六月の斬る 公演情報 グワィニャオン「六月の斬る」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    この芝居こそワクワクする高揚感があり、飽きることなく楽しめる。
    物語は、日清戦争前の国内世情を劇中劇の形態をとして展開させる。もちろん新選組の面々も登場するが、それは国内の士気を高める役割を担わされるというもの。それはタイトルに表されている。

    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台は2階部を設け、上手・下手両側に階段があるが、取り付け向きは異なる。また剥き出しの柱があり、全体的に鈍色の配色である。一見古ぼけた造作にしているが、ここが劇中劇の小屋-江戸座を表している。この小屋は個人の屋敷を劇場に改築したという設定。この2階部をフルに利用し上下の動きに躍動感が増す。もちろん殺陣にも十分活きてくる。

    梗概…日清戦争前の国内は戦争を行うか否か、世情不安な様子、新しい演劇スタイルを模索する人々(劇団員)の自由闊達さなど、史実や虚実を綯い交ぜにしたスケールの大きな内容であった。また、戦争に対する考え、それを国家的観点と庶民感覚という立場、その視点を変えることで視野の広がり、観客への納得感を増すあたりは巧である。
    この劇団は川上音二郎一座、座長と妻の貞奴、劇作家は樋口一葉を登場させ、劇団員が劇中稽古に励むシーン。それを離れ世情-戦争に絡むシーンには伊藤博文や元新選組隊士が登場する。大きくこの2つの場面が実に上手く交錯しダイナミックに進展する。

    さて、日本国内で開戦に躊躇する国家・首相(伊藤博文)と開戦派の大山巌大将の思惑、庶民は死にたくない、殺し合いはしたくないという本音に反戦の意味合いが…。幕末動乱、明治という元号になって27年(日清戦争開戦)、平和に暮らしてきた庶民の願いでもある。しかし戦争への軍靴が迫り、戦意高揚のため川上一座に戦意高揚芝居の上演を依頼する。その芝居の演技指導に元新選組の面々が…。

    シーンに応じてコミカル、シリアスに自在に変化し、それを本公演、その劇中劇として役者陣が見事に演じ分けていく。そして先に記した世情、大劇場ならぬ川上音二郎一座(新派の誕生)の存在、伊藤博文と川上の妻・貞奴との邂逅などハッとさせられる面白さ。
    ラストは戦意高揚劇という劇中劇が30年前、新選組の名を知らしめた池田屋事件を思わせる場面へ繋ぐ結末には余韻が残る。見事なエンターテイメント公演であった。
    ちなみに6月は、旧暦で池田屋事件があった月。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/11/30 22:20

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