百年の孤独 公演情報 月蝕忌実行委員会「百年の孤独」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    千穐楽観劇。面白い!
    久し振りの寺山修司作のアングラ劇。物語の筋を追うというよりは、その場面ごとの特異さを紡ぐことによって全体像が明らかになる といった感じ。些細なことに拘っていては、物事の本質を見失ってしまいそうな危うさ。

    「百年の孤独」は、ガブリエル・ガルシア=マルケスの長編小説。ブエンディア一族が「蜃気楼の村」マコンドを建国し、その隆盛と滅亡に至るまでの100年間を描いた物語。それを寺山修司が上演 そして映画化しようとしたが、係争になり改題(『さらば箱舟』)等して上映。現在は無関係な作品として扱われるらしいが、ストーリーは共通している と。

    相当 刺激的な作品で、独特な世界観に魅了される。勿論 その世界観を立ち上げていくキャスト陣の熱量が凄い。少しネタバレするが、小さな貞操帯を付けただけの全裸の女優、その貞操帯を外して情交したい光景が至近距離で繰り広げられる。性的な場面だけではなく、現世と来世を繋ぐアナログ的な奇知が面白い。脈絡が有るのか無いのか判然としないが、ラストは そういう事なのかと…。
    (上演時間1時間45分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は暗幕で囲い、中央上部に柱時計が吊るされている。その下に箱馬が3つ。上手/下手に物語を暗示するような支柱。上手は冥途/一族/手紙、下手には極北/魔境/科学と書かれた矢印。中央客席寄りに平箱が1つ。劇中やカーテンコールでの役者紹介でマッチを擦り火を灯す。その儚くも幻想的な光景が印象的。公演の妖しい魅力は、特殊なメイクや衣裳、光と影の陰影(モノトーン)の中で紡がれる幻想的な妄想。

    物語は、世間の中傷や因習の中にありながら 従兄姉同士で愛し合う一組のカップル(近親婚による「豚の尻尾を持つ子」が生まれるというと迷信に捉われ貞操帯を付けている)。神父不在で結婚式を挙げられなくなってしまうカップル。身に覚えのない夫から次々に遺品が届く年増おぼこ(処女)。村人の手紙を冥土へ送る郵便配達人。やがて彼ら全員で記念写真を撮るに至るまで綴る。遭遇する不可思議な出来事の数々、それは夢と現、または過去と現在を彷徨する迷宮(もしくは迷走)する村のよう。

    公演の表現的な魅力は、得体の知れない世界観とそれを表出していく偏執的とでも言う情熱。1人ひとりの独特な存在感と奇妙なパフォーマンス、その表現し難い魅力に圧倒される。当時の社会情勢など関係なく、ひたすら自分たちが信じた道を突き進む。そんな熱に浮かされた心象。シアトリカル(=劇的)に演じ、語り、怒り、笑いといった素直な感情が炸裂する。

    この村から出られない不自由と閉塞感等、それは当時の時代の情勢を表しているのではなかろうか。人は社会(村/国)という共同体の中で生き、そして死んでいく。死は本人の肉体の焼失だけではなく、他人の記憶の消失によって その存在が亡(無)かったことになる。ラスト、平箱に入っていた過去帳を取り出し、百年経ったら(皆)記憶から抹消され村が消滅する。そこに救いがあるのか否か。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/11/24 20:06

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