タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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Mの肖像

Mの肖像

劇団ヤリイカの会

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2018/07/07 (土) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★

高校時代の友人とのルームシェア、日常の淡々とした暮らしに隠された鬱憤晴らし…不穏が積み重なり変な緊張感が生まれるサスペンスもしくは心理劇といった公演であった。
旗揚げ公演、作・演出の島ハンス女史の心情を濃密なプライベート空間で描く女2人の三人芝居である。
(上演時間1時間20分)

ネタバレBOX

セットはルームシェアする2部屋と共同スペースであるダイニングという構図である。上手側がプロのバンドマンを目指し上京したムツ(島ハンスサン)の部屋。引越してきたばかりでダンボール箱が積み重なっている。一方下手側は、先に住み銀行に勤務しているミズキ(阿部沙也加サン)で、テーブルその上にパソコンが置かれている。

梗概…2人は高校時代の友人でルームシェアを始める。入居1日目にして知らされる、衝撃の事実。ミズキはムツの前にエムという女性と同居していたが、エムは1ヶ月前突然いなくなった。実は自殺したと言う。その部屋にムツを住まわせ、ムツは気味悪がらず居続けるところにも驚かされる。さらにムツは、天井裏でエムの日記を発見し彼女とミズキの過去を知る……。

ミズキは、どちらかと言えば堅い職業に就いており休日出勤も厭わない真面目な女性。一方、ムツや亡くなったエムは芸術家肌でエムは美術系大学院に通っていた。分り難い人間性のようなものを、善し悪しは別にして職業的な外的要素で判別させる。その間にある溝のようなもの、それを自分との価値観、考え方などの相違として表現する。ミズキは何となくムツやエムを見下しており、その2人がネット上で話題になることに耐えられない。嫌悪・嫉妬・不快など自分を制御できない、自分自身を見失った感情に捉われる。同一空間に居るが、ネットという別手段で友を裏切るような行為の怖ろしさ。

劇中に出てくるエムの自画像は、チラシの袋を被ったようなものであるが、さらに多くの目が描かれている。他人を意識、気にするような示唆など、小物の利用は巧い。またムツの部屋のダンボール箱が段々整理されるあたりは、上手く時間経過を表している。
一方、現在のムツと回想もしくは日記の中のエムが島ハンスさんの1人2役であるが、その人物の違いを暗転・明転によって状況の区別をさせる。その頻度が多いことから物語に集中し難い。物語は面白いと思えるが、その面白さを引き出す工夫、演出が不足しているようで勿体なかった。
次回公演を楽しみにしております。
熊ん子リバーバンク

熊ん子リバーバンク

桃尻犬

OFF OFFシアター(東京都)

2018/07/06 (金) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★

表層は根拠が弱い敵意、その曖昧な感情を以ってして人を貶め怒鳴りつけ、暴力を振るうという理不尽な情動に思えるが…。チラシに「暴力に巻き込まれ呑まれていく人の話」とあるが、自分勝手な苛立ち、不快感、不安定という感情が日常・常識を破り奇妙な世界へ誘うようだ。その特異な世界観は、観客の好みによって評価が異なるかもしれない。
(上演時間1時間15分)

ネタバレBOX

セットは、上手側から中央にかけてソフトベンチのようなものが置かれ、下手側にはテーブル、その上に電動バイブが立っている。ここは男(1人)女(2人)の3人でルームシェアをしていたが、その関係に気まずい状況が生まれ別れ話が持ち出される。冒頭、ラジオであろうか、街に得体の知れない獣が出没し被害が出ているニュースが流れている。

梗概…看護師のサヤ(徳橋みのりサン)、その彼氏で調理師見習のミヤイ(海老根理サン)、サヤとミヤイのルームメイトのアイコ(橋爪未萌里サン)がルームシェアしているが、サヤとミヤイがあることが原因で別れ話になった。そのかみ合っているような いないような会話、そのすれ違いの意識が面白い。また別れ話からサヤの元彼クマザキやミヤイの高校時代の友人シゲルが部屋に訪ねてくる。2人の男はルームシェアの3人とはほとんど無関係であり、一種の闖入者のように描かれる。しかし、いつの間にかサヤ・ミヤイの別れ話に絡み出す。その先は奇妙な出来事が続き、実体のない世界との関係が…。

男と女の関係、女友達の関係、元恋人同士、記憶の彼方にある友達、それぞれの(物語)関係性に脈絡があるような無いような不思議な距離感を思わせる。
3人関係は心地良い時は上手くいくが一端拗れると修復不可能になるところだが、本作は何故かうまく軟着陸(解決)する。恋愛の不可解さが劇として見事に具象化されていた。その表現はポップで心地良いもの。

一方、人の本音は相手がこの世とは別のところに旅立って初めて吐露するような、そんな独白めいた姿を淡々と描く。その意味で、非現実的な状況下になって自分の曖昧な気持が分ってくる。真っ当な社会人であると思っている自分、女は感情の赴くままに暴力的な言動を男に発し快適になり、男は女の何かに目をつぶって快適さを得ていた。そして友達の彼氏と関係を持つ不自由な恋をして快適・優越を有している女もいる。

さて、チラシのモデルはサヤ役の徳橋みのりさんであるが、その手に持っているのは熊の餌でもある魚(鮭?)のような…街にいるのは人間という”獣”化もしれない。
次回公演も楽しみにしております。
蒲田行進曲

蒲田行進曲

ふれいやプロジェクト

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2018/07/04 (水) ~ 2018/07/09 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

映画にもなった「蒲田行進曲」は、今の時期にピッタリ合うような応援歌。つかこうへい作品らしい「言葉(台詞)と音響そして肉体」をもって物語の世界へ導く。本公演はさらに照明の印象付(雨の表現など)を意識し小道具の傘をもって抒情豊かに紡いでいく。
(上演時間1時間50分)

ネタバレBOX

セットは素舞台。
物語は、京都の撮影所、映画スターの倉岡銀四郎・通称:銀ちゃん(丸山厚人サン)が妊娠させた恋人水原小夏(倉地裕衣サン)を大部屋俳優の村岡安次・通称・ヤス(關根史明サン)に押し付ける。ヤスは小夏を受け入れ、どんなに無視、無理難題を言われ、足蹴にされても銀ちゃんに付いていく。一方小夏は銀ちゃんのことが忘れられず、しかしヤスの優しさと子供の将来を考えると、今のヤスとの生活も大事にしたいという複雑な気持ち。銀ちゃんは小夏をヤスに押し付けたが寄りを戻そうと…。

3者三様の思いが痛いほど伝わる情景描写は見事であった。それは「愛」と「情」という感情が混在しているようだ。自分が傷つく、一種の自虐行為に笑いを含ませる。人の本心の見え隠れ=照れ隠しが笑いと同時に哀切を帯びて見える。心情形成と同時に照明による情景描写も秀逸であった。例えば暗幕で囲った舞台、登場人物への照明諧調することで内面を、また玉模様の陰影で雨などの情景を描く。そして透明なビニール傘の照明反射効果など演出効果を計算していたようだ。もちろん「階段落ち」も見事に観(魅)せてくれた。

素舞台だけに役者の力量が試される。主要な役柄は先の3人、その感情表現が作品の良し悪しに直結すると言っても過言ではない。本作では”決め”と”容赦ない”台詞の熱量と情感、その両方とも感じ取れた。そこには差別的な情景・状況を映し出す背景がしっかり刻み込まれている。大スターと大部屋役者にある差、そこには人間である前に役者(立場)という芸事が優先する。だからヤスは銀ちゃんの言うことは何でも聞き入れる。もっとも人間的な魅力も感じてはいるが…。

差別される人々を自虐的な笑いに包み、彼らが懸命に生きている姿を描く。4月に社会人になり、ようやく生活や仕事に慣れた頃。何者でもない自分が社会で何をなせるのか。希望と不安が表裏一体。しかし自らの手と足でしっかり自分の場所を築く、つかこうへい作品全体に言えることだが、特にこの時期、何者でもない新社会人に相応しい応援歌のように思えた作品である。

次回公演を楽しみにしております。
Mad Journey

Mad Journey

@emotion

ブディストホール(東京都)

2018/07/01 (日) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★

表層は「西遊記」物語であるが、そこには悲しい別の話が隠されていた。その想いが強く吹っ切れない…それを七夕伝説も絡め抒情豊かに描いた物語。それを見事なアクションで観せる、いや衣装や照明も含め全体で魅せるエンターテイメント作品である。
物語は心の旅路のようであり、その行方は…。
(上演時間1時間45分) 【後日追記】

ネタバレBOX

気になったところだけ先に記しておく。冒頭に近い場面…孫悟空が三蔵法師に付き従い旅に出る、その旅立ちの店のシーン。このシーンは日替わりゲストによって異なるであろうが、自分が観た回は敢えて笑えを得ようとしていたような。笑いも必要であるが、公演全体を通してみればこのシーンが浮いてしまったようで勿体無かった。
緑色のスカート

緑色のスカート

みどり人

新宿眼科画廊(東京都)

2018/06/29 (金) ~ 2018/07/03 (火)公演終了

満足度★★★★

表層的には恋愛のほろ苦い思いが綴られているが、単に恋愛という男女の仲もしくはLGBTだけではなく、人間の関わりが見て取れる物語。シンプルな舞台美術であるが、役者によって情景・状況がしっかり描かれており観応え十分であった。
(上演時間1時間25分)

ネタバレBOX

セットは映写幕、その前に丸椅子6つあるのみ。上演前に部屋や電車窓の風景などが映し出されるが、それは物語に繋がる情景・心象形成で、物語が始まると映像は写さない。もっと言えば照明や音響という舞台技術はほとんど使用せず、唯一あるのは劇中のスナックで歌うシーンぐらいである。すべては役者の体現(パントマイム含む)によって描写される。

梗概…冒頭は登場人物全員が足を踏み鳴らし、苛々歩き回るところから始まりラストも同様の仕草で終わる。電車内で1人ひとりの呟くシーンは、実際の車内でも見かけるような姿。その限定空間から生まれた人間関係を軸に物語は展開する。色々な恋愛の形態、不器用、自分勝手、自意識過剰の男の都合が描かれる。主筋は同じ喫茶店で働く2人の女性の恋愛またはその前段のありふれた物語。それが芝居的な見せ方になると、男の身勝手な思い-自分はエリ-トで付き合うのが当たり前、彼女が持っている化粧道具を勝手に捨て素顔を求める男、どちらも自分好みの女性(像)になることを強要するなど-実態を無視した空虚な影が忍び込んでくる。日常ありふれた恋愛が1つ間違えば異常な、という皮肉な情景をしっかり描き出す。

感覚と意識も現代的で等身大のような物語。それゆえ感情移入して心身の内側から蕩揺されて観ていたかと言えば、少し違う。現実的な設定であるが、距離を置いた醒めた目で観劇していたというのが正直なところ。たぶん自分が男で登場人物ほどではないが、多かれ少なかれ抱いているであろう感情を突き付けられたからかもしれない。別の言い方をすれば、人間の特に男・女の間における微妙な思い、感覚に感興した芝居であった。

淡々とした恋愛物語を芝居にするのは難しいかもしれないが、その内面に潜み沈んでいる暗いものに着眼するところは見事である。
少し気になるのがラストシーン。話の流れでそういう関係になる可能性はあるが、自分ではあまりに短絡的に思えて…。人-男によって傷つけられた心を癒し慰めるのが人-女になるのか。もっと違うものに救いや希望を見出し、世界観を広げられないものだろうか。

次回公演も楽しみにしております。
Cherry Boy / Cherry Girl

Cherry Boy / Cherry Girl

どんどんチェリー

劇場HOPE(東京都)

2018/06/26 (火) ~ 2018/07/01 (日)公演終了

満足度★★★★

旗揚げ公演、その意味で「Cherry =初めて」をテーマに「Cherry Boy」「Cherry Girl」の2作品を上演することにしたという。
当日パンフに、本団体は「初心者だからこそできる常識や型に囚われない思考と、新しいことへどんどん挑戦する心を常に持ち続ける」をモットーにして立ち上げたと書かれている。「型があるのが型破り、型がないのがかたなしよ」という長唄があったが、本公演、男の心情・本音が緩い笑いに包まれながらしっかりと描かれていた。その意味では、既存の型は破り、新たな型(カラッとした「エロ」が匂い立つような)を創ったような。
(上演時間2時間弱) 【Cherry Boy編】

ネタバレBOX

セットは、ファンタジーを思わせる額縁舞台。後方に簾のようなものに球形が吊るされ、浮遊感が漂う。上手・下手にBOXを連結させた置物があり、場面によって運び込まれる。このセッティングを薄暗の中で作・演出の奥田咲女史が1人で行っているのに驚かされた。この公演への思い入れが窺える。

物語は小学校時代にひょんなことから女子生徒の乳房を掴んでしまい、蔑みと揶揄われがトラウマになり、それ以降女性と付き合ったことがない。そんな30歳目前で童貞という男・花岡悟(中太佑サン)が主人公である。仕事は自宅で行い、外出の機会は少ない。女性には興味はあるが、付き合いたい女性は理想が高く現実的ではない。そんな彼のあだ名は”バベル”、そして小学生の時のトラウマの原因を作りあだ名の名付けた友人・木本康平(後藤真サン)が何とか女性と付き合えるようにサポートするが…。

男性の視点から見た女性像、逆に女性からどう思われるのか先回りして心配する姿、その純情過ぎる気持ちが薄気味悪く見える滑稽さ。また男性心理の核心とも思えるような台詞に同感する部分も多く感慨深い。男の第一印象は外見の装い、その女性の一言一言に敏感に反応する素振りが情けなく描かれる。その悟が婚活パーティで出会った女性に惹かれだした。それを契機に段々と男、というか人間的魅力が見えてくる。自覚なしの成長する過程が面白可笑しい。

物語は奇を衒った構成ではないが、それでも悟がどう変貌を遂げるのか楽しみであり、それに近い形で結末を迎える。それが「Cherry Boy」は「Cherry Girl」と連動しており、両編を観ると一層理解出来るという展開、その誘導が小憎らしい。
次回公演を楽しみにしております。
硝子の獣

硝子の獣

雀組ホエールズ

「劇」小劇場(東京都)

2018/06/27 (水) ~ 2018/07/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

犯罪、特に少年犯罪に潜む課題等を鋭く鮮やかに浮かび上がらせ、法律・正義や生きていくことの難しさを観客に問いかける力作。少年犯罪を通じて法律の不十分、不完全さ、そして少年たちを更生させることが難しい社会、現実であることを描く。同時に人間の行動の不可解さ、心の闇のようなものが垣間見える。法律で裁ききれない心の闇、そこに巣くう”悪意こそが人間の姿を借りた獣”そのものだという。
シンプルな舞台セット、心情描写のある照明、抒情豊かな音響効果など、物語の魅力を最大限に引き出す舞台美術・技術も良かった。
(上演時間1時間55分)

ネタバレBOX

舞台セットは、後方は2段差ある舞台、前方は丸テーブル2つとBOX椅子のみ。磨りガラス状の平柱がいくつかあるのみ。全体的に白っぽい配色であるが、それは照明色の効果を最大限引き出すためであろう。また磨りガラス状の柱を通る人影等の陰影も心情形成に役立つようだ。

梗概…少年犯罪の弁護を行っている弁護士・村井正義(阪本浩之サン)は妻を亡くしたばかりで、高校生の娘・あおい(中村光里サン)と2人暮らし。その娘が刺殺された。その犯人が17歳の少年であったことから、少年犯罪弁護士としての職業”信条”と被害者の父親としての”心情”の葛藤を描く。そして犯人が少年院から5年で出院(所)し、真に更生したか見極めるために加害者少年と会うが…。

被害者と加害者のそれぞれの家族の苦しみ、その原因を作った本人の状況を描くことで、犯罪という行為の虚しさ怖ろしさがしっかり伝わる。同時に弁護士という職業、それも少年犯罪を専門に扱う弁護士の立場、被害・加害という両面の心情から捉えることで偏ることなく課題・問題提起をしている。被害はむろん娘の死、加害はその家族の慰謝料支払いと社会的制裁の重圧、それが一生付きまとうことになる精神的負担である。これは犯人だけでなく家族全員に及び、個々人の幸せは望めないという。
現実的な解決は難しいのではないだろうか。その意味で本公演は観客に考えさせるような問いかけ。物語には結末があるが、このラストシーンは少しの救いと余韻が心地良い。

照明は綺麗な色彩を放つが、流線形の照射が不穏・不吉を思わせるドロッとした渦巻く感情のように思える。また音響は寂寥を思わせるような雨の音、不吉を思わせるガラスが割れるような音。どちらも可視化できない人間の心を心象として表現しているようで巧い。また夜空に輝く星々という余韻付け。
物語はシンプルなセットの中で、状況・情況説明は役者の体現によって見事に表現されていた。約2時間、舞台に集中できたのは脚本・演出・舞台技術はもちろん、演技力に引き込まれたことだと思う。

次回公演を楽しみにしております。
ダイアナ

ダイアナ

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2018/06/21 (木) ~ 2018/06/25 (月)公演終了

満足度★★★★

"愛”という普遍的なテーマ、それを求めるがゆえに強い衝動に突き動かされる男女3人の不可思議な会話劇。
チラシの内容から何となく幼馴染の三角関係と想像していたが、見事にそのシチュエーションは外れ、別の愛の形を観ることに…。恋愛の妙味、不可思議さが劇として見事に具象されていた。
(上演時間1時間)

ネタバレBOX

舞台は廃校して取り壊し間近の小学校内。あるのは脚立と折りたたみ椅子、そして鉄板が立掛けられているだけのほぼ素舞台。客席はL字型で観る位置によって印象が変わるか?
運命を信じた男と運命を演じた女、その2人を知る"愛と金"に縛られた男の濃密な会話劇。善し悪しではなく、いろいろな説得力に感心させられる芝居であった。

梗概…男2人は中学校までの同級生、いわゆる幼馴染である。賢一(坂本七秋サン)が優(依乃王里サン)を呼び出して話し出したのが恋愛話。いつの間にか優が近々結婚する話になり、婚約者・翔子(石井智子サン)を紹介したいという。賢一と優、賢一と翔子はそれぞれ秘密を抱え、優は賢一に懇願する三竦みの展開。本音とごまかしをブラックな笑いとビターな味わいで描いている。

物語は何となくありそうな現実と日常、夢想と幻影の境界線が曖昧になるが、人の感情はしっかり伝わる。登場人物の会話も熱に浮かされたような戯言から、常識・モラル的な気持へ変わるようだが…。
蠢き合う人間模様、廃校という寂れた場所を背景にほとばしる思いを発散させる。それを暖色照明のコントラストだけで印象的に観せる。また冒頭とラストにタイトル「ダイアナ」(日本語詞)を流し、物語を象徴させるという巧みさ。
次回公演も楽しみにしております。
コーラボトルベイビーズ

コーラボトルベイビーズ

第27班

駅前劇場(東京都)

2018/06/22 (金) ~ 2018/06/27 (水)公演終了

満足度★★★★★

家族物語と旅物語の2元中継劇のようだ。そして家族物語は、さらに子供時代と大人になった現在を往還、交錯させることで登場人物一人ひとりの内面の苦悩が明らかになり鮮烈な印象を与える。上演時間は2時間10分と少し長いが観応え十分の作品であった。
【千秋楽後に追記】

娯楽天国の“お気に召すまま~As You Like It~”

娯楽天国の“お気に召すまま~As You Like It~”

劇団娯楽天国

TACCS1179(東京都)

2018/06/20 (水) ~ 2018/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★

本公演、劇団娯楽天国創立30周年記念第一弾である。劇団のキャッチフレーズ”人生は舞台”はシェイクスピア「お気に召すまま」に出てくる台詞”all the word's a stage”を小倉昌之氏(劇団代表)が超訳したものだという。そこで30周年記念にこの作品を上演することにしたという。
昨今、目先の利益や快楽に惑わされて大切なことを見失っているような気がする。物事を心の目で見て真偽を見極めること…シェイクスピア作品は場所・時間を越えてそのことを訴えていると思うのだが。
(上演時間2時間40分 途中休憩なし)

ネタバレBOX

舞台セットは張りぼてのような簡素なものであるが、後景の幕が開くとアーデンの森。ラスト、吊るされている豆電球が点滅し幻想的な雰囲気になる。
当日パンフにしては立派な装丁のもの。そこに原作における人物相関図が載っている。

梗概…公爵は兄を追放してその地位を奪ったが、兄の娘ロザリンドは手元に置き、自分の娘シーリアと共に育てていた。他方、オーランドーは、父の遺産を相続した長兄によって過酷な生活を課されている。公爵主催の相撲大会で勝ったオーランドーはロザリンドに出会い、2人は互いに一目惚れする。
公爵から追放を言われたロザリンドは、男装してシーリアと道化を連れ、追放された父が暮らしているというアーデンの森へ向かう。オーランドーもまた、自らの運命を切り開くために兄の元を離れアーデンの森で前公爵に助けられる。オーランドーは男装したロザリンドの正体に気づかずに、彼(彼女)に恋の告白の稽古相手になってもらうが…。

喜劇「お気に召すまま」は、あれもあり、これもありという矛盾した世界。女は(男装して)男になり、いけないことを楽しむ。矛盾による混迷・混乱がドタバタとして面白く描かれる。人間は矛盾するところが面白い。機械と違って理屈や論理通りにならない、例えば恋に落ちるというのは反理性的であり本能的な行為だが、その”おめでたさ”が喜劇の祝祭性なのだろう。

人間はそもそも愚かしい存在、そう考えればシェイクスピアの多くの喜劇には道化(フール=愚者)が登場して、登場人物たちの愚かしさを指摘・揶揄している。本公演もタッチストーンという道化が登場する。
さて、何が正しくて本質なのかその判断は難しい。本当に大切なものを知る、「お気に召すまま」では宮廷を追放された元公爵が森の生活を謳歌し”この世はすべて舞台”と云うが、自分の人生を人生劇場として捉えどのような役を演じているのか自覚できれば…。儚さに尊さがあるとすれば、人生という航海(後悔しないため)の意味を模索し続けるのだろうか、そこにシェイクスピア劇の真骨頂があるのかもしれない。

次回公演を楽しみにしております。
裏の泪と表の雨_

裏の泪と表の雨_

BuzzFestTheater

赤坂RED/THEATER(東京都)

2018/06/20 (水) ~ 2018/06/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

初日観劇、公演の象徴でもあるような雨が降り、路上には長蛇の列。上演後、開幕時間の遅れを謝罪するほど盛況であった。
初演時にも観ているが、劇場が変わると印象が違って観え、改めて演劇は”生”もの、その魅力をしっかり味あわせてくれた。
(上演時間2時間強)

ネタバレBOX

舞台はお好み焼き屋の座敷、テーブル席が2組。神棚や提灯、壁のお品書などが店の雰囲気を出している。奥には窓ガラス、それを透してブロックやトタン波板塀が見える。この和の空間で不協和するようなドラマが展開する。店は大阪・西成区太子_いわゆる”あいりん地区”と呼ばれる街にある。

梗概...母が亡くなり2カ月が過ぎた。この機に店主・宮田諭(満田伸明サン)は離婚し、店も譲り念願の夢を叶えようとしていた。そんな時、両親の離婚によって離ればなれになった弟が28年ぶりに訪ねてくる。懐かしいが何をどう話せばいいのか、その微妙な距離感・ぎこちない態度・そぶりや会話が実に上手く表現されている。朴訥な話し方であるが、それゆえに滋味が感じられる。そして弟は別の意味で旅(高飛び)をしようとしていた。

初演時(ウッディシアター中目黒)の至近とは違い、上階段席から俯瞰するような距離で観た。自分の人生、40歳過ぎの男が本当にやりたいこと、そこに家族という壁?が立ちはだかり思うようにならない。一方、坦々とした暮らしにどっぷりと浸かり平穏な日々を望む妻。家族という憂鬱さを周囲の人々も巻き込んでユーモアに描く。そこには”街”という生活空間(感)が大きく影響している。
コメディであるが、底流にはこの街独特の人情(在日韓国人の登場など)を絡める。この街は嫌い、ションベン臭い街を雨が洗い流してくれる。登場する人々は実に魅力的(俚言も含め)で、その街から本当に連れて来たのかと思わせるほどである。特に邦子おばちゃん(山口智恵サン)は、そこに住んでいる典型的な人物像のようだ。

先に記した舞台美術を始め、照明・音響の演出も素晴らしかった。集合、個人(2~3人)の会話劇によって照明諧調、音響は弱いピアノの短音で雨音に重ね合わせるような効果が見事。観客に「人」と「街」の印象をしっかり刻み込み、余韻が残る公演であった。
次回公演も楽しみにしております。
ムシ研

ムシ研

劇団オンガクヤマ

劇場HOPE(東京都)

2018/06/14 (木) ~ 2018/06/17 (日)公演終了

満足度★★★★

虫の観察ならぬ「ムシ研」における”人間観察”をシニカルに描いた物語。「虫」について分野ごとの縦割り研究ではなく、専門分野の横断的な研究発表という設定、そこに垣間見えて来る研究者という人間像が面白くそして怖くもある。すべては”腹の虫”のせいにする。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

セットは、中央にベビーベットのようなサークル、その周りに客席側に傾斜したテーブル。後ろには収納Boxが重ねられている。下手側にはモニターが置かれており、別室の映像が映る。中央のサークルは階下につながっている。

物語は、日本人は「虫」と特別な結びつきがある。その感覚を解き明かすため国の助成を受けて分野を横断した学際的研究プロジェクトを実施している。しかし研究者の関心や思惑もありうまく軌道に乗っからない。リーダーの御手洗(松本栞サン)は実質的なリーダーを新市氏(立川幸之進サン)に任せることにした。しかし、研究とは別のことで問題が起こり、その対処を巡って研究所は紛糾し...。

当日パンフに作・演出の中野章夫氏が研究を始め色々な事柄を示して「これは、世の中の役に立つの?」という根っこにあることが大切だ、と書いている。そして人間の本性は利己的だとも言う。物語はまさしく自己中心的な人々の集まりのようで、そこで何か成果を見出そうとすると空回りする。空回りによって、自分の行っていることの意味を深く考えない普通の人が途方もない災厄を起こす。

物事の悪化や不安定な状況によって情況不安が広がると人は保身や他者非難する傾向にあるのではないだろうか。「ムシ研」という狭い社会で、排外的な動き、他者への不寛容を誘発するような描きである。それは研究者、事務員という職種・意識区別(無視する)も内在しているようだ。

そして、問題の真偽はうやむやになり、それに憤りを覚えた人が研究所外へインターネットを通じて情報開示してしまう。そこに見えない手によって部外者の関心を引き、他者を巻き込む。いつの間にか問題解決を迫られる立場へ追いやられる新市氏の姿が滑稽に思えてくる怖さ。
学際的な共同研究は、その目的・方法等を明確にし取り組むべきだ、と主張していた男が翻弄され、人々から無視される。この先「ムシ研」はどうなるのか、各人の思考停止への警鐘のようにも思える。

次回公演も楽しみにしております。
HIRAMEと呼ばれた男

HIRAMEと呼ばれた男

シノハラステージング

芝浦港南区民センター(東京都)

2018/06/15 (金) ~ 2018/06/17 (日)公演終了

満足度★★★

沖田総司という人物が世に知られるようになったという劇中劇のような公演。その印象は舞台稽古またはゲネプロといった習作を観ているようだ。
物語の趣旨や構成は面白いと思うが、それをしっかり観客に伝えるという点では弱いと思う。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

公共施設のホール、基本的には素舞台で情景・情況は役者が体現していくことになる。少し誇張した演技は歌舞伎のようにも思えるが、全体的には典型的な大衆演劇。物語は幕末時代、沖田総司を中心とした新選組と女剣劇・桜千代之丞一座の興行を交錯させ、いつの間にか両方の人物が愛惜と哀惜を味わっていく。その展開を舞台化する過程を描いたものか。

明治時代には新選組は逆賊として扱われ、今ほど知られていなかった。いや抹消された存在であったが、昭和初期に小説・映画、そして演劇上演で紹介されたことが新選組認識の契機になったという。その当時の舞台が本公演における回顧劇のように思える。新選組を扱った映画や舞台では、沖田総司を二枚目俳優が演じ、時には女性が演じることもあったという。それが現在の沖田総司像に繋がっているという興味深い話。

沖田総司と恋仲になった桜千代之丞は、彼を主人公にした公演を催行するが自身も病に倒れる。新選組、剣劇一座ともに組織内情は思わしくない。その共通した情実を当時の上演場景…劇中劇仕立てで描いているようだ。公演はツケを打ち鳴らす、クラシック音楽(ドヴォルザーク交響曲第9番)などで見せ場を強調する。沖田総司を世に知らしめた当時の劇、それの再現という設定の演技なのか、そもそもの演技力なのか判然としないが物足りない。またTG公演としてTシャツ、Gパンという服装には違和感を持った。

この劇団、バリアフリープロジェクトとして、車いす席の確保、視覚障碍者用の音声ガイド生放送などの対応をしてくれる。上演前もその旨、しっかり伝え多くの人が観劇できるような工夫や条件整備に努めており、感心させられた。
次回公演も楽しみにしております。
沼田宏の場合。

沼田宏の場合。

グワィニャオン

シアター1010稽古場1(ミニシアター)(東京都)

2018/06/15 (金) ~ 2018/06/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

「12人の怒れる男」へのオマージュ、日本にも陪審員制度があったらという架空設定の法廷劇「優しき12人の日本人」(三谷幸喜作)を連想したが、本公演はさらに時空間をも操作した秀作。
(上演時間1時間50分)

ネタバレBOX

セットは横に並べられた陪審員席、その中央上部に白布で覆われた十字架。下手側に飲み物が置かれた小机というシンプルな作り。
物語は沼田宏(享年34歳)という男が事故死し、彼の逝き先を天国にするか地獄にするか、死者の国の陪審員が評決する冥界奇譚の物語。ここは死者(天国)であることから同時代の陪審員ではなく、時代に隔たりがあり其々の人生を生き逝きてきた人々である。その背負った人生訓のようなものが、沼田宏の人生を吟味・議論していく。

先に記した「12人の怒れる男」や「優しき12人の日本人」のように陪審員は全員合意による評決が求められている。当初、天国逝きのような雰囲気であったが、冒頭失神した男の「地獄逝き」(メモ)が発端で評決が不一致になるという緩さ。さらに男が復帰し「メモ」を書いた動機を聞いたところ曖昧のようだ。議論が二転三転する中で、陪審員1人ひとりの人生が明らかになり、公正が求められる陪審員としての立場の難しさが露呈していく。また真摯に議論しているか、それを監視する裏陪審員が紛れているのではという疑心暗鬼も持ち込む重層な作り。

現代の裁判員制度における対応の難しさのようなものを思わせる。物語は喜劇的だが、そこに潜む人が人を裁く過程に関わる難しさを考えさせられる深い内容。それは時代(公演では幕末志士、有名作家も登場)や亡くなった状況等で考え方も異なる。その人達をどうまとめて評決するか、そこに生前の人間性(優柔不断や理路整然など)を描き、緩急ある会話劇を紡ぐ上手さ。その典型が陪審員6号(平塚純子サン)であり、その演技は迫真あるもの。

さらに会話だけではなく、沼田宏の死の真相に迫る実証動作。陪審員室を縦横に動き、時に某映画のアイテムを使用し小難しくなる実証シーンを笑劇にすることで物語に集中させる巧みさ。そして地獄か天国か二転三転するシーンで、白布の十字架が赤・白に変わる照明も見事な演出であった。

次回公演も楽しみにしております。
希望のホシ2018

希望のホシ2018

ものづくり計画

あうるすぽっと(東京都)

2018/06/13 (水) ~ 2018/06/17 (日)公演終了

満足度★★★★

刑事事件を推理し解決するというよりは、回想劇といった印象が強い。希望の”ホシ”は犯人を示しているのであろうか。内容と照らし合わせると意味深でもある。刑事物語にしては派手なアクションがなく、むしろ情緒豊かなヒューマンドラマといった感じである。
しっかり作り込んだ美術に比べると、演技はポップでコミカルな感じもするが…。物語は特別な設定で展開する訳ではなく、どちらかと言えば時間を順々に経過させるような分り易いもの。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

舞台は民宿「ふるさと」の広間・談話室と帳場のような場所。上手に2階への階段か。あうるすぽっと という劇場スペースにしては、少し簡素の造作のような気もする。それでも民宿ということはしっかり分かるし動線を意識したであろう舞台・美術設営は見事。

梗概…7年前、男性二人が銃撃される事件が起こった。犯人と見られる人物は逃走。被害者のうち、一人は死亡。もう一人、沢木純也(野村宏伸サン)は一命を取り留めたもの、過去の記憶を失った。沢木の記憶は戻らないまま時が過ぎ、事件は未解決のまま。その沢木、民宿で働き平穏な日々を送っていた。
しかし2018年、事件が新しい展開しだした時、沢木の元に刑事がやってきて...事件の裏に隠された物語に正義が揺れる!刑事はブレる。

刑事ドラマのようなサスペンスものと思っていたが、どちらかと言えば、地方の民宿を舞台にした庶民的な人情ドラマのような仕上がりになっている。登場人物24名中、民宿の従業員(沢木を除く)、宿泊客、そして宿泊の自主映画撮影隊で14名と半数以上が事件とは関係なさそう。もっと言えば警察関係は、新たに発生した事件担当(中原・上條)と前の事件を担当していた国東、そして井口(石渡署)だけである。
7年前の事件の記憶回復は事件解決のカギ、同時にこの地で平穏な日々を送る男の思い、この2つの心の葛藤? その個人的な追想と民宿の繁忙が対比・同調しながら展開するが、その観せ方は群像劇らしくポップのように思える。

やはり人間描写とその場の情調演出は上手い。その演出を上手く表現する役者陣、しっかり楽しませてもらった。
次回公演も楽しみにしております。
小公女セーラ

小公女セーラ

Japan Art Revolutionary

渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(東京都)

2018/06/14 (木) ~ 2018/06/16 (土)公演終了

満足度★★★★

小学生か中学生の時に読んだ世界名作全集の1つ。観ていてずい分前の読書記憶がよみがえり楽しく観劇した。正確には少し違うかもしれないが、プロジェクトマッピングを使用した視覚、心象に訴える公演であった。


(上演時間2時間15分 途中休憩なし)【team エトワル】 

ネタバレBOX

舞台技術(特に照明)は、プロジェクトマッピング(本作では平面造作に映像描写)によって情景・情況を”美しく”観(魅)せていたのが特長だ。セットは数階段の上に館の外観を思わせるような大きな張りぼて、中央に両引扉があり場面に応じて開閉させ、奥行き感を持たせる。

物語は富豪の娘が父親と離れて学園生活を送っていたが、父の事業の失敗でそれまで優雅に暮らしてきた生活が一転し、それまで親しくしていた人々の心も豹変して…。どん底の生活にありながら人のことを思い遣る、セーラの勇気と希望を高らかに謳い上げる。小説に忠実な展開であるが、文字だけではなく目と耳を楽しませる劇、それもミュージカルテンタテインメントとしての醍醐味が味わえる。

この原作はハッピーエンドになるが、現実にはそうならない悲惨なニュースが流れる。本公演、間違えれば「人への思い遣り」「自分自身の信念」といった表面的、俗説的な内容になるところであるが、現実社会における虐待などの悲惨さが「思い」「信念」といった言葉に重みを持たせる。もちろん演劇の面白さを堪能しつつ、現実社会への対応にも思いを馳せさせるような内容であった。

次回公演も楽しみにしております。
ピース

ピース

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2018/06/13 (水) ~ 2018/06/17 (日)公演終了

満足度★★★★

21日間の疑似家族を演じことで目覚める”実の家族への思い”というヒューマンドラマ。この芝居の面白さは設定、そしてその場所・状況をきめ細かい演技で具現化させているところ。また舞台美術はシンプルであるが、観客に配慮しつつ観せる工夫をしているのが良(酔)い。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

セットは船上…光景は板状のものを吊下げ、微妙に揺らすことで船の動きを表す。中央にテーブルとBOX椅子がいくつか置かれているシンプルな造作である。船上という様子は、役者の動きにも”揺れている”という演技に現れている。上演後、秋葉舞滝子女史から揺らす動作は、やり過ぎると観客が船酔いを起こすため(手加減)調整が難しかったと聞いた。

政府の国家プロジェクトとして、船上で21日間疑似家族を演じて、その結果データを分析したいというもの。一度乗船すると途中で役割放棄できない、そして成功報酬が魅力的という設定である。始めのうちは見知らぬ同士ということもあり、ある程度距離を置いた接し方であったが、時間の経過とともに打ち解けてくる様子が微笑ましい。さて、集められたメンバーはお笑いタレント、トラック運転手、スナックのママ、主婦、美術の高校教師、引籠り大学生といった関連付けが想像できない人達である。冒頭、厚生労働者と総務省の官僚から本プロジェクトの趣旨なりの説明があったが、あまり理解出来なかった。この疑似家族に与えられた命題が鮮明でなかったことから、表層的には面白可笑しく観たが、物語の”芯”を捉えたか心許ない。

物語の柱を別にすれば、登場人物の背景は丁寧に描かれ、それぞれの関係性を幾つかのシーンで繋ぎ人間味を出すところは巧い。先に記した舞台美術のシンプルさは、それだけ役者の演技力がないと情景描写が伝わらない。その点、船上を意識させず、疑似家族という与えられた役割(柄)の人間性の深堀りと関わりを通じて、分かり合える心の温かさを感じることができた。緩々とヒューマンドラマ的に流れるところであるが、そこに唯一、船上を意識させる遭難?シーンを持ち込む。21日間という期間と同時に限定された場所であることを再認識させ、改めて物語に集中させる演出は上手い。

冒頭は21日間の疑似家族体験が終わり下船するシーン。ラストはこの冒頭シーンへ回帰するが、それまでの軽妙でコミカルなタッチから劇画調へというイメージを持った。別れを惜しむ、その哀感とこれからの人生への活路が見い出したような余韻が素晴らしい。

次回公演も楽しみにしております。
時代絵巻AsH 其ノ拾弐『白煉〜びゃくれん〜』

時代絵巻AsH 其ノ拾弐『白煉〜びゃくれん〜』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2018/06/06 (水) ~ 2018/06/11 (月)公演終了

満足度★★★★

虚実綯い交ぜの保元の乱・平治の乱を背景に、源氏と平氏の若き棟梁が武士の世を築こうと模索する物語。日本史の史実を物語として分かり易く描いているが、さらに当日パンフは丁寧な解説(家系図や相関図等)を加え楽しませてくれる。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

セットは源義朝の屋敷であり、朝廷を思わせる造作。基本的には縁側または廊下と庭のような場所の高低差を利用し躍動感を表す作りになっている。横に展開させた作りは、舞台と客席の間に大きなスペースを空け殺陣等の動きをダイナミックに観せようと工夫している。

平安時代末期、朝廷(政治)における権力闘争に武士という集まりが巻き込まれ、いや積極的に関与することで武家社会の足掛かりにする。その姿を源義朝と平清盛に担わせている。この2人が保元の乱で協力し、平治の乱(公演では誤解による謀反のような)では敵対していく。時の権力争い(天皇家と摂関家)を背景に、時代に翻弄される漢(おとこ)を情感豊かに描く。争いは都で起き、舞台では炎が上がる戦禍として描いているが、そこに住む人々の暮らしは蔑ろであった。もちろん、庶民は登場しないが。

物語は先に記した権力抗争とそれに巻き込まれた武士という、特別な世界観である。時代絵巻AsHは、伝わらない”史実”の隙間に男たちの”物語”を想像させる。その観せ方が実に上手い。政治は市井の暮らしに影響を与えるが、その政治主導権争いは多くの人々の暮らしに関係ないところで行われる、という現代にも通じるもの。その批判的な視点と”物語”としての面白さ、そのバランス感覚が優れている。本公演の背景は「貴族の世」から「武士の時代」への過渡期であり、それゆえ”乱”という見せ場はあるが、それぞれの視点で描いていることから”史実”としての分かり難さはあった。

卑小かもしれないが、源義朝(黒崎翔晴サン)と平清盛(森ひであきサン)の衣装が気になった。例えば義朝が派手(桃色)な模様の上衣を羽織る、清盛が着流しのような着物姿に違和感を覚えた。場所設定が判然としないところもあるが、例えば大内裏のような場所では相応しくないような気がするのだが…。

次回公演を楽しみにしております。

鏡の星

鏡の星

劇団あおきりみかん

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2018/06/08 (金) ~ 2018/06/10 (日)公演終了

満足度★★★★

近未来の宇宙旅行、現実の時間と場所から距離を置くことによって、逆に客観的にある出来事が浮き彫りになる。脚本担当の鹿目由紀女史が、チラシに2018年3月、文化庁の新進芸術家海外研修制度でイギリスに行って、他文化に触れた驚き新鮮さといったことが書かれていた。本公演にもその刺激・影響のようなものが表れていた。また演出を外部の小林七緒女史に依頼し2人の化学反応のような公演が出来上がっている。
物語は、宇宙旅行と称した国家政策のような、大きな世界観などが比喩的に描かれた秀作。

自分では少し気になる、というか疑問が…。
(上演時間2時間) 【2018.6.18追記】

ネタバレBOX

ネタバレのようで恐縮だが、気になることを記してしまう。弓月(川本麻里那サン)がミラー星に残って子を産む決断をする。この星で育児はできるであろうが、その後この星で”人間”として生殖できるのか。
さらに、この子は地球にいる時に人工授精で授かったという。主人公が震災で家族を亡くした悲しみ、家族を成したいという気持から愛情なき人の子を宿す。"愛情”ない”生殖”、確かに自分の子、家族を持つことが出来るだろうが、何か釈然としない。物語の社会性のような世界観の広がりは感じるが、未来に広がる人間そのものの世界はどうなるのだろうか少し心配、不安に思った。

【2018.6.18追記】
物語の設定は40年後という近未来にしており、現実と距離を置くことによって現代社会にある問題・課題を近視眼的になることを避けている。しかし、地球に相似したミラー星での出来事や宇宙船-影法師船内の人間関係やロボットとの関わりは、どうしても現実問題を直に連想してしまう。この宇宙船に乗っているのは日本人ばかり。集まったのは東北、熊本という地震被災地、沖縄という基地問題、さらには愛知という南海トラフを連想させる人物を登場させる。未だにしっかりした対応がなされていない地域ばかり。さらにロボット法の成立。ロボットの存在を認めつつ、他方違和感・差別感を抱く感情、そこには色々な意味での人間差別が垣間見えてくる。もしかしたらイギリス留学で他文化に刺激されたことと、欧州における移民問題にも関心を持ったのだろうか。そんな問題意識を感じさせる骨太作品であった。

しかし観せ方はポップ、コミカル調で面白可笑しく物語に引き込まれる。物語内容(脚本)と演出の充実感が心地良い。”搭乗”人物の背景が語られ、その心情が豊かに描かれる。それは船内にあるミラーのような枠の中で独白するような形で綴られる。その苦しい胸中を癒してくれる人、そしてロボットも製造した博士にメンテナンスという形でケアしてもらう。悩みは1人では抱えきれず、相互理解のような関係を築くことが大切。それはミラー星で出会った自分自身(ミラー)を通じて知ることになる。異文化を知ることは改めて自国のことを知る、再認識することに繋がるのだと…。

さて、このプロジェクトの真の狙いは国策にあり、その成功のためには多少の犠牲はやむを得ないという怖い側面もあり、ミラー星の人達の正体も明らかになる。空想劇の中に社会風刺を織り込ませており、色々と考えさせられた。
次回公演を楽しみにしております。
幕末疾風伝MIBURO~壬生狼~

幕末疾風伝MIBURO~壬生狼~

TAFプロデュース

かめありリリオホール(東京都)

2018/06/08 (金) ~ 2018/06/10 (日)公演終了

満足度★★★★

「生きる」とはを考えさせる時代劇。時代に翻弄されながらも誠実に生きようとする新選組隊士、一方平和な時代に生きることの意義を見出せない若者。エモーショナルな激しさ、ユーモアとドライな視点で観客の心を揺さぶる。
しっかり伝えようとする歴史フィクションは観応えがあった。
(上演時間2時間30分 途中休憩10分)

ネタバレBOX

舞台は殺陣・剣舞・アクションスペースを確保するため、作りはシンプル。それでも骨組みだけの櫓を左右対称に設置し、その間に半円形の障子窓(和風)がある。

梗概…現代、明治期に絶滅したと言われているニホンオオカミを探すため、イヌ岳に入山し遭難した兄・妹。妹は一週間後に救助されたが、その間に経験した出来事を日記に残し、それを基(治療用)に回想する。兄・妹が再会したのは幕末の京都。兄は新撰組の八番隊長になっていた。妹は弟と性別を偽り入隊し、新撰組の盛衰(約4年、池田屋事件→分裂騒動)を目の当たりに見る。現代と回想・幕末期の時間の流れの早さが異なる。浦島伝説のように物理学で言うところのウラシマ効果で観せる。

明治維新から今年で150年。時代に翻弄されながらも、生きる価値を模索し続けた漢(おとこ)達をマジックリアリズムの手法で描く。タイト「MIBURO」は、新撰組の屯所があった場所。その暗殺集団と恐れられた新撰組を狼-ニホンオオカミに準えている。現代、「生きていく意味」に向き合うことを見失っている。本公演は新撰組の生き様を通じて、生きることへの価値・意義のようなものを、娘の体験を通して伝える。

物語は文献史ではなく記憶史として、個人の視点から描いている。真のサムライを夢みた隊士=その大志という大きな国家感と、二幕目に出現させる遊郭、花魁との遊興は人間臭さを感じさせる。その鳥のような俯瞰=社会観と虫のような地べた=庶民感の対比する見せ方も面白い。返り血をあび業火に焼かれても、赤い夕焼けを見ると明日は良い天気、希望が持てるような気持になる。その気概のようなものを持ち、生きることの喜びが伝わる内容である。

最後に、殺陣と剣舞を分けて観せる。またその演出として刀が交わる音響、幾何文様の照明など舞台技術も印象的であった。
次回公演を楽しみにしております。

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