たからの観てきた!クチコミ一覧

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花束を渡すのは誰だ?

花束を渡すのは誰だ?

コマイぬ

Gallery&Café FIND(東京都)

2013/03/12 (火) ~ 2013/03/16 (土)公演終了

満足度★★★★

二人芝居の醍醐味が味わえる作品
設定が良く、展開が合理的で楽しめました。

ネタバレBOX

最初はハンドメイドが分からなかったのですが、ロボットみたいなものと理解して見ました。途中までは何故人間と同じものが食べられるのか不思議だったのですが、終盤の種明かしで伏線になっていたことが分かり、驚きました。ただ、食事が出来るレベルであれば生体に近い気がして、生殖機能もありそうな印象でした。

あとは、終盤に、シェルターが地下の隔離施設と言った気がして、空が見えたりピクニックに行ったりしたエピソードとの辻褄が合わないように思いました。何か聞き違えてたらすみません。あと、紅茶は茶色というより、文字通り赤のイメージなので、少し引っかかりました。細かく気になる点はありましたが、話としては意外性があり、素晴らしかったです。最後に「アルジャーノンに花束を」が出てきて、内容は違うものの、作風に共通する空気感を感じました。

劇場としてはとても狭い空間を上手く生かしていたと思います。ただ、2人がドアのガラス越しに別れを惜しむ場面が見えない席があったようです。とても感動的な場面なので、勿体無く感じました。小道具の使い方や動きは無駄がなく、素晴らしかったです。最後にメイが階段を上がって来るシーンが効果的でした。

役者さんは、二人とも素晴らしかったです。ジョージは動きが自然で、メイの成長を見守る場面の愛情表現が見事でした。終盤、メイと口論になる場面で、突然キレたので少し驚きました。もう少し予兆があったら嬉しかったです。顔汗がスゴくて、熱演が伝わりました。上手く拭き取ってくれた点も好印象です。メイも整った顔立ちが人間臭さを感じさせなくて良かったです。

序盤の太宰や落語家になるシーンのストップモーションも見事でした。膝周りに痣が目立ちましたが、隠してくれたら、より人間味が薄れると思います。成長につれて、子供から女性らしくなる様子が素晴らしかったです。

衣装を少しずつ変えることで季節感を出していたのが素晴らしかったです。照明、音響も工夫されていて、劇場の狭さを感じさせない舞台でした。劇場も洒落た作りで洗練された舞台でしたし、受付も待機スペースを用意して頂いたり、暖かい心遣いが感じられて、気持ちよく拝見しました。

公の園

公の園

dramatic department

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2013/03/03 (日) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★

たぶん
「公の園」という宗教団体かしら?

ネタバレBOX

3人の立場の違う女性がひょんな事から意気投合し、あれよあれよといううちに、怪しい宗教団体を立ち上げるお話でした。3人の中でもカリスマ性のあるマリアを教祖に抜擢し信者からお金を巻き上げようと企む。笑

殆どコメディで、ベタな内容ですが大衆向きな内容ですので、万人受けする舞台でした。
『                        』

『 』

荒川チョモランマ

日本基督教団 巣鴨教会(東京都)

2013/03/11 (月) ~ 2013/03/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

演劇って良いなぁと感動しました。
他愛ない3人の幼馴染みの話ですが、不思議と凄く得難い体験をしたような、貴重な時間を過ごしました。

ネタバレBOX

巣鴨協会で、スリッパに履き替えて入り、まず真心溢れたグリーティングカードをいただきました。そのカードが「3月11日」を思いやったものであったことにまずしんみり胸が温かくなりました。

協会の本堂に入ると、木のベットが、上にライトとか椅子が乗った状態で無造作に置かれ、それを百冊くらい絵本が床で取り囲み、カラフルなストローとか、白い風船とかが、ばらまかれたり窓にびっしり詰められたりしています。子どもの明るい夢の世界が始まりそうな印象を受けました。

ゆったりと座れる長椅子に案内され、ベットを取り囲むように座り、クラシックなピアノの調べを聴いていると協会の雰囲気と合わさって、自然に背筋がのびるような気持ちになりました。

神父の息子、幼馴染みの姉御っぽい女子、幼馴染みの天然の女子。3人の人間関係が、時間を遡って照会されるだけなのですが、ぐいぐい引き付けられました。

息子はまともそうだったり、社会問題にニヒルなことを言ったり、突っ込みにキレがあって社交的なのに、実はストーカー要素もあって熱い人物でした。
姉御は、サバサバしてるのですが、自信への自虐的ツッコミとか、報われない感じとか、ちょっとしたギャグの部分が凄く上手くて、何度も笑わされました。

天然の女子は、演技力が抜きん出てる他の2人に比べるとちょっとぎこちなさがありましたが、魅力がちゃんと伝わってきました。3人とも、幼い時の役もやり、更に、祖父母や、自分の老年期の役もやります。その切り替わりの時、「変化を見せるぞ」という下心を感じさせず、単にストーリーを伝えたい、その人物の説明に、すぐ自分の体を使って成りきる、という自然さ、美しさを感じました。

ストーリーの展開もどんどん気になり、役者が生きていて、更に3.11を通して感じたのであろうテーマ、人間愛もうっすら感じさせ、とても面白かったです。
協会の中のプラネタリウムに浸りました。

色んな人に見てほしいと思いましたが3/11の一日だけの公演だったのですね。真摯な公演を、観れて良かったと思います。

仮の部屋

仮の部屋

ユニークポイント

atelier SENTIO(東京都)

2013/03/09 (土) ~ 2013/03/17 (日)公演終了

満足度★★★★

何か解釈に悩みます。
一言で言えば、掟破りだと思います。演劇の設定を全否定する発想は奇抜ですが、どう受け取ったものか悩みました。

ネタバレBOX

穴が女性の体に繋がっている発想が男性的で、生理的に嫌悪感を感じたのかもしれません。また、劇中の親子の心中を止めるために壁が無いと訴える下りですが、劇中の死は虚構なので、心中を止める意味が薄れた感があります。

序盤は、取り壊すアパートに歴代の住民が集まり、それぞれの仮の住まいだった場を懐かしむ様が楽しめましたが、中盤以降、狐につままれっぱなしでした。チラシやパンフの説明で何となくの主張は分かりますが、表現方法が複雑な気がします。ある意味、芸術的な作品だと思いました。

開場時から舞台上に役者さんがいたので興味を持ちましたし、冒頭の二人の関係の説明が笑えました。照明が効果的だったので壁の有無がわかりやすかったです。役者さんの動きもスムーズで、自然に話の中心に視線が動くように配慮されているように感じました。

演技は個性派揃いで面白かったです。どの役も印象深いのですが、娘が経験済みと知った時の父親の動揺ぶりが、それまでの落ち着いた演技と好対照で良かったです。また、デリヘル嬢が普通っぽいのが意外性があって良かったです。

もう少し分かりやすいと良かったのですが、役者さんの演技力を楽しく拝見しました。


テネシーの女たち

テネシーの女たち

Theatre Polyphonic

シアターシャイン(東京都)

2013/03/07 (木) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

5つの短編
演出家・石丸さち子さんの描く世界の面白味を堪能した舞台でした。

ネタバレBOX

とある安宿での住人たちの一こまですが、それぞれは病んでいたり問題があったりの背景もグレーで、そんな薄暗いアパートメントに一瞬だけ光が射す窓の演出がお見事でした。

登場する役者さんたちの演技力もお見事で、5つのどの場面もソツなく楽しめました。最後の切り札的に登場する清水那保さんの奔放な演技力にも魅了されました。

観て良かったです。次回公演もますます楽しみです。


寝惚けた日記帳

寝惚けた日記帳

劇団ハーベイ・スランフェンバーガーのみる夢

王子小劇場(東京都)

2013/03/09 (土) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★

卒業&就職祝い込み[クラッカー]で3点
夢みたいな作品だと思いました。辻褄があっていなかったり、不思議な展開だったり、結局、何だったかよく分からない感じが残りました。

ネタバレBOX

まずは、キャラクターの関係が変わりすぎるのについていけませんでした。合理的理由が無い行動が多く、少女漫画のような、展開に無理がある印象もあります。良くも悪くも学生さんらしい作品でした。

舞台装置が凝っていて、夢を記録する装置も良かったと思います。ただ、本棚がスカスカすぎて、図書館ぽくありませんでした。工夫して背表紙だけでも入れて欲しかったです。

役者さんは、力が入りすぎたりして役が定まらず、個性が乏しい印象です。イメージと違うキャラも多く、違和感がありました。作品世界のイメージに合った役作りをして欲しかったです。セリフも滑舌が悪く、トチりも目立ちましたので、観客に伝える意識を持って欲しいと思いました。出ハケはスムーズで良かったです。衣装も役にあっていました。

スタッフワークは、場内案内を始め、とても良かったです。狭い劇場に上手く観客を誘導していました。
役者さんは若い方ばかりなので、今後に期待します。主宰さんはお疲れ様でした。卒業製作を見せて頂いたような印象です。

若手演出家コンクー2012 最終審査  

若手演出家コンクー2012 最終審査  

一般社団法人 日本演出者協会

「劇」小劇場(東京都)

2013/03/05 (火) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

「親愛なる我が総統」
物凄い熱量のある舞台でした。

ネタバレBOX

脚本の力もさながら、自分が観た中では演出力も他を制するほど勝っていたと思います。

それは照明、時計の音、風の音、舞台セット・・これらで観客をその世界に引きずりこむ力がありました。

素晴らしい舞台を作られたことを感謝したい気持ちでいっぱいです。

ちなみに観客動員数ではこの劇団がダントツでした。
CASE

CASE

劇団伍季風 ~monsoon~

小劇場 楽園(東京都)

2013/03/07 (木) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★

シンプル
とてもシンプルな、密室ものでした。役者出ずっぱりの1時間半です。

ネタバレBOX


目覚めたら突然、知らない者同士で密室に閉じ込められていた、集められた理由と犯人は誰だ、ということを少しずつ探る、王道1シチュエーションです。
ストーリーや人物達に、意外性とか、どんでん返しとかは、一切ありません。とってもシンプルな内容を、初のサスペンスものとして、丁寧に演じたという感じでした。

登場人物たちも、芝居っぽく激昂するとか壮絶な過去があるとか意外なエゴイズムが引き出される、とかではなく、割りとニュートラルな感じで、イロモノではなく、とにかくしっかりと筋の通ったものを真面目に作ろうという姿勢が伝わってきて、好感を持ちました。

役者は出ずっぱりなので、台詞の無い時の空気状態が難しそうでした。騒がしい筈の役なのに、中盤ほぼ台詞の無い彼氏とか、不自然になっちゃうのが少し気の毒です。小説家の語りかけ方が全体の雰囲気を引き締めていたように感じました。

犯人は命を奪ったことに対しては全然反省してないし、皆は殺意のあった殺人犯に対して気遣いすら見せて赦しすぎるなぁと思いました。
「死んでいるなら皆が物理法則を越えてここに集められる」推理が有りなら、「夢おち」推理も誰か楽観的なキャラがしそうな気もしました。

若手演出家コンクー2012 最終審査  

若手演出家コンクー2012 最終審査  

一般社団法人 日本演出者協会

「劇」小劇場(東京都)

2013/03/05 (火) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★

「箱」
6人の脚本家によって作られた物語のようですが、自分には難しくて・・。

ネタバレBOX

全体的な構図が解り難い物語でした。方舟の中の出来事なのか、あるいは、ただ単に人間社会の営みなのかピンときませんでした。
若手演出家コンクー2012 最終審査  

若手演出家コンクー2012 最終審査  

一般社団法人 日本演出者協会

「劇」小劇場(東京都)

2013/03/05 (火) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★

青鬼
面白い!

ネタバレBOX

夫婦の部屋の中で巨大な水槽が置いてあり、その仲で飼っていた食料としての北極姫イルカ。一見、そのイルカが主役のようにみえるが、主軸はあくまでも夫婦の食の物語でした。

このコンクールは演出家の評価を問われるものですが、やはり、観客に解りやすく伝達する目的としては秀逸だと思いました。
落下ガール

落下ガール

オフィス・REN

シアターサンモール(東京都)

2013/03/07 (木) ~ 2013/03/11 (月)公演終了

満足度★★

学芸会
彼女らのファンなら、楽しめるのでしょうけれど、ストーリーはベタで、斬新さはまったく感じられず。早々に飽きて、公演時間が長く感じました。
客席はガラガラ。

あとにさきだつうたかたの

あとにさきだつうたかたの

演劇集団 Ring-Bong

サイスタジオコモネAスタジオ(東京都)

2013/03/07 (木) ~ 2013/03/12 (火)公演終了

満足度★★★★★

上質で秀逸!
舞台のセットは簡素ながら、その情緒は見事に表現していました。

ネタバレBOX

歴史博物館に毎日現れる、初老の男の現在と、少年時代を交錯させながら、解り合えなかった父との感情と少年の生い立ち、育った環境を余すことなく表現していた舞台でした。

それなりの年齢の役者さんたちを起用することによって、物語の深みや奥行きを存分に見せつけ、また彼らの演技力で観客を酔わせた舞台だったと思います。

演出では砂浜の景色を想像させるに充分な、きめ細かな描写、それを補う照明など、人の心に訴えるものがありました。観て良かったと心から。

忘却のキス

忘却のキス

東京演劇アンサンブル

ブレヒトの芝居小屋(東京都)

2013/03/01 (金) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

上質な演劇
とても成熟した舞台だと思いました。脚本、演技はもとより、舞台装置、映像効果、音響効果が素晴らしく、比較的長い上演時間でしたが、集中して拝見しました。ただ、内容が難しく、消化不良の気がします。

ネタバレBOX

冒頭のアコーディオンと一輪車が良かったです。ジャグリングは少し見劣りしました。黄色の輪が目立つので、一輪車の人にパスするとか、もう少し派手な技がほしかったです。

三枚の壁がぐるぐる動くのが凄かったです。壁の向こうの演技もあり、両サイドの席はかなり見切れたと思います。わざとであればいいのですが、最初にセンター付近の客席のお薦めがあってもいいと思いました。客層的には問題がないような気もしますが、慣れてないと残念かもしれません。

演技も素晴らしかったです。訳の上手さもあるでしょうが、流れるようなセリフ回しに聞きほれました。少しトチりがあったのが残念でしたが、流れが滞るほどではなかったと思います。ただ、リカルダはイントネーションに違和感のある単語がいくつかありました。大量のセリフを上手くこなしていただけに残念です。

また、年配の俳優さんに多かったのですが、劇中、客席に呼びかけるのではなく、背後の他の役に話していると思うシーンで役者さんと目があった気がして、気まずい場面がありました。もう少し視線を外してほしかったです。

印象に残ったのは、ベッドの下から女の子が覗くシーンです。リカルダと目があっても屈託なく手を振る様子と表情が、役を端的に表現していて素晴らしいと思いました。アコーディオンの音が懐かしいような、幻想的な雰囲気を作り出していたと思います。衣装も素晴らしかったです。

難解な作品でしたが、表現方法が洗練されており、とても楽しめました。プロの仕事を堪能しました。


今、出来る、精一杯。

今、出来る、精一杯。

月刊「根本宗子」

駅前劇場(東京都)

2013/03/06 (水) ~ 2013/03/12 (火)公演終了

満足度★★★★★

満点!
案外ドロドロしていて、グロテスクな一面をも、役者と演出でさばさばと明るく見せて、楽しくさえありました。すごく面白かったです。

ネタバレBOX


主張したい部分については、部分部分、私の考え方と違いましたが、それを補って余りある、脚本の台詞のやり取りと、役者の演技の練り込みがすごく魅力的でした。

細かく「第○章」と区切られ一息つける心地好いテンポで、2時間10分を飽きることなくあっという間にすら感じさせます。女性達の会話と、恋人達の会話が、しゃべる相手によって態度も内容も違っていて、覗き見しているような、凄くリアルに感じました。

一人一人の人物背景が絡まりあってて、とても書ききれないので割愛しますが、皆、生きている以上、辛くて、自分を誰かに受け入れてほしくて、自分に正直でした。個性の強い変なキャラクターが多いのですが、それをリアルに感じさせる、演技の力が素晴らしいです。

「ごめんなさいごめんなさい」「なんで分かってくれないの」「一緒に居てよ~」苦しみやもがきが、胸をえぐります。でも台詞でクスリと笑わせられるから辛くはありません。くすみさんが正しいのに、彼女が一人アウェイな感じなのが悔しい気もしました。大人ってそんなに汚れていくのか。

人と関わるってのは、面倒くさい部分も引き受けるということ、というところに共感しました。安藤くんのように、ただ我が儘に駄々を捏ねるだけの人は、個人的にはあまり甘えっぱなしで生きていてほしくないなぁとは思いますが、そのカップルの在り方には納得がいきました。

よく思い返せば、キャラクター全員が、自分の我(辛さ)を通していたかもしれません。それを包み込もうという、認めあおう、生きていこうという、究極の優しさが、作品にありました。

蛇足ですが、個人的に、大感動にひたっていたのに、最後の最後にミュージカル「Hair」の「Let the sunshine」「アクエリアス」が大音量で流れたのには、ビックリしてずっこけそうになりました。かなり印象強い曲なので、暫くHairの印象が思い起こされて、言ってる台詞や情緒が乗っ取られました。そこは申し訳ない気分です。

Paints, Prawns, Piri Piri Party ペンキとえびのピリピリ・パーティ

Paints, Prawns, Piri Piri Party ペンキとえびのピリピリ・パーティ

劇団PPP

ギャラリーがらん西荻(東京都)

2013/03/06 (水) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★

チケット代1000円は安すぎ!笑
劇団名とタイトルからの予想に反して上品な作品に仕上がっていると思います。ポピーとポールの関係が隣人から親子に変遷していたり、つきつめると混乱しますが感性で見て楽しめる作品でした。

ネタバレBOX

作品のエピソードが銀河鉄道の夜を想起させるからかもしれませんが、作風には独自の繊細さを感じました。上演が延期された分、練り上げた感があり、成熟した作品だと思います。

演出では音響と照明の使い方がとても素晴らしかったです。コンクリの壁に反射する音の響きが作品に良く合っていたと思います。また、ロビーからの照明や影を使った演技の見せ方など、会場の特殊性を逆手に取った工夫が凝らされており、好印象でした。小さい劇場の醍醐味を生かした作品だと思います。

演技も上手でした。主演の夫婦を始め、複数の役を上手く演じ分けていたと思います。間が悪かったり、滑舌が甘い所もありましたが、上演回数を重ねれば解消されていくと思います。少し表情の変化が乏しい役もありましたが、作品世界に合っていたとも思います。

細かい部分では、教授と学生の場面で、学生が被っていたフードが電球に当たっていたのが気になりました。フェリシアの登場シーンでは姿勢が悪い印象があります。初登場の場面なので綺麗に見える立ち方が良いと思います。

ポールが葬式に行く支度をする場面では、影でしたが、結んであるネクタイを締めるのが制服みたいで気になりました。喪服だし、時間があれば、ちゃんと締めて欲しかったです。フェリシアとポピーのシーンでは、二人が触れ合わない方が良いように思いました。文通の距離感が消える気がします。

合唱団のシーンは合唱っぽい発声で歌ってほしかったです。ポピーの下手さが分かりませんでした。パットとパンジーの口論のシーンは、パットの口調がパンジーに引きずられた感じがしました。2人の調子が合いすぎて姉妹らしい反面、パットの個性が見えなくなった印象です。

パーティーの場面は、声のダブりが大きすぎて、セリフが聞き取れませんでした。壁のそばは反射が大きいので、ボリュームを下げてほしかったです。ストップモーションやその他のシーンはとても良かったです。

衣装は、ポピーだけが薄着で他の役と違いを出していたと思いますが、フェリシアのワンピースが気になりました。裏地のある濃い色のものの方が合っている気がします。パンジーは靴が服に合っていませんでした。黒か濃い赤系が合う気がします。パンジーの帽子のチョイスは好きです。

役者さんの雰囲気と作風が会場に良く合っていて、バランスが取れた作品だと思います。伸びしろがあると思いますので、少しの工夫でグンと良くなる気がします。スタッフは、前説、後説の人が無愛想でしたが、他の皆さんは親切で良かったです。
夜光星ディスコルーム

夜光星ディスコルーム

エムキチビート

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2013/02/27 (水) ~ 2013/03/06 (水)公演終了

満足度★★★

もうひとつ
池田屋での花火師のあれこれ

ネタバレBOX

夜光星ディスコルームと花火をかけてるようですが、作りが雑でした。コメディとして立ち上げてるようなら、いまひとつパンチが弱いし、池田屋事件を表現しているなら軽すぎました。

期待していただけに残念でした。
虚言の城の王子

虚言の城の王子

空想組曲

吉祥寺シアター(東京都)

2013/03/03 (日) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

素敵でした。
吉祥寺シアターの黒の舞台、階段、通路を生かし、白い本(鏡っぽい)が天井から複数吊り下げられているのが、浮かんで見える舞台美術が、シンプルながら、幻想的でとても良かったです。

ネタバレBOX



執事、メイドなど、メルヘンを感じさせる衣装がワクワクを掻き立て、ストーリーの決着をどうするのかと引き込み、役者さん方のやる気が気持ちの良い舞台でした。

途中途中、物語世界の王子やメイド達が入ってくるので、どうしてもファンタジーへの期待を捨てきれないで見てしまうのですが、現実の中でもがくための話です。演技や音楽も意外に落ち着いた雰囲気でした。

図書館で彼女との出会いを果たした主人公が、事故に遭って目覚めない彼女のために、今の自分達の現状も織り込んだ「おはなし」を書いていく筋で、おはなしの中に、おはなしを書いている自分も登場していて、というループ性もありました。

配役表がなくて、役名に自信が無いので、「彼女」とか乱用で紛らわしくてすみません。劇中では皆さん名前有ります。
サイドストーリーの、ダメ男な彼氏に絶望する女子大生のカップルが、よく有りそうで上手で興味深かったのですが、ミチルという捨て子の健気さが、一番ウルッときました。ですます調なのがまた…!

多少違和感があったことも列挙しておきます。
・王子様のベストのサイズが合ってなくて、よくシャツがはみ出てしまうこと。
・主人公の彼女が、主人公の言葉に憎まれ口ばかりで、なんだか可愛げがなく、なぜ主人公がそこまで尽くしているのか恋人のみぞ知る、と感じた点。
・「彼女の弟」が、主人公に当たるシーンは、普通だったら、家族側は「他人なのにこんなに尽くしてくれて、そんなの悪いよ!申し訳ないよ!」という心理、キレ方になるのでは。
主人公の尽くしに「余計だ。邪魔だ」は逆じゃないかなと感じた点
・主人公がキレて、大学生カップルの刃傷沙汰を続けさせたり、ミチルの飛び降りを手伝った時に、「幸せになりたかったんだろ?ほーら、幸せにしてやるよ!はい、幸せ!」という台詞だったが、結局刃傷も飛び降りも「逃げ」で城と同類なので、違和感。
「続けさせてやるよ!」とかの方が良かったのでは。
・彼方はまぁ自己中というか、今時だと個人的に思ったのですが、状況的には彼方の兄が絶望してもおかしくないなと感じていました。
彼方が城が見えるけど入れない時点で、先に兄が入ったら彼方ビックリするなぁと一瞬期待しました。でも兄は踏ん張ったようで、エールを送りたい。
・「幸せはお話しの中だけ」「ご都合主義は起こらない」と連発するたび、お芝居に浸りかけてた心がちょっと現実に引き戻されて切なくなる(これはテーマ的に仕様がない違和感)

絶望があるからこそ、幸せがある。幸せがあるから、絶望が来る。ストレートなメッセージは優しかったです。
客席は、女性ファンが多く、とても静かに見守っている感じでした。
司書さん(スカート似合う)が、どんどん綺麗に見えてきたのが印象的です。
とても真っ直ぐなお芝居が、落ち着いて心に届く、トータルバランスの良い公演でした。
秋のき、冬のゆ。

秋のき、冬のゆ。

kanikuso

上野ストアハウス(東京都)

2013/02/27 (水) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

5点[花丸]満点。好きなタイプ
良い意味で期待を裏切られました。最後まで何の話かを明らかにしないことで好奇心が刺激され、舞台に釘付けになりました。すばらしい仕掛けだと思いました。

ネタバレBOX

脚本は、謎をはらみながら上手く伏線が張られ、個性的なキャラクターが満載で飽きさせない展開が見事でした。秋では、最後に看板でサラリと謎解きをする辺りが洒落ててニヤリとしました。冬は少し下品な下ネタが気になりましたが、中小企業に有りがちな会議風景や人間関係が笑えました。

演出も工夫が凝らされていて良かったです。動きが限られるシチュエーションで、観客が飽きないように、役が生きるように演出されていたと思いました。書類やコーヒーといった小道具も、壁の小窓を生かして上手く出し入れしていたと思います。冬は、赤か青かで揉めていましたが、壁が青ベースだったのが気になりました。暗示かとも思いますが、関係ない色でも良かった気がします。

演技力は素晴らしく、役のキャラクターが生き生きと演じられていました。滑舌の悪さをネタにする役はしばしば見かけますが、聞き取れてしまうことも多く、中途半端な印象でした。秋元レベルまで聞き取れないと信憑性があります。

振り切り方が素晴らしいと思いました。秋田も細かな演技が良かったです。「(お母さんが)大好きですっ」がツボでした。劇中、ずっと動いていたのもスゴいと思いました。中秋は華やかで、小柳はキリッとした感じが、それぞれ魅力的でした。ダメっぽい谷原と頼りない代田の組み合わせも良かったです。

冬の坂下は目立つ役でしたが、中山の切れ味鋭いツッコミが素晴らしかったです。間が抜群で数々のボケをビシッと切り捨てる様子が見事でした。南と小森も良かったです。坂東はちょっと下品でヒきました。強引な大団円にも思えましたが、最後に社長と姉妹が寄り添う姿が微笑ましく、後味が良くなっていました。

とても楽しい舞台でした。



ト音【終演。たくさんのご来場ありがとうございました!】

ト音【終演。たくさんのご来場ありがとうございました!】

劇団5454

劇場HOPE(東京都)

2013/02/27 (水) ~ 2013/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

もうひとりの自分
もうひとりの人格が意志を持ち始めた時から、二人の藤に。

ネタバレBOX

高校の保健室を舞台に生徒を思いやる教師、他人と違った個性的な生徒らを、藤を軸に描いた物語。ひとことで言ってしまうと、高校生の思春期の心の模様を独特のタッチで描いていました。

また特別な能力を持ったが為に孤立してしまう焦燥感や退廃的なものを別の人格で補うという面白味が今回の脚本の最大の武器でした。心から素晴らしい舞台だと思います。科学的な共鳴もお勧め。
【ご来場誠にありがとうございました】私のひまわり

【ご来場誠にありがとうございました】私のひまわり

演劇ユニット ランニング

明石スタジオ(東京都)

2013/02/28 (木) ~ 2013/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

5点[花丸]満点です。泣けました~
やられました。素晴らしい作品だと思います。笑い、泣きのツボがしっかり抑えられ、展開も無理なく、上品で後味の良い作品でした。

ネタバレBOX

美術を志す2人の学生とゴッホの生涯が対比され、芸術を志す者の苦悩が見事に描き出されていました。爽やかな青春の物語だと思います。更紗が病気に逃げることなく絵を描き、恋をして、告白する様子に感動しました。陽子が、美術教師に旧姓で呼びかけるシーンも秀逸でした。最後の智子の肖像画も粋な終わり方でした。劇的な物語が力まず、すっきりとした筆致で描かれ、その静かさが感動に繋がる気がします。

演出は、舞台全体を上手に使い、脚本を見事に生かしていたと思います。特に、更紗がカップルを見つめるシーンは、最初に窓枠の照明があったので、それぞれの位置関係がよく分かりました。また、季節の移り変わりが桜やイチョウで表現されたのが良かったです。ただ、イチョウは枚数が少なかったので、後方の客席では分かり難かったかもしれません。

挿入歌の選択も良かったです。何よりラストの智子の絵の見せ方が抜群でした。素晴らしかったです。少し気になったのは、クロックスが多かったことです。特殊な靴なので、目立ちました。あとは、カップルの男性がしゃがむのが気になりました。道端でしゃがんでいる男性は、工事現場付近以外では、あまり見ない気がします。後ろの壁に寄りかかるか、階段の最上段に腰掛けた方が自然な気がします。

演技も素晴らしかったです。主演の二人は勿論、キャストがそれぞれのキャラクターにピタリと合っていて、文句なしでした。美術教師が邪険に扱われる様子も、教師と生徒の信頼が感じられて微笑ましかったです。カップルの二人も良かったです。女性が最後まで顔を見せずに演じていたのが好きです。どの役も素晴らしかったのですが、智子の嫌みのない真っ直ぐな演技があってこそだと思います。

導入部から流れが良く、お洒落で素敵な作品だと思いました。お疲れ様でした。拝見できて、幸せです。ありがとうございました。

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