Dの観てきた!クチコミ一覧

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『Re:FT-リフト-』

『Re:FT-リフト-』

プロデュースユニット四方八方

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/08/17 (火) ~ 2010/08/24 (火)公演終了

若い。
話は3演目の中で一番分かりやすかった。とはいえ、がっつり物語で勝負できるだけ脚本が強固って事でもなく。登場人物の横の繋がりがほとんどないし、ファンタジーといえど説得力に欠ける部分が多かった。
同じ内容の芝居を同じレベルで30代の人がやってるのを観たら多分オレ怒ります。勝手ながら高校演劇の延長線上だなという印象。貶してはいないので誤解なき様。順当な道でここまできたのだなという感じです。ここからどう変わっていくのかが楽しみなのです。

ネタバレBOX

宗教について自分も不勉強なのですが、教祖を『教祖様!』と呼んで崇めはしないと思うのです。何か名前があるはずで。名前じゃないとしても『先生!』とか一般的に使われる呼び方であっても、『それってその団体内でのその言葉の意味って何か違うよね』って感じさせる異質なもののはずで。とか、他にも人物が記号的になっているなぁという印象。
自己再生のテーマ

自己再生のテーマ

激情コミュニティ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/08/17 (火) ~ 2010/08/24 (火)公演終了

ようやく。
旗揚げから気にしていた激情コミュニティが観られたのが今回のポイント。本公演では内面的な暗さがもっと出る作風なのかなとか勝手に想像してるのですが、どうなんでしょうか。
ひとまず今回は距離の話。実際的な距離、人と人の繋がりとしての距離。話というよりは表現。身体を使って内面を見せるという、ある意味で矛盾していて全部揃っている見せ方。個人的には30分でちょうど良かった。これが90分とかになったら他の要素も入れてくるとは思うけど。

TangPeng30 Bグループ公演

TangPeng30 Bグループ公演

TangPeng30 Bグループ

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/08/17 (火) ~ 2010/08/24 (火)公演終了

学生演劇。
「学生演劇」というとどうも聞こえが悪い。サークル活動の延長に思えるからだろうか。しかし、学生って事は正に学んでる最中の彼らな訳で。自分でやってみたくもなるだろうし、これからどう育っていくのかの注目株。
各団体のページが出来ていたので各々についてはそちらでコメントします。

ネタバレBOX

個人的には上演順を「激情コミュニティ」⇒「劇団総合藝術会議」⇒「プロデュースユニット四方八方」にして欲しかった。頭でかっちりしたものをやっていおいて、飛び道具を出して、最後に分かりやすい物語系で締める。全団体にメリットがあるのはこの並びだった気がする。「劇団総合藝術会議」は好き嫌いが分かれる作風だからラストにすると嫌な余韻で帰宅する客も絶対にいたと思う。分かりやすい作品からやろうとか日芸が並ばない様にとか思案はあったろうけども。
今回最も気になった点。音響、あれでいいのか? どの演目もBGMが普通にJ-POPで歌ありだった。ネタ元がすぐに分かっちゃうから既存イメージが邪魔して純粋に作品が観られないし、人によっては知らない曲だったとしても歌詞が邪魔でやっぱり純粋に作品が観られない。どうも「なんか音楽を適当に入れておけば演劇っぽくなるから入れてみました。別にこだわりはありません」と言われている様な気持ちになりました。
頑張れと応援したい。見守っているというだけでなく、「もっと頑張れ」と尻を蹴り飛ばしたい。個人的にはど真ん中の作風じゃないけど、同世代のロロのほうが頑張ってるぞ。もし彼らが出てきたら最優秀賞を楽に取ったと思う。
反重力エンピツ(再演)

反重力エンピツ(再演)

国道五十八号戦線

サンモールスタジオ(東京都)

2010/07/23 (金) ~ 2010/08/01 (日)公演終了

何が一番重いのか。
劇中で明かされるその答えは彼らの今回への胸中も示すかの如く。
観に行くまでは前々回公演の再演は尚早と思っていましたが、これはこれでアリだったのかもしれない。少なくともそう思い直せるだけの作品でした。行くか考慮中ならばとりあえず行っておいて損はないかと。出来的に、これが58初見でも特に問題ないかと。
演目を変更しながら無理なキャスティングがなかったのが幸いでした。役者に当たり外れなくきっちり仕事を振り分けられていて各々がしっかりこなしていました。「役を身に落とす」「台詞が腑に落ちる」という意味では堀さん(DULL-COLORED POP)が抜群に良かった。「根付いていた」と思います。58へ何度も客演している加賀美さん(青春事情)もしっかり安定。登場の度に場の空気を換える様な存在を維持して、話の先導役をこなしていた。藤尾さん(犬と串)は後半から一段上がった感じ。
彼らの作品は脚本の時点でかなりの強固さがある。今回不在の友寄さんの存在も何処かに見えた気がしました。きっとこれからまだ育ちながら安定していくはず。ロングラン。彼らにとっての体感距離が当初より延びているだろうと邪推しつつ、しっかり駆け抜けて欲しいところ。

ネタバレBOX

M0(開演時に初めに鳴るBGM)の最大値がもっと大きくても良い気が。客席の人々の覚感を一体断ち切る為に暗転で視力を奪って音響で聴力を奪うならば。個人的には楽に聴ける範中だった。
劇中で何度か挿入されるハマカワと伊神(役名なので敬称略)の場面。初演に比べると前後の場面との落差をあえて付けておらず、これが初見の人にどう見えるものなのか。原行用紙に書かれる小説との二重構造に思うのか、ただ単に前の場面の延長に思うのか。自分は初演を観て話を知っているので前者と捉えながら観ましたが。
身内客がどうとかの話じゃなくて。個人的に「え?今、面白い事言った?」と思う様な時に笑う方がいました。自分と全然ツボの違う人が観に来るくらい58の客層が広がっていっているのかと。
恋する剥製

恋する剥製

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/06/22 (火) ~ 2010/07/04 (日)公演終了

デタラメ。
演劇でデタラメを題材にする。それ自体がネタだし、デタラメ。ギャグにもシリアスにも行けるのをクロムはやっぱりギャグに仕立て上げていました。社会風刺が入りながらも分かりやすくてワクワク出来る。気軽に勧められますね。お子さんにとってのハンバーグくらいハズレがない。
魅力的は役者も多い中、個人的には女優にパワー型が多いのが印象的。女優でパワー型って言ったら普段の姿もインパクトの強い方を想像するじゃないですか。二文字で言えばブ…ゲフゲフン。クロムの場合はみんな可愛いらしいさがあるんですよね。なんかズルい。何がズルいかは分かんない。憧れと紙一重の僻みみたいなもんです。
対して男優は良い意味で癖のある人が多かったかな。普通の芝居で一人か二人の盛り上げ役がいっぱいいる感じ。誰を観てても楽しめる。
掘り下げて欲しい登場人物もたくさんいたけど、多分それは愛故。その人物が気になるからもっと知りたくなったのであって、知ったら本編がより楽しめたかって言うとあんまり変わらなかった気もする。目の前で起きている事を観てれば充分に楽しかった。ザ エンタメ。

ネタバレBOX

ラストは『これで終わり?』と思う人もいるかも。でも思い返したら別にそれで不満もないはず。ザ デタラメエンタメ。
Wannabe

Wannabe

柿喰う客

アトリエ春風舎(東京都)

2010/06/29 (火) ~ 2010/07/19 (月)公演終了

何が起きていたんだろう。
あ、深い意味じゃないです。自分が遅刻してしまったのです。すみません。観られなかった間に話の流れとして何が起きていたのかは想像が付くけど、それをどう表現していたのかが気になる。確かめにもう一度行きたい。
普段の圧倒的な勢いで押して来る柿とはちょっと違う感じ。でも「圧倒的な勢い」ではない別のもので押された感覚がありました。張り詰めた空気に居場所を狭められた様な。

ネタバレBOX

みささん、それはネタバレな気がします。
はははなし【ご来場ありがとうございました!】

はははなし【ご来場ありがとうございました!】

劇団森

早稲田大学学生会館(東京都)

2010/06/24 (木) ~ 2010/06/27 (日)公演終了

面倒。
人間関係とかそれこそ家族とかって面倒なものです。分かってるのに維持したかったり踏み込んだりするのは、何かを求めるから。
言動よりも行動に重きが感じられる演目だったのは個人的に好きな部分。物語の説明ではなく、目の前に存在する事への説得力。だからこそ役者の立ち振る舞いにも出来不出来が如実に表れていたかと。三人芝居で出ずっぱりだから疲弊するし、特にやりながら精神的に波に乗せるのが難しいだろうなとも。上演時間65分は正確な限界値だった気がする。
違う人数でやったり構成を変えたり、可能性のある演目にも思えました。そういう意味では今後また何かの形で観てみたい気持ちもそそられて。

ネタバレBOX

選曲に違和感。COLTEMONIKHAは合ってたけど、Capsuleはちょっとね。人間の熱を感じる音であって欲しかった。
幸せを踏みにじる幸せ【公演終了!ご来場誠にありがとうございました】

幸せを踏みにじる幸せ【公演終了!ご来場誠にありがとうございました】

ジェットラグ

タイニイアリス(東京都)

2010/05/28 (金) ~ 2010/05/31 (月)公演終了

お前の幸せはオレの不幸せ。
なんて台詞はありませんでしたが、そういう様な事を思ってしまう場面ってありますよね。なんでこいつ笑ってんだろ。お前がいなきゃ楽なのに、死ねよ。とか。絶対そんなの口に出しちゃいけないし、口に出しちゃいけないと思ってるし。でも結局はシンプルに言葉にしようとしたらそう言いたくなってる時。その癖に「お前もっと生きろよ」って本音で思う事は少ないのってなんか空しい。理由は良くわかんないけど死んだらだめだと思うから、自分の気分が悪いから自分を正当化したいから「生きろ」って言うだけ。実際はそんな。
谷賢一本人がジャック・ケッチャッム好きであるのを知っているからか、少なからず意識はしたのだろうなという感じ。そこに彼特有の悪ふざけ要素を追加するとこうなるのか。
この面子だもの、もう誰の演技が良かったとかいちいち挙げてらんない。みんな仕事をこなしていました。「あ、なんだ。よく名前を見てたし、この人もっと凄いのかと思ってた。大した事ないな。なんで評価が高いんだろ」という個人的感想はありました。それもまぁ「お前の幸せはオレの不幸せ」みたいなもんです。あえて挙げるとすれば、我妻さんの声が最高に良かった。演技どうこうじゃなくて、声。そそられた。萌えたのとは違くて男としてのそそられであり、自分自身は完全にドMでありますが米粒ほどあったらしいS心を刺激してくれました。

ネタバレBOX

あえてコミュニケーションに不具合を起こしたかったであろう冒頭のいずみと幸子の場面はちょっと成立してなかった様に思う。成立しない事を成立させたかったんだろうけど、それにしても成立してなかった。違和感があったのだけど、それは「この人どうしたんだろう」っていう違和感じゃなく「この演技は何だろう」のほうだった。
最初に笑ったのは平岡の長台詞だったか。あと、右ひじにもアップリケがあるのを見付けた瞬間。いかれた人物として登場した割にはそこまでいかれてなかった。かといって統合失調症という件があったからって別の人格がどうのってのは押し出さないでくてれて良かったんだけど。ストレスを別人格へ逃がすっていうのが出来ちゃうと自殺しないだろうし。
動物をぬいぐるみなどで代用するのはダルカラでもやってますね。そういう挿げ替えは「ま、演劇だし」で許せる。逆に、猪熊の包丁だかナイフだかが本物でない事に対しては「おい、嘘つくなよ」と思ってしまった。切り付ける振りして切ってない。え、血が出てないじゃん。痛くないじゃん。耳を切ろうするのは自分がいた位置から反対の耳だったので、見えない分「どうなっているのか」を想像で補って怖くなれた。けれど。
修の台詞は松岡修造botからでも拾ったんだろうか?
ちょっとここ電波届かないから

ちょっとここ電波届かないから

早稲田大学演劇倶楽部

早稲田大学学生会館(東京都)

2010/05/27 (木) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

という事で、仕事を休んで観に行った。
ネットで集まったらしい人々が穴の中で共同生活してて、振ったり振られたりその輪の中に入れてもらえてなかったり。我がままでいい加減でみすぼらしくて可愛い人々のあれこれ。
なんでこれだけめちゃくちゃやって破綻しないのだろう。意味のない部分がたくさんあって、同じくらい意味のある部分もたくさんある。役者の上手い下手にも差はあるものの、みんな全力なのが良い。頑張ってるという言葉で表すと安っぽいから使いたくない。一回やったら体の変なところが痛くなってそうな不器用な頑張り方と器用にやっている。元も子もないけど、演劇以外の何か生活に役立つ事にこの精力を注いだら充分に何か達成出来ると思う。のに、あえてそれを演劇に注いでいるのが素敵。褒め言葉として、馬鹿と言いたい。ばーかばーか。

ネタバレBOX

電波なひと、という意味もあったのかな?それが外界と断絶された生活で圏外になってるから面倒なやり取りをしないで済んでいられたみたいな。
ヤクルトのお兄さんは空気を読めないキャラで通すのかと思ったので、途中から結構普通に見えてしまいましたね。
トロッコとかよく作ったな…。すっかり騙されたけどあれ別にいらねーし。最後のシーンのほうでは比重がある様に思えて、でもよくよく考えるとトロッコ自体には何の思い入れも沸いてない。のに、なんか良かったと思わされたのは完全に騙されていた。
「TOTO-!」とか、楽しい。ちょっとろりえっぽい。悪くはない。直属の後輩だし、そうかーって思ったくらいの話。
役者としての須賀さんが見られなかったのがちょっと残念ではある。
アンゲーテッドコミュニティ

アンゲーテッドコミュニティ

北京蝶々

テアトルBONBON(東京都)

2010/05/26 (水) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

初日は雨。怪しい物語。
さてさて、どう纏めたら良いものやら。初日を観てコメントするのが遅れたので、それ以降を観た方とは温度差があるやも。とか思ってちょっと気が引けています。
既に散々と語られているのであえて触れずともと思いながらも、舞台美術の件。初めてのテアトルBONBONでしたが、劇場に入ってまずは「ここってこんなに圧迫感のある劇場じゃないよね? となると…」などと勝手に憶測。いざ始まってからの舞台の移り変わりでその点に納得。様々な場所を表現出来る面白い構造だったと思います。が、逆に「そこは結局その場所の何処?」と思える瞬間も。
作風にもよりますが、個人的に上演時間は90分~110分くらいが好みです。そういう意味ではこの作品はもっと長くても良かった様な気もするのです。登場人物が多い割に物語はスマートに纏まっているので、見ていて大事な何かを見逃す事がないだろう親切な作り。とはいえ少しくらいは余計なものがあっても良かったかなー。お肉で言うと脂身の部分。食べない人は食べないけど、食べたい人は食べたい部分。旬のものが油が乗ってるという様な。初日の時点ではまだ乗り切ってなかったかも。楽日に向けてそういう部分が増えるのか期待したいところ。初日はそんな感じでした。
そもそもの出番の量もあるけど、刑事役の方々が好演していた印象。

ネタバレBOX

観ていて『合法。合法。Go Home』いう言葉が頭に浮かびました。何故かは自分でもよく分かりません。
上演時間は開演の押しを考えると90分。でもあの転換は全部足したら結構な時間がかかっていたはずで、それを足したら90分を切っていたはず。各人物の掘り下げが欲しかったのと同時に、これだけ豪華な客演陣に対して個々の見せ場があまりない様に感じました。「えー、その人もっと色々出来るじゃん!それしかやらせないなら他の人にも出来るじゃん!」みたいな。惜しい。すごく惜しい。油が乗ってなく感じたのはそういう部分ですね。作品的な骨格はしっかりしてるのだから、後ははみ出さない程度に役者と演出の力でボリュームアップして欲しかった。でも、坂本が踊るのと三山が突き飛ばされるのは要らない。あれは面白くない。やってる側も迷いがあって楽しくなさそうなんだもの。
競泳水着の「そして彼女はいなくなった」の時にも思ったのですが、もしかしてミステリーって休憩が必要なんじゃないだろうか。小説を読み掛けで他の事をやっている時やテレビがCMになってトイレに行った時なんかに『これからどうなるんだろうなぁ』と思ったり、一旦そこまでを思い返して整理したりします。劇中の事を素の状態で改めてサラっと考えてみる。ミステリーの劇中に移入してもらうにはこれって結構大事な時間なんじゃないかと。今回の舞台転換は時間を要する部分もあってそれに代わり得る部分だったのですが、「すげー」と思ってそれ自体を見ちゃったので頭の休憩にはならず。
素材の難しさ。観る側にとって身近に思えないものはどんな作風であれファンタジーになってしまう。その点で、今回ゲーテッドコミュニティを扱ったのもかなり挑戦的だったかと。少なくとも日本では六本木ヒルズみたいなところに住んでる人って少数派だし、そこで何が起きてるか日常的に聞こえては来ないし気にしてもいない。なおかつ今回は劇中に「ここがそうです!」「私が住んでる人です!」みたいな描写がなく、観る側は劇中でそれを知るらしい人物が語る言葉から情報を得るしかなかった。その人物が共感し易いキャラであれば受け入れやすくもなったけれど、作風的にも何処か謎を匂わす人物ばかりだったので共感するにはちょっと距離感があった感じ。
セキュリティが上がって犯罪者がいなくなった代わりに冤罪を生みやすくなるという点は最もな警鐘。この部分をもう少し丁寧に扱えば劇中人物よりも作品からの訴え自体に共感して観やすくなったのかも。
露出狂

露出狂

柿喰う客

王子小劇場(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/31 (月)公演終了

「露わに出して狂う」=若げの至り。
たまに『演劇をどういうふうに観ればいいのか分からない』という言葉を聞いたりするのですが、それも柿に関しては無用な不安。目の前で楽しげに暴れる人々がいるのだから疲れや悩みを忘れて一緒に楽しめばいいのです。いわば、祭り。今回は本当に「女って強いな」に尽きる。そりゃ子供も産めるわ。この人達はきっとみんな安産だと思います。個人的には観終えた感触が「いまさらキスシーン」に近かった。明らかに濃密なんだけど清涼感がある。青春そのもの。
熊川さんは初めての柿とは思えないこなし振り。範宙遊泳で見た時にはかなり癖のある演技だったものの、使い分けが利くんですね。新良エツ子さんは大阪から活動処点を移したばかりの方との事。個人的にああいう役が好きなのもあって今回かなり注目して見ていました。良い意味でチラシ映りとギャップのあったのが梨澤さん。柿にはよく出ていて色んな役をやっているけど、前回「悪趣味」での可愛いメイドさんからここまで変わるものか。七味さんは天晴れなまでの化け物っぷり。普段にこやかな人でありながら舞台上でのあの暴れ様は凄い。何より本人が一番楽しんでるはず。深谷さんは珍しくほんわりした役かなと思ってたけどやっぱり充分に狂気じみてた。おこがましい言葉選びですが、コロさんは成長している。これまで中心役をやる場合には本人は比較的どっしりした役で周りが引っ掻き回して、もしくは中心ではない部分でのパワー型をやっていた印象が強い。けれど今回は両方ともこなしていた気がする。役の上での立ち回りに幅が出た様に感じました。
うーん、何処までがネタバレなのか。柿は楽日までにかなり変わっていくし、何だったら書いても大丈夫な気がするけど一応控えます。でも一つだけ。山本さんの一発ネタの完成度が演目の完成度に比例するんじゃないかと勝手に期待。なくならないとも限らないけど。
最後に。改めて今回のチラシを見たらめこちゃんが内臓を露出してるのがツボでした。

ネタバレBOX

いつもはもっと広い世界観で書くのになと思ったけど、閉塞された学校社会は村にも近い。学校裏サイトとか取り扱ったらまだまだ他の作品も作れそうだけど、畑澤さんの「親の顔が見てみたい」があるからやらないかな?
あらすじにもあるアベックの件が出てくるのがちょっと遅く感じた。分かっちゃってるからもっと早めに出す気がしてました。かなり話が進んでから異常イベントとして出てきても既知の状態だとインパクトに欠ける。そういう意味では事前情報がないほうが楽しめたかも。
色々とちょっかいを出す蔵毛の正体が実は…という展開になるかと思いきや、特に語り手以上の存在にはならず。真今井と宇津保も含めて誰かがスパイなんじゃ…とか考え過ぎだったか。あくまで彼女達が高天原女子高校で過ごした時間の中での話だった。
真今井は配役表を見て「名字かよ!」って(笑)。カタツムリを指すのは分かったけど頭の中では完全に「マイマイ」か「麻衣麻衣」の扱いでした。佐反町の字も予想外だったけど。
北と東の狭間

北と東の狭間

JACROW

サンモールスタジオ(東京都)

2010/05/07 (金) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

偽装結婚を偽装。
前々回「紅き野良犬」以来の観劇でしたが、JACROWは場所を描くのが上手いと思う。空間に説得力がある。良い意味で「それっぽさ」が成立している。舞台装置の力もあるけれど、それだけではなくて「その場に存在する人々」を描くのが上手いのだろうと。それぞれの人物の存在がハッキリしているので、役者陣も自分のこなすべき仕事が分かった上でこなしている。ただ、外部があまり描かれていないなという印象も。舞台外の見えない場所で起きた事、上演される物語の前後の時間に何があったのか。でも、それを外伝で補っているのは上手い手だなぁ。
蒻崎さんは眼力の強い女優ですね。当日パンフレットの顔写真を見た時点で何か射抜かれた様な衝動が。清水さんは相変わらず難しくてめんどくさい役をこなしている。もはや小劇場で彼女に端役を与える演出家はいないものか。起用して片手落ちさせたら勿体無いのは確かだが。根津さんのこういう役は個人的には乞局以来かな。ホームのあひるなんちゃらとのギャップが最高。時間堂の菅野さんは女にのめり込む役を度々見ている印象(笑)。気の弱そうなイメージがあるんでしょうか?平出さんは多分初めて見ました。ひたすら「かわいいなー」と思ってました。

ネタバレBOX

冒頭からずっと期待を抱いていたのが、店の客を無対象芝居でやっていた点。これが後々に何か大きな意味に繋がって来るのかと思っていました。けれど、気付いたらそのまま終わってた。なんだろう。彼女達にとっての客はその程度の存在という意味だったのか。三上が忘れられてしまう事を指すにも、智華はホントは忘れてなかっただろうし。
遠藤と智華の会話をあえて聞かせないパートについて。あの演出はやり方次第でもっと活きると思いました。智華がタリウムを混入するけれどやっぱり飲ませないというのは、観ている側もうっすら先読みと期待をする流れ。その気持ちを煽る為にあの表現にするのは効果的。どんな言葉を使っていたのか想像させる分、受け取り手次第で膨らむ余地がある。のですが、少なくとも初日の形式に関しては自分は上手く機能していないと感じたのが正直なところ。もしかしたら己の想像で膨らませる部分だと気付かず「もっと大きな声で喋ってよ」と感じた人もいるのでは。もっと印象的なパートになりそうなので惜しく思います。
侑子が殺傷事件を起こす手前くらいから「?」がぽつぽつ。侑子が野村といつの間に組んだのか不明だったり。これは外伝で補完されてる気がしないでもないけど、本編を見ている最中に頭に「?」が浮かんじゃったら集中して見られないから勿体無い。智華の代わりに周玲を加藤のエサにするのは侑子と野村のメリットの合致だし分からないでもない。せめて暗闇で襲わせて相手が智華だと思い込ませるとかやり方はあっただろうにとか。あと周玲と加藤が刺された後の時間経過が感じられなくて、美蓮がカウンターに入った時に「え?そこにまだ倒れてるんじゃないの?」と思いました。
餃子を美味そうに食べる遠藤はすごく良かったです。殺そうとしてる相手にあんな顔されたらキツイなぁ。
復讐回帰

復讐回帰

劇団銀石

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2010/03/30 (火) ~ 2010/04/04 (日)公演終了

言葉遊びで紡がれる。
シンプルでありながら目を引く舞台で描かれるのは、宇宙の始まりと混沌。復讐心はいつまでも褪せない原動力。
久々に観ましたがやりたい事は変わっていないのがすぐに分かりました。確かに野田秀樹的ではある。だからって気にして変に違いを生もうとしするのは得策ではない。この作風に小手先の調整は似合わない。まだ若いのだからひたすら全力で貫くべし。そして越えれば良い。
場面の移り変わりがもうちょっとスマートであってくれたら。役者の退場がちょっと雑に見えました。そこにも演出の手をしっかり入れて欲しかった。アフタートークで佐野木さんは「書いた後は自分でも意味が分からず公演中に気付いたりする」と言っていたので、恐らく出はけも台本の時点では頭になくて稽古場で後から演出しているはず。場面の繋ぎである出はけは綺麗に納めてくれたら。せっかく耳で聞いてリズムのある作風なのだから、目で見てもリズムがある進みであって欲しい。

ネタバレBOX

タイニイアリスで観た時のほうが熱量は受け取れたかも。低さと狭さが密にしてくれていたのか。少人数が入れ替わり立ち替わり登場して、場合によってはちょっと熱不足だった。場を埋め尽くすだけの熱量に達するだけの人数を一度に出してしまうべきだったか。
個人的にはラストも人数の多いほうが良かった。光になったのが姫様の友達だけだったので結局の締めが姫様寄りで終わってしまった印象。総動員であの空間を埋め尽くすくらいたくさんの星々が出ても良かったかも。伝えたかった雰囲気は察したものの、その為には圧倒的な見せ方が必要だった。繊細なものを繊細なまま伝えるにはあの時点での観客の心境を過信したか。自分は物足りなさを感じました。
劇場機構の問題だけど、スピーカーの位置が残念。天井に吊されていた為に、どうしても音響が上のほうの空間にだけ流れて感じられて。演技との一体感が損なわれていた気が。勿体ない。
モグラの性態

モグラの性態

ぬいぐるみハンター

参宮橋TRANCE MISSION(東京都)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/31 (水)公演終了

「土竜」は元々ミミズを指す言葉。
セックスに憧れる童貞達。童貞なりのプライドがあるから風俗での初体験はしたくないと心に決めている。でも…やっぱりしてみたい!くだらない内容を本気で思いっ切り遣り切る戦い方。役者がちゃんとカロリーを費やす姿は好感。
ただ、観ていて面白いと感じながらどうも自分のテンションが上がりきらなかった。沸騰手前の87℃くらい。「役者がこれだけ弾けてるのに何故だろう?」と思っていたら、例の役者が交代した回だった訳で。残念ではあるものの、事態が起きてしまったからにはベターな対応をするしかない。今回に関しては健闘だったのではないでしょうか。何かが足りなくは感じたけれど、間に合わせ感はなかったので。
配役がそれぞれによく合っていたと思います。後から思い出せない役はなかった。

ネタバレBOX

地下に籠もる童貞達をモグラに見立てたのは分かる。けれどそれ以上が分からなかった。劇中のモグラは何を表していたのか?試しにWikipediaを見たら三島由紀夫が「処女膜があるのはモグラと人間だけ」と記したんだとか。モグラと人間の性を結ぶ何かしらそういう様な関連事項があったのかな。他にも「ひばり先生はこよりの未来の姿…なのか?」とか「清水さんは年齢的にはなんちゃって女子高生だった…のか?」とか、スッキリしない不明点は多々ある。
台詞が物語を進める為の扱いになっていて、人物の関係性がブレていた部分も。テトラとグリコがパピコに対して急に冷めた口調になったり、同じくマイクがボスにそうなったり。急遽の代役が入って立ち位置が取り辛くなっていたにしても、台詞がない時の距離感も微妙だった気がします。グリコがそれだけパピコの近くにいたら触ろうとするんじゃないだろうか、とか。物語を進める為に、人物が勝手に動かない様に書き手の都合で感情が抑えられていた印象。行動も場面の見栄えに即してしまっていたものがいくつかあって、例えば冒頭で清水さんがフラワーの精液を手のひらに出すのは合点がいかない。採取したかったなら、なるだけ口に溜めておいて後で容器に移すはず。
脚本をもっと丁寧にするか、もしくは逆にあえて乱雑にして演出と役者の力で振り切るとこの団体のカラーが強まるのでは。まだちょっとお行儀が良すぎるのかも。個人的にはもう少しくらい失礼かまして欲しい。
止まらずの国

止まらずの国

ガレキの太鼓

サンモールスタジオ(東京都)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/30 (火)公演終了

行き着いた。
初演の頃から舘さんの事を一方的に知っていて、しかしこの作品は観損ねていたのです。それは良かったのか悪かったのか。初演の出来や評価について何も知らないから今回観に行けた様な気もする。結果的にはこの日の為の長い複線だったのかもしれない。それこそ異国を長く旅して偶然また出会うかの様な。
人は世界や国や状況という形のない概念に振り回されるしかない。それらを作り上げているのは人々であって。個人個人には何の抗う力もない。何も知らない人間も知っている人間であっても、みんなちっぽけな存在だというのを思い知りました。ラスト寸前まで前のめりになってわくわくしながら観ていました。
自分の場合は舞台美術が立派過ぎると「演技で伝えてよ」と思うタイプです。なので始まる前はそのスタンスだったのですが、いつの間にか世界に引き込まれていました。『行った事のない場所に観客を連れて行けるのが演劇!』みたいな発言も好きではありません。ファンタジー作品でそれを言われると「いや、オレは連れて行ってもらえなかった。だって登場人物がふわふわしてて人間味がないんだもの」とか言ってしまうタイプです。まずこの作品はファンタジーではありませんが、世界観が先に来るものにはそう思ってしまうのです。しかし今回は完全に白旗。いい仕事してますね。

ネタバレBOX

アキラさんに同じく、席に着いた時点で「冒険王」は頭にありました。青年団の方も出演しているし。それが失礼だったなと思えたのはどの辺りからだったか。中盤に差し掛かる前には払拭されていた気がします。
最後の最後になって「あぁ、これは喜劇だったのか」と。ただ振り回されただけだったという事を表すにはあのラストなのでしょうが、それまで世界情勢を語るだけ語ってそのままというのも…。語るだけならいくらでも出来るしいざとなったら結局はあんなものだって事なのかなぁ。みんな出て行ったのに最後に一人だけうっかり出くわしたテロリストに撃たれて終わっちゃうとか想像したんですけど、それはreset-N「青」になっちゃいますね。もしくは劇中に出なかっただけで、祭りの後に旅立った人が誰かあっけなく死ぬんじゃないかと想像したりもしました。好みの問題か。別に人の死ぬのが好きなんじゃないんです。むしろ劇中で重みなくそういう事をするのは嫌いなので。経緯とかがちゃんとあった上で、ね。
あらすじの「飛行機は、もう飛ばない。」はずるいかも(苦笑)。人物の劇中の心情であって、実際はあの終わりだから飛ぶはず、多分。でもそれもマジックの一つか。
あの音楽は何だったんだろうか。ミッチーに聞こえたのは気のせいかな。
はなよめのまち【ご来場誠にありがとうございました!】

はなよめのまち【ご来場誠にありがとうございました!】

キコ qui-co.

王子小劇場(東京都)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/29 (月)公演終了

qui-co現る。
『特産物として花嫁を他の土地に売る事で貧困や支配から逃れている町。花嫁は、人ではない扱いで育てられる。しかし花嫁の一人が禁じられながら恋をしてしまい…』みたいな話だと事前に予想して行きました。合ってたし外れてた。
まず最初に詩的な印象を受けて、それから。始めは物語を追うつもりでいたらどうやら違うと気が付いて、次に人を見たけどそれも違かった。込められていたのは音・風・匂い・温度。それらが生む風土とそこに生きる姿。見るよりも感じるもの。もう一度行けるなら、目を瞑ってあの空間に混じりたい。
役者の声質が重要視されているのは明らかで、ベースの様な芯のある深い音が聞こえていました。劇中にジャズが出てきます(著しいネタバレではありません)。何よりこの作品自体がジャズ。コードだけ決められたセッションの様でもあり。先述した「何を追うか」について改めて述べると、正直見ていて分かりにくい箇所が多々あります。それは小栗さんが役者に対する指揮者である演出家としてまだ万能ではないという事と、今回が旗揚げでやりたいものが積載量ギリギリまで詰まれているから。ギリギリっていうか、ちょっと零れてたかもしれない。慣れない作曲で在り来たりな部分と妙に難解な部分が混在したかの状態。惜しくもあり、今後どうなっていくかの期待もあります。
個人的には小栗版「ロミオとジュリエット」かな、と思ったりも。

ネタバレBOX

登場人物にもういくつかのポジションがあると広がりと深みが増した気がします。花嫁の家族みたいな存在とか。「あっちでは幸せになれるから。あんたの為なんだよ」と迷いなく送り出そうとしてたのに寸前で行かないでと懇願してしまう母親とか、逆にそれまでは冷たく接していたけど本心では誰よりも花嫁を心配していた父親とか。ベタですが。この作品の世界には家族が存在しません。あの花嫁達は子どもの頃に別の所から連れ去られてきたんではないかと思っています。劇中で言ってたかな?失念しました。あぁ、ダメだ。ここまで記して気が付いた。あの世界には愛がないのだった。とはいえ、家族「らしき」絆が出てくればそれぞれの思いが分かりやすくなったかと。うーん、それでも愛になっちゃうかなぁ。しかし男女の愛でなければ汚れないのか。個人的には処女性に近いものかと捉えていましたが。看護婦を束ねる立場の人間が出て来ないのも、あえて関係性を明確にしない為だったか。
神が現れない点は邦画「大怪獣東京に現る」に通ずるかも。この映画、怪獣が現れて慌てふためく人々の姿がメインで怪獣が一度も映像に出ません。怪獣が来てるのを重く受け止めずのんびり暮らす輩がいたり、「あれは神だ」と言い出して宗教を立ち上げたり、実はそれが詐欺で行き詰まった浪人生が騙されたり、双子の間で揺れる女の子がどっちにしようか決めたりする。綺麗だったりきったない本心が露わになるのが、ね。「きったないけどそれが本心だよ」って言い切ったらそれも綺麗。
直接聞いたから記せる話ですが、ビニール袋のマクガフィンは流石に演劇では意味が有りすぎた。映像ならそのまま次のコマに行けば済む。しかし舞台では回収するまでは存在してしまう。映像なら「出た事」で終わっても、舞台だと「出た事・在る事・消えた事」それぞれに意味を求めてしまう。が、旗揚げ。まずはやりたい事をやればいいです。是非の反応を受けてから更に質を上げれば。
~花よりおはぎライブ~【劇場版:バナナ学園の暴走】 (ご来場まことにありがとうございました!!!)

~花よりおはぎライブ~【劇場版:バナナ学園の暴走】 (ご来場まことにありがとうございました!!!)

バナナ学園純情乙女組

王子小劇場(東京都)

2010/03/22 (月) ~ 2010/03/22 (月)公演終了

どうにか死人は出なかった。
汗まみれ声ガラガラ。死力を尽くした大バカ騒ぎ。観るほうもバカにならなきゃ損。入場時にもらったバナナをメガホンみたいに叩いてたら痛んで色が変わっちゃった。
いずれ是非ともDANCEROIDをゲストに迎えてケンカして欲しい。ケンカと称してダンスでバトルするんじゃなくて、普通に殴り合いして欲しい。

ネタバレBOX

怪我人はいたと思う。足に痣のある役者がいた。壁に穴を開けるくらいだし、それくらいで済んで何より。ひとまず客に怪我させてないならセーフ。気持ちの上での火傷はさせたろうけど。
舞台上に原チャリが突っ込んで来るのは観た事がある。客席に来たのは初体験。ホント、体験。観てる場合じゃない。
最早ロロロに違和感が全くなくなったのは自分が毒されたからか?次回は久々に芝居寄りなものをやるみたいだから、その時に確かめよう。
岡安嬢が舞台上で自撮りしてた(笑)。
フジヤマタイガーブリーカー

フジヤマタイガーブリーカー

MCR

駅前劇場(東京都)

2010/03/17 (水) ~ 2010/03/22 (月)公演終了

「マシュマロ・ホイップ・パンク・ロック」
初見でした。良い意味で童貞臭がする。「良い意味で」を付けたら何でも許される訳じゃないけど。中学生男子が考えそうなくだらなさと無責任さとバカバカしさ。あぁ、くだらなさとバカバカしさは一緒か。アグレッシブなあひるなんちゃらみたい。あひるなんちゃらがアグレッシブになったらそれはあひるなんちゃらじゃないんだけども。
役者は曲者揃い。あ、字が違った。癖だ。癖者。人によって好き嫌いが分かれそう。彼らが磨くべきは精密さや丁寧さではなく勢いだと思う。思いっ切りやって有無を言わさぬパワーがあれば癖も武器になる。とはいえ、台詞が聞こえにくくなるだけの滑舌は流石にもうちょっとどうにか…。今日は噛んだのをアドリブでネタにして笑いを取っていたけど、個人的にはそういうのが好きではなく。稽古場での鍛錬の延長にないものを舞台上でされても。
チェックしたくなった役者は石澤美和さん。あのキャラを遣り切るからには普段きっと良い人なんだろうという勝手な読みと、今後の予定が多数ある中にタカハ劇団とあひるなんちゃらがあったから。

ネタバレBOX

なんでこのタイトルなんだろう?面白かったら別に意味がなくても気にならないんですが、今回はあちこち突っつきたくなってしまったのでタイトルにもそれが及びます。
盛り上がりであろう股間の弄り場面で完全に取り残された。意味が分からなかった。全く分からなかったのではなく、どれなのか分からなくて。「共有する気のなかった二人が共有したのに、共有したい二人は共有出来なかった」「男女の感じ方や考え方の違い」「実はミキはセックステクニックが下手だった」。どれにも取れるし決め手がなくて。面白くなる要素はたくさん散りばめてあって、ただ本当に散り散りになっちゃってるのが勿体無い。あの二人は感覚を共有する前から男らしさと女らしさが逆転してて…とか、何か繋がりそうな気がしてたら結局は何もなかった。
台詞が自然な言葉選びでない事もあって舞台上での対話が成立していない部分が多々。紡いでいくというよりは一発一発を重ねて作られたものという印象。緊張感ではなく瞬間の集中力。所謂コント向きな人々のイメージ。
スイングバイ

スイングバイ

ままごと

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/03/15 (月) ~ 2010/03/28 (日)公演終了

えすえふ。
柴作品はSF。Sukoshi Fushigi。その線引き具合が絶妙。あとちょっと踏み込んだらきっと何やってるか分からなくなっちゃうけど適度。演劇を見慣れない方は『こういうのもあるんだなー』くらいの気持ちで観れば良いし、畏まって観る必要がないのは次第に分かるはず。子どもが玩具で本来以外の用途での遊び方を見付ける様に、演劇で遊んでるんだなというのが伝わって来る。
物語はあらすじにある通り。ドラマや漫画で見た覚えがありそうな部分があって、でもそれは安易に選んだのではなく観る側から遠くなりすぎない様にあえての印象。共感というよりは再確認と顧み。
冒頭からしばらくは個人的にあんまり面白くなかったのが、途中からノリ始めました。始まった瞬間から面白かったらそれは好みだからだろうし、もしくは目当ての出演者を追うとか何かしらの観る為のスタンスが出来ているから。折原さんとか野津さんとか森谷さんとか事前に気に掛けていた役者はいたんだけど、冒頭のあれこれは個人を観る部分じゃなかったからこの演目自体を値踏みする目線になってたんだろうなぁ。それで面白く感じたって事は、ちゃんと面白かったんだと思います。
劇場を出てビルがあったらいいなと思えて、演目的にはルデコでもアサヒアートスクエアでもやれそう。とはいえそれに合わせるにしても次にやるなら規模的に池袋の芸術劇場とかになるのかなと妄想。

ネタバレBOX

「わが星」から「わが社」。世代を越えた人の移り変わりを見せる点では「あゆみ」に似ているのかも。締めの「階を重ねる」は「回を重ねる」でもあり、客も一部だった訳で。客入れの時点でその趣旨は伝わってきたし、ちゃんと回収して終わってるのが良かった。
スイングバイ部分が長かった様な。動きがちょっと雑に見えた気もするし、とはいえ世代や仕事の引き継ぎを見せるにはあのくらいの時間が必要だった気もする。本人は目まぐるしく必死にしてるけど傍目から見たら大した仕事に見えないっていう意味ではとても理に適っているものの、そこまで読み取らせるには足りてない。多分まだベストじゃない。
冒頭の矢倉は会社だったし社会だったんだと後から思い返す。そして別団体なんだけどふと岡崎藝術座の見方が分かった気が。この矢倉で、ふと。
駒場東大前駅に着いたら『結局あの細い人は飛び降りたのかな?』と話し合う声が。あの早退は好きに捉えればいいんじゃないかなと思った。個人的には自殺を見ちゃったら娘さんが同じ会社に務めるかは微妙な気がする。でも会社だし社会だったからなー。見ちゃっても抱えて過ごしていかなきゃならないのかもな。
柴さんも出演クレジット明記があっていい気がしたけど、あれはゲームの親の位置なんだろうな。出演者にあれをやらせたら語り部になっちゃってそれ以外させられなくなるし。世にも奇妙な物語のタモリみたいな。いや、タモリはたまにカメオやってるけど。…取り留めがなくなったのでこの辺りで。
月並みなはなし[2010]

月並みなはなし[2010]

時間堂

座・高円寺2(東京都)

2010/03/11 (木) ~ 2010/03/14 (日)公演終了

やぁ、また会ったね。
標榜される「普通」から生まれる遣り取り。あくまで日常。劇的すぎない「普通」。
始まってからしばらくは何も始まっていない様な感覚でした。やがて思い出した様に少しずつ行く末に向けてゆっくり流れ出す。結果、何処で道を間違えたのか決定的なポイントが見付からない辿り方をする。だから最後はモヤモヤ感が残ります。このモヤモヤとどう接するかが、この作品との向き合い方。この作品が持つ温もりは人のそれに近い。余韻に思いを馳せるのは人を思い遣るのと似ています。誰かと遣り取りをしていて『は?こいつ何言っての?分かり合うの無理だわ』と切り捨ててしまう人には多分この作品はつまらないでしょう。くれぐれも勘違いに御注意頂きたいのですが、この作品が面白く感じなかった人への人間性否定ではないです。要素の話。
思い遣りが絆と足枷になるから、誰かにとっての幸せが他の全ての人々にとっても同じく幸せであるとは限らない。追うべきはその部分。月に行く事をそのまま受け入れて共感しようとしたらそりゃあ無理があっても当然。未来の話です。「都会に出る」とか「外国に行く」くらいに捉えたほうが吉。

ネタバレBOX

自分が観た5パターン目の「月並みなはなし」でした。黒澤演出としては時間堂07年版と朋友版に続いての3パターン目。それぞれに違う在り方。その違いは更なる成長があったからではないと思うのです。同じ親でも子供の育ち方には違いが出るもの。どの子供の出来が良いかなんて比べても仕方がない。
けれど。今回ならではに思えたのは「ほんのり」感。月移民グループになぁなぁ感がありました。舞台から降りた時の役者同士の関係も友人として良好なのでしょうが、それが演技をなぁなぁにさせていたとかではなく。登場人物に明らかな上下関係があればその擦れ違いで物語の生まれどころは分かり易くなります。しかし今回はそうせずそれぞれにお互いを同じくらい思い合うなぁなぁな人々だったからこそ、ゆくゆくの『なんでこうなっちゃたんだろう』感が色濃く。業を背負って当然なんて人はあの中にいなかったはずなのに。願いが叶ったのに幸せになれなかった人々と、願いが叶わなかったけど新たに別の幸せの可能性を得たコウドウ。これまでは能力を持ちながら選ばれなかった彼の遣る瀬なさを感じていたラストが、今回はかなり明るい未来を示唆していたかと。ただし彼以外は微妙。誰かの幸せは誰かの犠牲の上に。幸せになる事への責任。感謝よりも深く。しっかり「いただきます」と言って動植物を口にするのにも似ているかも。
個人的には音響と照明が豪華すぎました。07年版はシネマプライスシリーズで、朋友はアトリエ公演だったからそれらが簡素だったのかな?初演はどうだったのか。目の前に役者がいる事、人の遣り取りから生まれるものこそのみを体感していたかった。

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