“Kiss me, deadly”
smartball
王子小劇場(東京都)
2008/07/04 (金) ~ 2008/07/14 (月)公演終了
満足度★★★
三人に刮目。
今回、なんとなくsmartballというものが見えた気がする。
まずもってやりたいことがあって、次に物語をつけているような、イメージ。
だから、おもしろい部分はおもしろいけど、特に調和が感じられなかったり。
そのアンバランスさが味といえば味なのだろうけど。
ううん、歯切れが悪い。残りはネタバレにて。
やはり、と言うべきか。遠藤留奈・石井舞・深谷由梨香に刮目させられた。
この場は、「それぞれ違うからいい!」なんて陳腐な言葉で片付けてしまうが、
実際にキャラクタが立っていて、その点は安心できた。
三鷹でムカついた方へ。今回のsmartballはちょっとちがいますよ。
「おうじまで くれば ちょっとはあんしんだ」
お粗末様でした。
short program
劇団銀石
桜美林大学・町田キャンパス 徳望館小劇場(東京都)
2008/07/03 (木) ~ 2008/07/07 (月)公演終了
満足度★★
ゴーマンかまされました。
公演というよりは、銀石メソッドの試演会というか勉強会というか。
ただ、メソッド紹介が目的であった故に、見世物としては退屈であった。
それでも目を見張る俳優が混じっていると気分は高揚するもので、
特に斉藤マッチュに関しては、「銀石以外の場所で見たい」と思わされた。
他の演出家とも仕事をし、さらに世界を広げることを望まれる。
眠れない夜なんてない
青年団
吉祥寺シアター(東京都)
2008/06/27 (金) ~ 2008/07/06 (日)公演終了
満足度★★★★
ここではないどこかなんてない。
マレーシアの高原リゾートに住み、第2の人生を謳歌する人々を描く。
近年の青年団らしい、「日本」を強く意識させる作品となっている。
日常の切り取り方など、餅は餅屋としか言いようのない青年団感覚。
ただ、少々旦那芸のような雰囲気もあるはあるのだが。
華燭(かしょく)
東京タンバリン
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2008/06/27 (金) ~ 2008/07/06 (日)公演終了
満足度★★★★
構成の妙。
太宰の熱心なファンではないため、幾つかの短編をモチーフにしたという
本作品について、特段の深い知識は持ち合わせてはいない。
ただ、下手なパッチワークではなく一枚の布のように一つの戯曲として、
太宰的な世界観を構築していることに関して、感心せずにいられなかった。
俳優陣も世界観を見事に体現しており、作品を揺るぎないものとしている。
芸術家たちの酒席、芸術家と女の絡み。確かな雰囲気だ。
文学ファン(もちろん太宰ファン)も納得の舞台に仕上がってると言えよう。
その夏、13月
チェリーブロッサムハイスクール
サンモールスタジオ(東京都)
2008/06/27 (金) ~ 2008/07/01 (火)公演終了
満足度★★★
経過観察。
伏線を淡々と張り続ける仕掛けの面白さはなかなかのもの。
仕掛けに関する丁寧さは、力のあるである戯曲の証明でもあろう。
ただ、その仕掛けに対して、気持ちまではついていきにくいのでは、とも思う。
少なくとも、一度見ただけでは説得力を持つことは難しい、ということ。
もちろん、次も気になる団体の発見であったことには違いない。
あゆみ
toi
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/06/18 (水) ~ 2008/06/24 (火)公演終了
満足度★★★★
ゆっくり歩け、たくさん水を飲め。
1アイディアで魅せる柴作品の魅力をしっかりと堪能。
10人の女優の歩みに、日常が生まれ、ドラマが生まれ、人生が流れる。
ああ、「歩く」という、こんな当たり前のことを改めて考えさせられるとは。
劇場を出たときに、自分の歩みの一歩一歩に意識がいったりして。
これこそ、観劇後の最高の至福のひとつでありましょう。
堪能した堪能したとはいえ、ちょっぴり長い気もする。
最後まで見えてしまうが故に、中が弛んでしまう、1アイディアの悲しい性質。
ゆっくり散歩するつもりで、100分を楽しむのが吉かな。
「て」
ハイバイ
駅前劇場(東京都)
2008/06/18 (水) ~ 2008/06/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
深化する悲喜劇。
キャラクタが相変わらず秀逸とか、アンチ成長物語でどこにも行かないとか、
悪人は誰一人いなかったとか、痴呆老婆のアサッテぶりが素敵とか。
いやはや、私演劇といって片付けてしまってよいものなのだろうか。
悲喜劇的状況は深みを増し、ポジもネガも同じ状況下でじゃぶじゃぶしている。
そのじゃぶじゃぶの状況に、泣くのは何か善人ぶってる気がするし、
笑うと何か性格悪い奴みたいに感じちゃうし、妙な雰囲気ではあった。
こんな爆弾を放っておいて次作はどうするの、岩井さん。と、余計な心配。
鳥瞰図-ちょうかんず-
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2008/06/11 (水) ~ 2008/06/22 (日)公演終了
満足度★★★★
フレームの中で。
「シリーズ・同時代」のトップバッターは早船聡。
「日刊Stage Power」でさえ知らなかった(笑)、間違いなくダークホースだ。
この無名の作家が3人に選ばれたことについて、観劇して納得した。
必ずしも順調とは言い難い日常に、風を吹き込む人物が登場する。
実にオーソドックスで、安心感の大きい物語構成である。
それぞれのキャラクタの立ち方や、笑いの感覚など非凡ではある。
が、それ以上にフレームをはみ出すような感覚は一切なし。
うーん、なるほど。これなら選ばれるわけだ、と僕は思った次第です。
俳優陣の充実が、作品向上のためのベクトルを向いているのが○。
これは当然のことだと思うのだけど、意外とそういう作品は少ないものデス。
父と暮せば
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2008/06/13 (金) ~ 2008/06/22 (日)公演終了
満足度★★★
残る作品とは。
井上ひさし戯曲の魅力のひとつは、冗長すぎる冗長さにあるように思う。
もはや良いとか悪いとかではなく、アイデンティティのひとつというか。
そういった意味で、しゅっと80分で終わるこの作品は、“らしく”はない。
作家のメッセージが強く押し出されている作品だ。
良くも悪くも長く残る作品とは、こういった作品であることだろう。
ベテラン辻萬長のおとったんの味、栗田桃子のまっすぐな娘の味。
今回新たに組んだコンビであるらしいが、実に濃厚であったと思う。
杭抗(コックリ)
乞局
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/06/04 (水) ~ 2008/06/15 (日)公演終了
満足度★★★★
乞局流クロニクル。
その<場所>の物語は、そこにまつわる人がいてこそ物語となる。
そんな当たり前のことをごく真っ当に描いた佳作であると思う。
そこにいるのは、また乞局らしい肉が剥き出しのキャラクタたち。
非常に魅力的なクロニクルに仕上がっていたのではないか。
ひとりが何役かこなすため、その差異もなかなか面白い。
中でもいちばん惹かれたのは池田ヒロユキ。どちらの役も魅力しかない。
というか、リュカ.の俳優さんたちの活躍はぶり目を見張る。
未だに本家で見たことがないのは残念。
劇王出場作品「グレムリンの行程」も拝見。
そのナンセンス具合を噛み締めることができたら、面白いのでは。
後からいろいろ考えても面白いし、するめみたいな感じがあるかも。
小部屋の中のマリー
DULL-COLORED POP
タイニイアリス(東京都)
2008/06/04 (水) ~ 2008/06/09 (月)公演終了
満足度★★★★
おとぎ話あります。
たとえ話に次ぐたとえ話で、出現したのは現代のおとぎ話である。
芳醇なおとぎ話の世界に、ぐっと引き込む力は、確かなテキスト力。
おとぎ話を目にも鮮やかなものにするライブペインティング。
計算が行き届いた作品空間に、酔わされぬわけがない。
ホームでの清水那保は初めてであったが、想像以上の少女力。
これほど想像力を支える/掻き立てる女優は、そうそういるものではない。
立川ドライブ
THE SHAMPOO HAT
シアタートラム(東京都)
2008/05/29 (木) ~ 2008/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
どこでもあること。
異常者が生まれる状況は異常ではない、という普遍的なテーマ。
だから、あらゆる意味において、立川だけの話なんかじゃない。
それは、どこの土地においても起こり得ることなのだ。
また、ワイドショー文化へのカウンターとして非常に興味深く思う。
演劇の視点をうまく用いた佳作であると強く推したい。
そして、だからこそ、130分という尺に特に違和感は感じない。
その話はまたネタバレにて。
それにしても、坂井真紀は当たり舞台が続いている。
(PPPP『ゆらめき』、ナイロン『わが闇』)
いや、むしろ当たり舞台の女神と言うべきかもしれない。
マチルドハイタワー
トリのマーク(通称)
ザ・スズナリ(東京都)
2008/05/31 (土) ~ 2008/06/01 (日)公演終了
満足度★★★★
すこしちがう風景。
「道」をテーマとし、人物たちは道を流れていく。
観劇者はさながら定点観測者だ。
禅問答のような繰り返しや明かされぬ謎の数々。
観劇者はきっとそこにある道ではなく、どこかの道を想起するかもしれない。
それは、想像力に満ち溢れた1時間だ。
劇場に入る前と出た後で、景色の見え方が違ったりするタイプの演劇。
それは小さくて、しかしながら、確かな価値であるだろう。
『誰ソ彼』(たそがれ)
ジェットラグ
シアターサンモール(東京都)
2008/05/29 (木) ~ 2008/06/01 (日)公演終了
満足度★
凡人Aよ、去ね。
吉本の芸人という理由だけで、演劇の脚本をおろせてしまう。
別に「領土侵犯!」と目くじらを立てることもないし、むしろ歓迎したい。
だからこそ、真っ直ぐに言うべきことは言わせてもらう。
「凡人Aよ、去ね」と。
芸能・音楽・芸術方面の才能が集う下宿を舞台とした青春群像劇。
ご都合主義にも無理があるだろうというアクロバティックな筋書きと、
意味ありげで鼻につく登場人物(演劇ってこんな感じ?みたいな)。
愛する要素を残念ながら見出すことはできなかった。
舞台を貶めることを助長した演出の仕事にも疑問を呈す。
稚拙な凡人Aの考え/思いすら拾いきれていないように思う。
また、キャスト陣を束ねられなかったのは力不足という他ないだろう。
名は体を現すのか、市井の塵芥のような仕事ぶりであった。
……ごめんなさい、上手いこと言いたかっただけです。
でも、彼が仕事してないのは間違いないなのでギャラは返納すべき。
プロデュース公演だし、お祭りだったらまだ許せたのだけど、
楽しむべき部分は一切なかったのだから、企画側は猛省するべし。
一部、興味深い面白いキャスト陣だっただけに、至極残念。
ガンまげ
TV TOKYO
紀伊國屋ホール(東京都)
2008/05/21 (水) ~ 2008/05/28 (水)公演終了
満足度★★
風が、止まった。
設定からくる疾走感あり、キャラ立ちもなかなかで、見所も多い。
歴史には残らないと思うけど、バトルロイヤルするだけの舞台と役者は、
揃っていたんじゃないかと、思うわけです。
ただ、そんないい風がばたっとやんでしまう瞬間があって。
特に主演の2人が織り込み済みとは言え、なかなか厳しい。
主演・與真司郎の声が聞こえづらい。せめて、もう少し、届けてほしい。
黄色い声で声援を送っていた彼女たちには届いていたのかもしれないけど。
小劇場観劇青年にも、お裾分けしてくれてもいいじゃない。ねえ。
黄色い声援が響く劇場に、もったいないおばけはうようよしておりました。
でも、それもお祭りっぽくていいかな、と思ったりもするのです。
4x1h Reading #0
4x1h project
ギャラリーLE DECO(東京都)
2008/05/23 (金) ~ 2008/05/25 (日)公演終了
満足度★★★★
group A
脚本・演出が同一人物であることが多い、小劇場の状況として、
戯曲自体をクローズアップする機会は、貴重であると考える。
元々、自分自身がテキスト至上主義であるから、嬉しい機会であった。
1回で終わらせずに、重ねて続けていっていただきたい企画である。
4x1h Reading #0
4x1h project
ギャラリーLE DECO(東京都)
2008/05/23 (金) ~ 2008/05/25 (日)公演終了
満足度★★★★
group B
リーディングの段階は、あくまで品評会である、というスタンスを確かめた。
戯曲の生に近い姿を見せるという一貫性は感じ取ることができた。
黒澤世莉の演出もそういった方向に徹底しているのだろう、と思う。
ショウジさんの息子
渡辺源四郎商店
アトリエ春風舎(東京都)
2008/05/22 (木) ~ 2008/05/25 (日)公演終了
満足度★★★★
名優健在。
宮越昭司という俳優のナチュラルさは、どこでも得がたいものがある。
ポジティブに「老人力」という言葉で表現したい、枯れた力がある。
こういった作品を見ると、新劇方面から熱い視線を受けている理由が分かる。
それこそ、落語の人情噺のような深い味わいなのだ。
なべげんのレパートリーとして、ずっと育てていってほしい作品である。
まどろみ
森崎事務所M&Oplays
あうるすぽっと(東京都)
2008/05/15 (木) ~ 2008/05/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
砂が零れ落ちる、目は冴えまくる。
物語の手をしっかり握っていたはずなのに、いつの間にか迷子。
というか、掴んでいたと思ったものが、砂のようにさらさらと零れ落ちる。
どこが現実で、どこが虚構なのか、どこまでも曖昧になっていく。
そんな体験がしたいがために、倉持作品を見続けているようなものだ。
確かに、「まどろみ」というタイトルに似合わぬくらい、神経を張り詰めさせた。
そんな悪夢もたまにはいいじゃあないですか。
近藤公園が好演。……ああ、くだらない。でも、本当です。
あの嘘なのか本当なのか分からない感じは、彼の力も多分にあると思う。
彼女とあたしと小指の思い出
世田谷シルク
SPACE & CAFE LA MANDA(東京都)
2008/05/18 (日) ~ 2008/05/18 (日)公演終了
満足度★★★★
炎の見本市。
独り芝居というコンセプトワークとして明確でブレがない。
人物模写・現代劇・古典劇、紙芝居、朗読。
確かにオリジナルと言えるものは、その女優の存在だけだ。
そこに強度を感じられたのは、堀川炎、彼女自身の力に他ならない。
ピアノとマリンバとのコラボレーションもいい具合。
彼女の作り出す世界を見事に補強している。
「炎の」と題したが、それは、仄暗い中に線のように燃える火だ。
しかし、そう簡単に消えそうにはない。