ナノ クライシス ポルノグラフィティ
演劇集団 砂地
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2009/10/21 (水) ~ 2009/10/26 (月)公演終了
難しい判断
船岩裕太としては★3つ、ただし現代若手演劇の水準で言えば★5つ。これに比肩する演劇を作る若手演劇人を僕は不幸にして知らない。
ふだんとは違う演劇体験をしてみたい方、魂の奥底をぐさぐさに切り裂かれたい方、是非観に行って下さい。
重要なのは、内容よりも形式である。船岩形式は固まりつつある。だからこそ挑戦や冒険が欲しいと思うが、いや、彼のスタンス・美学を大事にして欲しいとも思う。どっちやねん。
1つ言えるのは、絶対万人ウケしない作品だし、万人受けしたら演劇界の未来はハッピーで人間達の未来は不幸で、でも仮にも演劇が好きなんて言っちゃってる人たちにこそ是非観て欲しい。ひりひりしていて、こっちまで死にそうになる。ジャブもフックもないストレート、その連続。気持ちよかった。
「女性器の、写真を撮らせて下さい!」と土下座する男の姿に痛々しさを感じた。観ろ。
OH!マイママ
劇団NLT
博品館劇場(東京都)
2009/10/22 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
懐かしいアメリカンホームコメディみたいでした
舞台セットが、心情に合わせて微妙な変化するところとか。軍人は軍人らしく、父親はオヤジらしく。らしさの演技ががとっても合っていました。まぁそのぶん、なよっとした長男ルイの背中を。どつきたくなる気持ちがでてきましたが・・・。国会議員の家の居間での芝居という事もあり、舞台上の朝昼夕やBGM・照明(エアコンの送風まで使うところ)などが、芝居に合わせた演出効果で心憎いほど上手に入るところが素晴らしかった。
お話も、次は?この次はどんな展開?どうなっていくの?と興味が尽きぬ展開で。終幕まで一気にハイテンションで突き進み、あっという間に感じた2時間でした。 面白かったです。
ネタバレBOX
なんか大柄なメイドさんだなぁ・・、と思ったら・・・。あんなオチがあったとは!
でもオープニングの煙はケムたかったです。ドライアイスじゃ駄目でしたか?
マリィの写っている唯一のピンボケ写真とか、犬の遠吠えによる返事とか、風に当たればと言われて、窓を開けた後。観客席に向かって送風するところとか。オープニングのBGMがメイドのヘッドホンステレオで、観客席上空の音を動かす所とか、舞台演出が細かく、お芝居を盛り上げる上手な効果がよかったです。また、話にしか出てこないルイの婚約者の出来ちゃつたオチ。観客に「前半でルイの婚約者との付き合い方しゃべらせたの覚えてる?」と挑戦されたような笑いの誘導が、ツボにはまりました。100点です。
あぁ、こんな話の流れなら。こーゆー反応するよなー。と、自然に感じる演技が皆さん上手でした。でもスゴイ話と、人間関係ですよね!
最後に、私のように初見の方々もいると思いますので。
フランク大佐の秘密は、ぜひ劇場にて御確認下さいと。
宣伝費も貰ってないのに、つい言いたくなるような楽しい劇でした。
OH!マイママ
劇団NLT
博品館劇場(東京都)
2009/10/22 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★
ベテラン世代だから表現できた爆笑コメディ
エンジンがスタートするまでは少々もたついたが、いざエンジンがかかるとフル回転。
観客は、笑おうと準備万端だったので、いったんそこに火が点いたら、そのいい雰囲気で一気にラストまで突き進んだ。
周囲が笑うと、笑いやすいし、それにうまく乗って笑うと、とっても気持ちいい。
2時間25分(休憩15分含む)
ネタバレBOX
物語は、説明にあるとおり。
再々演があるかもしれないので、肝になるネタバレは書きません。そこを大笑いしたし。
そのあたりをいろいろ書きたいのだが、今回ばかりは我慢しよう。
説明にもあるように、キーマンとなるアメリカ人のフランク大佐が出てきてからは、話が一気に回転しだし、あとは笑いっぱなし(ちょっと大げさかな)。
予想外だったり、予想内だったりの物語の展開を、役者さんたちが、とてもいい味で支え、気持ちのいい舞台が展開していった。
謎の部分をいつまでも引っ張る訳ではなく、その秘密の内容をうまく転がすところが、この脚本の面白さであり、見事だと思った(メイドの伏兵もあったりして)。
そして、それをきちんと観客に届けるのは、役者のうまさであり、味なのだろう。翻訳コメディに、いかにもありそうな人物設定だったが(特に息子)、見ている側がすんなりと入っていけるところが、ベテランの役者さんたちの素晴らしいところだと思った。
ちょっとした仕草や表情がとてもいい(特にフランク大佐の微妙な立場の表現が)。「味がある」と言ってもいい。
この年齢の方たちだから、過去のことや現在起こっていることに対しての許容範囲が広く、それがこの物語の柱でもあり、ベテランの役者陣がその雰囲気をうまく出していた。
「あれ、何だろう?」と思っていた、オープニングのダンスもうまく繋がっていくし、物語の収束のさせ方にしても、ちょっといいのだ。
いわゆる「人情喜劇」というわけではないのだが、人の繋がりや人の歴史、人のやさしさのような部分あたりに、思いを馳せることになるのだ。
ヒ・ト・ミ
innocentsphere
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2009/10/22 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★
吸い取られて疲れたけど
イノセントさんのお芝居って、わたしは、みたあとびっくりするくらい疲れます。受け止めきれないものや、漠然としたものを、抱えたまま家にもって帰って時間をかけて腑に落としていくかんじです。最近の公演は、わりと頭で理解しやすくて、「渾沌なかんじ」に苦しまなくてよかったのですが、きょうは、「渾沌」を差し出してもらえたかんじです。苦しいけど、味わい。
コンプレックスドラゴンズ
The end of company ジエン社
d-倉庫(東京都)
2009/10/22 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★
d-倉庫の無駄使い
誠に申し訳ないですが「つまらない」とか「面白い」とか何も感じませんでした。
人生で初めて眠くなった芝居です。
Equal
進戯団 夢命クラシックス
萬劇場(東京都)
2009/10/21 (水) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★
同じことを望みながら争う人間の性
夢命クラシックスさんは初見です。
役者さんたちは萬劇場の舞台を所狭しと動き回っていました。
キャラクターの関係性が難解かと思いきや
それぞれにカテゴリー分けがされていて見やすかったです。
変えがたい現実に直面する
最後の落としどころも好みでした。
あとはネタばれにて→
ネタバレBOX
長きにわたる南方と東方の戦い
そして戦争に反対するレジスタンスの戦い
安息の日々を送りたい
願いは同じはず
そして人は立場こそ違えど
そこでそれぞれにすべきことがあり
たとえ王であっても他人の立場になることはできない
Equalという題名はこんな意味が込められているのかと思いました。
そして感想
アクションありダンスあり
体のキレは参考にしなければ!!と目を皿のようにして見せていただきました。
しかしちょっとアクションが山もりだった感じがしました。
いや、自分が食いつき過ぎでお腹いっぱいになっちゃったのか・・・?
途中でふと我に返るときがあったのは事実です。
ストーリーについていえば
もっとカーンとイルイの関係性や
コウソウとのシュクユウ関係性
などなど、各キャラの掘り下げたストーリーも観たかったです。
特にリュウとシキョウの関係性と変化のいきさつは観たかった―!
リュウがお気に入りキャラなだけに!
衣装もきれいでした。
デザイン性も高く、作るのとても大変そうでした。
それだけに素材が気になっちゃいました。
国によってまったく素材を変えてたらもっと素敵だったと思います。
多分ツイルが多く使われていたのかしら・・・?
シュシュとリゲーシャの衣装はよかった!
完璧に近いと思います。
全体的に本筋のストーリーはよかったです。好きな内容です。
出だし、各キャラの名前も聞きなれないせいか
まだ世界観があったまっていないからか
台詞が聞き取れなかったところがもったいなかったです。
内容、エンターテイメント性ともによかったので後2日間も期待してます!
ヒ・ト・ミ
innocentsphere
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2009/10/22 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★
かっこいい・・・
キャストが多く、チラシの中の相関図を見た瞬間、訳分かんね~と、拒否反応がでました。しかし、実際始まって見ると、簡単にあらすじも教えてくれるし、ストーリーに引き込まれ、分かりやすかった。殺陣のシーンはかっこよく、演出上とはいえ、照明が暗くなると、ちょっと残念な気もしました。初の劇団だったのですが、いつも殺陣をするのかな?次回もチェックしたいと思います。
て
ハイバイ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/09/25 (金) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★
集中して見れる芝居だった。ものすごく。
レビューどうかこうか悩んでいるうちに書くの忘れてた。
あんなに芝居を集中してみることができたのはすごい。
会話の絶妙なテンポとあまりにもありそうなやりとりに
引き込まれていった。
どこにでもいそうな人たちがつむぐ、どこにでもあるような話を、
角度を変えて情感たっぷりにみせてくれました。
これを見た当初、芝居はたしかによかったけど、
見て何を自分は得ることができたんだろう?
ということを考えて、レビューを書く気になれなかったのだけれど。。。
前向きにいうならば、みんな一生懸命生きているんだ、ってことが伝わったってこと。
自分も頑張ろうと、まぁ、少しは思えたような気がする。
でもまぁ、やっぱりメッセージ性は弱いと思う。こういう方向性の話では、
これは結構重要な要素だと思っているにもかかわらず、である。
そう感じる芝居は、当初は高評価でも記憶の中で風化していく気がする。
それにしても、おばあちゃんの手のギミックは意味なかった気が。
若い役者さんをすこしても老いて表現させるためだったんだろうか。
『ヘアカットさん』 / 『朝焼けサンセット(朝公演:朝食付き)』
岡崎藝術座
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/10/16 (金) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
まばたきする間も惜しいほど、
役者たちのまばたくリズムさえもが愛おしくて。ちょっと焦げ焦げにならないか心配なくらい、みつめつづけてしまった…。
ネタバレBOX
もっと乱雑なハサミさばきをみたかった、とか、こうやって刈り揃える方向に整えるのなら、冒頭で客席を巻き込もうとはせずに終幕時まであえて溜めて手拍子を促したほうがキレイに着地するのに、とか、いろいろ思わないではないけど、ベーコンとかソテーって言葉だけで泣かされちゃってるんだから、なにも文句はないです、はい。
島あつめ
トリのマーク(通称)
ーーーー(東京都)
2009/10/20 (火) ~ 2009/10/21 (水)公演終了
満足度★★★
タイトルは鳥ではなく、
島なのだと途中で気づいたとき、なんだかホワンと、翼を休められたようなゆったりとした気分に。あと、こんなに美しく発せられた「暗渠」という言葉を聞いたは、はじめてかも。素敵☆
コンプレックスドラゴンズ
The end of company ジエン社
d-倉庫(東京都)
2009/10/22 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
いままででベスト
いままで観たジエン社の芝居の中でいちばん面白かった。
個人的にかなりコンディション悪い中での観劇だったのですが、一回も眠くなる瞬間がなかった。
よかったです。
ネタバレBOX
笑岡が、あれ演出なのか体勢が辛すぎた結果のたまたまなのだかわかりませんが、
事務所からひとりまたひとりと去っていく中、
ぱたり
とソファーから腕が落ちた、その影が床に映ったのが見えた瞬間、
なんだか泣きそうになってしまいました。
ジエン社で涙腺がゆるむと思わなかった。
ろじ式〜とおくから、呼び声が、きこえる〜
維新派
にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)
2009/10/23 (金) ~ 2009/11/03 (火)公演終了
満足度★★★★
屋台は終演後も1時間ほど営業
維新派を見るのは6年前に新国立劇場中劇場で上演した「nocturne」以来。このときは良い印象を持たなかった。2年前に埼玉でやった「nostalgia」もチケットは取っていたのだが、開演時間を間違えて見られなかった。この劇団とはどうも縁がないなと思いつつ、2度目の観劇となる今回は、内橋和久の音楽に気持ちよく反応できたので、台詞のある歌の部分も、台詞のないダンスの部分も飽きずに最後まで楽しめた。ドラマとしてではなく、あくまでもソング&ダンスの音楽ショーとしての面白さだった。これがいわゆるジャンジャンオペラってやつ?
ネタバレBOX
会場がかつて学校だったからだろうか、理科室の雰囲気のある美術がとてもいい。ただし労働者も出てきたりするから、必ずしも学校という設定ではないようだ。
少女A/2~ニブンノショウジョA~
劇団コアベイビーズ
しもきた空間リバティ(東京都)
2009/10/23 (金) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
倒錯感に酔いしれた♪
過去に同級生を殺害するという罪を犯してしまった少女。その彼女の回想シーンを通してその真相が徐々に明らかにされていくというストーリー。
「耽美」+「不条理」な世界観がとても素晴らしかった♪ストーリーも破綻することなく美しくまとまっていたし、個人的にかなり好みの作風だった。
決して誰にでも薦められる作品ではないけど、夢野久作の耽美な世界観が好きな人には充分楽しめる作品だと思う。
ネタバレBOX
ラストのほうで背景のパネルに赤い血が浮かび上がるけど、あれってどういう仕掛け?ブラックライト?そういうことには素人なもので、とっても気になる‥。劇団の方良かったら教えてください。
ペンパル狂時代
B-amiru
OFF OFFシアター(東京都)
2009/10/20 (火) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
無意識のエロス
かぶりつきで観劇。
まず、タイトルが素晴らしい。無粋なことだが、いまどき「ペンパル」なんて単語をタイトルに持ってくるところは、とても憎い。
背中で笑う、というか。少数派に向けて撃たれるネタの散りばめ方が、相変わらず良すぎる。
僕の隣の人はツボにはまって一人でもだえていた。
「自分しか笑っていない」ということを恍惚に楽しめるのは、幸福な時間がそこにあったということだ。
岩島さん不在で、かえって浮き彫りになった魅力があり。これからのアミルさんの可能性を示唆していたようにも思う。
ネタバレBOX
オムニバスの繋がり方がサラサラしていて、ナイス。
ここいらの洒脱感がイチキさんのうまいところだ。
ラストの「ペンパル教」が秀逸。
ひさしぶりに宮本奈津美のヤバさを喰らう。なんなのかしら、この娘は。恐ろしい娘。
おそらく、まったく意図していないだろうが、それぞれの役者の魅力が引き出された(もしくは解き放たれた)結果、清々しいエロスが漂っていたように思う。
つまりはいい女といい男が凛としてそこにいた、ということだ。
か・ら・く・り
劇団岸野組
本多劇場(東京都)
2009/10/16 (金) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★
時代劇っすからね♪
ベタな時代劇っすから大したからくりはないけれど、からくりという名の桃太郎侍的な仕掛けはありました。
観やすくて解り易いベタベタな芝居。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
行方不明になったお夏は亭主の文七に殺されたんじゃないかと考えた長屋の住人が口裏を合わせて文七に罠を仕掛けて白状させようとする。
文七はオカシイと思いながらも、もしかしたら、自分がお夏を殺しちまったのではないか?と自分自身の記憶を疑うようになっていく。
ところが実はお夏を殺したのはお夏の実家である越前屋の相続金に目が眩んだ番頭の市蔵だったのだ。
市蔵は長屋の住民を騙して、お夏を殺したのは文七だと思い込ませた上に文七を犯人にさせる為のからくりを仕込んだのだった。
それを見破った役人が市蔵を白状させる為に、更なるからくりを仕掛けて市蔵を追い詰める。という筋。
公演時間1時間20分という早業ながら、舞台は古くて笑えないコメディも織り交ぜ、観客より出演者が満足した表情で、舞台は幕を下ろしたのでした。
よくもまあ、あんな古いネタを使えるな~。と感心した一方で、時代劇なんだからネタも出演する輩も、はたまた、脚本も古くてトーゼンと妙に納得した舞台でした。笑
笑うしかない。
翻案劇 サロメ
アトリエ・ダンカン
東京グローブ座(東京都)
2009/10/19 (月) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★
見事なコラボレート音楽劇
スズカツさんが、アフタートークで、これは音楽劇だと言っていましたが、まさにそんな感じ。
邦楽お囃子さんによる生演奏サロメなんて、意表をつくコラボレーションでしたが、見事に融合して、感覚に響く舞台でした。
全員、素晴らしい配役でしたが、中でも、森山開次さんのヨカナーンは、彼を置いて他に思いつかない程、ベストキャスティング!!
彼のコンテンポラリーダンスは、彼独自の世界で、それが、この役に見事に同化して、素晴らしかったの一言でした。
それと、ヨカナーンの首が、森山さんと瓜二つで、その技術の高さにも舌を巻きました。
篠井×スズカツコンビの舞台は、これからも、注目したいと思いました。
生きてるものか【新作】
五反田団
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/10/17 (土) ~ 2009/11/01 (日)公演終了
満足度★★
無、コンプリート?
大味な、二番煎じ、だと思った。
ネタバレBOX
『生きてるものはいないのか』のラストシーン、死体がひな壇に並んでいるところからスタートして、一人ずつ、時間が逆まわしになっていく。つまり、人々が死んで行く最後の時間を、今度は死んだ時点から観ていくことになる。
どったんばったん七転八倒しながら、今度は死体が、起き上がる。『生きてるものはいないのか』の町のすぐ近くで、全然ちがう人々のちょっとしたドラマが、逆まわしで再生されて行く。
『生きてるものはいないのか』(めんどくさい! 以下『いないのか』)は、人々の抱えるいろんなドラマが、少しずつ見えてきて、大きな意味を持ちそうなギリギリのところで死んで、なんにもわからないまま意味が壊れる、そういうつくりだったけど、今回は逆。よくわからない状況から始まって、どうしてこうなったのかが、きちんと分かっていくつくり。不思議なことに、ヘンなことをやってるのに、逆に正統派な印象。
ドミノ倒しの物語の出発点は、ひとりの女性の妊娠で、死から始まる『いないのか』が、『生きてるものか』で「生」の始まりで終わる。扇が開いてまた閉じる、ひとつの円環構造が出来上がる、ようにみえる。
でも、疑問がたくさんある。時間が逆まわしになるだけで、結局、彼らは死ぬんだから、これって、『いないのか』の繰り返しなんじゃないか、と思う。女性の妊娠を基調にした生のテーマだって、『いないのか』に既にあった。むしろあちらの、最後までお腹の子を生かそうとして、死ぬ間際に「だめか、くそ」と悔しそうだった彼女のほうが印象に残っている。死んだ我が子に絶望して、自分から死のうとする母親も、『いないのか』に既に出てきていた。
自分たちの死を、「運命」なのかどうか考えるシーンがでてくる。「運命」という、大きな言葉が頻出する。『いないのか』ではあれほど慎重だった、言葉や、生のありかたに対する態度が、こちらには少し欠けていると感じる。人々が死に慣れていく過程も、こちらではほとんど描かれない。
でも、と考えてみる。『いないのか』が、人の抱える「意味」や「価値」を無化して、人間の生まれたままの、無の姿を提示する作品だったとするなら、この『いないのか』のセルフパロディーのような『生きてるものか』は、『いないのか』という作品そのものの意味や価値をなかったことにしようとするものなんじゃないか、という気がしてくる。
賞とか、人気とか、そういうものの無化された、生まれたままの、前田司郎の無が目指されているような気がしてくる。底知れない怖さを、勝手に感じる。
生きてるものはいないのか
五反田団
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/10/17 (土) ~ 2009/10/31 (土)公演終了
満足度★★★★
ぽっかり空いた、無の世界
大味にみえて、とっても繊細なお芝居だと思った。
ネタバレBOX
ちょっとしたひな壇があるだけの舞台の上で、17人、次々と意味なく死んで行く話。
周りで人が死ぬ。最初はびっくりして、大声だして逃げたりしてたのが、段々慣れてくる。自分も助かりそうにないと分かると、誰と死ぬとか、何を言い残そうとか、なんとなく寄り集まって、みんなで日常に逃げ込むようすが、日本人の僕らそのままな感じ。
……と、ここまでは戯曲で読んでも同じ。でもここで、ト書きに一言「死ぬ」と書いてあるところに、どったんばったん七転八倒して必死の形相で死んでいく目の前の俳優さんが加わると、もう、なにも考えられなくなる。オーバーすぎる演技に、頭をごっつんごっつんする様子に、真っ赤になって血管浮き出た顔に。つられてけいれんしながら、こちらもただただ笑って笑って、お腹を抱えて笑っているうちに。ふと気づくと、なんだかわからない、なんにもない感じにとらわれて、ものすごく怖く、かなしくなった。
どんどん死んで、最後の5・6人くらいになると、こちらも慣れて、笑わなくなる。でも、なんだかわからない怖さのなか、生きることをあきらめていく人々の間で、看取る看取らないでちょっともめるシーンがでてくる。
「ちょっと、あれだけど、ちょっとわがままなんじゃないかな」
「は? だって、僕死にそうなんですよ」
「いやわかるけど、俺だってあれじゃん、いつ死ぬかわかんないじゃん、その時間をさ、ていうか、命を? 命っていっちゃうとちょっとあれ、あれかも知んないけど、そんな誇張してないと思うんだけど」
「命」っていっちゃうとちょっとあれなところが、この作品、とっても高貴だな、と思った。「命」とか「運命」とか「魂」とか、そういう大きな言葉を使うことに対する、とてもデリケートな感覚がある。大きな言葉を、表現する人は使いたがる。簡単に心が動いたような気にさせるからだ。でも、それを使わない。
「命」という言葉や、「死」というイメージの持っている、大きな意味とか理由とか、そういうものの価値が、慎重に疑われて、解体される。死体以外に何ものこらない最後のシーン。すべての価値をはぎとられて、ぽっかり空いた虚無の世界で、僕らはただ呆然とするしかない。
コンプレックスドラゴンズ
The end of company ジエン社
d-倉庫(東京都)
2009/10/22 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
ダメ人間パラダイスへようこそ。
社会性に乏しく、人との会話が長続きしない。
基本、なげやり。わがまま。身勝手。恐ろしいほどマイペース。奇妙、奇天烈、ダメ人間。そんな風に一般的にカテゴライズされてしまうような、しかしながら強烈な個性やらエネルギーやらを放出しているひとたちばかりがそれぞれ、何やらぼそぼそとやっているようです。
ふわふわしてますね。失うものなど何もないからでしょうか。あまり危機感もないようです。
でも、これが何だか妙にしっくり来るんです。そして、好き勝手に振舞えた時に集団として成立してしまう不条理さが現代っぽくもあり、超現実的でもあり、いわゆる”夢と現実を混同しがちな若者”的なさじ加減が絶妙です。
後半、ある出来事をきっかけに全体がゆるやかな狂気となってじわじわと上昇していく様は凄まじいですが、お腹が空いたのでコンビ二にお弁当を買いに行く時のようなフットワークの軽さで観劇しても全然大丈夫です。
ネタバレBOX
80年代に一世を風靡出来なかった芸人、孔子大先生の弟子たちは師匠の事務所に入りびたりだらだらと、非生産的に過ごしている。
大先生は沖縄に仕事に行っていて、テレビのニュースによると、何でも沖縄にミサイルが打ち落とされたらしい。先生の安否はわからない。
弟子たちは、明日予定されている草野球をするか否か考えるが、何分、やる気がないひとたちなので、議論することも、先生の安否を心配することに対してもだんだん”やる気”をなくしていく。
もちろんヒトの話に耳を傾けることに対しても”やる気”がないのでどうしても話が一方通行になるが、そこを何とかしようとする”やる気”もない。
それではコミュニケーションとして成立しないだろう。と本来ならば突っ込みを入れるところなのだが、”やる気”がないことだけは弟子たちに共通しているためか、一定の秩序は保たれているのである。
先生が死んだらどう思う?と聞かれて「ワーと思う」と答えるアラタの俗っぽさ。川でナンパされてきたメカルの腐女子っぷり。事務所の雑務を何なくこなす、事務所の近くにコンビニしかなく、酒を買うしかなく、アル中になるしかなかった。と言い訳する女、コマキリ。孔子大先生のゴーストライターを務めるサンサンに至っては、弟子の中では一番まともな人間に見えてきたりしてくる始末なのだ。そして、リアルというよりも、ナチュラルという言葉の方がしっくりと来るような空気感が時間を追うごとに漂いはじめ、ほのぼのとした気持ちにもなり、時折笑ってしまったりもするのだが、しかし後ほど冷静に事を追っていくとやっぱり何かがおかしいのである。その何ともいえないぼんやりとした違和感にも似たおかしさは、舞台に何かが存在していることへの異常さに対し、どれだけ親身になれるか、というジエン社の精神論的な部分が反映されているように思えるのだ。そして論理的な側面だけで捉えるだけではなく、舞台に存在する異常さ(=おかしさ)を、お笑い芸人のおかしさとトンチのように掛け合わせ、ステージ上で結果を出すおかしさは、オカシすぎてブラボーとしか言いようがない。
とどのつまり、孔子大先生の事務所だけが行き場の無い人間たちの、心のよりどころになっているやるせなさと、事務所にいたら辛うじて生活できる安直さに苛まれながら、感傷的になることも、社会のせいや自分のせいにすることにすら”やる気”をなくした人たちの、虚空にうたうレクイエムが心の奥にずっしりと響く。
ZED【12月31日で公演終了】
CIRQUE DU SOLEIL
舞浜アンフィシアター(千葉県)
2008/10/01 (水) ~ 2011/12/31 (土)公演終了
満足度★★★★★
世界観が
素晴らしかった。
もちろんやってる内容自体凄いんですけど、開演前からスーーーつと引き込まれました。少しくらい青白い照明の中、静かにそれでいて不思議な音楽が聞こえてる。個人的かもしれないけど、雰囲気が良いんですよ。
そして、あのオープニング。
音楽も照明も、そして何よりもドーム型の装置!!
世界規模ってのを頷けます。
何とも豪華な演出でした。
感動しました。