演劇の刺激に溢れる
多分僕はずっと演出の視点からこの作品を観ていたのだが、大きな衝撃を受けた。1シーン1シーンがとても美しく構成されている。留まるところを知らない詩的でアーティスティックな芝居。目の前で響く音や声、役者の動きなど演劇でしか出来ないことを美しいヴィジュアルと共に完成させていた。
小栗さんの意図したることかはわからないが、物語の奥に非常に高い社会性も読み取れた。こういうのは、大好きだ。本当に、正にツボに嵌まったと言っていい。観られて幸せ。
満足度★★★
どちらかと言えば苦手なタイプ
1984年、地図になく「特産品がはなよめ」である町を舞台にした物語、内容説明に「禍々しくも美しい」とかあったものの、禍々しいなんてことはなく(むしろそっちに興味があったんだが(爆))、しかし確かに美しい。
まずは冒頭の長めの説明台詞が純文学作品のようなタッチで、「ことば」として美しい。
また、「はなよめ」たちの衣裳の裾のグラデーションが美しい。
そしてあれこれ騒動がありつつ、主人公の「私の記憶はここまでです」という言葉で「え、まさかここで!?」と思わせた(ズルくね?(笑))後のラストシーンのワンショトが美しい。
そんなこんなで全体的に詩的であり、純文学っぽい雰囲気が漂っており、どちらかと言えば苦手なタイプ…(爆)
いかに普段娯楽要素の強いものばかり観ているかってことかな?(とほほ)
と、そんな中、途中で床にアニメーション映像(事前にパンフでそこまで見ていなかったが、すぐにそれとわかる荒船泰廣作品)を投射したり、STOMP気味のリズム・パフォーマンスがあったりするのがまた独特。
うん、継続観察ってことで次回も観てみよう。
満足度★
ぱっと見美しいのに…
装置や衣装、綺麗でとても好みでした。ヴィジュアル的に、素敵そうな雰囲気。
きっちり計算している感じ というか計算しか見えなかった。リアリティが誰にも感じられませんでした。
五感や生の理を狂わす演劇、には到底届かない結果で残念です。
満足度★★★
なんかおしい
なんで1984年なんて中途半端な年が舞台なんだろうって思ったら、村上春樹「1Q84」との比較を意識したのか?
皆早口だったのと案外言葉が説明的だったのとで、期待したほどには言葉でのイメージは掻き立てられず、むしろビジュアルイメージへのこだわりを強く感じた。
個々のシーンを単品で観るとそれぞれビジュアルイメージを中心として技巧をこらした作りをしていて面白かったのだが、演出の問題か音響・照明との連携不足か、一つに連なった作品としてのリズムはいまいち掴み損ねていた印象。
また場面それぞれが「ここはこういう演出!」という主張が強かったので、ずっと観ていて途中で疲れてしまった。2時間を超えてしまうとなおさら。
いくつかの魅せるべき瞬間も流れているように感じた。
あと演技にずっと人間以外のものを観ているような不思議な違和感を感じたのだが、あれはいったいなんだったんだろうか。
そうは言っても祭礼儀式や巫女といった民俗学的要素を詩的にファンタジー色強くみせていて興味深かったし、やはり要所要所のビジュアルの美しさは飽きなかった。
あ、今気付いたけど1Q84も巫女の話だったそういえば。そういうつながりも含め?
満足度★★★★★
残酷な童話の世界
面白い!物語は残酷なファンタジーのような風景。それぞれの人間の業のようなものが見え隠れし、それでいて最後は繫がりで終演する。キャストらが一時的に停止するような最後の場面は計算された画でまるで絵画のよう。今回の芝居で一番美しい光景だった。。
以下はネタばれBOXにて。。
満足度★★★★
これはポエムですねぇ・・・
ミステリー風だったり革命風だったりするストーリーも魅力的なのですけど…
むしろ、
詩的なセリフの連続
映像とのクロスオーバー
音による原始的な盛り上がり
…というあたりに、ぐっときました。
ま、でも何といっても一番の見所は、女優・吉田小夏!いやぁ、怖いじゃないですかぁ…って、ま、そういう魅力も持っておられるのか…と、いやぁビックリ!かっこよかったです。
満足度★★★★
清らか。
素敵な映像はお馴染み荒船泰廣氏。観終わってじわりじわりと切れない影のように後からくる。今後演出がいいように削がれてゆくのかな。減らしても良さげな部分もあったけどフラッシュバックのような場面が面白く美しかった。過去の本をみても東京という一地方の東京弁を出さないことに徹底しているように思うんですが、そこが体に馴染む馴染まないの差があったりするのだろうか。自分としてはだから好きなのだけど。東澤有香さんの感情の瞬発力を体感するのが久しぶりで嬉しくて。ダルカラ堀さんの冒頭のシーン、引き込みが凄い。夏の森の中にいたような二時間。今年は千葉さんをもっと観なくてはならぬ。
qui-co現る。
『特産物として花嫁を他の土地に売る事で貧困や支配から逃れている町。花嫁は、人ではない扱いで育てられる。しかし花嫁の一人が禁じられながら恋をしてしまい…』みたいな話だと事前に予想して行きました。合ってたし外れてた。
まず最初に詩的な印象を受けて、それから。始めは物語を追うつもりでいたらどうやら違うと気が付いて、次に人を見たけどそれも違かった。込められていたのは音・風・匂い・温度。それらが生む風土とそこに生きる姿。見るよりも感じるもの。もう一度行けるなら、目を瞑ってあの空間に混じりたい。
役者の声質が重要視されているのは明らかで、ベースの様な芯のある深い音が聞こえていました。劇中にジャズが出てきます(著しいネタバレではありません)。何よりこの作品自体がジャズ。コードだけ決められたセッションの様でもあり。先述した「何を追うか」について改めて述べると、正直見ていて分かりにくい箇所が多々あります。それは小栗さんが役者に対する指揮者である演出家としてまだ万能ではないという事と、今回が旗揚げでやりたいものが積載量ギリギリまで詰まれているから。ギリギリっていうか、ちょっと零れてたかもしれない。慣れない作曲で在り来たりな部分と妙に難解な部分が混在したかの状態。惜しくもあり、今後どうなっていくかの期待もあります。
個人的には小栗版「ロミオとジュリエット」かな、と思ったりも。
満足度★★★
これからが楽しみな旗揚げ公演!
旗揚げ公演だそうだが、小劇場の人気役者を揃え、大いに注目を集めての本公演だ。詩的な言葉とビジュアルなシーンで彩られた幻想的な物語。特に映像の使い方がうまい。
また演劇的な実験を随所で行い、そこら辺も面白かった。まずまずのスタートを切れたのではないだろうか?
役者では、楓役の木下祐子の安定した演技に魅せられた。声が非常に聞きやすく、他の役者とは一線を画していた。ナギ役の堀奈津美は出だしのシーンとラストシーンがとても素敵だった。男性陣ではまつばら役の千葉淳に魅力を感じた。