還るなら、ハラ 公演情報 張ち切れパンダ「還るなら、ハラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    人は、多かれ少なかれ悩み苦しい時、あぁ あの時は良かったと回想することがある。この公演はそんな情景を面白可笑しく観せるハートフルコメディ?のような物語。
    小学校・中学校時代などへ往還させ、その都度役者が衣装等を変え、演技の技量を観(魅)せる。普通にいる人々の日常の坦々とした暮らし、そんなあり触れた光景に、ふっと昔のことを懐かしむ思いが入ってくる。何となく「もどかしい」「たゆたう」心情、物語はそんな思いが漂流し何処へ行くのか。この公演、言葉で説明し難いことを上手く表現し伝える、そんな芝居ならではの魅力溢れる作品であった。

    初めて行く劇場であったが、新装オープンしてから間もないらしい。そしてこの公演は「オメガ東京オープニングフェスティバル」参加作品という。2018年師走、個人的には色々あったが嫌なことは忘れ、おめでたい所でハッピーいや癒やされるような気持になれたのは良かった。
    (上演時間1時間55分) 2018.12.27追記

    ネタバレBOX

    舞台は賃貸住宅の一室。ほぼ中央にダイニングテーブルとソファー、その後ろに飾り棚が見える。中央奥に玄関に通じる扉、下手側はキッチンへ通じる出入口。ここは あかり(中島愛子サン)が借りているが、兄の家が火事になり一時的に同居している。

    梗概…あかりは36歳、最近会社を辞め起業(パッチワーク教室)をしたが、生徒が集まらず焦り気味。そんな あかりの所に学生時代の友人が遊びに来る。それぞれの人生を歩んでいるが、情緒不安定な時にあの頃は良かったなと懐かしむ。中学時代、高校時代を回想するかのようだ。一方現実は、何とか生徒を集めようとWebデザインを凝らしたり工夫をしている。この部屋に出入りする知人等との交わりを通して心の平静を保っているような。

    物語に特別な結末を用意している訳ではなく、30代半ばの女性の恋愛観、仕事観という個人の思い、それに寄り添うように家族・友人との関係を繋ぐ。人生は自分のもの、しかし1人で生きていくことは出来ない、そんなことを思わせるような構成である。舞台はその両方の観点をバランス良く観せ、そして伝える。身近な人物が遠慮なく本音を言う。そこには観ている観客も頷いてしまうリアリティがある。人が時として持つ、モヤモヤとした感情を実に上手く表現する。文字、言葉にして説明することが難い内面や人との関わりの機微のようなものが、あぁそうだなと納得してしまうような表し方である。

    登場する人物は、主人公あかり だけではなく、それぞれに違う問題を抱え悩み・不安な気持でいる。役者陣はその多様な人物像をしっかり立ち上げ、ポップ調であるが内面の微妙な感情表現を巧みに演じていた。ランドセルを背負ったり、セーラー服になったりする妙着替え。公演は人間讃歌のような描き方で、その最たる喜び…あかりは妊娠しているが、その相手は誰、そして現実は…。クリスマスシーズンに相応しい心温まる作品であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/12/23 11:30

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