タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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HUG!!!

HUG!!!

ギギ

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2026/07/02 (木) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

観る者に媚びを売らず、それでいて飽きさせない 力 のある公演。一瞬 パンクロックのような印象を受けたが、描かれているのは 時の流れに身をゆだねながらも 懸命に生きている若者像。若気の中にチラッと見える気恥ずかしさ、真っ直ぐな情熱の迸りが綯交ぜになったよう。会場に入ると、そこはクラブ(自分世代だとディスコ)の空間、天井には大きなミラーボール、演奏ブースにはDJらしき人物が円盤を回す(ターンテーブル)。重低音が響き、会場が振動しているような錯覚。スモークの中に照明の強烈な明滅、その光景は幻想的でもある。

登場人物は2人、若い俳優の瑞々しさが 観ていて気持ち良い。色々な話を断片的に繋ぎ脈絡があるのか否か、そんな不思議な物語を展開していく。妙なリアリズムが観客の心を捉え、観終わってみればエッジの効いた物語だ。よく動き回るかと思えば、並んで立って接客しているだけ。メリハリのある動/静演技、そしてモノローグ的な表現によって伝える。もう病みつきになる公演。
(上演時間1時間15分 途中休憩3分)

ネタバレBOX

舞台は正面奥にスクリーン、真ん中に演奏ブース。その前に学校のスチール机と椅子1つ。客席は半円形にして囲むような配置。ここは東京の渋谷 道玄坂にあるクラブという設定。出演は川合凛さん、笹川幹太さんの2人、狭い空間だがワイヤレスマイクを使う。

●このクラブでボーイをやっている幹太サン、卓球界では知られた存在。場転して後景にスクリーンに真っすぐな道の映像。そして凛サンは二卵性双生児の幹太サンを探していると。2人は交わらず それぞれモノローグで話は進む。
●上から制服(上着)が投げ入れられ、着替える2人。今度は2人並んでコンビニで接客している。そのうち名前を始め、自分自身のことが分からなくなって戸惑う。何者にもなっていない若者の不安や焦燥といった気持を表しているよう。
●突然 舞台中央に円形を組み 2人+他のメンバーを加え合奏。優しく心地良い音色、そのしっかり聴かせる上手さ。

色々な観せ方、パフォーマンスは試行錯誤の実験的な公演といった印象。ジャンル問わずの表現、そこに怖いもの知らずといった若者の特権を見るよう。実にアグレッシブな。チラシにある「月面に行きたい」は未知への挑戦であり、公演の表現そのもの。
次回公演も楽しみにしております。
 杏仁豆腐のココロ

杏仁豆腐のココロ

演劇ユニット「みそじん」

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2026/06/30 (火) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
タイトルにある 杏仁豆腐のような柔らかく甘いといった内容ではなく、けっこうシビアでヒリヒリするような印象。説明にもあるようにクリスマス・イヴ、離婚を決めた2人の漂流するような会話劇。物語はどこに辿りつくのか分からないが、離婚する原因が切ない。

脚本の面白さ、演出の巧さ、役者の演技(体現) その総合力が観客の関心を惹き 飽きさせない。最後の夜、思い出すのはどうでもいいことばかり。日常の些細なことから旅行先での出来事、そして身の上話からだんだんと身の下話へ変化し…。会話の流れに 離婚する理由が見え隠れしてくる。
ちなみに 前説が面白い仕掛け。
(上演時間1時間25分)🟠橙チーム

ネタバレBOX

舞台美術は引っ越し間近の居間。中央に炬燵とソファ。周りに多くの段ボール箱。後景の窓/カーテンが斜めになっており、半円形の舞台と相俟って何となくゲルの中といった感じ。下手の置台に電話、時々鳴るが留守番電話に設定。そこに吹き込まれるメッセージが前説になっており、既に物語は始まっているよう。寒風吹きすさぶ音や犬の遠吠えが聞こえ、深々とした静けさが伝わる。

小夜子の実家/稼業は廃業し、年明けには引き払う予定。同居している達郎とも離婚し新たな生活を始めようと…。小夜子は弁当屋で働き、達郎は仕事を辞め2年、今では 立派な主夫。性格も違いルーズな小夜子、ストリクトな達郎、引っ越しの手際にも表れている。そんな2人だが、いざ別れるとなると名残惜しい。

小夜子の実家は ちんどん屋、しかし父の放蕩等で廃業、母は父を見限り若い時に家を出て再婚。そんな母が認知症になり徘徊を始めた。一方、達郎は再就職が儘ならないことなど、それぞれの近況を話す。しかし 離婚する決定的な理由は語られない。そのうちセックスレスという身の下話へ。実は小夜子は死産を経験しており、妊娠することが怖い。達郎は死産した子の葬儀を執り行う。死産を通して それぞれが違った辛さ悲しみを抱えていた。自分も達郎の悲しみ、そして遣る瀬無さが何となく解る。

物語に明確な前・後半があるわけではないが、始めはコミカルに飄々とした語りだが、セックスレスあたりから様子が一変し、2人の激情がぶつかる。それまでの建前的な会話から本音が…そこに劇的な要素が仕込まれており 観応えある物語になる。何と言っても 大石ともこサン、菊池豪サン、2人の熱演がみごと。
次回公演も楽しみにしております。
ディアマイドクター

ディアマイドクター

演劇ユニット「暇つぶしチェルトン」

萬劇場(東京都)

2026/07/01 (水) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
脚本・演出は勿論、ミュージカルと謳っているから歌も見事。
公演は、当時(明治期)の状況や風潮を背景に 初めて医師免許を取得した3人の女性たちが、どうして医師免許を目指したのかを描いた 虚実綯交ぜのフィクション。物語は、3番目に医師免許を取得した高橋瑞をモデルにした高水せい を中心に、彼女たちの生い立ちや性格などを描き、女性にとっての閉塞感を浮き彫りにする。誰もがそれぞれの事情を抱えながら今を必死に生きている。無情な不条理に叫ばずにはいられない。

彼女たちが受けた体験や仕打ちが、医療(対象患者)に対する違いを鮮明にする。それでも台詞にある「道は違えども、すべては患者さんのために」、その精神は現代に通じるもの。現代といえば、3人が医師になってから起きた感染症の大流行、それをコロナ禍と重ねることで、いつの世の人の心の在り方を巧みに織り込む。
(上演時間2時間15分 途中休憩10分)【B】

ネタバレBOX

舞台美術は、段差を設え 左右非対称の壁。それが古色蒼然としており当時の雰囲気を漂わせている。また 衣裳やサーベル等の道具にも時代を感じさせる拘り、その丁寧な作りに好感。舞台技術の照明も柔らかく、丸みを帯びた光の中で人物が生き生きと映る。そして無人のときは美しい光景として印象付ける。

没落士族の家に生まれた 高水せい(一役2人〈青年期・中年期〉)、子供の頃から好奇心が旺盛で知識欲もあった。しかし 女に学問は不要で 早く良縁に巡り合い嫁になること。そんな時代閉塞に不満を募らせる。いつしか 人の命の大切さ、それを出産の手伝いをすることによって知る。同時に医療行為は出来ないという現実にぶつかる。

荻野 吟子(女医1番)モデルの萩原ギン子は、夫のせいで不妊になった。当時は男の医者しかおらず辱めを受けるようで受診しなかった。彼女が対象にした患者は女性や子供といった弱き者。生沢 クノ(女医2番)役の吉沢クノは、精神疾患の患者を死なせてしまい医療行為に自信を失っていた。高水せい は、性別や年齢に関わらず困っている人。3人の生き様と医療への考え方の違い、それでも互いを認め合う。そんな高く深め合う姿が尊い。

男社会や家制度、今でいうパワハラ・セクハラといったハラスメント問題を点描する。その生き難い時代にあって、人間らしく生きたい、人の役に立ちたい といった熱い思いを歌で表現する。台詞という直接的な言葉ではなく、歌の歌詞にのせて しなやかに 強かに しかも情感豊かに表現する。そこにミュージカル劇としての真骨頂がある。

明治30年代に流行したペスト、その対応に奔走した女医たち。それを令和のコロナ禍に重ね、疫病に対する庶民の無理解が不安や不寛容を煽り増長させる。公演では、生き方や社会との向き合い方、それを 明治という150年ほど前の出来事を今に生きる我々にも分り易く伝える。その意味では一種の教育劇のようでもある。
次回公演も楽しみにしております。
ラーメンロック!!

ラーメンロック!!

KENプロデュース

シアターシャイン(東京都)

2026/06/30 (火) ~ 2026/07/07 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ロックに例え、自分の(心の)中で音が響かなくなった。その虚無感を乗り越え成長していく姿を描いたヒューマンドラマ。KENプロデュースは「チューボー」(第十三回公演)で池袋演劇祭優秀賞を受賞しており、料理関係を描いたら実に味わい深い。本作もラーメンという庶民の味、それを一般的な人々に準えているよう。

ラーメン修行=物事に打ち込むことによって得られる充実感、それを反目し競い合いながら技量を高め信頼も深めていく。店内という狭い空間が人間模様という大きな器をもって展開していく。ロック(音楽)は自分を表現する方法、今はラーメン(料理)を作る音が聞こえる。それは幼い時から聞き慣れた父の(寡黙な)後ろ姿でもある。なによりラーメンは自分を映す鏡で、味がそのまま出る怖さ。

冒頭のダンスや生歌で観客の興味を惹き付ける上手さ。物語は、ラーメン チェーン店の社長の社訓が心に響く。味の旨さは勿論、経営としての採算性も大切。何より客に喜んでもらえるような店であること。
(上演時間2時間 休憩なし)【醤油班】追記予定

Days Of Grey Sunlight

Days Of Grey Sunlight

空想実現集団TOY'sBOX

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2026/06/26 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

千穐楽観劇、面白い。
動物の観点で「自由」や「自立」といったことを分かり易く描いた物語。ストーリー性もさることながら、メイクや衣裳等で魅せ ダンスや躍動感ある動き、そのエンターテインメントとしての要素が魅力的。そして擬人化した動物たちの愛らしさが 実に好い。また音楽は動物たちの動きに合わせたテンポ、そのピアノの奏でが優しく効果的。

物語は 概ね説明通りで、舞台は アナタの街から隣の隣の隣ぐらいの隣街…要は身近で普遍的な話ということ。人間に飼われて育った犬・レトは 寝食に事欠かないが 外の世界を知らない。その意味で 知識や経験等は浅い。一方 野良猫のシッシは、日々の寝食を心配しなければならないが、仲間に囲まれ広い世界を見ている。生きている環境が違う犬、猫が触れ合うことで見えてくる情景や心情が観客の心を優しく包み込む。

物語が動き出すのは、「野良犬ゼロ作戦」が始まろうとしていた―。何となく 殺処分をイメージし、外に出たレトは飼い犬から野良犬に間違われ といった緊張感がうまれるが…。人間以外の動物と人間の思惑、その描き方によって物語が全然違った印象(結末)になる。観客が欲している内容、その捉え方によって少し評価が分かれるかも。
(上演時間1時間40分)追記予定

空の下の約束

空の下の約束

劇団龍門

シアターシャイン(東京都)

2026/06/24 (水) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
さすが劇団龍門、社会派劇でありヒューマンドラマを硬軟織り交ぜて描いた秀作。説明では「都会の片隅にある『富山公園』に住み続けているホームレス」とあるが、台詞から東京の山谷が舞台になっていることが分かる。その地の歴史を通して 今ある貧富/格差・不平等・生き辛さ等を浮き彫りにする。同時に或る事情で関西から逃れてきた女性の出自から、特定の地だけではなく どこにでもある問題を示唆する。

全体的に昭和という時代、そのノスタルジックを漂わせた公演。登場人物から「義理」や「人情」といった台詞が飛び交う。敢えて昭和から地続きの現代を風刺しているように思える。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

舞台美術は 後景にメッシュパーテーション 、その前にベンチ1つ。上手/下手は非対称の壁でその前にゴミの山。下手はブルーシート等で覆われたホームレス げん(村手龍太) さんの住処。この構図は龍門の基本型のよう。

富山公園を再開発し 大手資本による商業施設を誘致する。そのためには住み続けているホームレスを退去させる必要がある。いろいろな事情を抱えた人々がいるが、個々の事情は深堀しない。敢えて 水商売を嫌って関西から逃げてきた女を匿う様に受け入れたことくらい。この女曰く 関西でもホームレスが住み続けている地があると。舞台のモデルと思われる「山谷」は、げんさん曰く「戦後復興、高度成長期を支えた人々が住んだ街」であり、今の日本(経済)の礎を築いた地でもある。土地には歴史があり、人の活気が息づいている。

一方、ホームレスは生産性がなく人権など無いに等しい。行政は経済至上に則り、強制執行してでも立ち退かせようとする。ホームレスと国との板挟みになる区職員 たかいち の苦悩がリアル(リバタリアニズムの模索?)。生活保護や就職斡旋のような寄り添った対応、しかし立ち退きに応ぜず遅々として事は進まない。業を煮やした国は…。昔気質の極道や ヤクザから公務員になった男など、立場が人を作っている。アウトロー的な観点だが、けっして正邪/勧善懲悪といった描き方ではなく、自分の正義(信念)を貫けといった生き様を問うている。

登場する一人ひとりの見せ場を作り、日常の暮らしを点描することで多様な人間模様を紡ぐ。人に個性があるように生き方も様々。げんさん流に言えば風の吹くまま気の向くまま、しかし空はどこまでも繋がっており、どこに居ようとも人の縁は繋がっている。
何と言っても 区職員 たかいち さなえが捲し立てる激情が庶民の本音、そして切実な思いであろう。それにしても げんさんの機密事項は何だったのだろう、気になる。
次回公演も楽しみにしております。
海ねこ症候群 結成5周年企画第2弾 スタジオ公演

海ねこ症候群 結成5周年企画第2弾 スタジオ公演

海ねこ症候群

王子スタジオ1(東京都)

2026/06/25 (木) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

㊗️結成5周年企画第2弾 面白い。
初の外部脚本家(3人)による「メゾン江古田103号室~きゅんきゅんしたい~」というテーマによる競作。フライヤーにある謳い文句「最高に贅沢で挑戦的なオムニバス」は楽しめた。当日パンフに 主宰/演出の作井麻衣子さんが「何とも難解なテーマでお願いし」とあるが、見事にその世界を表していた。

当日は 台風予報で足元が悪かったが観に行って正解。観たのは Aチーム「すさまじい おやさい」と Cチーム「壮大でささやかな二人芝居」の2本。作井さんが出演する「ふたりは(最高の)ともだち」が観られなかったのが心残り。
(上演時間1時間15分-2本 作品間に休憩なし)

ネタバレBOX

正面に何枚ものポスターや絵が貼られているが、劇中(物語)のことを表している。上手壁際に冷蔵庫や本棚、ハンバーラック、ベット。中央奥にテーブルと椅子。下手にソファが置かれている。客席天井部にミラーボール。雑然としているが、全ての小道具/小物は使用する。
物語の概要は 説明にある通り。

A「すさまじい おやさい」
八百屋で働くわたし(カホ)は、あの人(りょうすけ)の部屋(テーマからするとメゾン江古田103号室)へ行くが 留守。部屋をきれいにしているところへ ルンバが話しかける。床に落ちている萎んだピーパンを拾ってほしいと。ルンバ曰く埃のような小さなゴミは掃除できるが 大きなゴミは掃除出来ない。「拾って」「嫌だ」の繰り返し、漂流するような会話が続き、カホがルンバに向かって部屋から出ていけと。実際 出ていこうとすると引き留める。

カホは 何でも熟し八百屋でも働き者、それゆえ仲間からは嫌われ疎まれている。一方ルンバは大雑把(ピーマンさえ拾えない)で何もしたくない。正反対の2人が一緒に過ごすうちに、ルンバが飽きてくる。「ゴドーを待ちながら」ではないが「りょうすけを待ちながら」交わす会話、反対の思いが交差することによって不条理が立ち上がるよう。時間の経過は、ミラーボールに照明を当て回転光の流れによって表わす巧さ。ルンバが人型ロボットなのか生身の人間なのか、一方 カホは萎んだピーマンに準えて劣化を恐れ冷蔵庫へ入ろうとするが…。何ともシュールな世界観。

Cチーム「壮大でささやかな二人芝居」
金ぴかのツナギ衣裳を着こんだ新型ロボットの彼氏。一方 ダンボール箱で作った旧型ロボットの彼女。ここ火星から見る地球は 黒い霧状に覆われている。早い情景転換と早着替えで 地球史であり人類史を駆け足で展開していく。人類誕生から最期の人間にして 彼女の製作に関わった博士との思い出まで盛りだくさん。博士が名付けてくれた名前は「ノア」、勿論「ノアの箱舟」を意識している。

人類は自分たちの行為で滅亡、博士は文献によって知り得た(歴史)知識を彼女に教え伝えた。それを持続可能にするため、博士がかつて結婚しようとした女性のために買った指輪をプレゼントした。それを売ってエネルギー補給するようにと。今、新旧のロボット 彼氏と彼女は博士が予言した時に地球を眺めている。黒い霧が晴れ 地球は青かった と そんな壮大な話を103号室で繰り広げて楽しんでいる2人の物語のよう。壮大なのか卑小なのか判然としない、謎めいたところが面白い。
次回公演も楽しみにしております。
『逸出・ハムレット』

『逸出・ハムレット』

演劇企画ヱウレーカ

インディペンデントシアターOji(東京都)

2026/06/24 (水) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い。初見の団体だが、演劇企画ヱウレーカ公演は凄い!また注目すべき団体を見つけた。

逸出とあるだけに、その描き方が多重に立ち上がり、観客の捉え方によって更に面白味が違ってくる。その世界観こそが妙味であり、どう書いてもネタバレになりそう。概要こそシェイクスピアの「ハムレット」だが、描かれているのは彼の内側(心)から捉えた21グラム=魂の彷徨。これにはシェイクスピアもビックリだろう。

物語を支えているのは、舞台美術でありメイクや衣裳といった外観で それだけでも楽しめる。また劇場の中二階部分も上手く使い俯瞰的であり劇中劇仕立てにも思わせる、そこにも逸出の意味合いが込められているよう。シンプルだがスタイリッシュで心情表現にはピッタリ。
(上演時間2時間) 【Team B】

ネタバレBOX

舞台美術は、入り口側に舞台を設え 反対側に客席、この配置によって観客は中二階部分を観ることができる。舞台上手に小さな段差、不規則に真鍮ポールが横並び。何となくハムレットの自縄自縛した心を閉じ込めている牢のようにも見える。全体的に薄暗いが、それだけに ちょっとした色彩ある照明の諧調は効果的だ。また和風音楽(小太鼓や拍子木の和楽器)や音響も効果的で物語を印象深くする。

物語は亡霊・先代王ハムレットが夜中に現れて 新王クローディアスに復讐するよう囁くところから始まる。説明にある「復讐の炎に身を捧げ、狂気に身をやつす。そうして炎に己も焼かれ、ついに自らも毒刃に倒れる」と。このハムレットには「To be, or not to be, that is the question」という有名(2者択一といった切羽詰まった)台詞はなく、「Fair is foul, and foul is fair」といった「マクベス」のオクシモロンの台詞。そして旅回りの一座や墓守といった者も登場する。

王城はハムレットの脳(城)内であり、登場する人物は自身の部分 分身であり己の葛藤を表している。例えば臣下で友人のホレイショーは<理性>、決闘したレアティーズは<迷い>といった化身を表している。脳内で掘っている穴は自身の墓であり、懊悩が伝わる。それを旅回り一座が茶化し劇中劇仕立てにして観せているよう。ハムレットという視点はブレないが、多重ともいえる構成が観る者の想像力を掻き立てるが、同時に翻弄するようでもある。

メイクや衣裳 そして小道具まで観(魅)せる工夫をしており、ハムレット物語の世界をしっかり表出している。花吹雪ならぬ血吹雪を連想させ、物語性を支える演出も好かった。ハムレットは生者なのか死者なのか その捉え方によって現在/未来、または過去といった世界観を表している。多重な構成によって色々な世界観を織り込んで観せた好公演。
次回公演も楽しみにしております。
せかいをみてくる

せかいをみてくる

アンティークス

小劇場 楽園(東京都)

2026/06/17 (水) ~ 2026/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「これから」観劇。
今どんな世界の物語を観させられているのか、その不思議感覚が公演の魅力。どんどん惹き込まれ、最後まで興味が尽きない。2015年杉並演劇祭大賞受賞作、11年ぶりに蘇るアンティークス幻の代表作は見応えがあった。少しネタバレするが、「ただいま」「おかえりなさい」「元気だった」 という何気ない言葉が物語のカギを握る。意識した記憶と或るモノによって覚醒させられた無意識が交差した時、主人公 しのぶ と母 ゆみこ の想いが溢れ出る。

表層的には SFで夢落ちのような印象だが、それとは別に人のいろいろな感情が押し寄せるといった現実の重み。当日パンフにテーマは「旅」とあり、人生を「意識=魂」の旅と仮説したとある。現在(2015年)と過去、その時の繋がり交わりこそが人と人の絆、それが優しくも悲しい、そして残酷だ。
(上演時間1時間35分)【チーム海】㊟ネタバレ

ネタバレBOX

舞台美術は、中央に木製のテーブルと箱馬、入り口の対角線上(角隅)に飾り棚とピアノ。上演前は衣類が散らばっている。飾り棚の上にミニサボテン。

しのぶは就職活動をしているが、うまくいかない。母は そんな娘を明るく元気に励ます。「ただいま」「おかえりなさい」の繰り返し、しのぶ はサボテンに向かって元気だった?と話しかける。とにかく生き生きと活動し 愚痴と慰みが微笑ましい。母と娘2人の家に父と妹と名乗る親子が入り込む。ケケケケという言葉しか発しない奇妙な者、闖入者のように思えたが、母は自然と受け入れる。しのぶは混乱するが、いつの間にか不思議な力に魅入らされている。しのぶの親友 くるみとの交流、父母妹との家族旅行といった穏やかな暮らしを点描する。

お父さんや妹さっちゃんの不思議な力、いつの間にか母が18歳の時代へタイムスリップ。しのぶは 自分が生まれる前の世界を俯瞰している。母から 父は事故死と教えられていたが 実は違う。父と思しき人 学(マナブ)と母は結婚するはずだったが…。ゆみこは眠り病という難病に罹っていることが判明し、一芝居打って自ら別れた。堕胎するつもりだったが、結局は産んで育て始めた(しかも記録用の映像まで撮影)。

ゆみこは記憶障害に陥りながらも、しのぶが18歳になるまで一緒に暮らした。実は しのぶも3年間眠り続けた。眠り病は遺伝し、その間にゆみこは目覚め、しのぶに「おかえりなさい」と話しかけていた。一方、今しのぶは目覚め ゆみこに向かって「ただいま」と。無意識下(眠り)にいる母または娘に向かって交差する想い=記憶の混濁、母と娘の無意識の交信のようなもの。居るのが当たり前と思っている人、その日常がどれほど大切で愛しいことかを痛感する。人の滋味をしっかり味わわせてくれる秀作。

或るモノ=父と妹は、地球人ではなく遠い星からやってきた異星人のよう。自星に戻ることもできず、眠り病⇨記憶障害の(忘れっぽくなった)母=ゆみこの意識下に潜り込み、タイムスリップさせることで、2人の想いを繋ぐ。ピアノの生演奏、照明の絶妙な諧調が情景を支え、心情を印象的に表す。それが魂と魂の共鳴にピッタリな演出になっており見事。
次回公演も楽しみにしております。
隕石

隕石

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

思(想)いを伝える いや寄り添うといった心温まる物語。冒頭は限界集落からの逃避的な印象だが、その後 不思議な出来事が…。この公演が面白いのは、表層の可笑しさの奥にある哀惜が透けて見えるところ。少しネタバレするが、場面は突然転換し 全然違う話が展開しだす。しかしラストは緩く繋がり余韻を残す。

もう1つの面白さは、眼前で繰り広げられている物語を通して、自分なりの別の物語が立ち上がってくるところ。色々な想像力を掻き立ててくれる好公演。自分の中では「隕石」は比喩、もっとも劇中で隕石が落ちてという台詞があり 大きな音が響くが。隕石は抗えない運命のようなもの、その時 人はどのような選択と判断をするのであろうか。
(上演時間1時間20分)

ネタバレBOX

舞台の後景は白幕、照明効果によって木や枝のシルエット。始めのシーンは やや下手側に木のベンチが1つ。次は中央にテーブル 椅子そして天井に飾り電球1つ。このシンプルな装置は別役実の芝居でよく観られるもので 何となく不条理を連想してしまいそう。

始まりは各駅停車しか停まらない駅舎(ベンチ)。この街で生まれ育った女 榎本が外の街 とりあえず東京へ行ってみたいとやってくる。ベンチには先客(男=駅員)がおり、何故か榎本を街から出ないよう引き留める。いや強硬手段を用いて阻止しようとする。乗ろうとする電車が近づいてきた その時、派手な服を着た男 布袋(自称 税理士)が現れ「遺産相続人に選ばれた」と奇妙なことを言い出す。金品ではなく、出来事の遺産相続、それを体験してほしいという。

場面は変わって、夫婦と夫の兄の3人の会話。妻 幸子が突然 夫 賢二に別れ話を切り出し、兄 健一は傍観している。妻曰く好きな人ができた の一点張り。夫婦の漂流するような別れ話、そのうち 夫が自由の身になることへの喜びを見出す。逆に妻はそれがおもしろくない。兄は自分の病(stage-1 手術)のことが心配で 弟夫婦の会話は二の次。場面は変わり 結局 榎本は或る事情を知り、この街に留まる。さらに痴呆が進んだ奥様が現れ、再び布袋が現れ遺産相続の話へ。

自分の想像は膨らむ。隕石はいろいろな災害(人災も含む)の隠喩で、人は運命に抗うことができない。突然のことで言えなかった思い〈遺産〉を その人に代わってどう伝え〈相続〉るのか。その人が選択したこと、そして記憶に留めること そんな人に寄り添った心温まる物語。同時に、冒頭の場面は限界集落になるという事情だけではなく、その地が掛け替えのないほど大切(見守りを含め)な場所 ということが浮かび上がってくる。人の思いを じんわりと噛みしめる好公演。
次回公演も楽しみにしております。
借金大王

借金大王

中央大学第二演劇研究会

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

バブル経済崩壊の20年後、そして今から20年前というから2006年頃の物語。説明にある雇用が安定せず、社会には大きな格差と不安が生まれたことは事実、しかし そこから成長するもの…国は「ギャンブル推進法」を制定し 一発逆転のチャンスは国の支援もあり急速に成長は虚構(貯蓄から投資〈運用〉を推奨するが)。この虚実を巧みに織り込んで展開する。
(上演時間1時間20分)

ネタバレBOX

段差の小さい素舞台、周りは黒い壁や暗幕で全体的に薄暗い。上演前は靴音が響き不気味な雰囲気を醸し出す。物語は総理大臣の国政演説のようなシーンから始まる。

国民の姿を描いているようで、実は国の施策を皮肉っている。国の施策に翻弄される国民、その貧困化はそのまま国力の衰退に繋がり、タイトルにある「借金大王」は国民というよりは国家そのもの。いや借金は後世代へのツケ回しで、その時(現在)だけではなく、未来への負債。そんな世相を切り取った物語。ギャンブル推進を表したパチンコ場面、確変を望むがなかなか こない。そこから地に足をつけた施策への転換。

物語に「運 貸し」というビジネス(ラックバンク)が出てくるが、「運」を「金」に読み替えれば 都合よく貸付、状況が悪くなれば貸し剥がしといったリアルが立ち上がる。それを国政で取り上げるという、まさに運否天賦で茶化すような話。物語で描きたいことは 何となく解るが、表層的で深く切り込めていないのが惜しい。「ギャンブル推進法」や「国民努力評価法」等、言葉(台詞)の裏にある重みが もっと真に迫ればよかった。

演技はオーバーアクションで少し粗く、表現力に難があったのが残念。今までの中大第二演劇研究会の公演は奇知にすぐれて といった印象だが、本作は解りやすいが 有り触れた内容(単純な対立軸)のように思えた。
次回公演も楽しみにしております。
半神

半神

早稲田大学演劇倶楽部

早稲田大学学生会館(東京都)

2026/06/04 (木) ~ 2026/06/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

久しぶりの学生演劇。演目「半神」に惹かれて観に行ったが、予想を超える面白さ。勿論 原作/脚本の魅力もあろうが、演出(客席も含め)が面白い。少しネタバレするが、シャム双生児姉妹を通して人の心にある願望というか欲望をあぶり出す物語。姉妹の外面や内面を醜/美や知/痴などで対置させることで、人の心の在りようを描く。生まれた時からいつも一緒、離れることも出来ない。その気持が「孤独」を欲する。しかし 歳月が二人の運命を分つ といった内容。

出ハケを含め 物語の外観を表す動きは十字(縦横の直線)、心情表現はぐるぐる回るような動き、その変化によって物語の状況を分からせる工夫。また姉妹の対比は登場人物の色彩(例えば服や靴など)や可動する対になった木材櫓で表す。櫓は、台詞にある半螺旋階段であり灯台の象徴であろう。その装置を合体したり分離させることで、二人の情況を演出する。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定

外のことはわかりません

外のことはわかりません

ポポポ

シアター711(東京都)

2026/06/03 (水) ~ 2026/06/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
間取りという限られた空間を通して、人が大切にし 何を優先したいかを描いた良作。そこに人それぞれの思考、生活様式や社会的な問題を絡め、幅と深みのある物語を立ち上げている。

どうして「子供部屋、いらないです」なのか が肝だが、ラストはその言葉の裏返し(真意)が心に響いてくる。実演では表現し難い場面、それをポポポらしい影絵(手遊び)演出で効果・印象的に観(魅)せる巧さ。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定

ツイスト・アンド・対話

ツイスト・アンド・対話

南京豆NAMENAME

シアター風姿花伝(東京都)

2026/05/27 (水) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ホームシアターで二画面ドラマを観ているような感覚。舞台美術と物語が上手/下手に分かれて(同時)進行する。少しネタバレするが、タイトルにある「ツイスト」が上手で進行する小さな劇場の楽屋裏、「対話」が下手の同棲しているカップル。この2つの物語はラストになって ようやく緩く繋がる。

なぜ2つの物語を交互に描くのか、そこに人間関係の妙が透けて見える。楽屋裏は個性豊かな役者が揃い賑やかだ。どんな芝居をしているのか定かではないが、そこに居る役者の存在こそが重要。役者を通して 時代劇、恋愛劇、アイドルといったジャンルを表し、その多様さが一般的な楽屋を指している。演劇はたとえ一人芝居であっても、スタッフ等 様々な人と関りがある。

下手のカップルは10年以上の付き合い、最近は倦怠期なのか会話も弾まない。日常の淡々とした営み、そこに少し奇妙な話を織り込むことによって刺激と関心を誘う。どちらともなく会話をするための工夫、そこに無理が透けて見える。

楽屋を「動」とすれば、カップルの部屋は「静」になる。人間関係の距離感の難しさ、それを演劇(対比)を通して色々な態様を描いている。また それぞれの笑いの質のようなものも違う。南京豆NAMENAMEの独特の表現方法であり世界観の構築、そこは楽しめた。
(上演時間1時間40分 休憩なし) 追記予定

五十嵐先生

五十嵐先生

コケズンバ

サンモールスタジオ(東京都)

2026/05/26 (火) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
物語は あらすじの通りだが、話の構成というか構造が秀逸。「スーパー学園コメディ」と謳っているがサスペンス的な要素もあり笑いと緊張といった硬軟ある描き方が上手い。また教師それぞれの立場や人物像を個性豊かに立ち上げ、会議劇の醍醐味を味わわせる。この公演、あらすじ以外を記すると すべてネタバレになりそう。

敢えて記すとすれば 「五十嵐先生」は登場しない。映画「桐島、部活やめるってよ」のように 先生方の会話から五十嵐先生の人物像を連想させる。同時に 不在が謎を深め観客の関心を誘う。また会話を通して先生方の思考ー教職とは といったことが浮き彫りになる。例えば 教頭の個人(男性)的な趣味/趣向と教員としての信条ー生徒の夢を叶える手伝いをすることーのギャップも可笑しさを誘う。ぜひ劇場で…。
(上演時間1時間45分)追記予定

亀と潜水艦

亀と潜水艦

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2026/05/22 (金) ~ 2026/06/04 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
1946年夏、日本最大の引揚げ港 博多を舞台に 戦争の哀しき傷跡を描いた物語。 1945年11月に設置された博多引揚援護局から引揚者の一時宿泊施設の協力要請を受けた「萬年荘」、そこに居る人々と二日市保養所から来た女の哀しい出来事を絡めた叙事であり叙情。戦争は特に女、子供といった弱い者を犠牲にした。物語でも望まぬ妊娠をした女性、また登場こそしないが萬年荘の老女たちを通して戦災孤児にも想いを馳せる。

今回の公演は、今まで観てきた公演に比べると光(照明)と響(音楽)が印象的で、心情表現に優れていた。一方 ラストの大掛かりな舞台装置の(動的な)転換は小さい。しかし舞台技術と相俟って表れた光景は、やはり桟敷童子らしい見事なもの。そして何といっても三婆の愛嬌と悲哀といった相反する感情が物語を力強く牽引する。観応え十分。
(上演時間1時間45分 休憩なし)追記予定

じべた

じべた

椿組

小劇場B1(東京都)

2026/05/25 (月) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
過去でも現在でも未来でもない、しかし いつの時代にも隣り合わせにある 謂わば普遍的ともいえる物語。以前はネジ工場だったが、今は国策に貢献するモノを忸怩たる思いで作っている人々の群像劇。早い段階で、外波山文明 氏が じべた(板)に耳を当て(胎動を感じ)動いていると、その台詞に物語のすべてが集約されている。まさに大地は母であり命の源と言えよう。少しネタバレするが、その象徴がラストシーンに現れ印象付ける。地続きの じべた の上に国があり 街があり 家族がある。そして人の営みがあり人間模様を綴っていく。

物語を支えているのが舞台美術であり、照明や音響/音楽といった舞台技術である。この劇場の二面客席を活かした壁面への映像は、ワイド画面になり迫力を増す。また薄汚れた情景は、状況のそのままであり人の荒んだ心を表しているよう。この工場で働く人々の思考のあれこれが、リアルな感情として迫ってくる。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定

空(くう)

空(くう)

空(くう)公演

RAFT(東京都)

2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い。
戦禍を避けるために地下へ逃げ込んだ家族(人間)の業を描いた濃密な朗読劇。朗読だが、台本を持ち小さな動きをすることで状況を補足する。あらすじ にある一家、この家族形態こそが物語のカギ。

少し気になるのが、脚本 蕭勁強(シウ・キンキウ)氏と演出 インディー・チャン氏が当日パンフに共通して「『戦争』の苦しみ」と記しているにも関わらず、人間と戦争そのものの関りに距離があること。勿論、地下という閉塞した状態に追い込んだのは戦争に違いないが、そこから先は家族内での生存をかけた闘い。どちらかと言えば人間の醜悪さが浮き彫りになっていく。タイトル「空」はいろいろな捉え方ができて 言い得て妙。
(上演時間1時間15分) 

ネタバレBOX

客席はⅬ字型。舞台セットは木のベンチとミニ椅子とラジオ。戦争というか内乱による戦禍から逃げるため地下へ。ここはフードセンターの地下であり、わずかではあるが食料(缶詰)が手に入る。その缶詰(サイズ)も時間が経過するに従い、だんだんと小さくなっていく。全体的に昏く地下といった雰囲気が漂い、それが閉塞感を助長している。

初めは兄と弟の2人が隠れていた。後からギターを抱えた女(嫂)、そして父と娘(妹)が加わる。本当の家族ではなく疑似家族として助け合うはずが、いつの間にか食料や水が底をつき、自分が生き延びるため エゴを剝き出しにする。極限状態における人間の醜悪さ と同時に恐ろしさ。(疑似)家族同士で殺し合い、屍の人肉を喰らって生きようとする。そこには常識や倫理等はなく人間の皮を被った獣がいる。こんな状況になるのは「偶然」ではなく「必然」、そこに物語の肝が透けて見える。

兄は元警察官、素性の知れない嫂は流れ者、父と娘は金持と貧困の愛人契約。もともとが歪で脆い人間関係。気になったのが、戦争を背景にしているが、厳密には体制と反乱(むらさき旗)という内戦状態。疑似家族内でも金持や元警官といった体制側、一方 嫂や弟、愛人にならざるを得ない女は反乱側という構図ではなかろうか。閉塞状況にある家族構成こそが戦争(内戦)そのものを生んでいる。

極限状態における人間の恐ろしさを描いているが、持つ者と持たざる者といった階級闘争的な背景をもっと押し出すことで物語の広がりと深みが増したのではないだろうか。最後は出て行った嫂が 若い女性(姪)を連れて帰ってくる。そして空いた天井部から光が差し込んで…そこに将来的な暗示が込められているようだ。ホッとするような物足りないような微妙な印象を残す。タイトルは、空腹であり天井の穴(空)であり、空(希望)を表しているようだ。
次回公演も楽しみにしております。
萼解きの詩

萼解きの詩

Cloche note

北池袋 新生館シアター(東京都)

2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

リアルとフィクションが交錯した世界観。本作は3名のストーリーテラーのエピソードを主宰の倉橋 鈴さんが1つの物語(脚本)にまとめたもの。構成は違和感なく抒情性に溢れていた。少しネタバレするが、 山崎初と菅井彩葉は高校時代の親友 そして初の死によって更に深い(不思議な)結びつきをする。その臨死的な、いわば物語の根幹とも言える設定が弱いようで 惜しい。

海で背中合わせに座っている2人(フライヤーでは立っている)が赤いリボンで結ばれている。同性愛という訳ではないが、ラストに「愛しているよー」と叫ぶシーンは甘酸っぱい青春ドラマのよう。ちなみに初の赤いリボンは「死因」であり「遺品」、彩葉の赤いリボンは「拘束」を意味しているらしい。ストーリーテラーのエピソードに共通しているのは関わり、その繋ぐ想いが切なく紡がれている。タイトル(萼解き=ガクホドキ)は 或る花の形と花言葉 そして想いを象徴しているよう。また思いを伝える古典的手段も微笑ましい。

舞台美術をはじめ衣裳や小物がフワッとした感じ、いわゆる浮遊感が漂うといった印象。そこに現世と来世の狭間、さらに巫女も登場し…。また劇中で歌うシーンが2か所。我が子をあやすために歌う「一番の宝物」(遥佳ver)と彩葉が初のために作詞した歌「一番の宝物」をアイドル結珠が歌う。その歌シーンはもう少し力がほしいかな。
(上演時間2時間 休憩なし)🥀…金井明日佳出演回 

ネタバレBOX

舞台美術は、暗幕に何枚かの白紗幕、そして客席寄りに大きさの違う岩の腰掛が2つ。きれいな花びらが一面に。浮遊感はこの世とあの世の狭間であり海を表している。それは照明の色彩と音響の効果によって一層際立つ。

話の1つは、高校時代の親友 初と彩葉はいつも一緒にいる。初は家族崩壊を苦に自殺し、その魂は彩葉の魂をも縛り付けて離さない。フライヤーにあるリボンで結ばれた2人の姿、人の心は複雑で 時に自分自身をも翻弄する。2つ目はアイドルに憧れているが、自分なんか と自己肯定感の低い斎藤麗世と彼女を応援したい母 遥佳のちょっとした確執。母としては平凡で安定した職に就いてほしいと内心思っている。3つ目は麗世が所属したグループの先輩が自分のアイドル価値に見切りをつけて辞める。自分とファンが求めるモノ、その需要と供給が一致しなくなった。

不思議な話が、奇妙に結びつき 夫々が前に歩み出そうとする。ファンタジーでありリアルでもある、共通しているのは人の思い。初が持っているのは菖蒲の花、その萼は花(相手)の自由を縛り付けるよう。死者の想いが生者の生き方(自由)を束縛するという暗示。2人が生きている時、海で拾った空き瓶、その中に未来へ向けて手紙を入れる。ベタな青春ドラマのようだが、ラストの朗読シーンは、時を超えて届いた手紙が繋ぐ切なくて温かい友情そして家族の物語へ昇華。
次回公演も楽しみにしております。
優しい劇団の大恋愛 Volume11『もっと愛してくれよ節』

優しい劇団の大恋愛 Volume11『もっと愛してくれよ節』

優しい劇団

吉祥寺シアター(東京都)

2026/05/10 (日) ~ 2026/05/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

前日の「夕焼け色のダイダラボッチ」が過去と現在を描いているとすれば、本作「もっと愛してくれよ節」は未来を描いている。優しい劇団 初の時代劇と謳っているが、登場人物の名前や衣裳がそれらしいだけで、あまり時代劇(情緒)という雰囲気はない。むしろ 劇団の特長でもあるスピードとパワフルさを活かして力強く紡ぐ。物語は、2人ずつ9組(それに瓦売りのばんちゃんと戯作者を加えた全20名)がそれぞれの愛を語らうという形で展開していく。

冒頭、出演者がそれぞれ「たまや(玉屋)~」と叫び 上(空)を見上げる。なぜ夜空に輝く星々があるのに、一瞬で消えてしまう花火を打ち上げるのか。それが地球(平賀源内が登場するから江戸時代のようだが、あまり時代は関係ない)のみならず宇宙という壮大な世界と結び繋がっていく。星は 遥か昔の光が 今地球で輝いて見える。花火だって 今は一瞬で消えるが、何十年、何百年もっと先の時代で一瞬の輝きが見えるかも…。愛だってその時代に結ばれなくても、遠い将来にまた出会い愛するかもしれない。

前作同様「出演者の顔合わせから本番まで、出会いと別れを一日で行う「大恋愛」シリーズ」、その謳い文句のような言葉「たった一日しか会えないあなたを想って書いた 愛の言葉の弾丸が心臓を撃ち抜く‼」。舞台構成と演技の観(魅)せ方は、基本的に同じだが、設定(時代)と役者陣が違うと やはり全然違った雰囲気になる。役者の演技力や魅力を十二分に引き出す演出はみごと。自分は本作のほうが好み。
(上演時間1時間30分 休憩なし)追記予定

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