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『Дxвеɧбгкψеп』(邦題:なんて書いてあるの?)‬

『Дxвеɧбгкψеп』(邦題:なんて書いてあるの?)‬

南山大学演劇部「HI-SECO」企画

ナビロフト(愛知県)

2018/08/09 (木) ~ 2018/08/12 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/08/11 (土)

物語の凝った構造が好み。幼稚園児、10代、20代、40代… そして…という流れの中、そこにいる人物が必ずしもその時代の人では無いような感覚もあり、物語が入れ子になっている雰囲気も漂う…ちょっとした不条理感が常に観る者を心地よい混乱に誘う。

私は「これは何だ?」と思わせ続ける芝居が大好きなので、醸す空気をたっぷり楽しんだ。それに留まらず、想像の取っ掛かりがしっかり散りばめられているのが更なる楽しみどころでした。

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ネタバレBOX

【続き】

終盤に垣間見える関係性にドキドキしたところで、再び鮮やかに不条理空間に突き落としてくるのも好き。

脚本未完のまま姿を消した千夏の失踪の真相、千夏と千秋の本当の関係性、たっちゃんの生死… そして老いた幼馴染たちの夢とうつつ…。

謎が謎を呼ぶ… どの行為の繋がりは…時空を行き来しているかの様でもあり、終わりのない循環世界にハマってしまったかにも映る。

色んな可能性が飛び交い…決して整合しない…それはまるで並行世界を同時に見せられている様だったし、もしかしたら老い故の混乱した記憶だったのかもしれない。最後に創作世界として片を付けた様にもみせましたが(対面客席はぐっときた)、それも一つの可能性に過ぎないよな…という後味で… あたかも たっちゃんの「白昼夢」を眺めていたかのよう… エンディングの乱舞が、その混乱に花を添えました。

各々の世界の中で交わされる感情や個性もしっかり作られていて、のん?(彼氏できない方)に漂う切なさとか、欠片の疑いなくスペースシャトルに成りたかったケンタの佇まいとか好きでしたが、…やっぱ一番は自称福山雅治のダニエルですねぇ…。大丈夫ぅ? はハマる… 濃い… 濃いなぁ彼は。今後に期待。

芝居以外も、わら半紙風のチラシ、客入れ中の自作ラジオ番組、細かいところに創意工夫と遊び心があって、楽しかったですねぇ。
『ミナソコ』

『ミナソコ』

廃墟文藝部

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2018/07/28 (土) ~ 2018/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/07/28 (土)

二室構造の舞台で重なる様に展開する芝居。各室に誂えられたプロジェクションが更に二重構造を形作り、終始 水底に揺蕩う感覚を醸す照明効果に…観る者の感傷を支配する音楽。

あらゆる面から絶え間ない波状攻撃を仕掛けて…観る者を多重に揺さぶり追い詰めてくる見事なサイコミステリーとファンタジーの融合でした。

緻密な脚本もまた色々なものを重ね合わせてくる。…

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ネタバレBOX

【続き】

… 緻密な脚本もまた色々なものを重ね合わせてくる。

アンデルセン童話の人魚姫を筆頭に…八百比丘尼をはじめとする各種人魚伝承を連ね、多重なファンタジー感を醸しながら…今、目の前にある奇妙な人たちの「シビアな境遇・関係・感情」を合理的に繋げていく仕掛けが また実に上手い。

欠けた情報の奔流で興味を誘う演出も非常に効果的だったが、かなり明確に難病「筋ジストロフィー」をモチーフにしている。ただし真逆の設定が仕込まれており、それを成立させるのが「Y染色体が発症を阻害する因子」という巧妙な…おそらくはオリジナルの設定だ。これで人魚"姫"に繋げていると思われる。

こんなとこは気にせず受け容れて楽しんでも良いのだけれど、設定オタクの私としては、こんな拘りの工夫が嬉しい。

結果として得られた…これらピースの掛け合わせは、人魚の苦しみと幸せに…実に現実感ある苦悩を重ね合わせて、廃墟文藝部作品の中でも飛びぬけて「非現実感と現実感の融合」を果たし、想像し難い…なんとも薄気味悪い空気を作り出している(褒めてる)。

正直、この組み合わせを発想した時点で勝ったも同然…やはり斜田章大さんは…人を奈落の底に突き落とすことにかけては随一の天才や。

演出としては…彼得意の「テキスト・プロジェクション」が更に多様さと鋭さを増した。まるで小説を読んでいるかの様な落ち着いた空気から…不意を突く狂気を感じさせる精神効果も形成する。先に挙げた伏字で欠落させた情報により醸す怒涛の混乱など、廃墟きっての精神兵器である「音楽」にも迫る精神誘導ぶり。

展開としても…ギョッとする違和感が各所に散りばめられているが、仕込まれた違和感には皆しっかり理由が潜んでいて…伏線となり…後から唸る。時間の余裕なんて一切無かったけど、2度観たい芝居だった。

ミステリー部分にしっかりとした解をぶら下げて… 時に「序盤からバラし過ぎでは?」…と思う演出もあるのだが、後々咀嚼すると…それを踏まえて尚、見立てや暗喩を考えさせる奥深さなので、きっとバランスは良いのだろう。

そんな暗喩について、思い浮かんだものをものを、ちょっとコラム的に書いてみた。

……どうでもいいよね。ほんとにさ。冗談だけど。(正しい使用例)

①「人魚姫の左足 」と水底家の狂気

作中小説「人魚姫の左足 」からは、支え合って生きた男女を狂気に突き落とした「不死の苦悩」の姿が印象的に描かれる。特に夫が陥った狂気は…その凄惨さから そうそう理解できるものではないが、…これを現実の水底家の狂気にどう重ねて見るのかが、ちょっと難しい。

現実世界のみで解釈すると「不死の悩み」は存在しないはずで、どう結び付けられるのか悩んのだが… 彼方も含めた3人に纏わりつく…「永劫消えることのない罪の意識」

… これが「不死」と等価になるのかもしれない。


②「人魚姫の左目」と詩織

貧しさが産む…恐ろしい集団の狂気。
本来は精神の自己防衛であるはずの「慣れ」が生み出した極限の悲劇。

島中の人間が、罪が、穢れが真珠に埋め尽くされる… 島は真珠でできた山となる。

あまりにも凄惨で…しかし美しい。この作品では 「左足」と違って、人魚が好いた相手は人魚に何ら酷い仕打ちはしない。

しかし一方で、寄ってたかる島民は… 詩織の「病」そのものの様にも映る。
「すぐに消えてしまうモノが好きよ」と表される…消えてなくなりたい詩織の心情。
詩織の心境こそ容易に推し量れはしないが… 最も凄惨な結末のこの人魚が重なって見える。


③「人魚姫の心臓」と文則… そして彼方へ

心臓を廻る現実の行為と…文則が紡ぎ出した物語のギャップは非常に大きい。
人魚姫の結末が嫌いだった文則。明らかに「自己嫌悪」を投影した「人魚姫の決断」への非難。

しかし言うだけで自分は決して成し得ない…奇跡を生むナイフが存在しない現実を前に… 文則にとって彼方は憎悪の対象であり…また一縷の望みだったのかもしれない。

一転最後に、詩織を彼方に託そうとした文則の…拙い行為が悲痛。
『書けるんじゃなくて、書かなきゃいけなんだ…』…詩織を永遠のものとするために。
そして紡いだ物語は…おとぎ話から…不意に現実へ飛び込んでいった印象だ。
それは…文則が望んでも望んでも…叶えてあげることができなかった…
…幻のGood Endingに見えた。

そして明かされる…1年前の文則の決意…
「一番綺麗なまま書き記すよ」

… 文則の気味悪い…独善的な振る舞いの裏に隠れた想いが垣間見える…どんでん返しとも言えるシーン。

しかし…紡がれた最後の物語に…彼のモチーフが見えないのは何とも悲痛だ。


④「食べる」

文則が背負った…「食べる」という償いにもみえる行為。

彼に隠されていた…詩織を…二重の意味で生み出した…この形で生み出したという罪への贖い。

「食材」と「贖罪」…同じ音になるのが何ともいえず皮肉だ。


⑤「罪の再生産」と彼方

彼方は…執拗なまでに自らを自己非難、自己否定に追い込む。
写真の先にある彼女の罪が囁きかける…彼女が生きることによる「罪の再生産」は、何となく筋ジスにおける「筋の自滅的な壊死と異質なものへの変性」に準えている様な気もした。

自ら精神を擦り減らすことで…次第に己が精神が「この世有らざるモノ」に変質していく様を…重ねている様に思えた。

一方で、その罪はその憎まれ口と同じ口で… 彼方に愛を囁くようにも見える。
詩織の文則への愛にも似た…一途な愛… 愛は呪いだ。
「みっともないママも愛してるよ」「ずうっと見てるねぇ」

しかし…見苦しく…でも美しく運命を全うした兄妹と共に過ごし… 小指の先ほどの詩織の想いを受け止め、自分の業に対して「ずっと見ててね」…と向き合えるようになった彼方の姿も…また美しかったと思う。
【愛知公演】劇団壱劇屋「独鬼〜hitorioni〜」

【愛知公演】劇団壱劇屋「独鬼〜hitorioni〜」

壱劇屋

名古屋市東文化小劇場(愛知県)

2018/07/28 (土) ~ 2018/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/07/28 (土)

Wordless殺陣。心踏音で一度観た時にまず思ったのが、想像以上に内容がしっかり伝わってくることでした。海外のパフォーマーが見せる…いわゆるノンバーバル芝居だと、やはりバックボーンにズレがあるせいか…伝わらないことは少なくないのですが、壱劇屋の本ジャンルは、​殺陣を核とするエンタメ…時代劇等で培われた共通認識…いってみればお約束がシッカリ通用する世界なので、言葉がなくとも理解できる。

そして…凝りに凝ったダンサブルな殺陣、ありとあらゆる効果を使った演出で、それだけでも作品として成立しそうなパフォーマンス。特に終盤で…畳み掛ける敵陣を鬼が一閃したシーン…閃光を使ってストロボアクションの様に見せた演出は好きでしたねぇ。

ただ、芝居に殺陣にさほど重きを置かずに観ている私としては、芝居の中に…それプラスαの工夫があるところに、むしろ感心します。「心踏音」のソレは…芝居の中に仕込んだ密かな人間関係をセリフなしてシッカリ伝えてきたことでした。

「独鬼」にはその感心が2つあります。

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【続き】

1つは女(鬼が保護した娘)と…その因縁の彼氏になる男…この2人の4つの年代を4人ずつの役者が交代で行っていくこと。それが単に成長の表現や役者の適性を活かしたものであるに留まらず、終盤でその4組を同時に使うことで…時の流れ・積み重ねを絶妙に表現し、そこに立ち会う…鬼に迫る情感を湧き立たせる演出になっていくのが素晴らしかった。ここら辺にかなり涙腺を刺激されました。

もう1つが…くどいほどに繰り返し繰り返し…しかもほとんど同じパターンで迫る鬼の危機…その積み重ねによる鬼の疲弊感。不死である鬼には…生半可な危機など通用しないわけですが、精神的にヤラれる感じが実によく伝わる。女の幼い「不殺の信念」を背負うことになり、なまじっか それを救えてしまうことにより…一見すると負のスパイラルに陥る展開でしたが… しかし、最後に号泣する鬼の周りに集まる村人たちの姿を見て…逆にこの女が…「人に受け容れられぬ魔物であること」から、不死の鬼を救ったのだ…と思えてジワっときました。
鬼が世話をしてた赤子が…いつしか鬼を庇護する母になっている。鬼の後の人生は…そんな甘いものではないでしょうが…これがあれば生きていける…そんな気にさせるエンディングでしたね。

竹村さんの全編絶えることなく続く…柔らかくも力強い演技…ほんと良かった。

高安さんの有無をいわさぬ笑顔、破壊力あった。あの逆らえない感じ、すごい。あと、名古屋観劇人としては、山本一樹さんが壱劇屋に馴染んでハマってたのが嬉しかった。人間じゃない感…デスノートの悪魔然とした佇まい…「首、コキン!」がむちゃむちゃ不気味で味があった。
白夜

白夜

エス・エー企画

G/Pit(愛知県)

2018/07/27 (金) ~ 2018/07/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/07/28 (土)

まず会場に入ってびっくり。G/PITという小劇場には…なぜだか舞台美術の域を超えて、会場そのものを異空間にしたくなる何かがあるのでしょうか。他の劇場にはない「長い廊下」が異空間に向けての良い助走になるからかなとも思う。

過去にも…ある時は「居酒屋」、またある時は「動物園」、時には「うらぶれた寒村」だったりしましたが、今回は…扉を抜けると「シックで都会的なカフェ」でした。本作「白夜」の舞台は うらぶれたホテルの一室なので、G/PITの殺風景な廊下から直に舞台でも何の違和感もないぐらいなんですが、ここで双方に異質な空間を挟むことに…何か演出意図があるんじゃないかと思えて面白い。何せマダムYukiこと演出・鹿目さんがお出迎えのカウンターですしね。この為に営業許可まで取ってるのに驚きです。

さて ようやく本編の感想。寺山修司作品はたぶん初めて。一つ目立って印象的なのはヴァイオリンによる生演奏… しかも劇伴に留まらず、効果音まで響かせるのがとても効果的で、心理の動きを描写する高音が…観客の動揺をさそう感じでドキドキさせてくれました。生音の威力すごい。この仄かに狂気漂う舞台にぴったし。

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【続き】

筋書きとしては、「失踪した恋人を探して5年もの間、各地を転々とする男の…ある宿でのワンシチュエーション」なのですが、男の未練と苛立ちと諦観が綯い交ぜになる空間の中で、妙なハイテンションが垣間見える主人公・松井さんの演技の異質さが絶妙。精神的に疲弊しているにしても、極めてピーキーな性質を漂わせ… 「隠された何かがある…」と感じさせる空気。
それが実際に謎解きに結び付いていく辺りが、全てが明かされた後に…ぐっと腑に落ちる感じになって心地よかった。

ぶっちゃけ、室内でスキップを踏み始めた時の異様な空気… くんかくんか匂いを嗅ぎ始めた変態性… 好きだなぁ。

小熊さんと堀さんの… 一種、童話にでも出てきそうな妖怪的趣きも味わい深かったです。平林さんの客商売らしからぬ無遠慮な振る舞いも面白かったし、何かあの「赤い靴」がとっても印象に残っていて、…実はあれも遺品では…ってちょっと疑っている。

そして演出としては… 長時間の暗転なんかも印象深かったですが、私の好みで一つ特出しておきたいのは「窓」の存在です。

少しぼやかして言いますけど、話の各種展開と演出で盛り上げた「窓の外の描写」… それはこの空間設定の根底でもあるのですが…
…「現実のものを装う」為にあつらえられた「架空の存在」が… 不意に「別の現実」を突きつけるという あの窓の演出… 絶妙な視界と環境音。あの瞬間の驚き。

今、この空間がどこにあるのか…ソレそのものを覆してみせてくれた感覚… そして演出意図に対して駆け巡った想像の愉しみたるや。

実際、一瞬…舞台設定自体に対するトリックを想像して、ここは本当は心療治療病棟なのではないか…とも思いました。そこまででなくとも… 白昼夢のごとき主人公の頭の中を… 別の視点で覗き見したと解釈して良いのかも。

戯曲は未読ですが、ここら辺は 感触的にきっと鹿目さんの演出による細工だと思えて、やはり芝居として観れて良かった。
さり気ない演出の妙技を味わいました。
輪廻輪唱アラモォド

輪廻輪唱アラモォド

右脳中島オーボラの本妻

ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)

2018/07/28 (土) ~ 2018/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/07/28 (土)

述べよ !
はい( ´ ▽ ` )ノ

オーボラさんの本公演を観るのはこれで4回目。いつも心地よい混乱のドツボに突き落としてくれます。

オーボラさんの特色と言えば、やはり怒涛の様に降り注ぐ「言葉の洪水」
ただし問題はその物量ではない。使われる言葉の一つ一つは…たいてい最初のうちはアカデミックさが漂うのですが、…言葉の韻や響きの類似性をキッカケに…まるでダジャレの様に全く別の趣きに転じ…爆発的な連鎖を生む。
しかもそれが…とても身近な俗なものだったり、時には極めて馬鹿げたものだったり… そのギャップの激しさや関連性の皆無さが常人の理解を遥かに超え、先を読むことができぬ濁流となって観客をさらう。

そして流された人は…それがいつしか心地良くなっている…恐るべき この麻薬性。
「理解を諦めることを公言するくせに、やけに気に入っちゃってる人」が…こんなに続出する芝居を他には知らない。

ごった煮になるそのスープに投入されるアレやコレやに…色んなヒントが隠されているのだろうなぁ…といつも思うのです。作中から観客が拾えたピースの掛け合わせで…脳内で再構成される物語や思考が無数にあるのだろうけど、それをいつかトコトン突き詰めてみたいよなぁ…と願ってやみません…が、その境地に達した時には、廃人になっていそうな気もします笑…
丸蟲御膳末吉さんの脳内って、一体どうなってるんだろうなぁ。発狂寸前のオタク哲学者… みたいな印象が付いていますが… 今もって謎な集団です、オーボラさんは。

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【続き】

さて、ちょっと前置きが長かったのですが、今回のオーボラさんは、そのいつもの特色を活かしながらも…初めて「あっ…何か今までと違うかも…」っと思わせる変化を感じたのが一番の印象。

オーボラ作品の登場人物は…たいていは誰が主役…という感じは全然無くって、すごく機能や軽重が分散して、確たる物語性も有るんだか無いんだか…って趣きが常なのですが、輪廻輪唱アラモォドは…何やらとてもドラマチックでしたよね?

ドロシー(#1)と よだか(#6)を核に…何だかよく分からないけど情感たっぷりのドラマが展開されていた様に伝わってきました

… ただし何が起こっているかは分からない(笑)
… 何だか分からないけど、すごく尊い感じ… 原始宗教?
…原語で海外のドラマ見てるみたいな感じにも似てるなぁ。

後は…もう印象本位なのですが…ばらばらの文字が…徐々に連なり…コトバとなっていくとことか… 役者の必死さと相まって、なんか良かった、うん。

驚きの生演奏、生歌とかも素晴らしかったなぁ。

…ああ…もう単語だ…あとはもう単語しか出ねぇ(笑)

拡声器、トランポリン、焼肉、白米、We Will Rock You、知恵の実、浜乙女、ロート製薬、7の倍数、未完の文字、フェイスペイント、合唱、ジャンプ…

そして…最後。
余韻も拍手も許さぬバッサリ感。

…やっぱ、唯一無二だわ。
HELP! from HELL!

HELP! from HELL!

team.ups!

ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)

2018/07/21 (土) ~ 2018/07/22 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/21 (土)

生温くなった地獄の再建… というトンデモ設定からの展開が見どころ。どう活かされたかは地獄に行ってのお楽しみ(笑)
人はどこまで行っても業を引き摺るものよのう。

イツキのボケぶりとフカワの佇まいが好みでした。

ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ

ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ

ニ兎社

三重県文化会館(三重県)

2018/07/20 (金) ~ 2018/07/20 (金)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/20 (金)

基本、喜劇的に事は進むんだけど、その端々に浮かぶ風刺と驚きと恐怖。真実すら効力を持たない化け物たち…飯塚の振る舞いが芝居の肝だ。小林の姿は現実の国民を映し出し、及川の嘆きは我々にこそ向けられた現実的な諦観に見えた。複雑な後味。

忘れる日本人

忘れる日本人

地点

愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)

2018/07/13 (金) ~ 2018/07/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/07/14 (土)

重い…手と腕がぷるぷるするんだ(物理)。

ただ…あの無様に漂流する舟の真実の重みを体験して…後からジワっと伝わるものがある(妄想)。

終始投げつけられる様々な飛礫、それが観客に当たって脳内で反応する…その数だけ巻き起こるシビアな現実の融合なのか。社会実験的。

가모메 カルメギ

가모메 カルメギ

東京デスロック

三重県文化会館(三重県)

2018/07/13 (金) ~ 2018/07/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/07/14 (土)

朝鮮半島北部 ヨナン温泉付近の湖畔の村を舞台に、日帝時代を背景にしてチェーホフ「かもめ」をベースに翻案した作品です。

この2週前に双身機関のチェーホフ「三人姉妹」を観たが、あれも翻案と言うべき内容で、上手く仕上げてくれると原作ストレートプレイより、極めて馴染み良い。
原作では どうしたって観る側が社会背景や価値観を共有し難いので、当然といえば当然だが、韓国は古典に対して翻案で挑むのが主流と知ってちょっと感心した。

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【続き】

観客に予め定着してそうな既存のイメージを演出として巧みに活用しているのが非常に印象的。

まずはボレロ。一定のリズムを繰り返すボレロを劇伴にまるでメリーゴーランドを想起させる人間関係のダイジェストが舞台を流れていき、音楽と重なり合う。イメージ的には狂想曲にも映る面白さだ。
ボレロ以外の音楽も、ともすれば陳腐にも映りそうな定番曲を惜しげもなく放り込んで、イメージ操作が上手い。その効果も含め、メリーゴーランド演出(勝手に命名)での人間関係の纏め方も非常に巧みで、あれほど人間関係が整理された「かもめ」は初めてて体験した。(言える程かもめはたくさん観てないけど、そこがとても印象的なのは確か。)

エンタメ志向的にも現代に馴染みやすいのでは?と思える。

あとマイクパフォーマンス。人によっては茶化していると映るかもしれないけど、ミュージカルの歌唱やダンスと同様の情感表現と考えればアリだと思うし、メタ感含みのシニカル分だけ私には好みでした。あとね「かもめ」での母(有名女優:原作役名 アルカジーナ)って、今まで悪役イメージしか無かったんだけど、ヌンヒ-塚口のあの昼メロ的演出の醜悪とも言える生々しさがすごく刺さった。禍々しくも感情移入させるヌンヒの生き様が圧倒的だった。悪役であることに変わりないけど、それがそうあるべき説得力が凄まじくて、役者の中では最も印象深かった。

勿論、背景としての歴史や価値観相異の表現もメッセージ性が高かったですが、それよりも人間としての生々しさの方が群を抜いて迫ってきた印象です。
ちょっとそこの宇宙まで

ちょっとそこの宇宙まで

試験管ベビー

千種文化小劇場(愛知県)

2018/07/06 (金) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/08 (日)

タイトル通り「ちょっとそこの宇宙まで…」の行楽気分だった乗客達を…不意に襲った災害パニック巨編・密室サスペンスロマン! 次第に拡がる…エモいエピソードを持たぬ者…彼女彼氏のいない者は人に非ず…の空気!シュウの…みえの運命や如何に!…なんてな(笑)

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【続き】

一切の深読みを許さないシチュエーション・ハートフル・コメディでした。あな楽しや。試験管ベビー・キャラクター大全!みたいなノリもふんだんで、いいのかなぁと心配になっちゃうぐらいのド直球のパロディの連打がぶち込まれる。
そんな中、マジなこと一つだけ言うと、みえの最後の気遣いが色んな意味で場の空気を救ったね。いらん枕詞つけんでもホンマええ娘やん。前作とははっきり色の違うキャラ作ってきて、中島風歌さん良い芝居してる。

後は気に入ったとこ 挙げてこ。


・メーテレ、テツオー(?)は、超反則技級に大ウケでした。
奈々さんは、ターニャ以降 この線がハマリすぎ(笑)
知幸さんの"二段階変形"鉄郎の存在感! 膝、大丈夫か(笑)
そして彼の身体はやっぱり試験管ベビーでも武器でした(笑)

・一度たりとも地に着かぬ超滞空飛び道具 マーク。写真入りブレスレットに死亡フラグを想起(笑

・どツンデレみさきの荒々しさはツボ(笑) そして伊藤の告白に…思わず上手観客から漏れた「ヒュ~」が何ともハマってて、良い回でみれたなと思う。

・ヨーコ ヤマモト、黛佳さん試験管ベビー デビュー。よく通る声と凛とした振る舞いが役にピッタリ。でも一番の名台詞は「パク」笑

・1234。読みのネーミングセンス抜群。空気読めないボケに柳橋が放った平手ツッコミの轟音に首が飛んだかと(笑

おまけシアター。出番少な目の役者の見せ場になる好企画。999は本作の迷キャラ2人の魅力延長、乗ってみてぇ笑。2本目は何だこの空気(笑 前回同様 奥村さんイジラれ芝居が何ともじわる(笑
鍛えられた宗平さんの肉体美! 次は知幸さんと筋肉対決を!
体温と体液

体温と体液

よこしまブロッコリー

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2018/07/06 (金) ~ 2018/07/09 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/07/08 (日)

人と機械人形が自然に混在し、社会を形成する世界が舞台。

登場人物の思考と仕草や反応が緻密にコントロールされている印象で、その差異の表現に「人と機械人形を分つものは何なのか」を常に考えさせる。

全般として非常に発言が理性的で、厳密な言葉選びや…微妙な差異を意識した説明を駆使する…「繊細さ」が心地よい。

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印象的なのが…機械人形の方が人らしく映り、思わず感情移入してしまうこと。概ね人間らしく映るものとは「適度な揺らぎ」であって、無駄のない挙動から少し外す。如実だったのが、3号の物忘れ(はるが来るのを忘れていた)で、8号に「機械が忘れてどうする」とツッコまれていたが、これが みみお によるチューニングなんだろうなぁ…と思う。

そういえば、平田オリザがロボットにつけた人間らしさの演出も、無駄な動きや適度なランダムさの付加だ。8号に戯れに付加される「見栄っ張り機能」「舌打ち機能」等… 笑いの要素もありましたがね。

ここら辺は仕草の工夫ですが、もう一つ本作は、人間と機械の差を…「思考」に関して、数々の言葉で表しました。
「機械は受け容れることしかできない」「機械は感情があるように振る舞う。対して 感情を押し殺そうとしているなら、それは人間だ。」「言葉の機微や心の裏側までは数値化できない」…等々。

とても気の利いた台詞たちでした…名言集やった。
これは、概ね機械人形に足りないものに着眼したニュアンスですが、一方で…機械人形が自身を評して語る台詞は、本当に誠実です。

対して市長の娘は、序盤は…まっすぐに「嘘を言わない誠実な駆け引きをしている姿」が強調された印象があるけど、
結局嘘を言っていたというのが、あぁ、この娘、やっぱり人間なんだねぇと思う。

なんとなくね、機械人形の方に感情移入しちゃうのは、機械人形が「人が求める…理想の人間」としてチューニングされているからじゃないかな…とも思います。
そして最後に…心揺らぐ みみおを機械人形たちが暖かく見守る図式。

理屈によらない人間らしい苦悩を浮き立たせる為に、傍らに機械人形たちが居たのかもしれないけれど、… 機械人形たちも… やはり人間らしかったと思うのです。
なんのかんの言って… 理解が個体の力量の範囲に留まるのは、人間とて同じことだ。

判らないことに悩み…心を痛める姿… 人と機械人形の間に何の差があっただろうか… あぁ、やっぱりこの機械人形たちが愛おしいねぇ。

さて、ミステリー面。「ヤマダと少女」絡みの話。

本筋としては 、それまで みみおが引き摺っていた諸々をに対する決断の「キッカケ」に過ぎない出来事とも思えるのですが、それにしてもヤマダの言った「お二方の理解されない孤独」とか
多義的に読める「父からの手紙」とか…すごい意味深。単なる暗示かもしれないけど、ヤマダには…作中で みみおや7号が解説した以上に、思惑や裏の関係性がありそうで、もっと深読みできる余地がたっぷり。(ほぼ2次創作になるからしないけどね笑)
終盤、びびっと来たのは、記録と記憶の違いのくだりですね。

記憶の"温度" とか言い出したところで、思いっきり前作の「声の温度」を思い出しました。

声の温度では… 「言葉」に「感情・真意」を乗せたものが「声」…と理解できましたが…、
記憶の温度では… 「記録」に「感情」を付加したものが「記憶」と表現されたと思います。

またしても「感情」だ。

すごく理性的に言葉を駆使する よこしまブロッコリーですが、そこに必ずさりげなく「感情」を上乗せして、芝居を作る。
劇団の根底にあるものを「温度」というキーワードの中に感じました。

そして作品の味を体現してくれる役者さん方。

舞台の上で役者一人一人が感じさせてくれる思考が多岐に渡り…皆んなの反応に目を凝らしたいのに、一度には目に入りきらない。
一度に見きれないのが、ほんと口惜しい。

主人公・みみおと…大好きな機械人形たちだけは個別に感想を。

みみお(榊原さん)は、人前での冷静で超然とした態度に対し… 一人になると表出する弱さ…記憶と感情の反芻に苦しむ描写のギャップが
とても見応えあり。こういう榊原さんは初めてみた。

3号(早川さん)は演算能力は最も劣るのに、コミュ力に特化したタイプというのが、これもまた人間らしさ。みみおに抵抗する感情に対し、「所詮、それも俺が作った感情だ」と突き放されて、
そこからの感情の噴出がとても心に残った。

​7号(鶴田さん)は3人の中では一番機械に近い趣きの冷静さと客観視で、本作のロジカルな基調を支えた感じでした。格好良い!

8号(山形さん)は、序盤、膝を故障している時の動きがダイナミック
身体の大きさを余すところなく活かした動きで、とても目を惹いた。歩いているだけなんだがぁ(笑

そして、3体の中で最も新型であるのが信じられないほど…雑で粗暴な人となり。
「優秀な人が好人物とは限らないよな」って感じさせるの面白い。
そのくせ、えいたが表出する終盤… みみおとの対峙、痺れる…痺れるわ、美味しいとこ持っていった。

あ、そだ。あと にへいさん。
胎内の時、私…「にへいさんの暗黒面の芝居は…少なくともよこしまブロッコリーでは絶対観れない気がして…」
なんて感想を書いてたけど、全然ちゃうやん(笑)

普通にワルい感じがムンムンで、言葉遣いだけやたら知的なので、むしろ超インテリやくざ風。

こりゃぁ、にへいさん…若い頃は馴らしてましたね(笑)
歌は自由を目指す

歌は自由を目指す

弦巻楽団

津あけぼの座(三重県)

2018/07/07 (土) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/07 (土)

タイトルから予感させる「歌の賛美」とはちょっと一味違う…でもソコが良い。決して華々しくはなく、これは人生そのもの…泥臭く… 仄かに酸っぱくって塩っぱくって… あっ…ソコも繋がってるのかも。皮肉的に歌と涙が重なるシーンも実に良かった。バタバタなコミカルなところも実に愉快に楽しめた。
やっぱフライデーが最高にイカス。マネージャーとの絡みのイカレた会話もノリが最高。ヤマトと3人での諸国漫遊記でもイケますよ、この作品(笑)

夢見るリリィと華麗なる生活

夢見るリリィと華麗なる生活

妄烈キネマレコード

ナビロフト(愛知県)

2018/07/05 (木) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/07/07 (土)

シェアハウスでの人間関係。一つ屋根の下で繰り広げられる…親密なそれは、家族ほど無遠慮でもなく、ほどよい距離感と気遣いの溢れる空間。

つい最近、劇団アルデンテ「みえているせかい」でも感じた…漫画なら愛すべき定番のオーソドックスなシチュエーションなのだが、リリーハウスの物語では…「愛おしいほどの日常の空気」を作ることに、より精力が注がれていると思えた。

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【続き】

ほとんど素じゃねぇ~か…と思える演技、どめどなく続く雑談、さりげなく入る飲食のシーン、それらが生み出す生活の自然さ。自然な親密さの空気を形作り…積み重ねることが…最も重要視された演出だったのではと思う。

じっくり形成されるこの「空気」があったればこそ、最後に集約される「それを失うこと」の当事者にとっての重大さ、未練の大きさがリアリティを持つ。そして…そこから一歩踏み出すことの苦悩と…次のステップに適応しようとする決意に…ドラマとしての深みを添える。

想いが深い故に… 何か理由をつけて… 自分が犠牲になってでもソレを残そうと思ってしまう人に、「犠牲がある時点で… それがココにある意義は失われている」のだと…諭すかの様な結末でした。
この逡巡は、リリーハウスのみならず、「1年続けた連載」「自責の念から遠ざけた家族」「日本での就職の志」「ここまでリリーの力になれた手段」…等々で個々のドラマからも積み上げられて、同じ視点で群像劇としても束ねられていましたね。

言い方を変えれば、「引き際の難しさ」でもあって、期を逃すと歪みや悲劇しか生まないのだが… 本作では何度も繰り返す… 「思い出は無くならない」と。今 大事なものが そこから無くなることは、それを否定することでも…無にすることでもない。役目を終えたモノ・コトに…感謝の想いを捧げつつ、次の一歩を踏み出す。まるで儀式の様に象徴化された「マチ子の漫画」は…現実ならなかなか形にし難い想いを素敵な実体にして…良い幕引きだったなぁとしみじみ思います。

(ぶっちゃけ、売っている台本を「マチ子の漫画」にソラ見して、かなりドキドキした。そして、台本のラストに書かれた… 『物語は「おわり」、人生は「つづく」』の一言もむっちゃええ。)

好きなトコとか諸々。

・舞台美術の凄さは言うまでもない。
・波音、子供達、蛙の鳴き声の微かな環境音
・冒頭からそれと分る常滑メロディ
・裕次郎とマチ子の告白(?)シーンの盛り上がりと…そこから一転、抜け目なくドア裏に貼りついてオチを作った3人
・オヤジへの手紙を…フェイントで読み始めた田村麻呂の不器用な愛情
・帰国間際、お土産をネタに罵詈雑言を交わす春麗と田村麻呂
・終始いぢられ続ける裕次郎… というか森さん(笑)
・若い座組の中で全く浮かず…でも存在感を放つくらっしゅさん、凄い。
・過去役とはイメージまったく異なったアンジェさんの春麗。どこで百烈脚が出てくるかドキドキしてました(笑)
・まったくブレないリリーさんのダジャレ
・ぶっちゃけ、工場長が救われる展開は無いと思ってて、意表を突かれた。ある意味、彼だけが初志貫徹!

考察追記。→ ゲンはリリーハウスの大勢とは逆に近々で新たな一歩を踏み出した人、田村麻呂はそういうのに慣れている人。彼らの行動の裏にはその経験が活きていて、渉外支援に何かしら彼らが絡んでいるのは納得。ゲンはもう少し表立ってもいい気はするし、全体としてこの図式をハッキリさせても良いのだろうが、そうしないところが本作の味かな。頑張りすぎると前進を急き立てる圧迫感が出るし、ゆっくり自分のペースでいいんじゃないか…というメッセージであるのかも。工場長の描写にその色が顕著。
「ムイカ」再び

「ムイカ」再び

コンブリ団

津あけぼの座(三重県)

2018/06/30 (土) ~ 2018/07/01 (日)公演終了

満足度★★★★

序盤から独特な進行で、目の前にいる人たちの「立場」がなかなか掴めない展開に…非常に興味を惹かれた。メタ的にも、不条理劇的にも、ファンタジーにも映るが、ふと…まるで「思考セミナー」の様な…社会一般の常識・定説・思い込みを疑わせるよう導いてくる展開が特異でした。

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しかも、それを入念に何度も繰り返す… ここが肝なんだろうな。いわば…言い訳を追及してくる… しかも冷めた…シラケた感じで…というのがポイントで、何かを主張する時に…熱く真正面から伝えてくるのではなく、内からじわっと自問自答させる感じなんだよね。だから原爆をモチーフにしながらも、割と緩い感じで迫ってくる感覚で… 外圧的な悲劇や恐怖を突きつけてくるのではなく、それは元々…観客が持っている知識や経験に委ねている気がする。そんなものは他所からいくらでも得られる… むしろ、知っていながら目を背ける… 別の大義を優先する…そんな人たちに向けて、閉じた心に囁きかける感じがしました。

​想像すれば世界は変容する…か。想像しなければ…できなければ何も変わらない…カミサマは何もしてくれない。…その空気とは真逆に、けっこう辛辣なものを携えていますよ。祈りとは対極だ。

各論ですが…意味深に多義を想起させる舞台美術…、急所に打った碁石の様に色んなところに効いてくる小道具のスリッパ…立場が分からなかった人たちが複数の方向に効いてくるもの同じ感じかな…とっても良かった。

全てが「自ずと考えさせる」… そんな誘導に繋がっている様で、面白かったです。…なんてヒトゴトな感想を吐かれるのは不本意かもしれないですが(;^_^A

ラストシーン、むっちゃ好きですね。未明に展開する穏やかな… 言葉なきドラマ。視線で想像させる演技…とっても良かった。これが悲劇の直前というのを観客は知っているから… 尚更この時間が尊い。
三人姉妹

三人姉妹

双身機関

七ツ寺共同スタジオ(愛知県)

2018/06/30 (土) ~ 2018/07/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/06/30 (土)

驚いた… 板付きから劇団イメージ通りの白塗りアングラ… かと思いきや、そこらから更にぶっ飛んでいった…これは良いよ。

楽曲の選曲などの演出の妙に留まらず、時代と土地を超えた硬派な翻訳・潤色と構成の味わいが深い。数年見損ねている間に進化してた気がする。

ランチタイムセミナー

ランチタイムセミナー

劇団ジャブジャブサーキット

岐阜市文化センター(岐阜県)

2018/06/23 (土) ~ 2018/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/06/24 (日)

観客が事件の大筋を知っている前提なのか、説明的台詞があまりない。知らなければ、会話の中の断片的なピースを…パズルを解く様に繋ぎ合わせていく感じになるが、むしろそれも一興。…逆にそれが本来の楽しみ方かも…。

逆に史実を知っていると、あまり謎が拡がらなくて想像の余地がないきらいもあるのだが、さて、この事件をまったく知らない若い世代には…この作品はどう映ったのだろうか…というのは素朴な興味です。

既知・未知いずれにしても、公私に広く及ぶ思惑を想像させる「不明瞭な会話」が交わされる中、非日常の緊張感と日常ののどかさが交錯する空間が拡がる…非日常の中の日常… 日常の中の非日常が…相互に際立つ。 …そこに暗躍する…「思わせぶりな態度/行為」の数々が想像を掻き立ててくれた。

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(続き)

史実はあっても、誰が何を知っているはフィクションだ。青木大使や近藤がやけに意味ありげな存在感を示すのに、結局事件の進行に関与していなかった結果には楽しく騙された。

最も大きな後味として「行為と…それを行う人物の人柄が必ずしも一意にはならない社会・政治の難しさ。人柄そのままでは生きられない… 抗えぬ社会背景」というものがじんわり伝わってくる。
その最たるものがMRTAのリーダー・セルパのチュー事件と…ひた隠しにされていたコッテコテの大阪弁。おそらく本作一番のフィクションと思われるが、後藤さんの…怖さと温かさが同居する演技が本当に好み。(笑いとシリアスのバランスに苦心されたと伺いましたが、さもありなん。)

勿論テロが許される筈もないが、それを成すまで追い詰められた社会背景は察して余りある。しかし、志を同じゅうせずとも共存できる… 石嶺に対する「ドウシではないが、ダチだな」というセリフが、彼の本来のメンタリティを窺わせる。それが転じて…セルパの共存を許さなかったペルー国家の何かを暗喩する。

終盤の山場、長い「暗転」の中での救出作戦(史実でのチャビン・デ・ワンタル作戦)は、1ヶ月前のフラジャイル・ジャパンを思い起こさせましたが、救出後、半年経ってから山崎書記官が漏らす「喪失感」は、まさしく地震や津波によるソレであり、「一瞬で消えた日常」という観点で同様に括れる印象を持てるのが意外だったし、非日常が日常になっていた人間の皮肉な慣れにも想いが及ぶ。

そして石嶺の「無力感」からの脱出も印象的なポイント。公邸跡に脱出後も数度来ていた石嶺が…何故このタイミングで初めてセルパ達の亡霊を見るのか…時間の経過が石嶺にもたらすもの…セルパ達を救えなかった無力感に苛まれていた石嶺が…この経験を時間を掛けて消化して…次のステップに進んだ今だからこそ…亡霊(現実)を見ることができたのではないか。
その意味でも被災後のメンタルの克服に類似する空気があった。

作劇で1つ疑問に思ったのは「リマ症候群」の扱いです。

リマ症候群…「監禁者が人質の教養や優しさに触れて、人質に親しみと敬意を持ち始める現象」は、この事件を代表する現象としてよく取り沙汰されるが、本作でのその描写はあくまで「監禁者と人質の親交の表現」に留まる。岸とサキの話…(絵の才能を褒めた話)やランチタイムセミナー等への相互参加は記録に残る実話相当だが、一番センセーショナルに語り継がれる… 救出作戦に対する応戦で「MRTA隊員が人質を撃てなかったエピソード」は描かれない。安直かもしれないが、…一番感動を誘いそうなところに敢えて触れない。

「支配者層への批判」という観点でも、救出作戦部隊が「投降したMRTAメンバーも殺害した」という話は出てくるが、あまりフォーカスされない。セルパと石嶺の言葉の中で語られるだけで、それに共感を誘うような根拠を伴う描き方はしない。

それを見せ得る時間帯は、全て「暗転」の闇の中… 銃声の中… だ。

そのいずれよりも「日常の喪失(本当は非日常なはずだったのだが…)」を描くことを重視したということなのかな。…終わり際の心象は「震災テーマ」の芝居の味わいに近かったとも思える。

初演からどの程度変わっていたのかには興味津々なのだが、当時でも阪神淡路大震災は経験しているのだから、そういう重ね合わせあってもおかしくないのかな…。
みえているせかい

みえているせかい

劇団アルデンテ

御浪町ホール(岐阜県)

2018/06/22 (金) ~ 2018/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/06/23 (土)

ぱっと見で舞台に流れる空気はコメディなのだが、微笑んでやり過ごす登場人物たちが「裏で湛えている心理」に想像の翼を広げると…とても切ない感情が湧いてくる。何とも両極端な二面性を持った作品だと思う。

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(続く)

先にコメディ面の面白さを挙げる。

一つ屋根の下に集う「心優しき奇人変人たち」のてんわやんわ…漫画なら定番のオーソドックスさだが、それでもなお万人に愛されるシチュエーションの楽しさ。

一見 巻き込まれ系主人公の絵本作家・洋介。

その前に現れた押しかけJK弟子の永遠(トワ)は…オツムが弱そうで笑える受け答えの中に妙に本質を突く知性を感じたり、ビジネストークの様なエセ英語を口調に散りばめる等、愛らしさと笑いに知性を添えた好人物でした。

大家ちゃんは いわば幼馴染キャラと妹キャラを足して2で割り、有り得ない立ち位置(大家)にぶち込んで、ツッコミとボケを兼ねるユーティリティプレーヤー。

そして、オタク、オカマは笑わせる(笑われる)ツボを押さえて嵐の様に舞台で暴れまわるが、後々、「異質を温かく受け入れられる資質」を秘めている点で…納得の役どころですね。(虐げられる人達だから優しくなれる感じ。)

何にしても、話に深く潜ろうとせずとも、とても楽しめる作りになっていました。


しかしやはり、その反面として迫る「切なさ」について多くを語りたい。
… そのカギは…主人公 永遠(トワ)が心酔する…洋介作の「ある絵本」が握っている。​​

この絵本の中身がどんな物語なのかは作中では多くは語られない。その絵本に投影された洋介の心情、永遠が感動した背景、元カノ・亜里沙の反発も…深く掘り下げられることはない。

本作の この「裏」の部分に…何らかの気配を感じ取った人には、この曖昧さは物足りなく感じるかもしれない。ただ、これだけ布石を打っておいて、その先を観客の想像に委ねるのも大胆だし…現実世界のコミュニケーションとしてリアルだとも思える。

一見、朗らかに生きる人達の裏にも切ない何かが必ずあるのだ… そのことだけ感じさせ、そこから観客が想像を巡らす…気配を窺う…「他人の身になって考えること」を促しているのかもしれない。結果、察したモノが何であっても、きっと良いのだろう。

しかし、作演の近藤文拓さんは一つ大きなヒントを作品の外(Twitter)に公開している。

それが…作中でその存在だけが触れられている絵本「みんなのせかい」のラフ画像だ。

主人公の「ハリネズミ」が…彼のテリトリー外から現れ仲良くなった友人「小鳥」との仲違いから話は始まる。

​そこを起点に… ハリネズミは小鳥の足跡を追い、小鳥の心情を想像し、自分の存在の小ささと取り返しのつかない行為に苛まれ、…もはや「小鳥と交われぬ…住む世界の違いに絶望する」…そんな空気を想起させる内容なのだが…

これは明らかにハリネズミが洋介であり、小鳥が亜里沙と思える。

​ただこの絵本… 本当に洋介と亜里沙の別れの原因になる作品だったのかは曖昧だ。この絵本に関する永遠からの振りに対し、亜里沙のタイトルの記憶が曖昧だったからだ。

この解釈次第でこの絵本の位置づけと洋介たちの心情は大きく変わる。

私には、この絵本に、洋介の作品に口出しをした亜里沙との揉め事、亜里沙との別離、…洋介の後悔… 事の顛末がすべて映し出されているように見えた。空と海は…どこまでいっても交わらない…という描写は、打ちひしがれる洋介そのものに見えた。

だからこの絵本、亜里沙との別離の後に手を加えられて今の形になっている気がしている。洋介の苦い経験を元に… 亜里沙への詫びと反省と亜里沙への募る想いを反映して作り直されたもので、…でも未だに亜里沙には届いていない(読まれていない)んじゃないだろうか… (読んだけど反応してもらえなかったと洋介は誤解している?)

亜里沙には…洋介の「自分にみえる世界」への不満、その世界から出ていこうとする行為…、それを悲しんでいるととれるセリフがあった。公開されている「みんなのせかい」とは齟齬があるように思えたので、亜里沙が知っている「みんなのせかい」は、手直し前のプロトタイプだったって想像してる。

​しかし、もし本当に…この「みんなのせかい」が亜里沙と揉めた作品だと解釈するなら、当時の2人の事態はより深刻だ。亜里沙が身近にいたのに… 洋介は亜里沙に心を開いていなかったってことだ。

確かに、これは亜里沙にとって受け容れられぬことかもしれない。

…だが、少なからずこれは作家の業だよね。作家はうつろう精神を作品に反映するもので、必ずしも一貫したロジックを連ねるものではない。これを受け容れられる広い懐が…作家のパートナーには必要に思えるが、亜里沙が改めて現れたということに…この3年の間に…そういう成長があったことを窺えるのかもしれない。

さて、もう一つの関心が… 永遠がこの絵本にいったい何を見出していたのか…ということ。…切ないながらも…ネガティブな心情が表に出ているこの絵本に… 何か共感できるような境遇に…永遠は居たのだろうか…

彼女の境遇もセンセーショナルな取り沙汰がされる割に、曖昧なまま話は進む。親友との楽し気なコミュニケーションを交わす反面…「両親が共に自殺」は思わず息を呑む。何となく「近くて遠い人たち」的な人間関係を想起するので、その辺りに共感したのかもしれない。

…ただ、何となく洋介の込めた意図とは別の価値を、この絵本に見出している可能性も感じていて面白い。(永遠のキャラクターならあり得る。)

洋介も、そこに何か新たな気付きを得たのかもしれませんね。良い関係だなぁ…実は作中で多く語られる「大人と子供」の話は… 私にはあまり刺さっていない。大人と子供で差がある話に思えなかったからかな… 作中、子供だからと変な線引きをする人も、大人だからと理不尽な責を求める人もいなかった。なんか優しい世界だったよね。
Re:take ( reload )

Re:take ( reload )

fuzzy m. Arts

シアターココ(愛知県)

2018/06/08 (金) ~ 2018/06/09 (土)公演終了

満足度★★★★

のっけからICUで臨死を窺わせる深刻な状況設定…されどそれを真っ向から突き崩すようなコミカルな登場人物(?)たちによる出だしで…不思議な雰囲気でした。


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(続き)

主人公レレの記憶を次々と遡る旅路…それに付き合わされる母ヨウコ。様々なエピソードを交えつつ…再生される記憶は…どうしたって何かしらの事件の真相を明るみにし…何かの解決を…さもなくばオチを与えてくれるものと思われた…が!…「あの子の意識に入って助けるんじゃないの?」というヨウコのツッコミが、まさしく観客の気持ちを代弁する。

しかし、そこにあったのモノは… ただ丁寧に… 愚直に… ひたすら積み重ねられたレレの人生だけだった。(一部、ネタとして捏造があったけども笑)

もちろん… 「何もなかった普通の人生」… とはとても言えない…コミカルで波乱万丈とも言える…賑やかな人生だったが、何かを成したか?… といえば、胸を張って威張れるほどのものは何もない…

…しかし… しかしである。

確かに彼女は… 彼女の、彼女だけの人生をちゃんと生きていた。その早逝を他人に憐れまれる筋合いなどなく…。

正直… 悔いが残らないはずないと思えるその死に方に際して尚、それをあるがままに受け入れるレレの心情は非常に印象深い。

そして、その遺志を胸の内に昇華する母の姿もまた味わい深いものでした。
最後の数分に想いが凝縮されている感じがしたなぁ。でも…ではこの最後だけがあれば良いのか?…というと、そういうわけでもなくてねぇ。アレを味わうのに… 実感するのに… あのなが~い時間が必要なんだよなぁ。面白い後味でした。

タイトルに使われる Retake(=撮り直す)のイメージ通り、記憶が次々再生されていく作品だけど、密かに : が入って、Re: (=Reply?)となっているのが「レレの自問自答の対話」や「母娘の対話」を象徴しているのかな…って感じもしましたね。

…で、これだけ感想にすると何か湿っぽいんで言うけど、…芝居の大部分を占める… レレの人生の…その周辺の人たちも含めたハチャメチャさの「笑い」は、かな~り秀逸で… なんかしっかりしたコントをたくさん前座に仕込んでいるかの様でした。

好きなトコ触れると…烏丸兄や小暮父のフリーダムさ、それでいて憎めない感じの滑稽さは良かったね。

ヨウコ&レレの… ダメ男趣味の超似た者母娘っぷり… 母娘双方が自分でもそう思っている悟り感、それでありながら…共に抗えない感じも面白い。

Wストーカーのレレ&チャコ18の…オタク的結束感のあるコミカルな愛らしさはハマる。妙な言葉遣いも良い。すっくと立った河合さんの股の間から顔を覗かせるダミさんという…一種キメラの様な姿でストーキングする楽しげな様子はベストショットでした。そして、ここで出てくるネッシーは、ちょっと想像を絶するクリーチャーだよね。喋り口の陶酔感が何とも言えない(笑)

レレ&チャコ14の腐女子トーク。あのリレー創作でBLを一文ずつを繋いでいく妙技は、まるで将棋や囲碁で…一手一手つむいで… 作品(好勝負)を形作るかの様で、内容のバカバカしさとは対照的な軽妙さで良かった。

そういや、河合さんが18でリタイヤするのに、イーダさんが14まで引っ張るのも印象的。被り物しかり、こういうのを容赦なく…徹底的にやるのはファジィの特質だよね。
嗤うファントム

嗤うファントム

空宙空地

津あけぼの座(三重県)

2018/06/09 (土) ~ 2018/06/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/06/09 (土)

まず関戸さんに最初に伝えた感想は…「空宙空地、遂に芸術作品を作っちゃったって解釈でおk?」でした(笑)(判る人には判る)

ヒリヒリする空気と緊張感。背景を想像しつつ駆け引きを楽しむ芝居…とはいえ、観ている最中はどこが駆け引きか本音か分からない…というのがキモで、敢えて言えば、だんだんと誰の言うことも信じられなくなるというミステリー・サスペンスの優れた融合でした。

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(続き)

到底そんな時間は無いのだが、ネタを理解した上…2回目で各登場人物の思惑の芝居を楽しみたかった良質の芝居でしたね。とりあえず空宙空地は必ず円盤が出ると信じてるし、作り手は再演できる質と反応の手ごたえも感じているみたい。善き哉。

さて、ちょっとツッコんだ感想を連ねたいけど、言うまでもなくミステリー・サスペンスで「犯人はヤス」みたいなことは言えないので…極力ぼやかすけど、空気も感じ取りたくないという未見でDVDを楽しみにしている方は回避してくだされ。

とても複雑な人間関係と背後関係なんだけど、かなり明瞭に某氏が謎解きをするので、複雑な割には表面的なことはしっかり頭に入る構成です。ミステリーが苦手な人も十分に楽しめるはず。そのくせ、カマかけが盛んに行われて、状況も二転三転するので好きな人でも追っかけるのは結構大変。

そして、核心の人の背後関係は…やはりしっかり謎なのです。そこに深読みしたい人の楽しみが残されている。

ミステリー・サスペンスなんて、かなり好みに左右されるジャンルだから客を選びそうだし、ともすれば空宙空地が定評を築いてきたジャンルと一線を隔しそうなんだけど、広く楽しめる工夫とチューニングがされてたな…という印象。こうやって、作品の幅と客層を拡げていってくれるといいな… と、ストーキング・ブルース以来の緊迫感が大好きな私は思います。

​さて、改めて冷静に台本を読んでいくと…、後で明かされる背後関係も踏まえると…この反応はコレでいいの?って思う個所は結構ある。でも、よくよく考えると、コレは 各人の事情の理解と思惑にバラツキがあるってことなのかな。仕掛け側の黒幕にとって、実は各人は思い通りに動いていないんだろうな…とか思える。

つか、黒幕ですら「いまそれ言うか(笑)」って発言が出てきて、「動揺」っていうのが上手く表現された芝居だったなって思う。

一方で、やはり核心の…黒幕の更に裏…HKなんですが。彼の立ち位置と思惑がミステリー好きに残された 深読みの楽しみ。

作中、彼は他者の反応を窺いながら真相を探っていきますが…あの数々の準備は、真相を予め知らずしてできることなのか…って話ですよ。つまり、最初の仕掛けの時点では受動的立場だったとしても、少なくともこの芝居が始まった時点では、彼は分かっていながら相手を手玉に取れる立場で楽しんでいたってことですよね。

そもそもやはり一人ではできないことだし、KTとの共闘は合理的。そしてKTが絡むなら、HKはそもそも首謀者的立場にいた可能性もあるわけで。対するYHの主謀的動きにどこまで独自性があったかは分からないですが、KTの誘導がすべてという空気は十分にある。江戸川乱歩の世界なら、HKとKTは同一人物の可能性すらありますよね~。

そして、ここでの収益が…この入念な準備と細工と時間に見合うか?という話もあって… とてもキャッシュでは見合わない気がする。
やはり、ここは芸術作品ですか? 立場は違えど、趣旨は全く同じかもしれない。それともサディスト的な楽しみでしょうか? あ~想像するの楽し。
鏡の星

鏡の星

劇団あおきりみかん

G/PIT(愛知県)

2018/05/30 (水) ~ 2018/06/04 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/06/03 (日)

役者が2倍おいしい仕組み。役者専念の鹿目さんや2016年観劇マイベスト「棘」の不思議少年からの客演も観れて美味しすぎる。お話もあおきりとしては異色の切り口で観客に挑戦状を突きつけた感。

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