はなよめのまち【ご来場誠にありがとうございました!】 公演情報 キコ qui-co.「はなよめのまち【ご来場誠にありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

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    『特産物として花嫁を他の土地に売る事で貧困や支配から逃れている町。花嫁は、人ではない扱いで育てられる。しかし花嫁の一人が禁じられながら恋をしてしまい…』みたいな話だと事前に予想して行きました。合ってたし外れてた。
    まず最初に詩的な印象を受けて、それから。始めは物語を追うつもりでいたらどうやら違うと気が付いて、次に人を見たけどそれも違かった。込められていたのは音・風・匂い・温度。それらが生む風土とそこに生きる姿。見るよりも感じるもの。もう一度行けるなら、目を瞑ってあの空間に混じりたい。
    役者の声質が重要視されているのは明らかで、ベースの様な芯のある深い音が聞こえていました。劇中にジャズが出てきます(著しいネタバレではありません)。何よりこの作品自体がジャズ。コードだけ決められたセッションの様でもあり。先述した「何を追うか」について改めて述べると、正直見ていて分かりにくい箇所が多々あります。それは小栗さんが役者に対する指揮者である演出家としてまだ万能ではないという事と、今回が旗揚げでやりたいものが積載量ギリギリまで詰まれているから。ギリギリっていうか、ちょっと零れてたかもしれない。慣れない作曲で在り来たりな部分と妙に難解な部分が混在したかの状態。惜しくもあり、今後どうなっていくかの期待もあります。
    個人的には小栗版「ロミオとジュリエット」かな、と思ったりも。

    ネタバレBOX

    登場人物にもういくつかのポジションがあると広がりと深みが増した気がします。花嫁の家族みたいな存在とか。「あっちでは幸せになれるから。あんたの為なんだよ」と迷いなく送り出そうとしてたのに寸前で行かないでと懇願してしまう母親とか、逆にそれまでは冷たく接していたけど本心では誰よりも花嫁を心配していた父親とか。ベタですが。この作品の世界には家族が存在しません。あの花嫁達は子どもの頃に別の所から連れ去られてきたんではないかと思っています。劇中で言ってたかな?失念しました。あぁ、ダメだ。ここまで記して気が付いた。あの世界には愛がないのだった。とはいえ、家族「らしき」絆が出てくればそれぞれの思いが分かりやすくなったかと。うーん、それでも愛になっちゃうかなぁ。しかし男女の愛でなければ汚れないのか。個人的には処女性に近いものかと捉えていましたが。看護婦を束ねる立場の人間が出て来ないのも、あえて関係性を明確にしない為だったか。
    神が現れない点は邦画「大怪獣東京に現る」に通ずるかも。この映画、怪獣が現れて慌てふためく人々の姿がメインで怪獣が一度も映像に出ません。怪獣が来てるのを重く受け止めずのんびり暮らす輩がいたり、「あれは神だ」と言い出して宗教を立ち上げたり、実はそれが詐欺で行き詰まった浪人生が騙されたり、双子の間で揺れる女の子がどっちにしようか決めたりする。綺麗だったりきったない本心が露わになるのが、ね。「きったないけどそれが本心だよ」って言い切ったらそれも綺麗。
    直接聞いたから記せる話ですが、ビニール袋のマクガフィンは流石に演劇では意味が有りすぎた。映像ならそのまま次のコマに行けば済む。しかし舞台では回収するまでは存在してしまう。映像なら「出た事」で終わっても、舞台だと「出た事・在る事・消えた事」それぞれに意味を求めてしまう。が、旗揚げ。まずはやりたい事をやればいいです。是非の反応を受けてから更に質を上げれば。

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    2010/03/26 14:52

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