デラシネ 公演情報 鵺的(ぬえてき)「デラシネ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    いや、参った。高木登氏の才能にひれ伏す。これを否定するのは嘘になる。メチャクチャ好きな話。
    2012年指原莉乃主演の『ミューズの鏡』という深夜ドラマがあった。福田雄一作品で『ガラスの仮面』を大映ドラマ調に展開。ツッコミのない笑い(ツッコミは視聴者各個人の裁量)。このスタンスが受けて福田雄一は成り上がっていく。竹熊健太郎✕相原コージの『サルまん』信者の自分としてはこの手の作品には弱い。今作は美内すずえや梶原一騎の大真面目にイカれているスポ根漫画風味。(『男の条件』なんかも機会があれば読んで貰いたい)。脚本家養成ギブスなんか着けてもよかった。海原雄山のようにがなり立てる佐瀬弘幸氏が痛快。これだけ怒声を上げる舞台もないだろう。弟子が全員若い女というところも素晴らしい。

    才能を認められ大御所脚本家(佐瀬弘幸氏)の内弟子に抜擢された木下愛華(まなか)さん、声が魅力的。屋敷に住み込みとなる。憧れの先輩、とみやまあゆみさんに挨拶。このクールな眼鏡の天才脚本家(師匠のゴースト)は無機質な抑揚のないボカロのような話し方。とにかくキャラが立っている。アニメだったら同人誌が放っておかないだろう。松井玲奈みたいでカッコイイ。
    才能もないくせに脚本家の愛人になって成り上がった高橋恭子さん。この人も魅力に溢れている。おっとりした上品な雰囲気。
    才能はないが毒舌でゴシップ好きな小崎愛美理(えみり)さん。
    マネージャー役の田中千佳子さん、ドラマのプロデューサー役の川田希さん、時々丸い内窓から顔を覗かせる奥さん役は米内山陽子さん。(本物の脚本家、『インディヴィジュアル・ライセンス』が素晴らしかった)。
    時折、客席に語りかけもする娘役は未浜杏梨さん。コスプレ三昧。
    亡くなった天才脚本家役は中村貴子さん。
    ドラマのトップ女優役は堤千穂さん。

    女性の描き方、筆運びにセンス有り。キャラ一人一人が立っている。ちゃんと内面があり、自分なりの哲学で生きている。

    ある企みをもった木下愛華さんが奇妙な屋敷に潜入する様子は『青ひげ公の城』。一体そこで彼女は何を体験するのか?

    とみやまあゆみさんが最高!

    ネタバレBOX

    百花亜希さんのnote、『注文の多い百花店』の「祈りとメッセージ」が原案だと勝手に自分は思っている。皆知っていたけれど「そんなものだ」とどこかで肯定していたこと。大きな騒ぎになるまで(自分の身に危険が及ぶまで)知らんぷり。そしてその異常な世界の日々を完全に憎むことも出来ない。
    脱会した宗教団体への複雑な思いにも似た。

    『男の条件』とはスポ根版『まんが道』。漫画家になる為の修行として空き地で紙芝居をやって子供達の反応を掴む主人公達。ヤクザにさらわれ監禁され、「(引きこもりの)弟がそれを見て何の反応も示さなければ腕を斬り落とす!」と日本刀を突き付けられる。ずっとそんな調子。

    堤千穂さんがちょっとミスキャストな感じ。演技は文句無いのだが、ワンクッション入れる為ならばもっと違う感じの人が演じるキャラのような気がする。

    ラスト辺りがいろんな方面の観客に気を遣ってる感じでだらだらしてしまう。延々説明が続く感じが好きではない。(性格的にちゃんとしたい人なのだろう)。追い詰められ全てを失った佐瀬弘幸氏が逆に悪魔的な魅力に溢れ生き生きとしていく。三國連太郎、緒形拳の系譜。木下愛華さんの書いたシナリオの中だった的な仕掛けは良かった。
    筒井康隆の『邪眼鳥』を舞台化して欲しい。

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    2023/03/12 07:39

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