
ZIPANG PUNK ~五右衛門ロックⅢ
劇団☆新感線
東急シアターオーブ(東京都)
2012/12/19 (水) ~ 2013/01/27 (日)公演終了
満足度★★★
期待ほどではなかったというオチ
今年の初観劇、過去の2作品がとても面白かった「五右衛門ロック」ということで、かなり期待して行ったのが敗因でしょうか。
ストーリーは捻りがなく(捻ってみせているようで予想の範囲内)、長時間の芝居に途中退屈するところもたびたびありました。
歌とダンスも、前回よりインパクトがなかった気がします。
それでも、高田聖子さんは素敵だし、シャルル役の浦井くんも可愛いし、映像で登場するあのお方にも嬉しくなり、結局は楽しんだのですが。
役者を見る分には楽しいと思います。お祭りだし。
私が見たのは2階席前方中央だったのですが、1幕では音響が悪く、歌詞がよく聞き取れませんでした。2幕ではマシになっていたのですが、音響が幕間に改善されたのか、単に耳が慣れたのかはわかりません。
シアターオーヴが、新感線にあっていないのかも。
12,500円というチケット代を考えると、ちょっと残念。もう少し安かったら、満足度が高かったのかもしれません。

まだ踊る
黒沢美香
慶應義塾大学日吉キャンパス塾生会館(神奈川県)
2012/06/17 (日) ~ 2012/06/17 (日)公演終了
まだまだ踊るんですね。
黒沢輝夫・下田栄子・黒沢美香「まだ踊る」を観る。ある意味で石井漠の流れのモダンダンスの歴史。実質的には黒沢・下田門下の同窓会かと。意外に?キビキビ踊る黒沢美香さん、ここではいつまでも娘なんだなぁ、と思う。

絶交わる子、ポンッ
康本雅子
シアタートラム(東京都)
2012/06/28 (木) ~ 2012/07/01 (日)公演終了
満足度★★★
ポップなノリと勢い。
康本雅子「絶交わる子、ポンッ」を観る。
キレの良いダンサーを集めての、ポップなショートショート集の感じ。それぞれのシーンは、ダンサーの個性が出ていて面白い。
中でも、あらた真生さんは、シーンに合わせてくるくる変わる感じで、幅の広さを感じさせる。
小難しい話はなく、ポップなノリと勢いで、一気に駆け抜ける。ある意味で万人受けする、「今」っぽい作品。この世代の傾向なのかな。

夕顔のはなしろきゆふぐれ
維新派
デザイン・クリエイティブセンター神戸(旧神戸生糸検査所)(兵庫県)
2012/07/12 (木) ~ 2012/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
室内作品では一番雰囲気があった。
神戸で維新派「夕顔のはなしろきゆふぐれ」を観る。
大阪という街へのオマージュか。白い室内に椅子を使ったミニマルな感じ。パースを効かせた舞台装置が、不思議な空間のねじれを表す。ライティングも美しく、室内作品では一番雰囲気があった。

ピーター・ブルックの魔笛
彩の国さいたま芸術劇場
滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール(滋賀県)
2012/04/07 (土) ~ 2012/04/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
うふふふふ
進行役の二人が長い竹を両腕に持って、それをあちこちに突き立てることによって「場」が変化していく。
特に『魔笛』という作品はいろんなヒトがいろんな場所でいろんな状況のもとに動いていくのでブルックのようなミニマルな形式で演出する場合はどうなるのかとても興味があったのだけれど、この「竹方式」はすごく面白かった。
かつての『カルメン』の時は(見てるってことでそれなりの歳であることがロコツにわかるな)もっとオペラちっくにそれぞれのアリアが処理されていて、ある意味原作に忠実につくられていたという記憶がある。
でも今回は何と言うか、とてもピュアな「エロス」に焦点が当てられていたような感じ。「愛」があり、それは難関を越えて結ばれて、豊かな子孫に継がれていって、そしてそれは万世共通に行われるべきまさに「生命」の営みなのだという理念が、とても柔らかな美しいトーンで語られていたような気がする。
というか、ピーター・ブルックの作品を見た後はいつもこういう気分になったなぁ…ということを思い出しながら考えていたから、よけいにそう思うのかもしれないけれど。

伊藤千枝/珍しいキノコ舞踊団『3mmくらいズレてる部屋』
ダンストリエンナーレトーキョー
スパイラルホール(東京都)
2012/09/27 (木) ~ 2012/09/29 (土)公演終了
満足度★★★
成熟、なのかな。
なんだか、ルーチンを流しているような感じに見えました。
昔はもっと苦悩して、とまどいながら、ぎりぎりまで、でも真摯に踊っていたように思うけど。
なにやら、パターンを作り上げてしまったみたいで、かつてのような新鮮さは見えなくなってきました。
それは、成熟した、ということかもしれません。もう大御所ですね。

ボクと妹のいる風景 東京
劇団青い鳥
ウイングフィールド(大阪府)
2012/01/27 (金) ~ 2012/01/29 (日)公演終了
満足度★★★★
面白かった〜〜
いつのまにかオカマちゃんになっているお兄、不登校から工事現場の交通整理で生計を立てている妹。
オヤジは何度目かの結婚をしていて、出来のいい異母兄からは疎まれている、ま、裏街道を生きている兄妹のお話。
とにかく相変わらずひたすら笑わせてくれるところが『青い鳥』。でも、帰りの電車でストーリーをじっくりと思い返して噛み締めてみると、そこにある、現代の、壊れた、かすがいを失った家族の姿が見えてくる。舞台の上では笑いだけで語られていたことがらも、おそらく実際に起こってみたならそこにはいろいろな憎しみや疎外がべたべたと貼り付いたおぞましい姿になるのだろうな。
でもそれを笑い飛ばすだけの余裕を持てることに、今は感謝しよう。

秋カフェ『和いろいろ』
劇団桃唄309
RAFT(東京都)
2012/09/20 (木) ~ 2012/09/23 (日)公演終了
満足度★★★★
美味しい幕の内弁当
短編劇集 vol.3 秋カフェ『和いろいろ』を観る。30分くらいの短編劇の二本立て+おまけ。
Aプロは、AnChie『大味噌村の昔話-ばばへびかえる-』と劇団桃唄309『しいたけくんと金魚』。AnChieは、古典芸能のエッセンスをふんだんに入れつつ、なんちゃって学説で真面目に不真面目にでっち上げ。シャキッとゆるく。一方、桃唄は、わかつきめぐみを思わせるほんわかもののけ話。おまけの、佐藤達さんのかみしばい、というか語りがほのぼの。ココロの荒んでいる人にはオススメです。
Bプロ。劇団リケチカ『さんかくの方向性』は、おにぎり島に辿り着いた漂流者の罵り合い(笑)。桃唄309『置き手紙』は、落語風味なとぼけた探偵物語。探偵役の佐藤達さんが意外にも?カッコいい。脚ながっ。
Cプロ。劇団だるめしあん「ムラサメ」は、妖刀伝説をモチーフにした学生演劇風味。エビマヨちゃんにざっくりと切られたいかも(笑)。桃唄309「ザ・キャンプ40」は、テンポの良い、3人の40オヤジの哀愁漂う微笑ましいキャンプの話。役者に当て書きしている感じ。

小町風伝
下鴨車窓
AI・HALL(兵庫県)
2012/01/20 (金) ~ 2012/01/22 (日)公演終了
満足度★★★
面白くはあるけれど…
演ずる者と見る者とがかならずしも同じ場所にはおらず、その出会いはあくまでも偶然にのみ任せられる、というスタイル、つまり演出家のいう「経験の裂け目」から生まれるものを重視しているというけれど、でもこの作品の意図するものとは何となく「ずれ」を感じざるを得なかった。
やはりそこにじっと居て、麺をすすり、昔を懐かしみ、老いた身体にある女の残滓のようなものをいたわりながら生きている、そういう小町をじっと見ていたい、と私は思うし、結局そうした。
他の場で何が起きていようとも、とりあえず『一人の小町』の姿だけを追っていたいと思ったのだった。

To Belong —dialogue—
北村明子
シアタートラム(東京都)
2012/09/21 (金) ~ 2012/09/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
ためらい、とまどい、すれ違い。
北村明子「To Belong -dialogue-」を観る。
ワークインプログレスでは、無機的な北村節と有機的なミロト節との不整合が露わになっていた感があったが、今回は微妙に寄り添っている感じ。インドネシアの動きや世界感を教わり、真似て行くくだりは、この作品の成り立ちを見ているよう。
ためらい、とまどい、すれ違い。「コンタクト」や「コミュニケーション」ではなく「ダイアローグ(対話)」とした意味を思う。
初めは、個々のダンサーの色が強かったが、動くにつれて途中からいい感じのハーモニーになっていた。シャープな個が滲みをみせ、群体になる感じ。
グンドノ氏の映像が要所に挿まれ、影絵や束芋風なアニメも交えて、映像が上手くコラージュされていて、作品世界を解りやすくしていた。

フリル
アマヤドリ
インディペンデントシアターOji(東京都)
2012/09/08 (土) ~ 2012/09/17 (月)公演終了
満足度★★★★
水彩の抽象画のイメージ。
アマヤドリ「フリル」を観る。ちょっと劇団 青い鳥の「夏の思い出」を思い出させる。
「無くしたもの」「記憶」「見えないもの」「見たかったもの」。これまでの作風とは変わって静かに佇む作品。
今作は、ダンスや動きを抑えつつ、揺れる質感を出したかったのかな。が、中途半端なぎこちない動作にしかなっていない。1週間公演でパターンになっているのか。
原宿あたりで野球の歓声が聴こえるシーンは、祇園祭の季節には、どこにいてもお囃子が聴こえる京都の人のエピソードを思い出す。
個人的には、情緒的で、ブラッドベリ風の切なさがあって良かったと思います。まあ、アクティブな物語を観たい人には退屈だったかも。冒険物語を読もうとしたら、詩集をわたされた、みたいな。全体的に水彩の抽象画のような作風になったのかな。以前はアクリルでマンガっぽい感じでしたが。
あと、台本、照明、スクリーンなどがアマヤドリスタイルになったのに、役者はまだ前のスタイルのように見えました。台詞や動きが少なくなって、存在感まで小さくなったような。役者の強度、見せ方は、まだまだ改良の余地があるように思いました。
照明、美術はステキでした。

KUNIO10『更地』
KUNIO
元・立誠小学校(京都府)
2012/09/27 (木) ~ 2012/09/30 (日)公演終了
満足度★★★★
すばらしく好対照!
開場から開演までの間、役者二人が地味な衣装をまとってダークな色合いの床の上をひたすらゆっくりと歩いて行く。BGMはジムノペディ。一気に何十年か前に見た太田作品の中に引き戻されるような気分になった。
ところが実際に芝居が始まったとたん、床の上はサイケデリックな布で覆われ、役者はカラフルに装いなおして「更地」に向けての旅が始まる。そこに在った場所とこれから向かう場所、そこに生まれる高揚感と不安感、それらをみごとに祝うような芝居だった。
さすが愛弟子だけのことはある。しっかりと師への尊敬をその形式に反映させ、同時にそこから解放された形での自分の方法論をくっきりと鮮やかにまとめてみせた。お見事、である。

高円寺純情商店街でロミジュリ
踊れ場
シアターブラッツ(東京都)
2012/11/12 (月) ~ 2012/11/14 (水)公演終了
満足度★★★★
バルコニーのシーンは秀逸。
踊れ場「高円寺純情商店街でロミジュリ」を観る。
男28?vs女1のむさ苦しい舞台(笑)。
バルコニーのシーンは秀逸。このノリで全編出来れば良かったけど。
主演の榊菜津美ちゃんは、キラキラふわふわ困ったちゃんでしょこたん入ってアニメチックに猟奇的で中2なリリカルビッチで、こんな役ができるのは世界で一人かと思います(笑)。
(そういえば、パパ・タラフマラでは、ビッチな白雪姫もいたなぁ)

はじめまして
スタジオアーキタンツ
スタジオ アーキタンツ(東京都)
2012/11/10 (土) ~ 2012/11/11 (日)公演終了
満足度★★★★
組み合わせの妙
アーキタンツで「はじめまして」を観る。
白井剛振付で松島誠、井手茂太振付で森下真樹、そして松島&森下のデュオ。
スタイリッシュだけどイマイチ...な白井振付が、松島さんの存在感があると活きてくる。チラと出てく白井くんは存在感が希薄で黒子か幻影か。
デュオは、インプロだったのかな。音楽もない沈黙の中、ジリジリとしたシーンが続き、やがて、発声とともに空気が動き出す。ああ、こういう時間は楽しいな。

おたる鳥をよぶ準備
BATIK(黒田育世)
世田谷パブリックシアター(東京都)
2012/11/15 (木) ~ 2012/11/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
黒田ワンダーランド
BATIK「おたる鳥をよぶ準備」を観る。
いつもながらの過剰なリフレイン。永遠とも思えるリリカルに子供じみた黒田ワンダーランド。
第二部の黒田ソロを観て気付く。ああ、第一部は、黒田の脳内のカオスなのか、と。その昇華した結果としての第二部なのか。

引き出しの中のラブレター
東京マハロ
駅前劇場(東京都)
2012/11/17 (土) ~ 2012/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
暮れにもう一度観たかったなぁ。
東京マハロ「引き出しの中のラブレター」を観る。
オーソドックスながら、真っ当な舞台を観た、という感じ。TVドラマがチャチになっても、舞台は変わらずに良い時間を創っていることに感謝。
映画版は観ていないが、ラジオ局と家庭を一つのセットで見立てたのはさすが。
主演の梅宮万紗子さんはじめ、役柄に合ったキャスティングも良かった。
暮れにもう一度観たいなぁ。

バットシェバ舞踊団『Sadeh21 ―サデ21』
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2012/11/23 (金) ~ 2012/11/24 (土)公演終了
満足度★★★★★
シンプルで豊饒。
バットシェバ舞踊団「Sadeh 21」を彩の国さいたま芸術劇場で観る。
シーンが進むに連れソロからデュオ、アンサンブルへと拡がる動きに目を見張る。今回はインプロを封印したとのことだが、幾つかインプロかと思うシーンがあった。どうなんだろう。
時節柄、所々ガザを思わせるシーンもある。日本は能天気なので、特にカンパニーからコメントはないらしいが、これがある意味でカンパニーのコメントなのかな、と思う。
ラストシーンが、初めは静かに重く殉教のようだったが、やがて夏休みの子供たちのような明るく微笑ましい雰囲気に変わって終わったのが印象的だった。

ハヤサスラヒメ 速佐須良姫
天使館
世田谷パブリックシアター(東京都)
2012/11/29 (木) ~ 2012/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
圧倒の世界。
笠井叡×麿赤兒「ハヤサスラヒメ 速佐須良姫」を観る。
二人の達人の初共演。舞踏やオイリュトミーを知らなくても、舞台に圧倒される。その意味で、すごい舞台。
大駱駝艦メンバーと天使館メンバーのコントラストがはっきり。重力とスピード、曲やリズムの取り方、流れる時間...。同じ動きをすると質感の違いがくっきり。影のようにも、双子のようにも。
二つに別れてしまったものの遊戯。幼女の笠井さんと老女の麿さんは、親子のようにも、一人の女の一生にも見え。
混沌を積み上げて、そして大団円の群舞、とおまけ(笑)。素直に楽しむべし。

アリス・イン・ワンダーランド
ホリプロ
青山劇場(東京都)
2012/11/17 (土) ~ 2012/12/07 (金)公演終了
満足度★★★
ポスターとはイメージ違ったなぁ。
渡辺美里さんを観に青山劇場「アリス・イン・ワンダーランド」へ。
が、始まってすぐに痛い感じ。
いや、下手ではないのだが、なんか昭和テイスト。
特に脚本・歌詞が。
ダンスもなんちゃって感が・・・。
マシュー・ボーンの「白鳥の湖」みたいなのをイメージしていたので。
あ、美里さんは楽しそうでした。
客席中央に麗人の集団が。
?と思ったら、主演は安蘭けいさん。なるほど。

人力飛行機ソロモン 劇場版
月蝕歌劇団
ひつじ座(東京都)
2012/12/22 (土) ~ 2012/12/25 (火)公演終了
満足度★★★★
初月蝕
昨年は寺山修司記念館に行ったなぁ、と思いつつ寺山の「人力飛行機ソロモン 劇場版」を観る。初の月蝕歌劇団。
月蝕は高校生のときに戯曲「聖ミカエラ学園漂流記」を読んで、一度観たいなぁと思いつつ幾星霜(笑)。やっと、という感じ。
台本も音楽・歌も濃密な60年代を思わせ、あゝ昭和。が、役者の容姿や姿勢が現代的で違和感。
あまりカオス感や猥雑感はない。バナナで暴走を観たせいか。台詞は覚えたけど、コトバの意味が解って言っているのか? と思える役者もいて。
台本に現代性を持たせようとして最近のキーワードを散りばめるが、世界からコトバが浮いてしまう。オリジナルのままの台本で通した方が60年代感があって良かったかも。
が、追加されたコトバの方が若手の役者にマッチして、コトバと身体が生き生きしていたのが印象的。