時代絵巻AsH 特別公演『水沫〜うたかた〜』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 特別公演『水沫〜うたかた〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    平家物語を題材にした時代絵巻、もちろん虚実綯い交ぜで構成されているが、今回は物語という流れよりは人物描写に重点を置いたように思えた。情緒的であり泣かせる場面、盛り上げる場面など演出は上手い。しかし、ベタな青春ドラマ…友情と武門・戦の板挟みに苦悩する若者を描いたようにも観え、少し”時代絵巻”という歴史の物語としては弱さを感じる。物語の流れか人物描写か、その観点によって好みが分かれそうな気がする。自分は前者が好み。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    邸内中庭といった舞台、客席寄りが庭で殺陣シーンに配慮した空間がある。冒頭、中庭で遊ぶ子供たちが飛石(石が八つ)を跨ぐようにしているが、何となく義経の八艘飛びを連想させる。
    物語は平氏が栄華を極めた時期から後白河から平氏追討院宣が発せられ、壇ノ浦で滅亡するまでを、後世に伝わるエピソード(一ノ谷の戦い 鵯越の逆落とし 、那須与一の扇の的など)も織り込み場面を面白く観(魅)せる工夫をしている。殺陣は斬り合いというには美しすぎるもので、それまでの”心情”表現を損なわないよう配慮したもの。
    また、この間に次回公演に繋がる奥州藤原氏と義経の関わりに触れるあたりは巧みだ。

    物語は平氏の栄華を極めた場面、貴族との確執を経て後白河の追討院宣後、壇ノ浦で滅亡するまでを描く。しかし物語の中心は、牛若丸(義経の幼名)と呼ばれていた時、平教盛・資盛と友情を育み、知盛との信頼といった心情が厚く熱く描かれている。もちろん平家物語という流れは分かるが、平氏追討院宣が出されたのか、その経緯を切り捨て焦点を絞ったようだ。そのため”時代という社会性“は個々人の関係性に委ねられた形になり、壮大さは感じられない。

    一方、時代を乗り越え、現代にも通じる人と人の繋がり、信頼関係にみる心情描写は豊かで、枳殻文様のようなモノクロ照明が舞台板に映え効果的であった。生垣に植える枳殻、源氏・平氏という武門、それが並び立つ(綺麗ごと事過ぎる?)ような武家社会を夢見た平清盛の思いは果たせず…。この心情描写はしんみり泣かせるシーンで、ハンカチを握っている人も多い。

    基本的な舞台美術、平安時代後・末期における貴族と武士が登場する混沌とした時代を切り取った公演、それがマンネリ化にならないための工夫が垣間見られた。劇団そして作・演出の灰衣堂女史の試行錯誤がより高みある公演を制作しそうだ。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/12/08 00:10

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