った智恵子(やすみきよこさん)は若い頃の自分(松本みゆきさん)と会話をしている。数々の胸に刻まれたシーン、シーンが再現されていく。記憶の雨に打たれて立ち尽くす智恵子と観客。そこに本物の『高円寺阿波おどり』の一団が踊り始める。「楽しかったなあ。退屈なんてすることはなかった。」と笑顔。
ぴえろ

ぴえろ

タクフェス

サンシャイン劇場(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

前作でも思ったが、客いじりとサービスが尋常じゃない。ガチで観客に感謝して舞台を制作している。本気度に心から感心する。「そこまでしなくても」と客側が恐縮する程に。
駅前で『顕正会』の婆さんが横断歩道に立ち、通る人全員に「有難うございます」と朝から頭を垂れている姿を重ねた。まるで『法華経』の常不軽菩薩を目指しているが如く。
生の舞台の面白さを啓蒙しているような劇団。小学生の子供達が家族で毎年楽しみに来ている物凄さ。

蔵前の寿司屋に盗みに入った二人組、突然バットで殴られて気を失う。目を覚ますと自分の歓迎パーティー。どうやら他の誰かと勘違いされているらしい。何となく話を合わせてずらかる算段を講じるが・・・。

登場人物のキャラが立っていて面白い。大衆演劇の中にかなり捻った工夫が練り込まれている。
是非観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

宅間孝行氏(二役)は喋りは宮迫調、役柄は三又又三っぽい。悪党キャラをやる時の右手の震えなんかが効いている。
佐野和真氏はカッコイイが、キャラの立ちがイマイチで勿体無い。
浜谷健司氏(二役)は巧い。お笑いの強み、客席の空気感を鷲掴み。
柴田理恵さんとモト冬樹氏は返しの一言で必ずどっと笑わせる。柴田理恵さんの会場人気は凄かった。
鈴木紗理奈さんはいつも通り、そのまんま。
太田奈緒さん(二役)も彼女だと気付かない程、弾けていた。元NMBの誰かだと思っていた。口上が吉本新喜劇っぽい。
竹内茉音(まりん)さんは健康的で手足が長い。
三戸なつめさんの可愛いオーラが凄かった。

風鈴のオチが分かりにくい。本当に数億円の価値があるのか?YouTubeのスピンオフを観ないと分からないのか。

井上ひさしの『雨』と同じく、間違われた男を演じていく内にそこに生き甲斐を感じていくドラマ。他人の望む誰かを演じる過程で自身の心境にも変化が。人は他人の為にだったら変わることが出来る。(本来の自分を表現出来る?)

もう少し粘れば大傑作になった可能性が残るプロット。ありきたりのネタだが勿体無さが残る。話の畳み方を逡巡して明らかに間違えている。誰を主人公として捉えるか、の話。秋子か春子か沢木かテルか?実はヤス目線が正しい気も。先にヤスが仕掛けに気付いておきながら知らん振りしている方法もあった。

島倉千代子『愛のさざなみ』
クランク・イン!

クランク・イン!

森崎事務所M&Oplays

本多劇場(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ゴダールの『軽蔑』を思わせる雰囲気。全編秋山菜津子さんの独壇場。彼女の羽田ゆずるという役名は羽生結弦を連想せずにはいられない(何の関係もないが)。秋山菜津子さんの独り芝居でも成立したであろう世界。彼女の静かなる狂気が美しく奏でられ観客はその世界に浸されていく。
『プラトーン』で有名なサミュエル・バーバー作曲の『弦楽のためのアダージョ』に似た曲が流れ、厭世的な空気を醸成。
香り高き素材だけを並べ、観客の想像力を刺激していく作劇。調理は頭の中で個々に為されなければならない。

主演女優の事故死によって撮影が中止された映画。相手役の秋山菜津子さんを主演に脚本を弄り直し、後はクランク・インを待つばかり。監督(眞島秀和氏)はもてもてで家庭を持ちながらも次々に女優に手を出す女にだらしない昭和型。秋山菜津子さんがくどくど脚本にクレームを付ける為、一向に撮影は始まらない。暇を持て余した女優やマネージャー達はペンションのような宿舎で愚痴を零し噂話を立てる。そんな中、大部屋女優の吉高由里子さんがふらりと顔を見せる。

ネタバレBOX

鈴木清順的な話かと思ったら、そうでもない。類型的な撮影所話なのは勿体無い。石橋穂乃香さんに多大に期待していたのだが、あんまり上手くいっていない。始めはスタッフなのか女優なのかよく分からなかった。吉高由里子さんや富山えり子さんを見下したスタンスの方が判り易い。

全て秋山菜津子さんの妄想だった位が丁度いい。
吉高由里子さんが捲し立てると、坂下千里子に似ている。
「カレル・チャペック〜水の足音〜」

「カレル・チャペック〜水の足音〜」

劇団印象-indian elephant-

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/10 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

死ぬ程面白い。本当に才気が実体化して見える位に圧倒された。チェコの国民的作家であり、SFの礎(日本だと手塚治虫だろう)、カレル・チャペックの18年間の物語。これが何の前知識も必要ない位、面白いドラマに。天才的なシナリオ。
第二次大戦前夜、ナチス・ドイツに併合される前のチェコスロバキア共和国が舞台。誰もがウクライナとロシアを連想せずにはいられない。
シリアスとコミカルのバランスが絶妙で、あれよあれよと言う間に彼等の織り成す人間模様に夢中。
役者陣の配役はズバリ。一人ひとりの内面まで投影したかのよう。

身体の弱い劇作家カレル・チャペック役は二條正士氏。加瀬亮似で格好好くコミカル。
カレルの永遠のマドンナ、野心に燃える女優・オルガ役は今泉舞さん。今回もまた素晴らしい。この人一人である女性の半生の抒情詩を謳い上げてくれる。
同居しているカレルの兄、画家のヨゼフ役は根本大介氏。天才で世界中に名を馳せていく弟への嫉妬心に苛まれる。後にアンネ・フランクと同じナチスの強制収容所で獄死。
ヨゼフの妻、翻訳家のヤルミラ役は岡崎さつきさん。これがまた巧い。複雑な内面を顔の細かな表情で客席に伝える。
その娘、アレナ役は山村茉梨乃さん。赤ん坊から少女まで時の経過を感じさせる。
カレルの親友、軍医で作家のランゲル役は岡田篤弥氏。ハナコの菊田竜大(たつひろ)似。銃を取らざるを得ないユダヤ人の葛藤。
チェコスロバキア共和国の初代大統領で現在も紙幣になる程の国民的英雄・トマーシュ・マサリク役は井上一馬氏。一際重厚で作品の格調を高める。
その息子の外交官、ヤン役は柳内(やない)佑介氏。オルガの恋人でもある。
そして作品の鍵を握る謎のドイツ系女教師ギルベアタ・ゼリガー役は勝田智子さん。彼女の登場で作品世界は不安と妄想と幻影と恐怖に蝕まれていく。

クローネンバーグやテリー・ギリアム、ティム・バートン作品を思わせる不安神経症のヴィジュアル化。カレル・チャペック自身が己の作品内に引きずり込まれていくような不安。何処からともなくピタピタと迫り来る“水の足音“。
絶対に観ておいた方が良い作品。

ネタバレBOX

クライマックス、カレル・チャペックが銃を取った後のオルガとの遣り取りが必見。戦争(暴力)が人を変えていく様をまざまざと見せつけられる。『母 MATKA』の引用。

ガスマスクの山椒魚は石井聰亙っぽいヴィジュアル。近付いてくる“水の足音”の正体は未来の死者達の泣き声。勇壮なスローガンに騙されて何の意味もなく死んでいく、顔を失くした人々。
ラストの感じがあんまり好きじゃない。無理に現在に話を繋げる必要はないのでは。観終わった後、個々の観客が思い巡らせるべき余白の部分。

今作とは関係ない話だが、ラストが現実の政治問題に繋がる作品を多々観てきたが、虚構の無限性を現実に落とし込む為に矮小化したようで白けるばかり。
ウクライナの人々にどんな演劇を観せてもナンセンスだろう。突き付けられた暴力の前で選択肢などないのだから。
きっとこれもリハーサル

きっとこれもリハーサル

エイベックス・エンタテインメント

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/09/29 (木) ~ 2022/10/13 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

石野真子ファンは是非足を運んで頂きたい。石野真子さんの魅力に溢れている作品。葬式コーディネーターのしゅはまはるみさんは『カメ止め』の監督の奥さん役だった!旦那役の羽場裕一氏は見事に助演。9nine以来の川島海荷さんに鈴木福氏、豪華な一家だ。
葬式のマニュアル・ビデオを製作する為、旦那が死んだ体で模擬葬儀の撮影。文句ばかりの死人役の旦那、父親に不信感の子供二人を宥めすかし、石野真子さんの奮闘は続く。非常に魅力的なお母さん。

ネタバレBOX

自分の死期が近いことを予見していた石野真子さん。死ぬ前に家族がわだかまりを捨て心を分かち合えるように願った。愛する旦那、娘、息子、互いが互いを許し合えるように。

もう少し前半に笑いが欲しいところ。もう一捻り工夫が必要か。川島海荷さんのコンテンポラリーダンスは見せるべき。
美しきものの伝説

美しきものの伝説

流山児★事務所

小劇場B1(東京都)

2022/10/05 (水) ~ 2022/10/12 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

YouTubeにアップされている『美しきものの伝説・解説動画』が秀逸。クロポトキン(大杉栄)役・田島亮氏が劇団ひとりのたけしモノマネを駆使して作品の魅力を徹底的に解説。観劇予習として完璧な出来映え。今後こういう作品を上演する際の雛形となることだろう。

クロポトキンはマルクスのパロディTシャツ『I TOLD YOU I WAS RIGHT!(私は正しいと言っただろう! )』姿に金髪でPUNKS風味。そこらの兄ちゃん姉ちゃんが不確定な未来に向かって情熱を燃やす青春群像劇。唐十郎調。

名うてのプレイボーイ大杉栄(田島亮氏)と恋多き情熱家伊藤野枝(山丸莉奈さん)の怒涛の日々。
芸術座を旗揚げした島村抱月(里美和彦氏)とスーパースター松井須磨子(竹本優希さん)の今に語り継がれる悲恋。
この二組が柱。

田島亮氏は偉く格好良く、大正ベル・エポックの破滅型が映える。
1981年まで独り生き延びた暖村(荒畑寒村)役・申大樹(しんだいき)氏の荒野を流離うが如く寂しげな眼差しが印象的。
ルパシカ(小山内薫)役・鈴木幸ニ氏が好き放題。ロシアかぶれの嫌味なインテリをカリカチュアライズ、客席を沸かす。

若き久保栄(十河尭史〈そごうあきふみ〉氏)と島村抱月の『大衆と芸術』に対する討論が白眉。「結局のところ、芸術とは果たして何なのか?」の答がうっすら見えてくる。

「日本は敗戦で滅びた」と仮定して観ると、滅びる宿命の国で若者達が放った一瞬の煌めきのよう。灯滅せんとして光を増す。「アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ」。

ネタバレBOX

①社会主義運動家
幸徳秋水の仇討ちを胸に秘め、四分六(上田和弘氏)、クロポトキン、暖村は売文社で雌伏の日々。

②青鞜社(女性解放運動家)
モナリザ(春はるかさん)、サロメ(橋口佳奈さん)、伊藤野枝は女流文芸雑誌『青鞜』を発行して、女性の意識改革を啓蒙。

③新劇運動家
世界標準の劇作を目指して、坪内逍遥と島村抱月が文芸協会を設立。不倫スキャンダルで島村抱月と松井須磨子は脱退し芸術座を創立。ルパシカは自由劇場を結成。“芸術性”と“大衆性”の葛藤。ロマン・ロランの『民衆演劇論』が大きな影響を齎す。

休憩中、女性客が「隣の男性がマスクをちょこちょこずらしている」と騒ぎ立て係員が取りなすスケッチ。げんなりしたムードの空間、スタッフが「本日は初日です!」と観客を盛り上げて力技で第二幕に繋げた。お見事!

シーンシーンは美しく決まるのだが、何か流れが途切れ途切れ。狂おしく鮮烈な美しき生き様を観客は欲している。下手な説明をぶった斬って絵で叩き付けて欲しい。松井須磨子と伊藤野枝に解説は不要。理解不能のまま、ただ呆然と眺めていたい。松井須磨子の遺書は素晴らしかった。
住所まちがい

住所まちがい

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2022/09/26 (月) ~ 2022/10/08 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「暁精密機械製造工業(?)」が気になった。
客席通路を駆け回る仲村トオル氏は脚が長く細くてカッコイイ。でも舞台向きじゃないような。田中哲司氏のキャラ作りは矢鱈凄かった。渡辺いっけい氏の脇汗が凄まじい。服が見る見るうちに染みていく程の凄い熱演。

ネタバレBOX

別々の住所に着いた筈が皆ビルの7階の同じ部屋(第七天国?)に辿り着く。しかもエレベーターもない。間違えたと思い、引き返して住所を確認しても矢張りここで間違いない。社長(仲村トオル氏)、公安〈警部?〉(渡辺いっけい氏)、教授(田中哲司氏)の3人。不思議なことに自分の入ってきたドア以外開かない。他のルートでは帰れない。冷蔵庫を開ければ自分の望んだものが何でも出てくる。一度出て行った教授は土砂降りの雨に打たれて戻って来る。そこに大気汚染(?)の警報が鳴り、街は戒厳令が敷かれて電気の使用すら制限されることに。

イタリア戯曲を日本に無理矢理置き換え、これが上手くいっていない。原作の大尉を警察から出向して秘密裏の職務に就いている公安に改変。社長が密会する女と面識がないのも不可解。出会い系か?警報で外出禁止令の世情も腑に落ちない。
死生観がテーマなのだが日本人の感覚に合致していないのでまるで絵空事。無理に盛り塩を入れたりもおかしい。

自分的にはかなりつまらなかった。前の方だったが前半結構寝ている人がいた。朝海ひかるさんの登場から皆集中して観る感じ。待ちかねた朝海ひかるさんは志村けんのコントの研ナオコまんまの掃除婦、床からセリで登場。観客愕然。このおばちゃんの正体は一体何なのか、聖母マリアなのか、皆ハラハラ見守る。何気ない一言一言にもこじつけのような深い考察を入れて。
死の前の休憩所みたいな設定で、解釈は色々可能。ラストの朝海ひかるさんの神々しい美しさに救われた。

3人は渡辺「仲村」、仲村「田中」、田中「渡辺」と名乗る。電話帳(死者リスト?)にも名前は載っているがラストで皆本人の名に戻っている。偽名を使っていたというギャグだったのかもよく判らない。最後の審判を免れて、それぞれの扉で帰って行くも外の扉の鍵が閉まっていて戻って来る。一度助かったと安堵してからの絶望。

中盤、田中哲司氏が渡辺いっけい氏のドアを開けてみることに成功する。この部屋のルールは心の思い込み次第という解釈をしたのだが、それも判然としない。

多分スッキリとした解答などなく、モヤモヤした感覚で手探りで生きるのが人生ということなのだろう。劇中の3人の会話もずっとモヤモヤしているだけ。何もハッキリしたものはない不条理な世界。
『ワルプルギスの夜』

『ワルプルギスの夜』

劇団Q+

萬劇場(東京都)

2022/09/29 (木) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

チームB

「ワルプルギスの夜」もしくは「ヴァルプルギスの夜」とは、死者と生者の境目が弱くなる特別な夜。魔女達がブロッケン山でお祭り騒ぎをすると云う。
80年代の小劇場にタイムスリップしたかのような舞台。世界観はレトロSF風味で、『フラッシュ・ゴードン』やらあの辺の安っぽい未来世界が心地好く、観てると段々時空概念が狂ってくる。選曲のセンスも良い。凄くちゃっちいヴィジュアルが一周回って魅力的。

地球が核戦争で滅んで千年後、一部の人類は月と金星と火星に逃れて生き延びていた。地球の陸地は水没し、人の住めない真っ青な惑星。舞台は地球の観測をずっと続けてきた月のコロニー。ミュータントのような奇形な道化達がかつての地球の昔話を伝えて走り回って遊ぶ。はるさん演じる「兎頭」と呼ばれる道化がキーパーソン。双子のレーナ(小泉愛美香さん)とミーア(藤咲優希さん)が奇抜なファッションとメイクで踊りまくり、松田桜さん演じるバレリーナは皆の間を縫って舞う。月人類の口調が何故か花魁詞(おいらんことば)で『ありんす』調。お洒落なPUNKSファッションの観測員達。
そんな中、火星から探査船に乗って数百年振りに3人の火星人類がやって来る。

柳本璃音さん演じる見習い観測員リエットが魅力的。若い頃のマリアンみたいにキラキラしていた。
火星からやって来た考古学者ルベリオ役は佳乃香澄さん、上品。
同じくサンダー役は和泉涼太氏。演技も演出もキャラも“THE 80年代”といった暑苦しさ。
月の女王ユリウス役の神野(じんの)美奈実さんは声色を使い分けてムードを高める。

デヴィッド・ボウイの名曲が高らかに鳴り響き、真っ当、誠実でスタンダードなSFが語られる。レイ・ブラッドベリ風味のラストも美しい。凄く好きな感じの脚本。

ネタバレBOX

『スターマン』
「空ではスターマンが待っていて
 彼は“それを無駄にしてしまうな”と言っている
 その全てに価値があることを彼は知っているのさ」

デヴィッド・ボウイが亡くなった頃に日本公開されたマット・デイモン主演の『オデッセイ』。見せ場でこの曲が一曲丸々大音量で流され、観客は皆涙ぐんだもの。ボウイの息子のダンカン・ジョーンズが撮った『月に囚われた男』なんて映画もあった。

金星は滅び、火星と月の見通しも暗い。地球の再生を願い、探査船で調査に降り立ったルベリオとリエット。しかし地球はすでに完全に滅び、死の星と化していた。絶望的な現実を前に、女王ユリウスは地球に遺してきた全ての魂に懺悔して息絶える。そこに解読された金星人類からの最後の通信が読み上げられる。それは聖書の一節のような讃美歌のような荘厳な詩。『希望は自身の胸の中にこそある。暗闇を自らの希望の炎で照らし出せ』。

「兎頭」の死など雑な展開もあるが、デヴィッド・ボウイの歌で掻き消された。
あゆみ

あゆみ

果報プロデュース

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

これは観ておいた方がいい。名前だけは知っていたのだが、成程よく出来た戯曲。柴幸男(ゆきお)本人の演出。他の様々なバージョンも観たくなる。客席二面に挟まれた素舞台、非常に観易い。

登山の格好の前田綾さんの周りに7人の女性(石森美咲さん、稲田ひかるさん、井上みなみさん、小口ふみかさん、田久保柚香さん、橘花梨さん、山本沙羅さん〈プロデューサーも兼ねている〉)。
「初めのいーっぽ!」
主人公の半生の記憶をありとあらゆるやり方を使って7人が演じ続ける。それを椅子に腰掛けて静かに見つめる前田綾さん。胸が痛む描写の数々。母親とはぐれて迷子になって不安で不安で泣き出しそうで、やっと見つけた母親の姿。
BJCの『車泥棒』のような気持ち。
「楽しい遊園地の中で迷子になった小さな子供がお母さん  を探す気持ちは真実。
 多分宇宙の形はその母親が子供を抱き締めた時に湧いてくる気持ちに似ているんだろう。」

顔と名前が一致したのが橘花梨さんだけ。小口ふみかさんは何となくそうじゃないかと思っていた。他の方はかなり見覚えがあるのに名前が出て来ない。人の名前を覚えるのは大変だ。

非常に演劇的でありつつ、物語は映画向き。細切れのエピソードが粉雪のように降り積もる。記憶の雪で辺り一面が真っ白。雪塗れの前田綾さんと観客は自分の映画を観ている。

ネタバレBOX

幼馴染の梅原、仔犬のコロ、尾崎さんをハブったトラウマ、田辺先輩への初恋、母親との上京、会社の後輩・前田との飲み会、結婚式の練習、あゆみを出産、母の死、独り登山。

主人公、中野あみっていうのか!?
中野亜美さんはアンダースタディ(もしもの代役)として物販に立っている。

ラストはあゆみの唐揚げで終わった方が綺麗。そこからのエピローグが余り好きじゃない。

何故だか松任谷由実の『Hello, my friend』が脳裏に流れていた。
世界が朝を知ろうとも

世界が朝を知ろうとも

劇団papercraft

すみだパークギャラリーささや(東京都)

2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

Aチーム

存在意義を喪失すると、その人は“虫”になってしまう世界。カフカの『変身』なんかを連想し、頭の中にはスターリンの『虫』なんかが流れてくる。
「虫になったらよろしく」

A 葛堂(かどう)里奈さんの独り芝居。小4の時、保健室で先生が気付くと虫(コオロギ)になっていた。パニックで踏み潰してしまったトラウマ。「虫になんかなってたまるか」と生きてきたつもりだったが・・・。篠原涼子に小雪を混ぜて不幸にした感じの雰囲気、熟練した技術。彼女はラブホに向かっている。

B 女子大生2人がラブホで秘密の作業。お互い四年で進路もちらつく。井上向日葵さんと清田みくりさん。

C 久々に訪れたラブホで深刻な痴話喧嘩。前田悠雅さんと緒形りょう氏。前田悠雅さんはハーフっぽい。木の実ナナの若い頃を感じさせる。

ギターをぶら下げて突然登場する紫野さんがカッコイイ。これならもうずっと部屋の片隅でギターを弄っていた方が良い。

ちなみに『前田悠雅バースデーイベント2022』会場・渋谷DESEO mini 2022/10/23(日)のチケットは絶賛発売中。

ネタバレBOX

人間が虫化する為、全ての虫の採集や売買は禁じられている世界。この設定が判り辛い。特殊な虫として別種にすべき。そうした方が“人間虫”が商品になる、非合法な基盤が出来る。どれだけ罪が重いのかもよく解らないので女子大生の口論にも深刻さがない。警察ではなく、被害者の家族に報復されるべき。

葛堂里奈さんのイカれた旦那は登場させた方がいい。
逆に前田悠雅さんのネタは独り芝居の方が合うのでは。
三つのエピソードが交差しないのであればラブホ縛りの意味もない。

演出を別の人に託した方が良い。笑いのセンスがなさすぎて、地獄のような会場。ネタ自体は馬鹿馬鹿しくて結構笑いをまぶしているのに、お通夜のような重苦しい雰囲気が延々続く。テンポよくリズミカルに演ればこんなに長くはならないホン。前田悠雅さんと緒形りょう氏の痴話喧嘩も早回しで充分。女子大生二人のエピソードは本筋に絡めるべき、これじゃ只の引き延ばし。散々笑わせておきながら、ふっと憂鬱で残酷な世界と向き合わせゾッとさせるべき題材。ワークショップじゃないんだから、役者のナルシシズムなんか誰も興味ない。

実は狂った女の妄想だった的な匂わせもあるが、それも要らない。
ドードーが落下する

ドードーが落下する

劇団た組

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2022/09/21 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

令和版『男女7人夏物語』、コミカライズなら根本敬御大に、主題歌はBJCの『ディズニーランドへ』。
ラストが痛快。タランティーノ製作総指揮のオムニバス映画『フォー・ルームス』風味。ブライアン・デ・パルマの『ファム・ファタール』を観た後の昂揚に近い。こりゃ酷い、最高だ!

売れない漫才コンビの片割れ、夏目(平原テツ氏)はファンの子と結婚しその実家に居候、ビストロでバイトの38歳。イベンターの信也(藤原季節氏)や他のお笑い芸人、ちょっと売れているアイドルなんかとワイワイ集まるのが憂さ晴らし。「いつか世間に見つかってやる」を合言葉に日々をやり過ごしている。そんな彼が突然失踪した3年前からの話。

夏目役が平原テツ氏だと判らずに、浜野謙太?と思って観ていた。知ってびっくり。この役を演るのはキツイ。凄い俳優。今作が代表作になるのでは。
安川まりさんが松岡茉優っぽくて可愛かった。
秋乃ゆにさんのキャラもリアル。

『ルージュの伝言』のカラオケシーンが美しい。松任谷由実の明るく躍動的なリズムとメロディーで賑やかにノリまくる面々、それとは裏腹のメランコリックな歌詞が遠く懐かしき記憶を刺激し鈍い痛みが走る。

言葉一つ足りない位で全部壊れてしまうような
か弱い絆ばかりじゃないだろう
B'z 『HOME』

友情なんて言葉では括れない、信也と夏目のギリギリの関係。「お前は俺の人生の登場人物であり、俺はお前の人生の登場人物なんだ。そう簡単にこの話を終わらせてなるものか!」涙ぐむ藤原季節氏、言語化出来ないエモーション。観ている誰もが今までに喪失した人間関係を想い起こしヒリヒリする。

唇噛み締めて自分の無力さになす術もなく泣いた悔しさ
身体半分持ってかれるような別れの痛みとその寂しさ
amazarashi『奇跡』

タイトルのドードーとは、モーリシャス島に生息していた鳥。天敵のいない楽園のような孤島で繁殖していた為、空も飛べず警戒心もない。人間の上陸によって乱獲され、83年で絶滅した。
絶滅すべき種の前で為す術もなく、それでも必死に無意味に足掻く。

間に合うかも知れない 駄目かも知れない
約束した訳じゃない 会えないかも知れない
橘いずみ『まにあうかもしれない』

ネタバレBOX

中学の頃から統合失調症を薬で抑えてきた夏目。薬を飲まなくなって幻聴が聴こえ出す。奇行を重ね、警察に捕まり強制入院。コンビも解散し、奥さんとも離婚。売れない病気持ちの芸人を相手にする人の方が珍しい。

『アル中地獄(クライシス)』という実録本の中に、著者(邦山照彦氏)が精神病院に入院している時のエピソードがある。脳味噌が吹っ飛ぶ幻覚に襲われた著者、必死に床に這いつくばり泣きながら破片を拾い集める。他の二十数名もの患者が三時間近くそれに協力してくれる。他人の幻覚に親身になって付き合ってやる優しさ。

「ちゃんとやらなきゃ、でしょ。」
クライマックス、夏目と信也のお馴染み不毛な敬語の口論が開幕。普通なら途中でタメ口に変わり感情をぶつけ合う汚い言葉の怒鳴り合い、その展開をスレスレで回避。こういうセンスがずば抜けている。

最後まで藤原季節氏が善人だったのでホッとした。久方振りに彼の役に好感を持てた。
縁を切る側だったり切られる側だったり、必ず誰もの胸が痛み出す。

欲を言えばキャスティングをオールスターで固めて欲しかった。演劇ファンが唸る豪華配役でこそこれをやるべき。キャスティングから作品だと言わんばかりに野田秀樹系の上客を集めに集めてやるべきネタ。広瀬すずとか無駄に使ってこれをやる狂気。

無論、自分のような客層に受けても未来はない。次作は生真面目な女性客と真摯に向き合って欲しい。
コマギレ

コマギレ

ラビット番長

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2022/09/22 (木) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

開場前から長い行列が出来、皆(?)スマホで将棋を指しているような凄い絵面。
藤井聡太監修の伊右衛門ペットボトルを観客全員にプレゼントの太っ腹。

将棋のプロ棋士(六段)・熊谷学、演ずるは井保三兎氏。両親のいない貧しい家庭で育ち、何とかプロ(四段)になるも今は負け続き。史上最弱のプロとしてネットで妙な人気を得ている。
その弟子、女性で初めてプロ棋士となった天野桂子(岡本美歌さん)。彼女の凛とした美しさと関西弁が女流棋士っぽく魅力に溢れる見事な配役。(現実世界では里見香奈女流五冠が棋士編入試験を今まさに行なっているところ、未だ達成されていない)。

熊谷一門の道場は毎日弟子が遊びに来て、豚肉のカレーライスとコーヒーでおもてなし。出世頭の郷田竜王(渡辺あつし氏)、マスコミ大注目のスター、天野桂子・香子(鈴木彩愛さん)姉妹。そんなある日、桂子が脳梗塞で倒れてしまう。退院後、復帰をするもどうも後遺症が残ってしまい・・・。

流石によく出来ている。後半からの盛り上がりが凄い。熊谷の幼少時代のエピソードをシルエットで再現するセンス。天野役の鈴木康平氏と友人役の門地ジル子さんが実に巧い。『無法松の一生』の回想シーンを思い出した。ぐっと感情移入させておいて山田洋次流の落としで笑わせるテクニック。いつのまにかに劇場は熊谷師匠の心の風景の中に、観客はその安らぎに身を委ねてしまっていた。
昔、Kioskで毎週『週刊将棋』を買っていた頃の気持ちを思い出した。

江崎香澄さんと鈴木彩愛(あやめ)さんはスピンオフで観たい程キャラが立っていた。

ネタバレBOX

「○○? 強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ。だけど・・・、オイラ(俺は)負けないよ。」
「えー、こまたっ、駒達が躍動するオイラ(俺)の将棋を、皆さんに見せたいね。」
佐藤紳哉棋士の名台詞を橋本崇載棋士がパロり、『ハチワンダイバー』にも載った定番ネタ。
将棋連盟会長役の野崎保氏が見事に決めてみせた。

中盤まではよくある話であんまり嵌まれず。熊谷の幼少時代、天野と仲良くなるエピソードあたりからぐっと来た。貧乏で勉強も運動も駄目な気弱な子供、唯一の武器が祖父から習った将棋だった。ガキ大将の天野に認められ、片道二時間以上列車に揺られ神戸の将棋大会へ。中学生達を相手に優勝してしまう。天野の家でお母さんに振る舞われた豚肉の入ったカレーライス。初めて食べたカレーライスが美味しすぎて涙を零す。ずっと自分を応援し続けてくれた天野は早逝し、忘れ形見の娘二人を我が子のように可愛がることに。

意識が途中で途切れてしまう、棋士としては致命的な桂子の後遺症。手番が分からなくなり、二手指しを繰り返して敗れ続ける。タイトルは「駒切れ」かと思わせて、意識の「細切れ」とは成程。
クライマックス、師匠から弟子に思い入れのある大事な扇子を譲ったように見せ、いざ対局中にそれを広げてみると『キフよめ』。慌てて記録係から棋譜を見せて貰い確認する桂子。自身の引退を賭けて対局に臨んでいる女流名人(山本綾さん)が桂子の二手指しを自ら制する名シーンと合わさって今作の肝、胸に焼き付く。
エピローグ、漫画家(野田あゆみさん)が完成した雑誌を皆の前でお披露目、巻頭カラーの美しい見開きに熊谷・桂子の師弟対決。狙い通りの畳み掛けがズバリ決まって大喝采。
深刻な後遺症すら呑気に受け流す熊谷師匠の楽天的な人生観、アイディアの大勝利。
君と約束した桜色の中で

君と約束した桜色の中で

劇団えのぐ

萬劇場(東京都)

2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

劇団えのぐは4年前の『紅姫物語』以来。何となく好印象。少女漫画なのだが、門戸が広い感じ。
昔々人間と鬼とが共存している領地の話。鬼をインディアン(ネイティヴ・アメリカン)や黒人のように視覚的にハッキリと区別が出来る別人種と捉えると理解し易い。
そこでは人間と鬼との種族を超えた信頼関係や恋愛がある。けれど他の領地の人民からは理解されず異質な連中ということで偏見の目を向けられている。穀物の不作で領地に飢饉が迫っていく。

鬼はバッファローマンのような角と、頬にそれぞれの幾何学模様のペイントがクール。
驚くのは殺陣が本格的で、ツイ・ハークばり。富野由悠季風味のチャンバラしながらの理論闘争なんかも欲しかった。男の子役の環幸乃さんがまさに適役。純真無垢な役は嵌まる。

絶望的な現実を前にし、恋人達はせめて来世での約束を交わすだろう。そんな約束がいつか果たされる日が訪れるのだろうか?

ネタバレBOX

勿体無いのは構成。実録ドキュメント風味で語るべき作品。全員登場人物が良い奴なのも欠点。もっと残酷で醜いからこそ、恋人達の約束が尊く浮かび上がる。鬼をファンタジーではなく、比喩として描いた方がよかった。(分かる人には分かるように)。

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