7月17日(金)より、浅草九劇にて端栞里と高熱Vol.2『この景色ぜんぶアクスタにするよ、アリーナ』が開幕する。本作は、南極のメンバーとして活動する傍ら、ロロ、範宙遊泳、東葛スポーツなどさまざまなカンパニーの公演にも相次いで出演する俳優・端栞里が自ら企画する一人芝居企画の第二弾。こんにち博士、マツモトタクロウ、川上さわの3人の作家がそれぞれ端にあてて書き下ろしたVol.1『アタラント号・サマーベッド・浮遊』から約1年を経て、本作ではロロの三浦直之を脚本・演出に迎え、「ひとり音楽劇」を上演する。物語の舞台は2021年の東京、小さなライブハウス。端は歌手・栞川ひだりを演じる。端が思う三浦作品の魅力、三浦にとって俳優企画への初の書き下ろしである本作に込めた思い、俳優・端栞里の個性や強みとは? 作品の全貌が明らかになりつつある稽古場で、互いの印象や本作のクリエーションの秘密について、三浦と端の二人に話を聞いた。

出会いはロロの『いつ高』再演お互いが抱いていた印象について
―「端栞里と高熱」は、2025年にVol.1が上演され、今回がVol.2となります。そもそも、個人企画を始めようと思ったきっかけは何だったんですか?
端 演劇を始めた頃に漠然と「いつか劇団をやりたいな」って思っていたんですよ。でも、私は自分で物語を書く自信はないし、それよりは俳優をやりたいと思っていて。それから、俳優にのめりこんでいったんですけど、あるとき、南極の劇作家であるこんにち(博士)から「自分で企画して演劇やればいいじゃん」と言われて、ハッとしたんです。演劇をつくるためには自分で書かなきゃいけないと思い込んでいたけど、自分で企画して他の作家さんに書いてもらうとかアリなんだって。

端 そう思いつつも、俳優をやりたい気持ちが強かったからあまり積極的にやろうとは考えていなかったんです。ただ、大阪から東京に出てきて、マツモトタクロウや川上さわちゃんと出会ったことや、自分もいろんな劇団に客演をするようになって、急に「やれるかも!」と思ってきて。自分のために書いてもらった物語を演じることが、一番自分を魅力的に見せることができる方法だと気付いたんです。
―Vol.1で物語を書き下ろした、川上さわさん、マツモトタクロウさん、こんにち博士さんの3人や、今回の三浦さんを含めて、端さんが「この人に書いてほしい」と思うのは、どういう方なんですか?
端 えー、私が好きであることと、私のことが好きそうであることですね(笑)。違ったら本当に申し訳ないんですけど(笑)。
三浦 あははは! 大丈夫、好きですよ!(笑)。

―Vol.2でタッグを組む三浦さんとの出会いは、昨年上演されたロロの『いつ高(いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校)』シリーズですよね。端さんは過去のインタビューでも「ずっとロロに出たかった」と言っていましたが、ロロとの最初の出会いはどんなものだったのですか?
端 こんにちが、「ロロのいつ高が無料配信されてるから観ると良いよ」って教えてくれたんです。それが私の初ロロでした。それから、東京に出てきて『BGM』の再演を観て、ガッチリ心を掴まれました。ロロは登場するキャラクターがみんな魅力的で、全員のことを好きになっちゃう。ちゃんと生きたキャラクターがいるから、そいつらが喋る言葉が全部に響く。それがどんなにヘンテコな言葉でも、チグハグな言葉でも大丈夫なのがロロの素敵なところだなと思います。あと、ちょっとだけ、南極を観終わった後ってこんな気持ちになるのかな、とか思ったりもしました。キャラクターの雰囲気とか。3年前のことだから今は違うかもしれないけど、似たものを感じたんですよね。
―たしかに、ロロと南極の間で通ずる部分はある気がします。三浦さんが、端さんを知ったのは何がきっかけだったのですか?
三浦 南極の『バード・バーダー・バーデスト』にロロのメンバーの亀島(一徳)くんが出ていたので、そこで初めて舞台での端さんを見ました。面白い人がいるなと思って。
端 本当ですか?(笑)
三浦 まず、南極の全員にすごいエネルギーがあるなって思ったんです。僕は南極の「でかい物語」を描こうとしているところがすごく好きで…。作・演出のこんにち博士さん一人ではなく、メンバー全員がでかい物語を描こうとしている。その空気を感じて、応援したい劇団だなと思ったのが最初の印象でした。そのあと、『いつ高』再演のオーディションに端さんが来てくれて…。でも、稽古を重ねるうちに端さんの演技の印象が大きく変わったのを覚えています。
―どのように変わったんですか?
三浦 南極という劇団の中で観ているときは、すごい熱量で空間を一気に変えるようなエネルギーの強さが印象的だったんです。もちろん、その魅力は変わらないものの、実際に一緒に稽古をしてみると、ちょっとした細かな受けや間合いなど、些細なディティールをつくる演技も上手くて、すごく繊細なことを丁寧にやれる俳優なんだなって認識が変わりました。それに今回の企画を一緒にやってみて、演技だけじゃなく、グッズ制作とか、公演の外からの見え方までも意識して立ちまわっていて、主観と客観の両方の視点をバランスよく持っていることが面白いなあと思いました。
端 嬉しいでございやす……!(笑)

役と役者の人生を重ねない主人公・ひだりのキャラ造形の秘密
―Vol.2を三浦さんが書くことになったのは、どういう経緯だったんですか?
端 『いつ高』の打ち上げで、三浦さんが「またやるなら書くよ」って言ってくれたんです。そうでしたよね?
三浦 いや、端さんが「書いて下さい」って先に言ってくれたんだよ!
端 え、違いますよ!
三浦 そうだったっけ…僕の記憶だと端さんからなんだけどな(笑)。いや、でもそういうお話は嬉しかったし、書いてみたいとは思ったんですよ。
―Vol.1は、三浦さんもご覧になっているんですか?
三浦 映像で観ましたけど、面白かったですね。まず、端さんをどう輝かせるかというところに重きが置かれていて、三人の作家さんがそれぞれ端さんをどう切り取るかに面白さがありました。だから、僕も「端さんを輝かせる」という目的は変わらず、そのうえでVol.1でやられていないことをやりたいなと思いました。

―それで言うと、今回、三浦さんはどんなアプローチから、端さんを輝かせる物語を考えていったんですか?
三浦 二つあって、一つはセリフですね。「希望」とか「愛」とか「未来」って、セリフで出てきたときに薄っぺらくなりやすい言葉だと僕は思っていて。だから、ロロで作品をつくるときには、少し使いづらい言葉なんです。薄っぺらくならないためには、かなり手続きを踏まないと言わせられないというか…。でも、端さんの一人芝居だったら、その言葉たちを分厚く立ち上げてくれる予感があった。だから、物語をなるだけ明るい言葉で敷き詰めようと思いました。もう一つは、ちゃんとフィクションにすること。今回は「ひだり」というミュージシャンが、ライブハウスで自分の半生を語っていくという構成なんですけど、これを俳優の個人企画、かつ一人芝居で描くとなると、役と役者本人の人生が重ねられやすいと思うんです。けれど、そうはしたくはないと思って、フィクションとして描くことを意識しました。ひだりっていう女の子の人生と、端さんの人生にどれくらい共通点があるか分からないのですが、端さんにひだりのことを好きになってもらえれば、良い作品になるだろうなと思ったんですよね。
端 たしかに、今まであんまりやったことない役だなと思いました。ひだりはだいぶ不器用な女の子ですが、自分で言うのもなんですけど、私は器用なタイプかなと思っておりやして…(笑)。いろいろなことがふんわりできてしまうタイプだから、自分の内側から改造していく必要がありました。南極のキャラクターを演じるときは、基本的に当て書きなんですよ。こんにちの当て書きは、その人の持つ性質などを一部増幅させたような書き方だなと思っているので、自分の中にあるその部分を見つけて、大きくする。でも今回は、ひだりの思っていることは分かるし、めちゃくちゃ愛らしいとは思うけど、どこを引っ張ればいいのかはまだ考えているところです。

―役と役者本人を重ねないためのキャラ造形というのは、どのようにつくりあげていくものなんですか?
三浦 僕の中では、物語のキャラクターと、端さんという別々のレイヤーがあって、このキャラクターたちを端さんが愛したり、救ったり、エンパワーメントしたりする作品になるといいなと思っていて…。つまり、「端さんにどんな人と出会ってほしいだろう」っていう風に考えて書きました。例えば、ひだりが最初に出会う友達に「アセバンダリ」という女の子が出てくるのですが、彼女はすごくパンクが好きで、パンクをひだりに教えてあげる、みたいな関係性なんですよね。すごく変わり者で、滑り台でみんなが滑っている中で、一人だけ逆走して滑り台を登っていくような子なんですけど、最初にそのシーンが浮かんで、当初はひだりのキャラクター性として考えていたんですよ。端さんってそういう人な気がして(笑)。でも、それだと端さんとひだりのイメージが近づきすぎてしまうので、だったらこの女の子と友達になる女の子を主人公にしよう、と。そういう風に、キャラクターを考えていきました。
一人芝居で気付いた、新たな芝居の楽しさ
―いまは本番に向けて稽古中だと思いますが、クリエーションの様子はどうですか?
端 だんだん楽しくなってきたところです! 去年の一人芝居は、初めてということもあり、本当にしんどかったんですよ。セリフを言うのに精一杯で、芝居に集中することが難しかった。今回も稽古の最初の方は、ただセリフを言っているだけになってしまうゾーンがあって、「何でもう一回やるって言ったんだろう」と後悔する瞬間もあったんですけど(笑)、いまは、芝居の面白さをちゃんと感じられているというか…。前回楽しいと感じなかったことから、「私がお芝居に惹かれている部分って会話なのかな」とか思い始めてたんですよね。でも、今回はちょっと楽しい。三浦さんの物語は現実から少し離れた変なキャラクターが多いから、そのまま演じると地に足がついてないキャラクターになってしまう。だからこそ、どうやったらそのキャラクターがちゃんと生きていると思わせられるか、を考えることが大切で。キャラクターが、どうしていまここで喋っているのかの説得力を芝居によってつくりあげていく。こういうのはお芝居の楽しい部分だなと改めて思ったし、それはひとり芝居でも消えない部分なんだなと思いました。
三浦 本稽古に入る前に、台本ができているところまで読んでもらったんですけど、読んだときに独白の語りがめちゃめちゃ良かったんですよ。端さんの語りの説得力がすごくあったから、勢いでいくよりは、ちゃんと端さんが語る言葉の力で成立させた方が面白くなりそうだなって思いました。『いつ高』は会話劇だったから、今回一緒にやってみて、端さんがこんなにモノローグが上手いんだということにもちょっとびっくりしています。僕たちがロロを始めたのは、いまの端さんと同じ歳くらいの頃なんですけど、ここまでのモノローグの説得力や力強さを自分たちは作れていたかな、と考えてしまいました。
端 私って、モノローグ得意だったんだ…。嬉しいですね。

― 一人芝居ということでセリフも多いと思いますが、三浦さんが台本を書くうえで意識したことはありますか?
三浦 そもそも一人芝居の台本を書いたのが久しぶりで、大学生の頃にメンバーの篠崎大悟に当てて書いたぶりなんですよ。
端 三浦さんが、外部の俳優企画で台本を書き下ろすのは今回が初めてですよね? これ、書いて下さい!(笑)
三浦 そうそう。だから、端さんにのびのびやってほしいから、自分ものびのび書いてみようと思って…。いつもはプロットを立ててから書くことが多いんですけど、今回は流れだけぼんやり決めて、あとは筆が乗るままに書いてみました。そしたら久々に「良いセリフを書きたい」みたいな欲望が出てきたんです。そういう気持ちは20代の頃はあったけど、最近は全くなくて…。でも今回は、良い言葉を書いて、それを端さんに楽しんでほしいというモチベーションがありました。実際、そのセリフを端さんが言っているのを見るのがすごく楽しいし、嬉しい。
―三浦さんにとっても、新鮮な感情が生まれる取り組みになっているんですね。
三浦 薄っぺらくなりそうな言葉もあえて書いてみると、端さんがめちゃくちゃ良いものにしてくれる。それが、僕自身にとってもすごく自信になってますね。今回の物語で登場する人たちは、みんな寂しさを抱えているんですけど、それに抵抗するかのように、端さんが明るさで満たしてくれている。その語りの力が、どんどん大きくなっていくといいなって思っています。

個人企画だからこそ、自分が一番面白くなるものを出せる
―今回の「ひとり音楽劇」というコンセプトはどうやって決まったんですか?
端 Vol.2は、演劇をやります、というテーマが企画が固まる前から私の中であったんですよ。Vol.1は私が一生懸命動いたり走ったりしている、その肉体の躍動を見てもらいたかったし、役と私を重ねてほしいと思ってつくった3本でした。でもそれは、第1回でしかできないことだと思っているので、次はしっかり芝居をやりたいなって。
三浦 それで最初に打ち合わせをしたときに、端さんに「やりたいことある?」と聞いたら「音楽劇」というキーワードが出てきたんです。
―音楽はEnjoy Music Clubの江本祐介さんに依頼されたんですよね。
三浦 スケジュールは結構ギリギリだったんですけど、江本さんは打ち合わせから1時間くらいで最高の曲を作ってくれました。
―早いですね…。端さんは、できあがった曲を聴いてみて、どうでした?
端 もう最高ですよ。だって、私のために書いてもらった曲なんですよ?(笑)。 実は、私はずっと歌を歌いたいと思っていたんです。芝居の次ぐらいにやりたいことが歌だった。でも、人の曲を歌ってライブをすることはできないし、自分で作ることもできないから「歌えますよ」ってアピールする方法がなくて。音楽劇にしたのはそういう理由もありました。ミュージカルに誘ってほしくて(笑)。

―なるほど、個人企画だからこそ、そんな風に自由につくれるというのはありますよね。
三浦 個人的には、俳優の個人企画がどんどん増えていったらいいなって思っています。俳優ってどうしても「待つ」ことになりやすいから、自分から動いていくのは大事だし、そういったスタンスの方が作品に能動的に関われるんじゃないかな、と思って…。僕は「責任を背負っているな」って感じる人のことを、すごく尊敬しているんです。自分自身もロロというカンパニーをずっとやってきた中で、集客や作品の空気がお客さんにちゃんと伝わっているかどうかなどを思案して、毎日気持ちがすり減るのを経験しているから、その重みはすごくよくわかるんですよね。だから、端さんが自ら企画を立てて、ちゃんと責任を背負って創作に向き合っている姿にリスペクトを持っています。
端 俳優としてだけだったら、もっと演技のことを没頭して考えられるなとは思うけど、自分で企画を立てるからこそ、自分が一番輝いて、一番面白くなるパッケージにできる。私はSNSを動かすのも好きだし、企画を立てるのも好きだから、外側を考えるが楽しいんですよね。中身はつくれないので、そこは全部任せているんですけど、外側だったら自分が一番かっこいいと思う見せ方ができる。それを含めて全部を自分で考えるのは大変ですけど、端栞里と高熱の『この景色ぜんぶアクスタにするよ、アリーナ』はそれを凌駕するくらい楽しい場だと思っています。

取材・文/早川大輝
稽古場写真/月館森
<公演情報>
端栞里と高熱『この景色ぜんぶアクスタにするよ、アリーナ』

脚本・演出:三浦直之(ロロ)
音楽:江本祐介(Enjoy Music Club)
出演:端栞里
<会場>
浅草九劇
<日程>
7月17日(金)〜7月19日(日) 全5ステージ
7月17日(金)19:00
7月18日(土)13:00/19:00
7月19日(日)13:00/17:00
※受付開始・開場は開演30分前
※上演時間は約60-70分予定
<チケット>
一般:4,000円
高校生以下:1,000円
応援チケット(アクスタ付き):8,000円
https://ticket.corich.jp/apply/458003
<スタッフ>
舞台監督:水澤桃花(箱馬研究所)
美術:いとうすずらん
照明:中村仁(黒猿)
音響:近藤海人(かまどキッチン)
スタイリスト:カワグチコウ
演出助手:木香花菜
宣伝美術:渋木耀太(DINARYworks)
宣伝写真:わたしのような天気
配信映像:稲川悟史
制作:宮野風紗音(かるがも団地)
企画製作:月館森
助成:アーツカウンシル東京[スタートアップ助成]
主催:端栞里