
第一部『1961年:夜に昇る太陽』 第二部『1986年:メビウスの輪』 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』
DULL-COLORED POP
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2019/08/31 (土) ~ 2019/09/02 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/31 (土)
「1961年:夜に昇る太陽」史実ありきだからこそ、流れに乗っていく悪意なき勢い…リスクを呑み込まざるを得ないシビアな背景、時代感が良い…まずは客観的に描かれる所に好感。演出としても演劇的な面白みがふんだんで、重い話が無理なく吞み込める。役者の剛柔の振れ幅もすごいな。剛の圧は半端ないし、コミカルさにも長けているし、コレを真ん前、至近距離で観れる幸せ。
「1986年:メビウスの輪」せっかく握った舵なのに… 加速度的にモヤモヤを増していく展開。決して単純な欲などでは語れない…言葉にし難い"ままならなさ"がキツイ。ヤクザ論法の演技が秀逸。そして…物言わぬモノの視点と声の描写がとても良いなぁ。
「2011年:語られたがる言葉たち」ひたすら"生"を叩きつけくる感覚。1,2部とは打って変わって… 芝居っ気から遠ざかり、ドキュメンタリーを眺めていた… ただ ただ言葉の奔流に晒されていた… その圧力が終盤の印象的なシーンに結実していくの見事。纏まりが感じられないのが演劇としては不満にもなるのだが、まさしくそこが本作の訴える本質でもあるのは伝わる。現実が…描く対象の母体があまりにも大きすぎ…煩雑すぎるのだ。確かにここにしか落とし所はないのだろう…作り手の実直さを感じる一方で、相性というキーワードが皮肉に響く。

三人寄れば、文句の杖
劇団あおきりみかん
シアターウィークエンド(愛知県)
2019/08/22 (木) ~ 2019/08/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/25 (日)
割と簡素な舞台美術になりがちなこの劇場に…ガチのリアル志向の神社の美術、不惑の女性たちに謎の着ぐるみ女子会、どめどもなく溢れる文句(不平不満)の数々… ありとあらゆる組み合わせで「ギャップ」が発生しているのが実に楽しい。特に着ぐるみのインパクトが大きくって、これがなかったらだいぶん印象違うよなぁ。
そして、怒涛の文句の洪水なのにぜんぜん嫌みに感じられない味が良いね。そしてまた… その文句の言葉を見事に具現化して出てくる隅田佳乃(私が観たのは平林ももこさん)が良かったです。誇張されたインスタ女子、世渡りうまそで嫌みに気取った様な振る舞いの中に… 秘めていた「趣味のあった仲間」を渇望するアグレッシブさや そのクセたやすく折れそうになるという性格の揺れがコメディに合うねぇ。

名古屋-新大阪
NPO法人C,A,ワークス
ナビロフト(愛知県)
2019/08/23 (金) ~ 2019/08/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/24 (土)
不思議な感触… 一人芝居を6本同時に観ている感覚に陥って、どこを見ていれば良いのか分からなくなる時間があった。
空間は環境音が馴染んで良い… そしてそこからの振れ幅。
とりあえず、ニノさんはかなりヤバくて かなりレアだとは言っておかねばならない。
おぐりさんもかなりキテた…想像力次第だけど、アレはかなり怖いよ。
そしてミヤマまゆ恐るべし。これは語り草になる:(;゙゚'ω゚'):

「いつだって窓際であたしたち」+「いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した」
ロロ
三重県文化会館(三重県)
2019/08/24 (土) ~ 2019/08/25 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/24 (土)
高校生の日常/現実の振る舞いを ある意味理想化/洗練させた"超"日常演劇。有りそで無い…無さそで有る…現実に散りばめられたアレコレを磨いて再構築した一種のコラージュ/現代アート感、仄かに不条理で楽しく切ない。なんて言って果たして伝わるだろうか笑… この不思議な感覚が。
実際の高校生ver.とロロ役者ver.の2本立てであることで、どちらの愉しみも湧き立たせてくれたのがとても尊いね。
個人的にタイムリーな要素もあって、あの世界には廃墟文藝部のめ〜さんも潜んでいる様な気になって観てました(笑)

Lovers
南山大学演劇部「HI-SECO」企画
ナビロフト(愛知県)
2019/08/16 (金) ~ 2019/08/18 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/08/17 (土)
アガリスク作品とその影響濃いめな創作コメディの連荘は面白い試み。
もはやダニエル小柳 独壇場感… どこまで突っ走るのか

ミルユメコリオ
幻灯劇場
京都市東山青少年活動センター(京都府)
2019/08/09 (金) ~ 2019/08/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/08/12 (月)
笑いと印象的なフレーズが交互に挟まれるのが特徴的で、特に使われる比喩表現の巧みさが良い。初演が劇団旗揚げ公演用に書き下ろされたというのも頷ける気概が伝わってくる程に… 印象的な言葉が実にふんだんに盛り込まれていて、意味深さを増す。咀嚼する時間を要するところもあるので、小説向きな気もするが、それらを噛み締めることで味わいが増していく。戯曲を買えて良かったなと思える。

空間スペース3D
壱劇屋
神戸アートビレッジセンター(兵庫県)
2019/12/06 (金) ~ 2019/12/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
久しぶりの大熊さんの新作にわくわくしながら観劇、、いや、参加してきました。
大人も子供も一緒に遊ばせてもらえるのは壱劇屋さんの素敵なところのひとつです。
めちゃくちゃストレス発散させてもらいました!
また遊びたいなぁ。

Love or Crown
Queens of the Hill Company
G/Pit(愛知県)
2019/08/09 (金) ~ 2019/08/11 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/08/11 (日)
衣装やアクセサリーとかの外見の作り込みもさることながら… 「飾る言葉」の数々が美しく…かつ畳み掛ける物量を備えているのが最大の特徴かな。オマージュではあってもこの台詞群を 自前で書くセンスは大したもの。
そして 照れが僅かでも入れば途端に笑いのツボに入りかねない世界なのだが、見事に卒なく演じきって「超陶酔演劇」を完成させている。これは好きな人には堪らないだろうなぁ。

つよいこども
右脳中島オーボラの本妻
ユースクエア(名古屋市青少年交流プラザ) (愛知県)
2019/08/03 (土) ~ 2019/08/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/08/03 (土)
今までの右脳作品をろくに理解できてはいないが、それでも見せ方は洗練さの度合いを増してきている気がする。ポイントをより収斂させ、より深く、より強く。
今回1回目を観た後に当日パンフ記載のキーワードも調べまくった上で仮説を立て、翌日2度のおか割を重ねて、遂に私の右脳観劇史上初めて「全体を俯瞰しての解釈(仮説)」を立てることが出来ました。その一方で、作演 丸蟲御膳末吉さんが終演後にツイートされた…『感じる事や感じられる事は、お客様其々で 本当に其れでヨイのです。』…が、いみじくも真理を突いていると思えました。
考察を深めるにつれ、 右脳作品は「万華鏡のような芝居」だなと思えてきたからです。
ノンストップの激流の中で千変万化にその形を変えていく右脳作品は… そのまま丸ごと理解することは至難の業ですよね?
その時々に作品のどこに注目するか、どの視点で見るか、何の意味で受け取るか、どんな経験を経た人が…どんな精神状態で観るのかで、心に残る印象はまさしく千変万化の極みです。どんな芝居にもそういう一面はあるものの…右脳作品ほどそれを顕著に感じるものは無い… 作品の輪郭ですら一様には見えない。…そういう構造で出来ているんだと思う。 観る人の「心を映す鏡」たる多面性を備えているのではないかと思えます。

小刻みに 戸惑う 神様
劇団ジャブジャブサーキット
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2019/07/25 (木) ~ 2019/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/28 (日)
とある弔事・葬儀場のワンシチュエーションの中に… 日常と非日常、常識と非常識、現実と非現実… そういった相反するモノが絶妙なバランスで同居している。弔事だけど湿っぽさは内に秘め、笑いも交えた力を抜いた会話が…返って現実味を帯びる。登場人物各々の中に… 仔細は見せない…でも…うっすら透けてくる背負っているモノが意味ありげに存在感を放ち、何本もの作品が凝縮されている印象を受けました。
ここ暫くの新作は はせさんの趣味が色濃く出た仕掛けが多かったですが、今回は割と控えめ… いや…これまた上手いバランスで作品を彩っていると言うべきかな… すごく自然に…受け入れることができて好みでした。万人に受け入れられる作りになっている気がします。観る人によって、好きなところに勝手に想像の翼を拡げられる感じもありました。
そしてね~… 含蓄ある名ゼリフが随所に頻発して… でも必ずしもそこから何かを展開させることはしない贅沢な作りで、 とても妄想を呼ぶ。各役者の役作りがそこに利いていて、どの登場人物にも惹かれていく感じ。ベテラン老若男女の活躍は勿論、入団の浅い若手(林さん、山﨑さん、松本さん)がとても面白い使い方をされていてギャップが楽しい。役者を眺める意味でも楽しみが多かった。

INDEPENDENT:NGY 19
ナビロフト
ナビロフト(愛知県)
2019/07/20 (土) ~ 2019/07/21 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/20 (土)
東海地方のINDEPENDENTは2015年から5回目の観劇。いつしか大阪本戦にも足を運ぶようになり、NGYは前年の選りすぐりを愛でつつ、名古屋からの刺客候補に期待の眼差しを向ける場に。今年は特に野心が感じられたなぁ。

DOGS,UNDER THE ROSE!
メガネニカナウ
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2019/07/09 (火) ~ 2019/07/15 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/07/15 (月)
物凄くヘビーなシチュエーションをホップな歌で彩り中和したエンタメ芝居。
自己を肯定する力、可愛いは自分で作れる… 底辺から這い上がるポジティブさ…生きる強さを…不幸な乙女に授けていく流れと気軽に観ていたのが一転!
架空の漫画だった筈の「鬼退治」の仕掛けが解き明かされるにつれ、極め付けのダークサイドに話が傾く。
涙無くしては語れない犬猿雉たちの生き様は、勿論 本作のエモーショナルな盛り上げの核ではあるが、私はやはり…徹底的な悪として描かれる郎太郎の描写の秀逸さも強く推したい。他者を弄び支配する恍惚感、ふてぶてしさ、そして… オオイヌの最期に際しても、ただ一人 嬉しげに良い画を狙う仕草を続けるサイコパス感。何か…妙に現実感を醸す様に思えるのは、昨今の世相ゆえでしょうか。彼あってこそ作品が… 女たちの生き様がピリッと引き立ったと思えました。

無名劇団第31回公演「プラズマ」
無名劇団
SPACE9(あべのハルカス近鉄本店ウイング館9階)(大阪府)
2019/07/12 (金) ~ 2019/07/15 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/07/15 (月)
登場から驚きの衣装。和洋混在のテイストで… 率直な初見の印象では、現代劇のシチュエーションから大胆にかけ離れていてビックリの一言です。いやぁ、刑事まで含めて一貫してあの衣装空間です。必ずしも調和しているとは言い難いんですが、この浮いた感じがこの「現実世界なのに非現実感のある出来事」という空気を後押ししている?
ただ、主人公イズナがこれで白いキャップを被ると意外に球児っぽく見える感覚はちょっと面白かった。
あと、プラズマや炎の表現を… 薄布と特殊な照明処理で複合的に表現しているのも新鮮でした。古典とテクノロジーの融合が新たな想像力を湧き上がらせる感覚は楽しくって、そういった見た目の演出は観るべきところが多かった。

ワーニャ伯父さん
第七劇場
三重県文化会館(三重県)
2019/07/14 (日) ~ 2019/07/15 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/14 (日)
オリジナル設定と独特の演出によるフィルターを通すことで…原作にまた一つ違った印象を添える…いや増幅させているのか? 無為無力の悲哀に…更に覆い被さるやり切れなさ。チェーホフ劇で最も美しいとされる台詞すら…感じられ方を揺さぶってくる。そして、場転が本当に素晴らしくって、ドキドキしました。こんな感覚を受けることは滅多にない。映画的とも言えるけど、生でやられたら痺れる他はないわ。
そして第七劇場だと…シンプルな美しさの舞台美術に惹かれることが多いのだけど、今回は光や音の操り方が絶品でしたね…素敵な体験でした。
![【名古屋公演】青年と死[春]](https://stage-image.corich.jp/img_stage/m/798/stage_79819.jpg)
【名古屋公演】青年と死[春]
Contondo
クロッキーF美術館(愛知県)
2019/04/20 (土) ~ 2019/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/04/20 (土)
芥川龍之介の原戯曲をとても効果的な構成にアレンジして、観る者にじっくり浸透してくる感触。小道具の見立ても実に良い。
そして何より女優陣の醸す雰囲気が… 妖しくも美しく… 狭い劇空間に密度濃く全方位に漂う。かなりグッとくるものあり。

ロンググッドバイ
劇団芝居屋かいとうらんま
瑞穂市総合センターあじさいホール(岐阜県)
2019/02/09 (土) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/02/09 (土)
いやぁ〜驚いた。会場の都合で大ホールから小ホールに移ったものの、それならそれで…と、凝らされた工夫が素晴らしい。入って驚き、感じて驚きの時間になりました。特に音響効果は得難い体験でした。芝居の内容も 全編に漂うミステリアスさが知的好奇心を誘う仕掛けが多く、本公演並みの充実感です。多くの正体不明の登場人物たちの活躍が充実していて、若い役者の使われ方がすごく効果的。ちょっと役者のショーケース的な楽しみあって、小ホールの近さが奏功です。
そしてシリアスさの中に… 警部のいつものノリが挟み込まれるギャップの激しさよ(笑)
そして今回特筆したいのは、警部の向こうを張って存在感を見せた部下役。警部との絡みを2倍3倍にも膨らましてくれて愉快痛快。あとダンスもお洒落で凄く見栄え良かったし、客との絡みも冴えていて汗…多様で充実、良いパッケージでした。

神様から遠く離れて
刈馬演劇設計社
千種文化小劇場(愛知県)
2019/07/05 (金) ~ 2019/07/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/07/06 (土)
新興宗教からの逃亡をモチーフとしながら、新興宗教の既成イメージ…洗脳し、強制し、搾取する者…からは一線を画す。やはり刈馬作品は扱うモチーフと切り口が良い。幾重にも被さる仕掛けが堪らないよね。予想が利く所も作りつつ… 必ずそれを超えた何かを仕込んでおく巧みさ。特別な設定を身近に引き寄せる為のさりげないピース達も…物語の核心を押し出してくる。音楽が観る者を揺さぶり、衣装が舞いを引き立て、美術が空気を作る。それらを役者が一身に背負って… 言葉と振る舞いを届けてくれる至福の時間でした。作り手達が細部に込めたこだわりと想いが伝わってくる。

ラヤトン ジャパン・ツアー2019
MIN-ON
藤沢市民会館・大ホール(神奈川県)
2019/11/26 (火) ~ 2019/11/26 (火)公演終了
満足度★★★★★
ラヤトンのライブは初めてだったのですが、本当に素晴らしかったです。
クラッシックからクリスマスソング、そしてビートルズ、クイーンやスティング等のヒット曲等、様々なジャンルの歌がありましたが、私が特に良いと感じたのは、フィンランドの伝統曲等の母国の歌をとても大切にされていて好感が持てました。
知らない曲ばかりでしたが、とても幻想的な感じがして、アカペラで歌う素晴らしさに引き込まれてしまいました。
数回目の来日公演らしいですが、是非とも又何度でも来日して欲しいと思いました。
そしてこれはコンサートとは関係のないことですが、後ろの4人ほどの年配の女性達が、始まってもお喋りをしたり、お菓子を食べたりしてとてもマナーが悪く、観客がマナーを守る様に会場側(藤沢市民会館)ももっと、注意喚起をして欲しいと思いました。

libido:青い鳥
libido:
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/12/19 (木) ~ 2019/12/22 (日)公演終了
満足度★★★★
■85分弱■
以前観たモメラス版ほど演劇表現としてトガっておらず、子どもにも楽しめそうな仕上がり。原作が長大ながらも童話である以上、小道具の多くが段ボール製や布製で手作り感に満ち、いい意味で学芸会的、取っつきやすくてあたたかいlibido:版のほうを私としてはより支持したい。舞台前方と後方を仕切る布製の幕をうまく使った演出などは、子どもたちがこの劇を上演する際、大いに参考となることだろう。何より称賛したいのは、幼い兄妹の配役。チルチル役にもミチル役にもこれ以上ないほどふさわしい役者を配し、違和感を覚えることなく楽しめた。とりわけ、ミチル役の荒木千佳さん。獣をこわがる様子などを巧みに演じて、本当にあどけない少女に見えた。配役を決めた演出家はもちろん、荒木さんの演技力にも天晴れ!

トウキョウノート
青年団若手自主企画 堀企画
アトリエ春風舎(東京都)
2019/12/24 (火) ~ 2019/12/29 (日)公演終了
満足度★★★
■約65分■
「もうここにいない人へのラブレター」といったテーマが、上演そのものからはあまり汲み取れず。『東京ノート』から戦争と死を抽出するという狙いは果たされていたように思うが、そこから上記のテーマへとさらに踏み込むには、戯曲の再構成にとどまらず、加筆が不可避なのでは?