体温と体液 公演情報 よこしまブロッコリー「体温と体液」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2018/07/08 (日)

    人と機械人形が自然に混在し、社会を形成する世界が舞台。

    登場人物の思考と仕草や反応が緻密にコントロールされている印象で、その差異の表現に「人と機械人形を分つものは何なのか」を常に考えさせる。

    全般として非常に発言が理性的で、厳密な言葉選びや…微妙な差異を意識した説明を駆使する…「繊細さ」が心地よい。

    以降、ネタバレBOXへ

    ネタバレBOX

    【続き】

    印象的なのが…機械人形の方が人らしく映り、思わず感情移入してしまうこと。概ね人間らしく映るものとは「適度な揺らぎ」であって、無駄のない挙動から少し外す。如実だったのが、3号の物忘れ(はるが来るのを忘れていた)で、8号に「機械が忘れてどうする」とツッコまれていたが、これが みみお によるチューニングなんだろうなぁ…と思う。

    そういえば、平田オリザがロボットにつけた人間らしさの演出も、無駄な動きや適度なランダムさの付加だ。8号に戯れに付加される「見栄っ張り機能」「舌打ち機能」等… 笑いの要素もありましたがね。

    ここら辺は仕草の工夫ですが、もう一つ本作は、人間と機械の差を…「思考」に関して、数々の言葉で表しました。
    「機械は受け容れることしかできない」「機械は感情があるように振る舞う。対して 感情を押し殺そうとしているなら、それは人間だ。」「言葉の機微や心の裏側までは数値化できない」…等々。

    とても気の利いた台詞たちでした…名言集やった。
    これは、概ね機械人形に足りないものに着眼したニュアンスですが、一方で…機械人形が自身を評して語る台詞は、本当に誠実です。

    対して市長の娘は、序盤は…まっすぐに「嘘を言わない誠実な駆け引きをしている姿」が強調された印象があるけど、
    結局嘘を言っていたというのが、あぁ、この娘、やっぱり人間なんだねぇと思う。

    なんとなくね、機械人形の方に感情移入しちゃうのは、機械人形が「人が求める…理想の人間」としてチューニングされているからじゃないかな…とも思います。
    そして最後に…心揺らぐ みみおを機械人形たちが暖かく見守る図式。

    理屈によらない人間らしい苦悩を浮き立たせる為に、傍らに機械人形たちが居たのかもしれないけれど、… 機械人形たちも… やはり人間らしかったと思うのです。
    なんのかんの言って… 理解が個体の力量の範囲に留まるのは、人間とて同じことだ。

    判らないことに悩み…心を痛める姿… 人と機械人形の間に何の差があっただろうか… あぁ、やっぱりこの機械人形たちが愛おしいねぇ。

    さて、ミステリー面。「ヤマダと少女」絡みの話。

    本筋としては 、それまで みみおが引き摺っていた諸々をに対する決断の「キッカケ」に過ぎない出来事とも思えるのですが、それにしてもヤマダの言った「お二方の理解されない孤独」とか
    多義的に読める「父からの手紙」とか…すごい意味深。単なる暗示かもしれないけど、ヤマダには…作中で みみおや7号が解説した以上に、思惑や裏の関係性がありそうで、もっと深読みできる余地がたっぷり。(ほぼ2次創作になるからしないけどね笑)
    終盤、びびっと来たのは、記録と記憶の違いのくだりですね。

    記憶の"温度" とか言い出したところで、思いっきり前作の「声の温度」を思い出しました。

    声の温度では… 「言葉」に「感情・真意」を乗せたものが「声」…と理解できましたが…、
    記憶の温度では… 「記録」に「感情」を付加したものが「記憶」と表現されたと思います。

    またしても「感情」だ。

    すごく理性的に言葉を駆使する よこしまブロッコリーですが、そこに必ずさりげなく「感情」を上乗せして、芝居を作る。
    劇団の根底にあるものを「温度」というキーワードの中に感じました。

    そして作品の味を体現してくれる役者さん方。

    舞台の上で役者一人一人が感じさせてくれる思考が多岐に渡り…皆んなの反応に目を凝らしたいのに、一度には目に入りきらない。
    一度に見きれないのが、ほんと口惜しい。

    主人公・みみおと…大好きな機械人形たちだけは個別に感想を。

    みみお(榊原さん)は、人前での冷静で超然とした態度に対し… 一人になると表出する弱さ…記憶と感情の反芻に苦しむ描写のギャップが
    とても見応えあり。こういう榊原さんは初めてみた。

    3号(早川さん)は演算能力は最も劣るのに、コミュ力に特化したタイプというのが、これもまた人間らしさ。みみおに抵抗する感情に対し、「所詮、それも俺が作った感情だ」と突き放されて、
    そこからの感情の噴出がとても心に残った。

    ​7号(鶴田さん)は3人の中では一番機械に近い趣きの冷静さと客観視で、本作のロジカルな基調を支えた感じでした。格好良い!

    8号(山形さん)は、序盤、膝を故障している時の動きがダイナミック
    身体の大きさを余すところなく活かした動きで、とても目を惹いた。歩いているだけなんだがぁ(笑

    そして、3体の中で最も新型であるのが信じられないほど…雑で粗暴な人となり。
    「優秀な人が好人物とは限らないよな」って感じさせるの面白い。
    そのくせ、えいたが表出する終盤… みみおとの対峙、痺れる…痺れるわ、美味しいとこ持っていった。

    あ、そだ。あと にへいさん。
    胎内の時、私…「にへいさんの暗黒面の芝居は…少なくともよこしまブロッコリーでは絶対観れない気がして…」
    なんて感想を書いてたけど、全然ちゃうやん(笑)

    普通にワルい感じがムンムンで、言葉遣いだけやたら知的なので、むしろ超インテリやくざ風。

    こりゃぁ、にへいさん…若い頃は馴らしてましたね(笑)

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    2019/01/03 14:05

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