蝉追い
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
作家が創り出す世界観に各俳優が実に巧く溶け込んでいる。客演の藤吉久美子氏まで劇団員の一人であるかのようにすっかり溶け込んで突出せず、その役を果たしている。何と見事なチームだろうと感嘆させられる。安定した実力を遺憾なく発揮できる劇団と作家。
穴熊の戯言は金色の鉄錆
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2025/05/21 (水) ~ 2025/05/28 (水)公演終了
僕は肉が食べたくて裸(ラ)
南京豆NAMENAME
新宿シアタートップス(東京都)
2025/05/28 (水) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
目まぐるしい展開のプロットの中に現代の若者の会話がポップコーンがはじけるように飛び出してきます。時にコントのような構成に、演劇以上のものを感じてしまいました。
幕後のトークショーもちゃぶ台を挟んで届けていただいたのも印象的でした。
朝、私は寝るよ
グッドディスタンス
小劇場 楽園(東京都)
2025/05/28 (水) ~ 2025/06/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
4年前の初演も観ている。何かもっと舞台が広かった気がしたが当時は小劇場B1だった。二人芝居で男女の不倫関係の話、女のマンションで他人の情事を盗み見ているような背徳感。馬鹿馬鹿しい程、どうしようもない程に純愛。
前回は立ち込めるどうしようもなさに参った印象。どんなに意気がっても人は現実の前では無力。社会制度の前では黙っておとなしく従うしかない。俺達は自分の心すら革命出来なかった。ましてや社会など。
演出家を変えてかなり作品のスタイルが変わった。今回の方が訴求力が強い。女が妻帯者の男に、何でこんな奴をどうしようもなく自分は必要としているのか自問自答し続けるような内容。
綱島郷太郎氏は若い女を物にする魅力に説得力がある。打算がなく誠実に抜けている。その長所が別れ際では全て短所に反転するのだが。
今泉舞さんは絶好調。今作が代表作なのは間違いない。少女漫画のキャラのような自在な表情。男という鏡に一体自分の何を映しているのか、考える。
役者を目指してる人なんか観たらビリビリすると思う。凄くイカした悲しい詩。しかも馬鹿馬鹿しくて笑える。
是非観に行って頂きたい。
ネタバレBOX
前回よりもホンの良さが際立った。愛人をコンビニで間に合わせで買ったビニール傘に例える。雨が止んだら用無しどころか邪魔になる存在。
深井邦彦氏の脚本は食い物を効果的に扱う。『或る、かぎり』で確信した。観客と共有出来るリアルな生理的感覚を求めている。
永野芽郁と田中圭がこれを演ったら凄いだろうな。時代外れの『愛のコリーダ』。社会規範なんか本当はどうでもいいんだ。
BUCK-TICK「GHOST」
歩き続ける何処へ向かう?死神さえ振り向きゃしない
あなたの夢で私踊る 悪夢の果てきっと出逢う
透明になれる綺麗な夜 月明かりに彷徨うだけ(中略)
「愛して」それが口癖 「見つめていて」忘れ去られる
「愛して」呪文みたいに 「踊っていて」それが悲しい
「愛して」それが口癖 「見つめていて」
六道追分(ろくどうおいわけ)~第二期~
片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2025/04/30 (水) ~ 2025/05/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
本も座組も良かった。
舞台の使い方も上手くてあっという間に時間が経ってしまった。
笑いあり涙ありで素敵な舞台を観せて頂きました。
舞台を創り出すのに関わった全ての皆様に感謝してます。
ありがとうございました。
奴婢訓—Nuhikun
演劇実験室◎万有引力
座・高円寺1(東京都)
2025/05/16 (金) ~ 2025/05/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
空間めいっぱい使ってて演者さんたちの躍動感が凄かった!
照明の使い方もカッコよくて大道具も小道具も素敵だった。
寺山修司さんも万有引力も好きなので本当にに素敵な舞台を観せて頂けて舞台を創り出す全ての皆様へ感謝しかないです。
本当に魅せられました。
ありがとうございました。
熱海殺人事件~二作品同時公演~
Gipsgrasプロデュース
北池袋 新生館シアター(東京都)
2025/05/28 (水) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
6年以上前に観た半仁田みゆきさんの売春捜査官は素晴らしかった。今回は熱海の【サイコパス】を初鑑賞
-色々あっちこっち飛んでとっ散らかって、荒唐無稽で訳の分からん話しですが、役者の熱量が凄いので一見の価値あり。本作で俳優業に区切りをつけるそうなので、とても残念。半仁田さんの凛とした佇まい・覚悟を沢山の人に見届けてほしい。
蝉追い
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
メチャクチャ面白い。井上ひさし的でもある。東憲司氏の何度目かの最盛期が来ているのか。作家の狂い咲きをリアルタイムで味わえる観客は幸運だ。もう座組がオールスターに見えてきた。かなり笑いをまぶしている。
時代は1986年、雨の中、実家を見張る三姉妹(板垣桃子さん、もりちえさん、大手忍さん)の姿。一人暮らしの父親(山本亘〈せん〉氏)に女(鈴木めぐみさん)の影が。かつては夏蜜柑を栽培する農園(梁瀬農園)だった。一体何者か?
板垣桃子さんは高市早苗に似てきた。
井上莉沙さんの存在は大きい。若い娘がいるだけで作品世界が広がる。今回の引っ込み思案の少女役のキャラクターも見事。
親方の瀬戸純哉氏はもりちえさんの旦那でもある。プロレスラーのパイナップル華井(現Ken45)っぽい。
「ですよね〜」三村晃弘氏は助演男優賞もののキャラ造形。
山本亘氏と鈴木めぐみさんがMVPだろう。
山本亘氏82歳!!素晴らしい。鈴木めぐみさんのキャラの強さと妙なリアルさ。
桟敷童子はチケット取れたら一度は観ておいた方が良い。ちょっと凄い所まで来ている。『父と暮せば』みたいな永遠に残る作品が生まれそうな雰囲気がある。観客の期待値も高く磁場がバチバチ起きている。
ネタバレBOX
1914年(大正3年)、福岡県田川郡方城町(現・福智町)で起きた方城大非常がモチーフ。日本最大の炭鉱爆発事故で死者は671人。当時の迷信でガスを中和すると信じられてきた夏蜜柑を集められるだけ集めて坑内に投下した。
36年前、娘三人を置いて他の男のもとに逃げて行った母親。9歳だった長女は妹二人の面倒を見て暮らした。決して母親のことを許しはしなかった。36年後の復縁、それを平気で受け入れるお人好しの父親も許せない。何もかも許せないことだらけ。死別した夫に何の感情も持てなかった長女、浮気相手に本気になって挙げ句の果てに捨てられた次女、中学の教師になるも辞めてしまいこれから何をしていいか判らない三女。
amazarashi「とどめを刺して」
ねえ二度と泣かないように 君を見くびる君にとどめを刺して
僕と逃げよう 潔白ではいられなかった人生呪いながら
※今作は家族を捨てた鈴木めぐみさんと捨てられた三姉妹(板垣桃子さん、もりちえさん、大手忍さん)の物語。実は惚けた父親の方城大非常の記憶は背景でしかない。重要なのは絶対に許せなかった母親の行動も人間故であった所以をこの歳になった板垣桃子さんは理解出来てしまうこと、その葛藤。最後の鈴木めぐみさんの土下座が今作の肝。そこを汲まずしてストーリーだけ追っても勿体ない。
『イライラの依頼人とベンベンの弁護人』
コケズンバ
サンモールスタジオ(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初観劇の団体だが、独特の歌舞き感を持った団体のようである。
ネタバレBOX
無論、演劇の本質は歌舞くことにあるから本質的である。従ってその本質性が明らかになるのも終盤に入ってからだ。まあ、前説が音声のみで為されることと、その語り口が極めて高い独自性を持つことは伏線であることが後から分かるが。
板上下手奥は法律事務所受付カウンター、上手に所長のデスクと椅子。下手観客席寄りに面談用テーブルと椅子が置かれたシンプルなレイアウトだ。
序盤から素っ頓狂な展開で笑わせてくれるが、これは良くある法律の無料相談を利用した「客」。次に現れるのが、今作のメインストリームに絡む客で、依頼内容が、無茶である。而も依頼案件の詳細を質してゆく度に回答が異なるという不審極まる依頼。だがこの町場の法律事務所、経営不振で家賃を半年分滞納しており、追い出されても文句は言えない状態である。依頼人の成功報酬は1億円! 飛びつかない手は無いのだ。無料相談に現れた素っ頓狂な「客」とこの素っ頓狂な「客」に多大な損失を負わせることになった占い師が微妙にメインストリームに絡み乍ら、依頼人の不可解な答弁と依頼動機等が終盤明らかにされてゆく。
一方シリアスな展開となる中で語られる名台詞の数々は、依頼人の心象風景を端的に表す一言で吹っ飛んでしまう。どんな時代にも見られる世代間ギャップ及び普遍性が、人間が当事者として置かれた位置による凄まじい迄の差として表現され観客の度肝を抜くのだ。見事である。
湿ったインテリア
ウンゲツィーファ
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2025/05/19 (月) ~ 2025/05/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
観る人の立場や年齢、来歴によって感想が様々異なるであろう舞台です。しっかりとした物語は構築しつつも解釈は一つを限定させずあえて観客に委ねることのできた、演出の度量の大きな公演でした。
レベルを下げず、ダサくならずに観客の間口を広げることが出来る好例で、主宰の志の高さを感じました。
現在をしっかりふまえた家庭劇で、バカバカしさも愛おしくなる、温かい作品です。
『イライラの依頼人とベンベンの弁護人』
コケズンバ
サンモールスタジオ(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
流石に手練のおっさんず。実に見事なサスペンスコメディ。ちょいちょいリアルなところがいいですね。終始楽しませてもらいました。どつきあいはアドリブですか?
ダンス オブ ヴァンパイア
東宝
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2025/05/10 (土) ~ 2025/05/31 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
Wキャスト、城田優さんの回を観劇しました。
怖い雰囲気かと思いきや、コミカルで哀愁を感じさせる舞台でした。
歌は勿論、圧巻のダンス、カッコ良い音楽・・目が足りませんでした。
城田さんのヴィジュアルは正しくヴァンパイアで、生歌を初めて聴きましたが、鳥肌(良い意味です)でした。本当に感動です。
出演者の歌声、皆さん良かったですが、石川禅さんの歌声が印象的でした。
素敵な時間で、あっという間でした。観る事が出来て良かったです!
湿ったインテリア
ウンゲツィーファ
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2025/05/19 (月) ~ 2025/05/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
前日Xに大量の絶賛感想が流れてきた。ネタバレしたくないため、観終わった後ゆっくり読もうと薄目でササッと飛ばしたが、たくさんの人が大感動していることが分かり、期待も高まり、開演1時間前に会場に着く。
どらま館の階段を登って行った時に、かわいいお靴やスタイなど、赤ちゃんにまつわるものが並べられてて、世界観が始まっていてとてもいいなと思った。
会場に入ると、舞台美術が織りなす世界観が素敵すぎて圧巻であった。ちょっと左寄りにお布団のような布がコの字を描いていて、脇にはぬいぐるみなどのゴミ袋、右脇には観葉植物やキッチン用品があり、生活感があった。テーブルの上のランプがめちゃくちゃ可愛くてどこのランプか気になった。上から吊るされるものが子供部屋にあるものが多かった気がした。右上に宇宙に見えるような、月やフラフープがあって素敵だった。
ネタバレBOX
さらに、まさか、布に映像が投影されると思っていなかったのでびっくりした。「湿ったインテリア」の文字が赤くて、少しこわい感じ(血っぽい感じ)も生々しくてよかった。
照明も素敵だった。いろんな角度に照明があり、色も豊かだった。特に緑色の恐竜の影が白い布団に現れた時など可愛いと思った。夜のお散歩のシーンの真っ青な照明も素敵だった。
音響も良かった。客入れの音楽もオリジナルなのか気になった。現実と非現実の間のような雰囲気の曲で素敵だった。スピーカー扮するそらくんや乗り移った(?)ジュウタさんと役者さんとの会話のシーンもとてもスムーズなタイミングですごかった。ある程度の尺の録音をしたものを、オペで流す感じなのか気になった。
脚本が素晴らしかった。設定もオリジナリティがあるし、はじめは、チアがジュウタからタクに浮気的な感じで乗り換えたのかな?と思っていたが、途中から、ジュウタが亡くなったことを知って、認識が変わった。三者三様の親との関わり方が描かれつつ、それぞれが自分が親になる様子が同時に描かれていて面白かった。カキエがスピーカージュウタを抱っこして、真ん中で「やり直そうね」と言っていたシーンが切なすぎて涙が出た。「私のせい、私のせい」というカキエが、こどもを所有物のように認識している点では間違っていると思うが、それは翻って愛であるというところが、切なかった。カキエの妄信的な愛によって苦しかったジュウタがかわいそうでもあり、第三者としては、大きすぎる愛を持つカキエも愛おしく見えた。大きすぎる愛を持っていたカキエが自分の提案のせいで愛する息子を失った気持ちを想像すると胸が苦しくなった。カキエがタナコに「(息子を無くした気持ちを)お察ししますと簡単には言えないわ」的なことを言われたシーンで、「もう自分の中で整理がついてきているので大丈夫です」的な気丈に振る舞っていたところも切なかった。自分もまだ心の傷が回復していない時に、人に気丈に振る舞ってしまうときがあるので、その気持ちがすごく共感できたし、その時は大丈夫でも、後で一人になった時にダメージを受ける気持ちも分かった。タナコがタクのことを想って、今後のことを色々忠告するシーンを見て、自分もお母さんに言われるとうるさいなと思うことが多いが、実は的を得たことを言っていて、私のためを思って言ってくれてることを第三者目線で見ることで気づいた。終盤でタクの子かもしれないとタクが気づいた時に、すごくショック&ちょっとえずいていたように見えて、もしかすると、「誰の子でも関係ないと言っていた自分」→「でも実際、他人の子だと愛せないかもと思った自分」→「最終的に自分の子だった場合に、自分の子だったのに、他の人の子だと頭で考えて愛せていなかった自分(誰の子でも関係なく愛せると考えていた理想の自分との乖離:誰よりも自分が血が繋がっているかにこだわっていたのではないかと気づく)」によってそのような姿になったのかなと思った。私はこどもはおらず独身なのだが、2人だけで子育てするのは大変だなと思った。初めの方のシーンで、タクが「俺も心ぐちゃぐちゃで」と弱音を漏らした時に、チアが「私も体ぐちゃぐちゃにして産んだ」と応答していて、タクは体も心もぐちゃぐちゃなチアの大変さを優先し、色々気持ちを飲み込んで受け入れていて、そのパターンが多いように感じた。男性は産むことができないし、赤ちゃんと関わる時間も相対的に少なくなるから、色々飲み込まなきゃいけない場面が増えるのかなと想像した。ただ、自分は女性で、こどもを産んだ場合、絶対にホルモンバランスなどの影響もあり、優しくできない気持ちもすごく分かったし、掃除機をジグザグにかけられたら、更にキレてしまうだろうなとも思った。何が言いたいかというと、2人だけでぶつかりあった場合、逃げ場がなくて、どちらかが飲み込んで受け止める構図になるし、投げつけた側も自己嫌悪が出てきたり、大変になってしまうと思ったので、こどもを育てるなら2人だけにならない環境(実家の側など)がいいなと思った。(笑)戻ってきた(?)ジュウタが、ソファの上で「何も思い通りにならないこの世界やだ」みたいに喚いていたシーンや、大人である登場人物たちが子供のように泣くシーンを見て、「大人も大きくなっただけの赤ちゃん」というメッセージを受け取った。だから、うまくいかなかったら泣きたいし、世の中うまくいかないことだらけなんだから、全大人が本当はぐずりたいということも共感した。ここは、キャッチコピーである「親の泣き顔が幼かった」のところに通じるメッセージなのではないかなと思った。こどもを産んだら「親」という役割にはなるが、親も完璧な大人ではなく、こどもが大きくなった延長線上で、みんなもがきながらやっているんだなと思えた。ちょうど一昨日、友人が「こどもを持つかどうか、持つとしたら、いつ作るかどうかパートナーと話し合っていて、みんなどうやって決めるもんなの?難しすぎない?」と悩んでいたので、私としてはかなりタイムリーな話題であった。私としては、子供は自分で産んでって言わないから、子供が生まれること自体、親のエゴは絶対入ってくると思っており、かなり本作の思想に共感した。その話題から、こどもを生みたいかどうかは、考えるより感じるものなのではないかなと思った。たぶん考えたら、産まない方がメリットは多いと思って(たぶんジュウタの考え)、産みたいというのは、気持ちであり、理由は説明する時に後からつける気がした(チアの考えがそのように感じた)。ちょこちょこギャグ的な笑い要素が入っているのも好きだった。特に、ジュウタが収納めちゃくちゃ気にしてるところと、カキエがジュウタがそらくんに宿ったのは自分が呼び寄せてしまったからだと考え、叫びながら謝り続けるところが面白かった。
役者さんが皆さん最高だった。まず全員会話が上手すぎて、素晴らしく、気まずい雰囲気や、セリフの馴染み方も半端なかった。圧巻だった。また、演じ手の年代の幅が出たことによって、表現の豊かさも広がったように思った。黒澤多生さんは、独特の空気感と会話力の高さがピカイチで、安定感がすごい。場の空気を変える力も強く、出てくる度に空気が変わるので、出てくるのをワクワクして見ていた。豊島晴香さんは、繊細な感情の機微に加え、会話力がまた高く、自然な演技が素晴らしかった。終盤のチアの実家に挨拶に行くシーンでの海を眺めながらの「最高にハッピーな家族になろうね」の後の返事の顔が儚さが入りながらの満面の笑みで心がキュッとなった。根本江理さんは、言葉に嘘がなく、心から全て言っているのが顔に出てて、やはり素晴らしい役者さんだった。もうタナコにしか見えないほどタナコですごかった。松田弘子さんは、心からの叫びが観客にグッと届くパッショナブルな役者さんだった。悪びれない大きすぎる愛を体現されていて、この物語の肝を担ってる感も感じた。藤家矢麻刀さんは、そのシーンの空気感を作り上げることがとても上手く、仕草などのディティールの表現がすごい上手かった。
全体の座組の雰囲気として暖かさが出ていて、それは本橋さんが作り出す感じなのかなと思った。前回のメビウスも面白くて好きだったが、今回の湿ったインテリアはメッセージも優しくて繊細で大好きでもっと好きになった。
アフタートークでまさかの本橋さんのお母様が登壇されており、お母様からの本橋さんへの愛が溢れており、それを恥ずかしがる本橋さんが作中に重なる部分を感じた。
その話も含めて、私の中で本作が完成した。いい回を見れてよかった。
ウンゲツィーファのこれからが楽しみでなりません!!!
蝉追い
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
九州の或る旧炭鉱街を舞台にした家族の物語。誰もが避けて通れない老い、それを遠い過去の痛ましい事故とその地域の風習を絡め、情緒豊かに描いた傑作。
昭和61年 梅雨から夏にかけての時期、梁瀬家(農園)が舞台。冒頭、老いた男女をつけてくる女3人の軽妙な会話で、一気に物語へ引き込まれる。桟敷童子らしい舞台美術、そして効果的な音響・音楽や照明の諧調は実に見事。また毎公演 驚かされるラストシーンも…。何といっても、梁瀬農園の主 梁瀬守男を演じた山本亘さんのラストシーンの演技が圧巻で、熱いものが込み上げてきた。
さて 痛ましい事故は事実、そしてフライヤーの絵柄にある 夏みかん が重要な役割を果たしている。まさに虚実綯交ぜにした舞台で、見応え十分。ちなみに、当日パンフに次回新作公演が「一九一四大非常」とあり、公演のラストシーンに現れる装置にも「19141215」とある。この数字が意味を持ち、本作と次回作の関連をうかがわせるような気も…。
(上演時間1時間45分 休憩なし)
ネタバレBOX
舞台美術は、下手に梁瀬家 上がり框 その後方に収納棚。上手には 離れ があり板戸が閉まっている。母屋と離れの間に水路がある。周りは鬱蒼とした木々の葉が青々(季語でいえば青葉)と芽吹いている。上演前は水路の水が揺らめいている(地鏡の)ような照明。母屋の天井には「梁瀬農園」の看板がある。冒頭、雨の中 男女2人が寄り添って、家(梁瀬家)の中へ入るところから始まる。舞台と客席の間に、天井から水が流れ落ち、ちょっと驚かされる。
昭和61年、梁瀬家のある九州の或る田舎町。昔は炭鉱町として栄えたが、今は 然したる産業もなく寂れている。梁瀬家は農園をやっていたが、今は荒れたまま。最近、この家に女が出入りしていると噂を聞きつけ、農園主の守男と彼に付き添っている謎の女、その2人をつけている女3人。謎の女は 守男の元妻 嘉代、そして3人の女はその娘達(美穂、典子、千尋)。36年前に守男と3人の娘を捨て、中村組の男と出奔した。当時、娘達はそれぞれ9歳、6歳、3歳で母の記憶が殆どない。それが今になって…。桟敷童子の3女優(板垣桃子サン、もりちえサン、大手忍サン)の演技が秀逸。そして3人に立ち向かう母 鈴木めぐみ さんも負けていない。
守男も年老いて、最近だんだんと様子が変になってきた。一方、娘達の事情も平穏ではなく、色々な問題を抱えていることが分かる。美穂は夫と死別、典子は自分が浮気をして離婚を決意、千尋は小学校教師を辞め無職。嘉代は、農園を整備し昔のように活気あるものにしたい。中村組という土建業者の社長になっている 嘉代の罪滅ぼしのような思いであろうか。しかし守男の記憶や行動が…認知症のようだ。それでも農園のこと、特に夏みかん には思い入れがある。
物語は、方城炭鉱の炭鉱爆発事故(1914<大正3>年)がモチーフになっている。当時、炭鉱事故は「非常」と呼称し、「大非常」は大事故を指していたという。事故でガスが充満し危険な状態であったが、ガスを中和すると信じられていた夏みかん を坑内へ投下したらしい。守男が子供の頃の痛ましい記憶、認知症になっても 夏みかんへの思いは 一入。現在は、水路に夏みかんが流れてくる。ちなみに、劇中の台詞にもあるが、一本の樹に二季の果実 夏みかんと橙がなる…子孫繁栄の縁起物と。
記録と記憶、そして家族の絆といったことが分かり易く描かれている。同時に、その家族を温かく見守る近所の人達の人情も厚い。物語は、蝉の声や雷鳴といった音響、三味線やピアノによる音楽、そして飾り灯篭(祭りー夏神様)といった小物で情緒ある雰囲気を醸し出す。フライヤーにある「家族は老いて、傷み、壊れて、荒んでゆく」の言葉は、物語の中へ しっかり刻み込まれていた。
次回公演も楽しみにしております。
『イライラの依頼人とベンベンの弁護人』
コケズンバ
サンモールスタジオ(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
経営の苦しい法律事務所に、とんでもない依頼がきましたが、笑いの絶えないコメディでしたね。
ネタバレBOX
湊川法律事務所に、現れた依頼人の内容が、単純でなく、新たな謎が出てきて、シリアスと見せかけて、コメディにと、どんどん引き込まれて続けました。とてもおもしろいハチャメチャ人情コメディなので、あっという間の充実した時間でした。
『イライラの依頼人とベンベンの弁護人』
コケズンバ
サンモールスタジオ(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
面白かった。
ネタバレBOX
けど前回ほどの爆笑とはならず。
それでも前回一番笑いをとっていた飯島タクさん、この人が出てくると笑ってしまうなあ。もう声が大きいだけで面白い。
この人は作演の穴吹さんに無茶振りされたり、突っ込まれている時が一番面白いので、そういうシーンがもっと見られればなあ。
穴熊の戯言は金色の鉄錆
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2025/05/21 (水) ~ 2025/05/28 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
今回は愛がテーマで自分の人生とリンクするところがあってものすごく心に響いた。台本を買って何度も読み返してしまった。というわけで楽日の公演にも足を運びます。
『イライラの依頼人とベンベンの弁護人』
コケズンバ
サンモールスタジオ(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
初日を拝見。相変わらず皆さん達者で楽しませてもらった。昨年に引き続き登場の北原芽依さんはチャーミングだったし、占い師役の竹下優子さんもなかなか強烈なキャラでよかった。
『イライラの依頼人とベンベンの弁護人』
コケズンバ
サンモールスタジオ(東京都)
2025/05/27 (火) ~ 2025/06/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
最高に面白かった!
お勧めです。
湿ったインテリア
ウンゲツィーファ
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2025/05/19 (月) ~ 2025/05/27 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
こんな事あった!うんうん。こんな感情もわかる。そうそう。母たちの気持ちとその子たちの気持ちが交錯してぐるぐる回って。切なさと苦しさと優しさと赤ちゃんの甘酸っぱいような匂いまで心に刺さる。観て本当に良かった。