コンプレックスドラゴンズ 公演情報 The end of company ジエン社「コンプレックスドラゴンズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ダメ人間パラダイスへようこそ。
    社会性に乏しく、人との会話が長続きしない。
    基本、なげやり。わがまま。身勝手。恐ろしいほどマイペース。奇妙、奇天烈、ダメ人間。そんな風に一般的にカテゴライズされてしまうような、しかしながら強烈な個性やらエネルギーやらを放出しているひとたちばかりがそれぞれ、何やらぼそぼそとやっているようです。
    ふわふわしてますね。失うものなど何もないからでしょうか。あまり危機感もないようです。
    でも、これが何だか妙にしっくり来るんです。そして、好き勝手に振舞えた時に集団として成立してしまう不条理さが現代っぽくもあり、超現実的でもあり、いわゆる”夢と現実を混同しがちな若者”的なさじ加減が絶妙です。
    後半、ある出来事をきっかけに全体がゆるやかな狂気となってじわじわと上昇していく様は凄まじいですが、お腹が空いたのでコンビ二にお弁当を買いに行く時のようなフットワークの軽さで観劇しても全然大丈夫です。

    ネタバレBOX

    80年代に一世を風靡出来なかった芸人、孔子大先生の弟子たちは師匠の事務所に入りびたりだらだらと、非生産的に過ごしている。
    大先生は沖縄に仕事に行っていて、テレビのニュースによると、何でも沖縄にミサイルが打ち落とされたらしい。先生の安否はわからない。
    弟子たちは、明日予定されている草野球をするか否か考えるが、何分、やる気がないひとたちなので、議論することも、先生の安否を心配することに対してもだんだん”やる気”をなくしていく。
    もちろんヒトの話に耳を傾けることに対しても”やる気”がないのでどうしても話が一方通行になるが、そこを何とかしようとする”やる気”もない。
    それではコミュニケーションとして成立しないだろう。と本来ならば突っ込みを入れるところなのだが、”やる気”がないことだけは弟子たちに共通しているためか、一定の秩序は保たれているのである。

    先生が死んだらどう思う?と聞かれて「ワーと思う」と答えるアラタの俗っぽさ。川でナンパされてきたメカルの腐女子っぷり。事務所の雑務を何なくこなす、事務所の近くにコンビニしかなく、酒を買うしかなく、アル中になるしかなかった。と言い訳する女、コマキリ。孔子大先生のゴーストライターを務めるサンサンに至っては、弟子の中では一番まともな人間に見えてきたりしてくる始末なのだ。そして、リアルというよりも、ナチュラルという言葉の方がしっくりと来るような空気感が時間を追うごとに漂いはじめ、ほのぼのとした気持ちにもなり、時折笑ってしまったりもするのだが、しかし後ほど冷静に事を追っていくとやっぱり何かがおかしいのである。その何ともいえないぼんやりとした違和感にも似たおかしさは、舞台に何かが存在していることへの異常さに対し、どれだけ親身になれるか、というジエン社の精神論的な部分が反映されているように思えるのだ。そして論理的な側面だけで捉えるだけではなく、舞台に存在する異常さ(=おかしさ)を、お笑い芸人のおかしさとトンチのように掛け合わせ、ステージ上で結果を出すおかしさは、オカシすぎてブラボーとしか言いようがない。

    とどのつまり、孔子大先生の事務所だけが行き場の無い人間たちの、心のよりどころになっているやるせなさと、事務所にいたら辛うじて生活できる安直さに苛まれながら、感傷的になることも、社会のせいや自分のせいにすることにすら”やる気”をなくした人たちの、虚空にうたうレクイエムが心の奥にずっしりと響く。

    0

    2009/10/23 17:10

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大